遺産の分け方について
- 遺産をどう分けるかは、大きく分けて2つのパターンがあります。
遺言書がある場合
→ 基本的には、遺言書の内容に従って遺産を分けます。 - 遺言書がない場合
→ 相続人全員で話し合って、遺産の分け方を決めます(これを「遺産分割協議」といいます)。
よくある誤解
「法律で決められた通りに機械的に分ける(法定相続)」と思っている方が多いですが、実際には、話し合いで自由に決めることができます。
たとえば、法定相続の例では
- 配偶者:2分の1
- 子ども:2分の1(複数人いる場合は、その中でさらに分けます)という割合になりますが、これは話し合いがまとまらないときの「目安」のようなものです。
まとめ
- 遺言書があれば、それが最優先。
- 遺言書がなければ、相続人全員で話し合う。
- 法定相続は「こう分けるべき」という決まりではなく、「話し合いがまとまらないときの基準」にすぎません。
相続人以外でも遺産を受け取れる場合について
遺産というと「家族や親族にしか渡らないもの」と思われがちですが、亡くなった方(被相続人)の意思によっては、血のつながりのない人や法人でも受け取れるケースがあります。
遺言によって受け取る場合:「遺贈(いぞう)」
被相続人が遺言書に「○○さんに〇〇をあげる」と書いていた場合、相続人ではない人でも遺産を受け取ることができます。
このような受け取り方を「遺贈(いぞう)」といい、受け取る人は「受遺者(じゅいしゃ)」と呼ばれます。
💡 たとえば…
「生前お世話になった友人に100万円を渡したい」
「地域のNPO法人に土地を寄付したい」
→ こうした希望は、遺言書に書いておけば可能です。
生前に契約していた場合:「死因贈与(しいんぞうよ)」
亡くなる前に、
「私が死んだら、この家をあなたにあげる」
というような約束を交わし、契約書を交わしていた場合、それを「死因贈与(しいんぞうよ)」といいます。
こちらも、相続人以外の人でも財産を受け取ることができます。
ただし、相続人にも最低限の取り分がある:「遺留分(いりゅうぶん)」
遺言や契約で「全部あげる」と書かれていても、家族などの相続人には、最低限の取り分(遺留分)が法律で守られています。
そのため、相続人は「遺留分を侵害している」として請求できる場合があります。
特別に貢献した人への配慮:「寄与分」と「特別寄与分」
亡くなった方の財産を守ったり、増やしたりするために特別な貢献をした人がいた場合は、次のような制度があります。
寄与分:相続人の中で特別に貢献した人に、相続分を上乗せする考え方
特別寄与分:相続人ではないが、介護などで特別な貢献をした親族に配慮する仕組み
まとめ
- 遺言があれば、相続人以外にも遺産を渡せる
- 生前の契約(死因贈与)でも渡せることがある
- ただし、家族などの相続人には最低限の取り分(遺留分)が保障されている
- 特別に尽くした人には、配慮される制度もある
「介護をがんばった人は遺産を多くもらえる」…それって本当?
亡くなった方の介護やお世話を一生懸命にした人が、「そのぶん遺産を多めにもらえる」と聞いたことがあるかもしれません。
これは法律でいう「寄与分(きよぶん)」という仕組みのことです。
寄与分とは?
介護や手伝いなどによって、亡くなった方の財産を守ったり増やしたりすることに特別な貢献をした相続人が、
そのぶんだけ遺産を多めにもらえる、という制度です。
寄与分の決め方は?
基本的には、相続人全員で話し合って金額を決めるのがルールです。
でも、話がまとまらない場合は…
- 家庭裁判所で「調停(ちょうてい)」を行う
- それでも決まらなければ、家庭裁判所の判断(審判)で金額が決まります
実際はどうなの? 寄与分の現実
「介護を頑張ったから、きっと遺産を多めにもらえる」と期待する人も多いのですが…
実は、
- 寄与分が認められるケースはとても少ない
- 仮に認められても、思っていたよりずっと少ない金額しか認められない
というのが現実です。
そもそも寄与分はどうやって計算される?
