税務調査で「修繕費」ではなく「一括償却資産」と指摘を受けた場合の法人税申告書での対応方法

修繕費として計上していた120,000円が、税務調査で指摘を受けて、一括償却資産とする場合の法人税申告書の記載方法

前提状況

  • 会社は、令和×1年3月期の決算で、「修繕費」として12万円を経費にしていました。
  • しかし税務調査で、「これは一括償却資産(3年で分割して経費にする資産)にあたります」と指摘を受けました。
  • この場合、税務署に「修正申告」をして、所得(利益)を修正する必要があります。

📘 修正方法のポイント

【1】令和×1年3月期(税務調査を受けた年度)

  • 会計では修繕費12万円を全額経費にしたが…
  • 税務上は12万円のうち1/3=4万円しか経費にできないため
  • 別表四で利益に8万円を加算(留保)
  • 別表五(一)で税務上の資産が会計より8万円多いと記録
別表四の「加算」欄

減価償却超過額80,000円(留保)

別表五(一)

減価償却超過額80,000円(当期の増減の増)、差引翌期首現在利益積立金額(残高)80,000円


このように、税務上の償却限度額を超えて損金経理された減価償却費(今回は会計上は修繕費)は、損金には算入されないため、別表四で加算「留保」処理します。
また、減価償却費を過大に計上することで、会計上の純資産は本来の税務上の純資産よりも少なく表示されます。
この差異を別表五(一)に記録して、翌期以降に繰り越していきます。
この時点で、税務上の純資産は、会計上の純資産より 80,000円大きいという状態になります。

【2】令和×2年3月期(翌期)

  • 2年目なので、1/3=4万円を経費として認められる。
  • 別表四で利益を4万円減算。4万円前年に認められなかった分の調整(留保)。
  • 別表五(一)で資産差額が4万円に減る。4万円残りの差額として引き継ぐ。
別表四の「減算」欄

減価償却超過額当期認容額40,000円(留保)

別表五(一)

減価償却超過額40,000円(当期の増減の減)、差引翌期首現在利益積立金額(残高)40,000円


前期から繰り越された減価償却超過額(80,000円)について、当期の減価償却不足額が40,000円発生しているため、これを損金として認容します(別表四で減算処理)。
これにより、税務上・会計上の純資産の差が一部解消され、差額は 40,000円 に縮小されます。

【3】令和×3年3月期(翌々期)

  • 最後の1/3=4万円を経費として認められる。
  • 別表四で利益を4万円減算。4万円最後の調整(留保)。
  • 別表五(一)で資産差額が0円になり、調整完了。会計と税務の帳簿が一致。
別表四の「減算」欄

減価償却超過額当期認容額40,000円(留保)

別表五(一)

減価償却超過額40,000円(当期の増減の減)、差引翌期首現在利益積立金額(残高)0円


残りの減価償却不足額 40,000円を損金算入することで、別表四・別表五(一)での調整がすべて完了します。
最終的に、税務と会計の純資産額が一致し、帳簿上の差異が解消されます。

✏️ やさしくまとめると…

  • 修繕費だと思っていたものが、3年に分けて経費にする資産だと税務署に言われた。
  • その結果、1年で全部を経費にすることはできず、3年間にわけて税務上の利益を調整することになります。
  • 毎年の法人税申告書で、「利益に足して」「次の年で引いて」を繰り返して、最終的に帳簿が正しい状態に整います。