外国人従業員の「居住者・非居住者」はいつから?入国日の翌日から数える1年のルールを解説
外国人の方が日本で働き始めた場合や、海外から日本へ帰国した場合には、所得税の計算上、その人が「居住者」なのか「非居住者」なのかを確認する必要があります。
この判定で出てくるのが、
「日本国内に現在まで引き続いて1年以上、居所があるか」
という基準です。
ここで疑問になりやすいのが、
「この1年は、入国した日から数えるのでしょうか?」
という点です。
結論からいうと、所得税法上のこの「1年以上」という期間は、入国した当日ではなく、入国した日の翌日から数えます。
ただし、実務ではもう一つ大切な注意点があります。
それは、日本に来てから1年が経過しなければ居住者にならない、という意味ではないことです。
日本国内に「住所」があると判断される場合には、1年の経過を待たずに居住者となります。
さらに、日本で仕事をするために来日した方については、その仕事や予定されている滞在期間によって、日本国内に住所があるものと「推定」(はっきりと証明されていなくても、通常はそうであろうと考えて取り扱うこと)される場合があります。
そのため、居住者・非居住者の判定は、単純に「入国してから何日たったか」だけで判断しないことが大切です。
まず「居住者」とはどのような人でしょうか
所得税法では、原則として次のいずれかに該当する個人を「居住者」としています。
・日本国内に「住所」がある人
・日本国内に現在まで引き続いて1年以上「居所」がある人
これ以外の人が「非居住者」です。
ここで大切なのは、「住所」と「居所」は同じものではないという点です。
税務上の「住所」とは、簡単にいうとその人の生活の本拠、つまり生活の中心となっている場所をいいます。
一方、「居所」は、生活の本拠とまではいえないものの、実際に継続して生活している場所をいいます。
したがって、居住者かどうかを確認するときは、まず日本国内に「住所」があるかを確認します。
日本国内に住所があるのであれば、「1年以上」という期間を待つ必要はありません。
日本国内に住所がない場合に、次の判定として「日本国内に引き続き1年以上、居所があるか」が問題になります。
「1年以上」は入国日の翌日から数えます
所得税基本通達2-4では、所得税法第2条第1項第3号に定める「1年以上」の期間について、入国の日の翌日を起算日とすることが示されています。
「起算日」という言葉は少し難しいですが、「期間を数え始める日」と考えてください。
たとえば、4月1日に日本へ入国した場合には、4月1日そのものから1年を数えるのではありません。
4月2日から1年の期間を数え始めます。
これは、税法上の期間計算では原則として「最初の日を数えない」というルールがあるためです。
このルールを「初日不算入」といいます。
言葉は難しいですが、
「スタートとなる出来事があった日は数えず、その翌日から数える」
と考えると分かりやすいでしょう。
4月1日に入国した場合はどうなるのでしょうか
具体例で確認してみましょう。
ある人が4月1日に日本へ入国し、その後、日本国内に継続して居所があるとします。
この場合の期間計算は、次のようになります。
・入国日:4月1日
・1年の計算を始める日:4月2日
・1年を経過する日:翌年4月1日
・その翌日:翌年4月2日
したがって、それまで日本国内に「住所」がない場合には、原則として翌年4月1日までは非居住者となり、翌年4月2日以後は居住者となります。
所得税基本通達2-3でも、入国後1年を経過する日まで国内に住所を有しない場合には、その日までは非居住者とし、その翌日以後は居住者とする取扱いが示されています。
なお、「1年」を単純に365日と考えないことも大切です。
税法上、年や月で定められた期間は、原則として暦に従って計算します。
そのため、「365日たったから居住者になる」という考え方ではなく、入国日の翌日を起算日として暦に従って1年を計算する、と理解しておく方が正確です。
ただし、「日本に来て1年間は非居住者」という意味ではありません
ここが実務上、最も間違いやすいところです。
「国内に引き続き1年以上居所がある人が居住者になる」
と聞くと、
「外国人は日本に来てから最初の1年間は非居住者なのですね」
と思われるかもしれません。
しかし、これは正しくありません。
なぜなら、所得税法上の居住者は、
「国内に住所がある人」
または、
「国内に引き続き1年以上居所がある人」
だからです。
つまり、日本国内に住所があると判断されれば、入国後1年が経過していなくても居住者になります。
実務では、この「住所」があるかどうかを先に確認することが非常に重要です。
日本で1年以上働く予定の場合は「住所がある」と推定されることがあります
さらに重要なのが、「住所の推定」というルールです。
所得税法施行令では、日本国内に住むことになった人が、日本国内で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有している場合には、日本国内に住所があるものと推定するとされています。
また、所得税基本通達3-3では、仕事や事業のために日本に住むことになった人について、契約などによって日本での滞在期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き、この住所の推定規定に該当するものとして取り扱うことが示されています。
この点は、外国人従業員を受け入れる会社にとって特に重要です。
たとえば、外国人従業員が4月1日に来日し、日本法人で2年間勤務する予定になっているとします。
この場合、
「まだ日本に来て1年たっていないので、最初の1年間は非居住者」
と単純に判断するのは適切ではありません。
2年間、日本で勤務することが予定されているのであれば、日本で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有しているとして、来日当初から国内に住所があるものと推定される可能性があります。
その場合には、実際に1年が経過するのを待つのではなく、当初から居住者として取り扱うことになります。
したがって、「入国日の翌日から1年を数える」というルールは、すべての外国人について「1年間は非居住者になる」というルールではありません。