よくある方法は、
もしプロの介護ヘルパーにお願いしていたら、どれくらいかかったか?
→ その金額 × 実際にかかった時間 = 寄与分の金額
このように、実際に相続できる割合が変わるわけではありません。
✅ まとめ
- 寄与分とは、介護などで特別に貢献した相続人が遺産を多くもらえる制度
- でも実際には、
① 認められるのはとても難しい
② 認められても、金額はかなり少ない - 介護の苦労がそのまま遺産に反映されるとは限りません
介護をしてきた子どもが「ちゃんと報われる」ためにできる2つの対策
親の介護を長年がんばってきた子どもが、「できるだけ多くの財産を引き継ぐ」ためにしておきたいことが2つあります。
遺言書を作ってもらう(遺留分に配慮した内容で)
親が元気なうちに、遺言書を作ってもらうのが大事です。
このときに注意すべきなのが「遺留分(いりゅうぶん)」です。
遺留分とは、配偶者や子どもなどに認められている「最低限の取り分」。
遺留分を無視した内容だと、あとから他の相続人(たとえば兄弟など)から「取り返したい」と言われて、もめごとになる可能性があります。
💡 なので、遺留分を侵害しないように配慮しながら、介護をしてきた子どもに多くの財産を渡す内容の遺言書を作っておくことが大切です。
生前贈与(せいぜんぞうよ)を活用する
もう一つの方法が、親が生きているうちに財産を贈与する(=生前贈与)という方法です。
さらにポイントとなるのが、
「特別受益の持ち戻し免除(とくべつじゅえきのもちもどしめんじょ)」の意思表示です。
これはどういうことかというと――
💬「今、子どもにあげた財産については、相続のときに計算に入れないでね」と親が意思表示をすることで、あとで遺産を分けるときに不利にならずにすむという制度です。
✅ まとめ:介護してきた子どもが損をしないために
- 親に、遺留分に配慮した遺言書を書いてもらう
- 生前贈与+持ち戻し免除の意思表示を活用する
→ この2つの対策をしておけば、介護をがんばってきた子どもが、ちゃんと報われる可能性が高くなります。
「生前贈与と相続は関係ない」は間違いです!
多くの方が「生きているうちにあげた財産(生前贈与)は、相続とは別の話」と思いがちですが、
実は――
💡 法律上は、相続と深く関係しています。
生前贈与は「遺産の前渡し」と考えられます
たとえば、親が生きている間に子どもにお金や土地をあげたとします。
そのときの財産は、相続が始まったときに
→ 「すでにもらった分(=前渡し)」として考慮されるのが基本です。
このように扱われる財産のことを「特別受益(とくべつじゅえき)」といいます。
特別受益の「持ち戻し」とは?
相続のときには、
「あのときもらった分も含めて、全体の遺産をどう分けるかを考えましょう」
というのが原則です。
このように、生前にもらった財産を亡くなったときの遺産に一度“持ち戻して”計算することを👉「特別受益の持ち戻し(もちもどし)」といいます。
ただし、相続人同士の合意があれば自由に分けてもOK
相続の話し合い(遺産分割協議)は、
基本的に相続人全員が納得すれば、自由に分け方を決められます。
たとえば――
ある人が「私は生前に多くもらったけど、残っている分は皆で分けていいよ」と納得すれば、💡残っている遺産だけで分けることも可能です。
✅ まとめ
- 生前贈与は「遺産の前渡し」として扱われます
- 相続では「特別受益」として、持ち戻して計算するのが原則
- でも、相続人全員の合意があれば、柔軟に分けることができます
特別受益(とくべつじゅえき)ってなに?
相続のときに気をつけたいポイントをまとめました。
特別受益になる「生前贈与」とは?
