
医療費の範囲
よく「これも医療費になりますか?」というご質問をいただきます。
医療費控除は、家計にとって、とても助かる制度ですが、少しルールが複雑ですね。
そこで今回は、「どこまでが医療費控除の対象になるのか」という疑問について、皆さんに分かりやすく解説していきます。
医療費控除を考える上で一番大切なポイントは、その支払いが「病気やケガの治療のために直接必要なものか?」ということです。
「医療」という名前がついていても、例えば美容目的や、病気の「予防」、健康を維持するためのものは、残念ながら対象にはなりません。
また、あまりに高額で贅沢とみなされるようなものも対象外となります。
これを頭の片隅に置きながら、具体的なケースを見ていきましょう。
これはOK? それともNG? 具体例でチェック!
お医者さんや歯医者さんでの治療費
これは基本中の基本ですね。診察代や治療費は、もちろん医療費控除の対象です。
ちょっと待って!対象外になるもの
- 健康診断の費用:これは「治療」ではなく、ご自身の健康状態をチェックするための「検査」なので対象外です。
ただし、健康診断の結果、重大な病気が見つかり、引き続き治療を受けた場合は、その健康診断の費用も医療費控除の対象に含めることができます。 - 診断書の作成費用:これも治療そのものではないので対象外です。
- 先生への謝礼:感謝の気持ちとしてお渡しするお金や品物は、治療費とは別物なので対象にはなりません。
薬代
ドラッグストアなどで購入したお薬も、治療や療養に必要なものであれば対象になります。
ポイント
- 風邪薬や胃薬、湿布薬など:治療目的とはっきりしているものはOKです。
- ビタミン剤や栄養ドリンクなど:健康維持や疲労回復が目的のものは、治療とはいえないため対象外です。
- レシートは必ず保管!:レシートには「お薬代」と書かれているだけでなく、何のお薬を買ったか分かるように、ご自身で品名をメモしておきましょう。
そうしないと、化粧品などの日用品と区別がつかず、認めてもらえないことがあります。
病院に行くための交通費
電車やバス、急な体調不良で使ったタクシー代など、通院のために必要な交通費も医療費控除の対象です。
ちょっと待って!対象外になるもの
- 自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代:これは、プライベートな利用との区別が難しいため、残念ながら対象にはなりません。
あん摩、マッサージ、はり、きゅう など
「体の調子を整える」といった目的ではなく、痛みやしびれの治療など、お医者さんの指示に基づいて受ける施術であれば、医療費控除の対象になります。
ポイント
- 単なる肩こり解消やリラクゼーション目的のマッサージは対象外です。
- 「腰痛の治療のため」といったように、はっきりとした治療目的があることが重要です。
看護や付き添いの費用
入院中の付き添いを、家政婦紹介所などに依頼した場合の料金は、医療費控除の対象となります。
これは、保健師や看護師といった資格者に限りません。
ちょっと待って!対象外になるもの
- 家族や親戚への付き添い料:ご家族に「お礼」としてお金を渡しても、それは専門家への対価とはみなされず、対象にはなりません。
「家族の助け合い」の範囲と考えられるためです。 - 正規の料金以外に渡すお礼:これも謝礼と同じで、感謝の気持ちとみなされ、医療費には含まれません。
出産の費用
助産師さんによる分娩の介助費用も、もちろん医療費控除の対象です。
その他、治療のために直接必要なもの
- 入院中の食事代や部屋代
- 松葉づえ、補聴器、義足などの購入費用
- 身体障害者福祉法などに基づいて、地方自治体に支払う費用の一部
なども対象となる場合があります。
まとめ
何より、医療費に関わる領収書やレシートは、1年間きちんとまとめて保管しておくことが大切です。
これが、しっかり控除を受けるための第一歩です。