円安って「たまたま」じゃないの?日本の魅力が弱っているサインかもしれない話

円安と日本の未来

今回の話のいちばん大事なポイントを、一言で言うとこうです。
円安は”偶然の波”というより、日本が成長できず、魅力が薄れているサインでは?
改革を先送りすると、この流れは止まらないのでは?

30秒でわかる要約

何が起きた?

日銀が金利を上げても円安が落ち着きにくく、「日本からお金が外に向かう動き」が目立つ、という指摘が出ています。

なぜ大事?

円の値段は「その国に期待が集まっているか」の温度計みたいなものだからです。

生活にどう関係する?

食料・エネルギーなど輸入品が上がりやすい一方、観光や海外で稼ぐ企業には追い風もあります。

何が起きた?(ニュースの中身)

まず事実を、ポイント3つに絞ります。

日銀が金利を上げても、円安ムードが変わらない

日銀(日本銀行)は、日本のお金まわりを調整する役所のような存在です。
金利とは「お金を借りるときに上乗せで払う料金」のこと。
ふつう金利を上げると、その国の通貨は買われやすくなります。
でも今回は、0.75%に上げても円安の流れがなかなか変わりません。

円安の根っこには、日本経済の”構造的な弱さ”があるという見方

「過去10年のG7(主要7カ国)比較で、日本のGDPの伸びが低い」という話があります。
GDPとは「国全体のもうけの合計」みたいなもの。
これが伸びにくいと、「日本は成長が弱そうだな」と見られやすいのです。

海外の投資家だけでなく、日本企業や日本人も”海外”にお金を向けている

企業は海外への投資を増やし、個人も新NISA(税金がかかりにくい投資の仕組み)で海外株の投資信託が人気です。
つまり「日本のお金が、日本の外に出ていく流れ」が静かに続いている、ということです。

「お金が、成長しそうな場所に動く」という、ごく自然な行動のことです。

なぜ起きた?(背景)

円の値段がどう決まるか、前提ゼロで説明します。
円の値段は、ざっくり言うと「日本にお金を置きたい人が多いか少ないか」で決まりやすいです。

・日本に期待が集まると、円が買われやすい(円高になりやすい)
・逆に期待が薄れると、円が売られやすい(円安になりやすい)

【たとえ】部活の”強いチーム”と”伸び悩むチーム”

強いチームには「入ると上手くなりそう」と思われるので、新入部員が集まりやすいですよね。
一方、伸び悩むチームは「入っても成長できなさそう」と思われて、人が減りやすい。

お金も似ています。
「ここに置くと増えそうだな」と思われる国や会社に、お金は集まりやすいのです。

・日本が大改革を先送りしていて、成長の力が弱いままだと見られると、「円を持つ理由」が弱くなる
・さらに日本の企業や個人までが海外にお金を動かすと、円を売って外貨を買う動きが増える
・その結果、円安の圧力が続きやすくなる

こういうロジックです。
また、政策運営への警告もあります。
たとえば、物価上昇を放置したり、借金への影響を気にして金利を上げるタイミングを逃したりすると、「この国の通貨は大丈夫かな?」と思われやすくなる、ということです。

生活への影響(良い面/注意点)

円安には、良い面と注意点が”同時に”やってきます。
片方だけ見ると判断を間違えやすいので、両方を押さえておきましょう。

【良い面(追い風になる部分)】

観光(インバウンド)にプラス

海外から見ると日本が「安く」感じられるので、旅行者が増えやすい。
観光地や飲食店、宿泊業にはプラスです。

海外で稼いでいる企業の利益が増えやすい

海外で売上を上げている企業は、外貨を円に戻すときに、円安だと「見た目の利益」が大きくなりやすい。
ただし、これは企業によって差があります。

【注意点(じわっと効いてくる部分)】

輸入に頼るものが値上がりしやすい

食料・エネルギー(ガソリン、電気代の一部)など、海外から買っているものは上がりやすくなります。

国内の投資や賃上げの勢いが弱まりやすくなる可能性

企業や個人が「日本よりも海外のほうがいい」と考えてお金を外に動かし続けると、国内に回るお金が減りやすくなります。
これは”起こりうる流れ”として頭に入れておきたいところです。

ここで大事なのは、「円安=ただちに日本がダメになる」ではないことです。
でも、もし「日本から外へ」という動きが静かに積み上がると、円安が「一時的な波」ではなく「クセ」になりやすい。
だから今のうちに意識しておきましょう、という話です。

事例(生活の例を2つ)

ここからは日常の例に置き換えて、もう少しイメージしやすくします。

【例1】家計でいうと「毎月の固定費がじわっと増える」感じ

円安で影響が出やすいのは、ガソリン、電気代の一部、食料の一部など「海外から買っているもの」です。
これって家計でいうと、スマホ代や家賃みたいに「放っておいても毎月出ていくお金」がじわっと増える感覚です。
毎月ほぼ必ず出ていくお金のことを「固定費」と呼びますが、ここが少しずつ上がると、1回1回は小さくても、積み重なるとけっこう効いてきます。

【例2】ゲームの課金でいうと「みんなが別サーバーに移住する」感じ

もう1つ、ゲームでたとえてみます。
日本を「サーバーA」、海外を「サーバーB」としましょう。

・サーバーBのほうがイベントが多くて、アイテムも増えやすい(=成長しやすい)と思われると、プレイヤー(=お金)がBに移ります
・人が移ると、サーバーAはさらに盛り上がりにくくなります

お金が静かに海外へ向かう流れは、これに近いです。
企業も個人も、より増えそうな場所へ動く。
それが積み重なると円安圧力になる、という見立てです。

【補足】「日本は資産があるから大丈夫」という見方への注意

「日本は海外でちゃんと稼いでいるし、海外に持っている資産も多い。だから円が売られても大丈夫」―こう考える人もいます。
でも、この考えに頼りすぎるのは危ういかもしれません。
海外にある資産や利益が、必ず日本に戻ってきて円を支えるわけではないからです。

まとめ(大事なポイント3つ)

・円安は金利だけで決まらない。「成長への期待」や「お金の流れ」も大きく影響する
・海外投資が増えるのは自然な行動。ただし、積み上がると円安が「クセ」になりやすい
・改革の先送りが続くと、「日本にお金を置きたい理由」を弱めやすい(これが今回の”核”)