親が子どもに生きている間にお金を渡していたとしても、すべてが「特別受益」になるわけではありません。
ポイントは、
💡 「家族として当然の援助かどうか」です。
特別受益にならないもの(=普通の援助)
- 食費、生活費
- 学費や塾代
- 医療費
などの日常的な支援は、家族なら当然と考えられているので、相続ではカウントされません。
特別受益になる例(=特別な贈り物)
- 子どものマイホーム購入の頭金を援助
- 1人の子どもにだけ高額な学費(私立医学部など)を出した
- 相続税対策として、毎年110万円の贈与を継続して行っていた
こうしたものは、他の相続人と比べて大きな得をしているとみなされ、相続のときに「先にもらった分」として差し引いて考えられることがあります。
時効(じこう)はあるの?
実は、特別受益には時効がありません。
つまり… 📌 30年前・40年前の贈与であっても、相続のときに問題になる可能性があります。
民法と相続税法では「相続財産の考え方」が違います
相続に関する法律は、民法と相続税法の2つがありますが、実はこの2つでは、「どこまでが相続財産か」という考え方が違うんです。
民法では「特別受益(とくべつじゅえき)」という考え方
民法では、亡くなる前に特定の相続人だけが多くの贈与を受けていた場合、それを「すでに遺産の前渡しを受けた」としてカウントします。
これを「特別受益の持ち戻し」といいます。
💡つまり…
「すでにたくさんもらっていた人は、その分を差し引いて遺産を分けましょう」という考え方です。
相続税法では:「特別受益の持ち戻し」はしません!
相続税の計算では、すでに生前に贈与を受けた分には贈与税がかかっているため、💡相続税の課税対象には入れないのが原則です。
ただし、代わりに次の2つが関係してきます。
① みなし相続財産(=実際に遺産じゃないけど課税されるもの)
以下のようなものが「相続で得た財産」とみなされ、相続税の対象になります。
- 死亡保険金
被相続人(亡くなった人)の保険で、相続人が受け取った生命保険金など - 死亡退職金
亡くなった後に、会社などから支払われた退職金(3年以内に支給が決定したもの) - 生命保険契約に関する権利
亡くなった人が保険料を払っていたけれど、契約者が別の人で、保険金がまだ支払われていないもの
② 生前贈与の加算(=亡くなる前の贈与も相続税に含まれるケース)
以下のような贈与は、相続税の課税対象として「加算」されます。
- 相続開始前7年以内の贈与(※以前は3年でしたが、令和6年以降は段階的に7年に延長)
- 贈与税の納税猶予特例を受けていた財産(例:農地・非上場株など)
- 贈与税が非課税だった特例の残額(例:教育資金、結婚・子育て資金など)
- 相続時精算課税で受けた贈与(相続のときにまとめて精算する贈与)
遺言書があとから見つかると…やり直しになることも!
相続が始まると、家族や親族の間で「どう分けるか」を話し合いますよね。
でも、先に“遺言書があるかどうか”を必ず確認することが大切です。
なぜなら…
💡遺言書があることに気づかずに分けてしまうと、あとから遺言書が見つかったときに「やり直し」になる可能性があるからです。
せっかく話し合って決めたことが無効になることもあるので、最初に遺言書の有無をきちんと調べることがとても大事です。
ポイントまとめ
- 相続を始めるときは、まず遺言書があるか確認!
- 遺言書の内容が最優先されます
- 話し合いで決めたあとに見つかると、分け直しになることも
遺言と違う分け方もできる? 〜相続人全員が納得すればOK〜
遺言書があると、基本的にはその内容に従って遺産を分けることになります。
でも実は――
💡相続人全員が「この分け方でいいよ」と同意すれば、遺言と違う分け方もできるんです。
たとえばこんな場合
- 遺言では長男に全財産と書かれていた
- でも兄弟みんなで話し合って「平等に分けよう」と決めた
- その内容で「遺産分割協議書」を作成すれば、そのとおりに分けることができます
ただし、一人でも反対すると…
相続人のうち誰か一人でも同意しない人がいれば、話し合い(遺産分割協議)は成立しません。
その場合は、遺言書の内容通りに相続を進める必要があります。
ポイントまとめ
- 遺言と違う分け方も可能。ただし相続人全員の同意が必要
- 一人でも反対すれば、遺言通りに進めるしかない
「遺産分割協議」は、全員の同意が必要!
