はじめに
「義父が亡くなり、遺産分割協議で妻が車を相続することになりました。ただ、実際に車を使うのは私(夫)なので、私の名義にしたいのですが、どのような手続きが必要ですか?」
こうしたご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げると、このケースでは「相続による名義変更」と「譲渡による名義変更」という2つの手続きが必要になります。
ただし、ご安心ください。
この2つの手続きは、運輸支局で1回の訪問で同時に行うことができます。
今回は、相続した車を配偶者名義にするための具体的な手順を、順を追ってご説明します。
なぜ2つの手続きが必要なのか
まず、なぜ手続きが2つ必要になるのかを整理しておきましょう。
車の名義変更というのは、「誰から誰へ」所有権が移るのかを登録するものです。
今回のケースでは、もともとお義父様の名義だった車を、最終的にご質問者様(夫)の名義にしたいわけですが、遺産分割協議書には「妻が車を取得する」と書かれています。
つまり、法律上の流れとしては、まず「お義父様から奥様へ」相続によって所有権が移り、その後「奥様からご質問者様へ」譲渡によって所有権が移る、という2段階になるのです。
「なんだか面倒そう…」と思われるかもしれませんが、実際の手続きとしては、必要な書類をすべて揃えて運輸支局に行けば、窓口で「相続」と「譲渡」を同時に申請できます。これは「連件申請」と呼ばれる方法で、実務上は一般的に行われているものです。
全体の流れを把握しよう
手続きの全体像は、大きく3つのステップに分かれます。
最初のステップは、警察署で車庫証明を取得することです。
車庫証明とは、「この車を停める場所がきちんと確保されていますよ」ということを証明する書類で、名義変更には欠かせません。
ご質問者様(夫)の名義・住所で申請します。
次のステップは、必要書類の準備です。
役所で取得する戸籍謄本や印鑑証明書、ご自宅で作成する譲渡証明書など、複数の書類を揃えます。
最後のステップが、運輸支局での手続きです。
車庫証明とすべての必要書類を持って、名義変更する車で運輸支局に行きます。
窓口で「相続と譲渡の同時申請をしたい」と伝えれば、担当者が案内してくれます。
ステップ1:車庫証明の取得
車庫証明の申請は、ご質問者様の駐車場所を管轄する警察署で行います。
申請から交付まで3日から7日程度かかりますので、余裕を持って準備を始めてください。
交付された車庫証明には有効期間があり、おおむね1か月以内に運輸支局で使用する必要があります。
他の書類の準備状況を見ながら、申請のタイミングを調整するとよいでしょう。
ステップ2:必要書類の準備
必要書類は、「相続に関する書類」「譲渡に関する書類」「新所有者が用意する書類」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
まず、相続に関する書類についてです。
お義父様から奥様への相続を証明するために、亡くなったお義父様の戸籍謄本類が必要です。
これは出生から死亡までの連続したものをすべて揃えます。
また、奥様やそのご兄弟姉妹など、法定相続人全員の現在の戸籍謄本と印鑑証明書も必要です。
印鑑証明書は発行から3か月以内のものをご用意ください。
そして、「車は奥様が取得する」と明記され、相続人全員の署名と実印が押印された遺産分割協議書の原本、さらに車検証の原本も必要になります。
次に、譲渡に関する書類についてです。
奥様からご質問者様への譲渡を証明するために、譲渡証明書を作成します。
譲渡人(旧所有者)の欄には奥様の住所・氏名を記入して実印を押印し、譲受人(新所有者)の欄にはご質問者様の住所・氏名を記入します。
また、奥様の印鑑証明書も必要ですが、これは相続に関する書類として既に取得したものを兼用できます。
奥様が運輸支局に同行しない場合は、奥様の実印が押印された委任状も必要です。
最後に、新所有者であるご質問者様が用意する書類です。
ステップ1で取得した車庫証明書、ご質問者様の印鑑証明書(発行から3か月以内)、そしてご本人が申請に行く場合は実印もお持ちください。
申請書、手数料納付書、自動車税申告書といった書類は、運輸支局の窓口で入手できます。
ステップ3:運輸支局での手続き
手続き当日は、ご質問者様(新所有者)の住所を管轄する運輸支局に行きます。
前述のすべての書類と実印、手数料、そして名義変更する車を持参してください。
窓口では、「故人からの相続と、その相続人である妻からの譲渡を同時に行いたい」と伝えます。
「連件申請」や「ダブル移転」という言葉を使っても通じますが、状況を説明すれば担当者が理解してくれますので、専門用語を覚える必要はありません。
なお、引っ越しなどで管轄が変わる場合は、手続きの最後に古いナンバープレートを外し、新しいプレートを取り付けて「封印」をしてもらいます。
これも運輸支局で案内に従って行えば問題ありません。
費用の目安
費用は、登録手数料が500円の2回分で1,000円、車庫証明の取得費用が約2,400円、管轄が変わる場合のナンバープレート代が約1,500円です。
合計で5,000円程度あれば足りるでしょう。
自分で手続きできる?
結論として、ご自身で手続きすることは十分可能です。
確かに、戸籍謄本の収集や書類の準備には手間がかかります。
しかし、これらは相続手続きとしてどのようなパターンでも必要になるものです。
今回のケースで追加で必要になるのは、譲渡証明書を1枚作成することくらいです。
平日に警察署と運輸支局へ行く時間を確保できるのであれば、専門家に依頼せずご自身で手続きされることをお勧めします。
まずは、車庫証明の申請準備と、相続関係の戸籍類を集めるところから始めてみてはいかがでしょうか。
書類が揃えば、あとは運輸支局に行くだけです。






