所得税のまとめ!
所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。全ての所得から所得控除を差し引いた課税所得に対して税率をかけて税額を算出します。
1、所得金額
所得は、性質によって以下の10種類に分かれます。それぞれの所得について、個別に所得金額を計算し、必要経費の範囲などが定められています。
(1)利子所得
利子所得とは、国債や社債などの利子、預貯金の利子、公社債投資信託の収益の分配などの所得をいいます。
利子所得に対する課税は、原則として20.315%の税率による源泉徴収のみで課税関係が終了する源泉分離課税とされています。
(2)配当所得
配当所得とは、企業からの剰余金の配当、利益の配当、株式等投資信託の収益の分配などの所得をいいます。
まだ受け取っていない配当でも、株主総会などの決議があったものについては、今年度の配当所得の対象となります。
(3)不動産所得
不動産所得とは、家賃、地代、更新料、名義書換料などによる所得です。
家賃等を実際に受け取っていない場合でも、受取期日が今年度であるものは、今年度の収入になります。
塀や壁等の建物の一部を広告用として貸す場合に受け取る使用料も不動産所得になります。
不動産所得の赤字金額については、原則として、他の所得の黒字の金額から控除(損益通算)することができます。
(4)事業所得
事業所得とは、自営業による商売等の事業から生ずる所得です。
実際に金銭を受け取っていない場合でも、本年中に売上げたものは、今年度の所得になります。
事業用預金の利子は、事業所得ではなく、利子所得となります。
事業用車両の売却は譲渡所得となります。
(5)給与所得
給与所得とは、給料、賞与などの所得をいいます。大部分の方は、年末調整によって課税関係が終了します。
(6)退職所得
退職所得とは、退職を起因として支払われる退職金や一時金などの所得をいいます。大部分の方は、源泉徴収により課税関係が終了します。
(7)山林所得
山林所得とは、山林を伐採して譲渡したことなどにより生ずる所得をいいます。
(8)譲渡所得
譲渡所得とは、土地、建物、車両、機械、有価証券などの資産の譲渡による所得をいいます。
機械などの資産の譲渡から生ずる所得については総合課税とされ、土地や建物、有価証券の譲渡から生ずる所得については申告分離課税とされています。
ただし、特定口座に保管している上場株式で源泉徴収を選択している場合には、その上場株式の譲渡による所得については、申告不要を選択することができます。
使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満の少額な減価償却資産または一括償却資産の売却による収入は、原則として事業所得か雑取得となります。
家財道具など生活に通常必要なものを譲渡した場合は、非課税となります。
(9)一時所得
一時所得とは、賞金、懸賞当選金、競馬・競輪の払戻金、生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金、賃借人の立退料などの所得をいいます。
生命保険や損害保険の保険料を他人が支払って、一時金や満期返戻金を受け取った場合、所得税は課税されず、贈与税か相続税が課税されます。
法人から贈与を受けた金品も一時所得となります。
一時所得の赤字は、他の所得の黒字から控除することはできません。
(10)雑所得
雑所得とは、国民年金、厚生年金、共済年金などの公的年金等、原稿料、講演料、印税、個人年金保険等などで他の所得に当てはまらない所得をいいます。
2、課税所得金額
課税所得金額は、1月1日から12月31日までの1年間の全ての所得から所得控除額を差し引いて計算します。
所得控除は以下の種類があり、扶養親族等の個人的な事情を考慮して税負担を調整します。
控除の種類 | 内容 | 計算方法 |
---|---|---|
雑損控除 | その年に災害・盗難等により住宅家財等に損害を受けた場合 | 損失額ー総所得金額×10% |
医療費控除 | その年に医療費を支払った場合 | (支払医療費ー保険金等)-10万円 |
社会保険料控除 | その年に健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料等を支払った場合 | 支払保険料の全額 |
小規模企業共済等掛金控除 | その年に掛金を支払った場合 | 支払掛金の全額 |
生命保険料控除 | その年に生命保険料、介護保険料または個人年金保険料を支払った場合 | 最高12万円 |
寄付金控除 | その年に国等に寄付金を支払った場合 | 寄付金の金額ー2千円 |
扶養控除 | 年齢が16歳以上の扶養親族がいる場合 | 38万円(19歳から22歳の親族は63万円) |
基礎控除 | 納税者全員が対象 | 38万円 |
その他、地震保険料控除、配偶者控除、配偶者特別控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除があります。
3、所得税率
課税総所得金額、課税退職所得金額、課税山林所得金額の所得税の税率は、所得が多くなるに従って税率が高くなり、支払能力に応じて負担する仕組みとなっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
※平成27年より課税所得4,000万円超について45%の税率が設けられました。
<比例税率>
課税短期譲渡所得金額 30%
課税長期譲渡所得金額 15%
株式等に係る課税譲渡所等の金額 15%
4、所得税額から差し引かれる金額
所得税額から差し引かれる金額の主なものは以下の通りです。
(1)配当控除
配当所得がある場合(申告分離課税を選択したものを除く)
(2)住宅借入金等特別控除
居住者が一定の要件を満たす住宅の新築、既存住宅の取得、現在居住している建物の増改築等をして、これらの建物を自己の居住の用に供し、引き続き居住の用に供している場合において、住宅借入金等の金額を有するときは、その借入金等の年末残高に控除率を乗じて計算した金額を所得税額から控除することができます。
なお、住宅ローン等の年末残高は、新築等の額を限度とします。
5、確定申告
その年の翌年2月16日から3月15日までの間に申告を行います。
なお、還付を受ける方は、1月から申告書を提出することが可能です。
<確定申告が必要な方>
(1)給与所得
➀給与が2,000万円を超える方
➁給与を1か所から受けていて、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える方
➂給与を2か所以上から受けていて、年末調整をされなかった給与の額と各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える方
➃同族会社の役員や親族等で、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械等の使用料等の支払いを受けた方
➄その他一定の方
(2)公的年金等に係る雑所得のみ
公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引いて、残額がある方
※公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であるときには、所得税等の確定申告は必要ありません。なお、確定申告の必要がない場合であっても、還付を受けるためには、確定申告書を提出する必要があります。
<確定申告により税金が戻る方>
(1)総合課税の配当所得や原稿料などで年間の所得が一定額以下である方
(2)給与所得
➀雑損控除、医療費控除、寄付金控除、住宅借入金等特別控除などの適用を受ける方
➁年の中途で退職し、そのまま就職をしなかった場合で、年末調整を受けていない方
(3)公的年金等に係る雑所得のみ
雑損控除、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除等の適用を受けられる方
(4)退職所得
➀退職所得を除く各種所得合計額から所得控除を差し引くと赤字になる方
➁「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったため、所得税等の源泉徴収税額が正規税額を超えている方
<確定申告により損失の繰越しができる方>
(1)今年度の所得金額が赤字の方
事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の赤字がある方で、その赤字を他の黒字の所得から控除(損益通算)しきれない方
(2)繰越損失額を今年度の所得金額から控除しきれない方
昨年度までに控除しきれなかった繰越損失額がある方で、その繰越損失額を今年度の所得金額から控除しきれない方