注意が必要なのは…
💡相続人全員が同意しないと、「遺産分割協議」は成立しないという点です。
誰か一人でも反対すると、遺産は「相続人全員の共有」という扱いになってしまい、いろいろな不都合が出てきます。
遺産が分けられないと、こんな困ったことに…
相続税の申告がややこしくなる
相続税を申告するときには、遺産の分け方を示した書類(遺産分割協議書)が必要になります。
協議がまとまらないまま申告期限が来てしまったら、とりあえず法定相続分(法律で決まった目安の分け方)で申告しておいて、後から修正することになります。
相続税の“特別な優遇”が受けられない
遺産が分けられていないと、
- 配偶者の税金を軽くできる制度(配偶者の税額軽減)
- 自宅の土地などで税金が安くなる制度(小規模宅地の特例)
といった、税金を軽くする制度が使えなくなることがあります。
なぜなら、誰がどの財産を相続したか決まっていないと、これらの制度が使えないからです。
財産を売ってお金に変えるのが大変になる
たとえば、相続した土地や株などを売って相続税を払いたいと思っても、共有状態では、相続人全員の同意がないと売れません。
1人でも「売りたくない」と言えば、それだけで進めなくなります。
まとめ
- 遺言がない場合は、相続人全員の同意で遺産の分け方を決める
- 一人でも反対すると、遺産は「共有」に。様々な問題が出てくる
- 特に、相続税の申告や節税に大きな影響があるので注意!
遺産分割協議は、書面がなくても成立する?
遺言がない場合、相続人全員で話し合って遺産の分け方を決める「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」が必要です。
💡実はこの協議、全員が同意すれば、書面がなくても法律上は成立します。
でも――
実際には「遺産分割協議書」という形で、文書にして残すのが一般的です。
なぜなら、いろいろな手続きに使えるからです。
文書にすることでできる手続き(例)
● 不動産の名義変更(相続登記)
相続した家や土地の名義変更には、遺産分割協議書が必要です。
● 銀行の預金の引き出し
金融機関が用意した専用の書類に相続人全員が記入すれば引き出しは可能ですが、💡遺産分割協議書(のコピー)を提出すれば、もっとスムーズに手続きできます。
● 相続税の申告で「特例」を使いたい場合
配偶者の相続税を安くする「配偶者の税額軽減」や、自宅の土地の評価額を下げられる「小規模宅地等の特例」など、税金を安くするための制度を使うには、遺産分割協議書のコピーの提出が必要です。
まとめ
- 話し合いがまとまれば、書面がなくても遺産分割協議は成立
- でも実際は、後の手続きを考えると「遺産分割協議書」を作るのがオススメ
- 協議書があると、不動産・預金・相続税の申告などがスムーズに進む!
相続人と法定相続分
誰がどれだけ遺産を受け取るの? 基本ルールをわかりやすくご紹介します。
配偶者は、どんなときでも相続人!
まず大前提として――
💡夫や妻(配偶者)は、どんな家族構成でも必ず相続人になります。
子どもがいる場合
配偶者 + 子ども が相続人になります。
📌 法定相続分(目安の割合)は:
- 配偶者:1/2(2分の1)
- 子ども全員で:1/2
子どもが複数いる場合は、子ども同士で均等に分けます。
たとえば…
子どもが2人 ⇒ 1/4ずつ
子どもが3人 ⇒ 1/6ずつ
子どもがいない場合
この場合、配偶者と親や祖父母(直系尊属)が相続人になります。
📌 法定相続分は:
- 配偶者:2/3(3分の2)
- 直系尊属:1/3
子どもも親・祖父母もいない場合
この場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
📌 法定相続分は:
- 配偶者:3/4(4分の3)
- 兄弟姉妹:1/4
「相続人全員がOKすれば、相続人以外にも遺産を分けられる」というよくある誤解
…それ、実はできません!
