医療費控除における保険金等の取扱い ― 収支対応の仕組みとは

医療費控除の保険金等は収支対応

年末にケガや病気で病院にかかった方から、こんなご質問をよくいただきます。
「12月に医療費をたくさん払ったけど、保険金がもらえるのは年が明けてからになりそう。今年の医療費控除はどう計算したらいいの?」

良い質問ですね。
年末年始をまたぐと、お金の出入りが複雑で混乱しますよね。
ご安心ください。スッキリ解決していきましょう!

結論:保険金の入金が翌年でも、今年の医療費から引きます!

まず結論から。たとえ保険金の受け取りが翌年になっても、その保険金は「今年支払った医療費」に対するものですよね。
税金の計算では、このように「原因(今年の医療費支払い)」と「結果(保険金の給付)」をセットで考えるのが基本ルールです。

お店で買った商品の代金を、翌月にクレジットカードで支払うようなイメージに似ています。
買ったのは今月なので、今月の家計簿につけるはずです。
それと同じように、今年の医療費が原因でもらえる保険金は、今年の医療費から差し引いて計算するのです。

困った!確定申告までに保険金の額が決まらない…

「ルールは分かったけど、確定申告の期限までに保険金の正確な金額が分からないときはどうすれば?」
ごもっともです。
特に、納税のために確定申告が必要な方は、期限を遅らせるわけにいきません。

そんな時は、「見込み額」で申告しましょう。

保険会社に問い合わせるなどして、「これくらいはもらえるだろう」という金額を見積もり、その額を使ってひとまず医療費控除の計算をして申告を済ませてしまって大丈夫です。

「見込み額」で申告したら、後で「答え合わせ」を忘れずに

後日、保険金の正式な金額が決まったら、申告した「見込み額」との答え合わせ(精算)が必要です。

  • 【ケース1】見込み額より、実際の保険金が少なかった場合
    (例:見込み10万円で申告 → 実際は8万円だった)
    この場合、保険金を多く見積もりすぎたため、医療費控除額が本来より少なくなり、結果として税金を払いすぎてしまっています。
    ご安心ください。「更正の請求」という「税金を返してください!」とお願いする手続きをすれば、払いすぎた分はちゃんと戻ってきます。
  • 【ケース2】見込み額より、実際の保険金が多かった場合
    (例:見込み10万円で申告 → 実際は12万円だった)
    この場合は、逆に医療費控除額が本来より多くなり、納めた税金が足りなかったことになります。
    速やかに「修正申告」という手続きをして、不足分の税金を納めましょう。

ちなみに、サラリーマンの方などで、税金が戻ってくる「還付申告」をするだけなら、慌てる必要はありません。
保険金の額が確定してから、ゆっくりご自身のタイミングで申告することもできます。

【知って得するワンポイント】

Aという手術で医療費が10万円かかり、保険金が12万円おりたとします。
この場合、かかった費用を上回った2万円を、全く関係のないBという治療費5万円から差し引く必要はありません。

あくまで「その治療にかかった医療費」から差し引けばOKです。
他の医療費とごちゃ混ぜにしなくて大丈夫ですよ。