❌ たとえば、こんなケース
ケース①:内縁の妻に遺産をあげたい
「亡くなった人をずっと介護してくれていた内縁の妻に、感謝の気持ちとして遺産を渡したい」
→ 相続人全員が賛成しても、内縁の妻は法律上、相続人ではないため、相続させることはできません。
※相続ではなく、「生前贈与」や「遺言書」が必要になります。
ケース②:子どもではなく孫に相続させたい
「子どもにはすでに十分な財産があるから、孫に直接遺産を渡したい」
→ 孫は相続人ではないため、相続人全員が同意しても、孫には相続させられません。
※こちらも「遺言書」を用意しておく必要があります。
💡 ポイントまとめ
- 相続できるのは、法律で定められた「相続人」だけ!
- 相続人以外に渡したいときは、「遺言書」か「生前贈与」を使いましょう。
遺産の分け方には、どんな方法があるの?
相続が発生したとき、遺産(財産)をどうやって分けるかは、状況に応じていくつかの方法があります。代表的な4つの分け方をご紹介します。
現物分割(げんぶつぶんかつ)
💡 財産を「そのままの形」で分ける方法です。
たとえば…
- 現金はそのまま分ける
- 広い土地は分筆(ぶんぴつ)して分ける
- マンションなら部屋ごとに登記して分ける
ただし、価値に差があると不公平感が生まれて争いになることもあります。
代償分割(だいしょうぶんかつ)
💡 一部の人が財産を引き継ぎ、その代わりに他の相続人にお金(代償金)を支払う方法です。
たとえば…
- 一人が家を相続する
- その代わりに、他の相続人に現金で「代償金」を渡す
ただし、家をもらう人に代償金を払えるだけのお金や借り入れ能力が必要になります。
換価分割(かんかぶんかつ)
💡 財産を売ってお金に換えて、それを分ける方法です。
たとえば…
- 家や土地を売却する
- 売れた金額を相続人同士で分ける
金額で公平に分けられるので合理的ですが、
「思い出の詰まった家だから売りたくない」など、感情が絡むと難航することもあります。
共有分割(きょうゆうぶんかつ)
💡 財産を相続人で共有する方法です。
たとえば…
- 土地や建物などを、相続人みんなで共同で持つ
もともと、有効な遺言がないと遺産は自動的に“共有”の状態になります。
そのままにする人もいますが、話し合いで共有の持ち分を変更することも可能です。
ただし、共有状態のままだと…
- 売るにも全員の同意が必要
- 相続が続くと、共有者がどんどん増えて処分が難しくなる
というデメリットがあります。
不動産の名義変更って、いつ・どうやってするの?
家や土地などの不動産を相続したときには、名義を変える手続き(相続登記)が必要です。
いつやるの?
遺言書がある場合や、相続人同士で遺産の分け方(遺産分割協議)がまとまったら、💡できるだけ早めに手続きしましょう。
どうやってやるの?
名義変更(相続登記)の手続きは、不動産を管轄する「法務局」で行います。
そのときに必要なものは…
- 遺言書がある場合:その写し(コピー)
- 遺産分割協議で決まった場合:遺産分割協議書の写し
これらを添えて、相続人のうち不動産を受け取る人が申請します。
なぜ名義変更が必要なの?
不動産は、登記(名義変更)をしないと…
❌ 「これは私の土地です」と第三者に主張できません
✅ 登記をしてはじめて、自分の権利が法律で守られるのです
名義変更を放置するとどうなる?
「あとでやればいいか…」と放置していると、こんな問題が起こるかもしれません。
- 相続人の1人が亡くなって、新たな相続が始まり、相続人が増える
- 古い戸籍がなくなり、必要書類が手に入らなくなる
- 権利関係がややこしくなって、手続きが大変になる
💥 放っておくほど、将来的に大きなトラブルの元になります!
✅ まとめ
- 相続で不動産を受け取ったら、なるべく早く名義変更を!
- 手続きは「法務局」で行う
- 自分の権利を守るために、名義変更はとても大切です
遺言があっても、自由に遺産を分けられるわけじゃない?
→ それは「遺留分(いりゅうぶん)」という制度があるからです。
遺留分ってなに?
遺留分とは、家族(配偶者や子どもなど)に最低限の相続を保証する制度です。
遺言によって「一切相続させない」と書かれていても、法律で守られている分(遺留分)はもらう権利がある、という考え方です。
ポイント①:遺留分は“権利”。主張すれば取り戻せる
たとえば…
📝 遺言書に「長男には1円も相続させない」と書かれていたとしても、長男が「いいですよ」と納得すれば、それでOKです。
でも、もし長男が「それは納得できない! 遺留分はもらいます」と主張したら…
👉 長男には法律で保障された最低限の遺産(遺留分)が認められます。
つまり、遺留分は“権利”なので、もらうかどうかは本人次第です。
ポイント②:遺留分の金額は?
→ 基本は「法定相続分(法律で決まっている割合)の半分」です。
たとえば…
👨👩👧 相続人が「配偶者と子ども」の場合:
- 配偶者の法定相続分:1/2 → 遺留分は1/4
- 子どもの法定相続分:1/2 → これを子どもの人数で割って、その半分が遺留分
注意:兄弟姉妹には遺留分がありません!
たとえば、「子どもがいない夫婦」のケースで、
「全財産を妻に相続させる」と遺言に書いてあって、兄弟姉妹から「私たちも相続人だから少しちょうだい」と言われても…
👉 兄弟姉妹には遺留分の権利がないので、渡す必要はありません。
理由は、ふつうは兄弟姉妹と一緒に生活していないため、生活保障の対象ではないとされているからです。
✅ まとめ
- 遺留分は、遺言があっても無視できない「最低限の取り分」
- もらうかどうかは本人次第(主張すれば受け取れる)
- 兄弟姉妹には遺留分なし
民法と相続税法では「相続人の数え方」がちがいます
相続が発生したとき、「誰が相続人になるのか」は民法(みんぽう)で決まっています。
でも、相続税の計算をするときには、相続税法のルールが使われるので、相続人の人数の考え方が違ってくることがあります。
民法での相続人の考え方
民法では、次のように決められています。
- 相続放棄(そうぞくほうき)をした人は、最初から相続人ではなかったとみなされます。
- 養子縁組をした子ども(養子)は、すべて相続人になります。
つまり、相続放棄した人はカウントされず、養子は全員カウントされます。
相続税法での相続人の考え方
一方で、相続税を計算するときの「基礎控除額」などでは、以下のようなルールになります。
- 相続放棄した人も、相続人の人数に含めて計算します。
- 養子は、実の子どもがいる場合は1人まで、いない場合は2人までしか相続人としてカウントされません。
(※税金の計算上の人数の制限です)
例外になる養子もいます
以下のようなケースは、上記の制限の対象外で、人数の制限なく相続人としてカウントされます。
- 特別養子縁組によって養子になった人
- 被相続人(亡くなった人)の配偶者の実の子どもで、被相続人の養子になった人(いわゆる「連れ子養子」など)
遺言で財産を渡すことを「遺贈(いぞう)」といいます
遺言書によって、お金や土地などの財産を無償で誰かに渡すことを「遺贈(いぞう)」といいます。
遺贈には2つの種類があります
① 包括遺贈(ほうかついぞう)
👉 遺産全体や一部を「割合(何分の1)」で渡す方法です。
【例】「全財産の3分の2を妻に、残りを長男に」
② 特定遺贈(とくていいぞう)
👉 特定の財産を「ピンポイントで指定」して渡す方法です。
【例】「自宅の土地は妻に、預金は長男に」
包括遺贈のメリットとデメリット
メリット
💡 財産の変動に柔軟に対応できる!
たとえば…
遺言書を書いたときは不動産が多く、預金が少なかった。
でも、その後に財産の中身が変わっても、「割合で分ける」遺言なので対応しやすいのがポイントです。
デメリット
💡 具体的な「誰が何をもらうか」は、あとで決めなければならない…
遺言には「割合」しか書かれていないため、実際の相続の場面では、「この不動産は誰が? 預金はどうする?」というように、相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)が必要になります。
とくに、相続財産の中に不動産が含まれている場合――
【例】
「全財産の3分の2を妻に、残りを長男に」という遺言があるとき、妻も長男も「預金だけをもらいたい」と希望したら…
👉 「じゃあ、誰が不動産をもらうのか?」で揉める可能性が出てきます。
相続税は「0円」でも申告が必要なことがあります!
相続が発生したとき、💡相続財産の金額がある一定額以下であれば、相続税の申告は不要です。
この一定額のことを「基礎控除額(きそこうじょがく)」といいます。
申告が不要な場合
相続した財産の合計が「基礎控除額以下」の場合は、相続税の申告をする必要はありません。
相続税が0円でも申告が必要なケースがあります!
たとえば、次のような税金が安くなる制度(特例)を使いたい場合です。
✅ 小規模宅地等の特例(自宅の土地の評価を下げられる)
✅ 配偶者の税額軽減(配偶者が相続すると税金が安くなる)
これらの特例を使いたいときは、💡相続税がかからなくても、必ず税務署に申告書を提出する必要があります。
相続が始まってからの主なスケジュール
相続には、いつまでに何をしなければいけないかという期限がいくつかあります。
その中でも、特に大切なタイミングが次の3つです。
✅ 相続の主な期限
【3カ月以内】相続をするか放棄するかを決める期限
- 相続を「受ける/放棄する/限定的に受ける(限定承認)」のいずれかを選ぶ期限です。
- 決めないと、自動的に「すべて相続する」ことになります。
【4カ月以内】被相続人の所得税の申告(準確定申告)
亡くなった方(被相続人)が生きていた年の所得について、相続人が代わりに確定申告をします。
【10カ月以内】相続税の申告と納税
- 遺産の金額が基礎控除額を超えていれば、相続税の申告・納税が必要になります。
- 特例(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例)を使う場合も申告が必要です。
その他に気をつけたいポイント
【1年以内】遺留分侵害請求の期限
たとえば遺言で「全財産を他人に渡す」と書かれていた場合でも、法定相続人は「最低限の取り分(遺留分)」を請求する権利があります。
この請求は、「侵害を知ってから1年以内」に行う必要があります。
【3年以内】相続税の税務調査の期間
相続税の申告後、税務署が内容に問題がないか調べる(税務調査)のは、一般的に申告の翌年から3年以内といわれています。
相続税は「申告期限=納付期限」です!ご注意を!
相続税には、申告書の提出期限と税金の納付期限がありますが、
この2つはなんと…
👉同じ日(=相続が始まってから10カ月以内)です!
納税が遅れると「延滞税」がかかることも
もし、税金を申告書の提出日までに支払えないと、💥 延滞税(えんたいぜい)というペナルティの税金がかかる可能性があります。
そのためには――
💡 申告までに納税の準備もすませておく必要があるということです。
特例を使う場合も「期限」が大切!
たとえば、相続税を軽くする制度のひとつに✅ 「小規模宅地等の特例」というものがあります。
この特例では、亡くなった方の自宅の土地について、相続税の評価額を大きく下げることができるのですが――
小規模宅地等の特例が使える条件(例)
- 相続人が、亡くなった方と生前から同居していたこと
- 相続した自宅(家や土地)を、申告期限までに売らずに持ち続けていること
つまり、
💡 相続から10カ月以内にその土地を売ってしまうと、特例が使えなくなる可能性があるということです。
相続税の申告が遅れたり、間違えたりするとどうなるの?
相続税には、期限(=相続開始から10カ月以内)があります。
この期限を守らなかったり、金額を間違えて申告したりすると、追加で税金(ペナルティ)がかかることがあります。
どんなペナルティがあるの?
大きく分けて、2つの種類のペナルティがあります:
① 申告ミスや遅れに対するペナルティ(=加算税)
- 無申告加算税:期限までに申告を出さなかったとき
- 過少申告加算税:税金の金額を少なく申告してしまったとき
- 重加算税:わざと財産を隠したり、嘘の申告をしたときなど
② 納税が遅れたときにかかるペナルティ(=延滞税)
申告書は出していても、💡期限までにお金を払っていないと「延滞税(えんたいぜい)」が発生します。