この期間計算が直接問題になるのは、基本的には、その間に日本国内に住所を有すると認められない場合です。
国税庁にも具体的な事例があります
国税庁は、外国人技能実習生について具体的な事例を示しています。
その事例では、8月20日に入国した人について、入国日の翌日である8月21日から期間を数えています。
そして、翌年8月20日が「1年を経過する日」となり、翌年8月21日以後も国内に居住する場合に「1年以上」という要件を満たすという考え方が示されています。
反対に、その人が翌年8月20日までに帰国する予定であり、国内に住所があるという別の事実も認められないケースでは、一般的には非居住者と判定されると説明されています。
つまり、
「ちょうど1年後の同じ日まで日本にいる」
というケースと、
「その翌日以後も日本にいる」
というケースでは、期間計算上の結果が変わることがあります。
入国日と出国予定日は、正確に確認しておく必要があります。
税務上の「住所」は住民票だけでは決まりません
ここも誤解されやすいところです。
所得税法上の「住所」は、住民票の住所と必ず同じになるとは限りません。
税務上の住所は、その人の生活の本拠がどこにあるかを、客観的な事実によって判断するものだからです。
したがって、
「住民票を日本に置いたから、必ず所得税法上も日本に住所がある」
あるいは反対に、
「住民票が日本にないから、所得税法上も日本に住所はない」
と機械的に判断するのは適切ではありません。
実際には、その人の住居、仕事、家族の生活状況などを含めて確認する必要があります。
たとえば、日本で継続して勤務し、日本に住居を確保して生活している場合には、そうした実際の生活状況を踏まえて住所の有無を判断します。
大切なのは、住民票という一つの形式だけではなく、実際の生活の中心がどこにあるのかを見ることです。
なお、住民票そのものは、所得税とは別の税金である住民税の判定にも関わってきます。
住民税は、原則としてその年の1月1日時点で日本国内に住所があるかどうかによって課税の有無が決まる仕組みであり、所得税の居住者・非居住者の判定とは確認するタイミングや考え方が少し異なります。
両方の税金に関わる話であることも、あわせて頭に入れておくと安心です。
入国後の途中から住所を有することになる場合もあります
入国時点では日本国内に住所がない場合でも、その後の生活状況の変化によって、途中から日本国内に住所を有することになるケースがあります。
所得税基本通達2-3では、入国直後には国内に住所がなかったものの、入国後1年を経過するまでに住所を有することとなった場合には、
「住所を有することとなった日の前日まで」は非居住者、
「住所を有することとなった日以後」は居住者
として取り扱うことが示されています。
たとえば、日本での勤務内容や住居、家族の居住状況などが変わり、日本が実質的な生活の中心となった場合には、その途中から国内に住所があると判断される可能性があります。
ただし、
「家を借りた日」
「家族が来日した日」
など、一つの出来事だけで必ず住所が決まるわけではありません。
実際の生活状況を客観的に確認したうえで判断する必要があります。
一時的に海外へ出たら期間はリセットされるのでしょうか
日本で生活している途中に海外出張や一時帰国をした場合、
「いったん海外へ出たので、日本での居住期間はゼロから数え直しになる」
とは限りません。
所得税基本通達では、国外へ出ている期間についても、その出国の目的が明らかに一時的であると認められる場合には、国外にいた期間も引き続き国内に居所を有していたものとして取り扱う場合があることが示されています。
たとえば、日本で生活を続けながら、仕事のために数週間だけ海外へ出張したという場合です。
このような場合には、出国したという事実だけで、それまでの居住期間が当然に途切れるわけではありません。
一方で、日本の住居を引き払い、日本での勤務も終了し、生活の中心を海外へ移したうえで、後日あらためて来日したという場合には事情が異なります。
そのため、単純にパスポートの出入国記録だけを見るのではなく、出国の目的や生活の実態まで確認することが大切です。
会社が外国人従業員を受け入れるときの注意点
居住者・非居住者の区分は、単なる呼び方の違いではありません。
所得税の課税範囲や、給与を支払う際の源泉徴収(お金を支払う会社側が、あらかじめ所得税分を差し引いて国に納める仕組み)の取扱いなどに影響するためです。
居住者と非居住者では源泉徴収の税率や計算方法が異なるため、判定を誤ると、追加で納税が必要になったり、逆に従業員の手取りに影響が出たりすることがあります。
会社にとっては資金繰りにも関わる部分ですので、雇用契約を結ぶ段階で確認しておくと安心です。
そのため、外国人役員や外国人従業員を受け入れる会社では、給与計算を始める前に次のような事項を確認しておくと安心です。
・実際の入国日
・日本での勤務開始日
・雇用契約や赴任予定の期間
・在留予定期間
・日本国内の住居の状況
・海外の住居を維持しているか
・家族がどこで生活しているか
・日本への赴任が一時的なものか、長期的なものか
確認のための資料としては、状況に応じて、パスポートなどの入出国日が確認できる資料、雇用契約書、赴任辞令、賃貸借契約書などを確認しておくことが考えられます。
これらが一律に「居住者判定のための法定保存書類」という意味ではありません。
あくまで、後から居住者・非居住者の判定根拠を説明できるよう、実際の状況が確認できる資料を整理しておくという意味です。
こうした資料をきちんと残しておくことは、税務調査の際に判定の根拠を説明する場面でも役立ちます。
よくある勘違い
この制度では、特に次のような誤解に注意が必要です。
まず、
「外国人は来日後1年間、全員が非居住者になる」
という考え方です。
日本国内に住所がある場合には、1年を待たず居住者になります。
また、日本での仕事の内容や予定期間によって、国内に住所があるものと推定される場合もあります。
次に、
「入国日を1日目として数えればよい」
という考え方です。
所得税基本通達2-4では、1年以上の期間は入国日の翌日から数えることとされています。
また、
「1年とは365日のこと」
とも限りません。
年で定められた期間は、暦に従って計算することが基本です。
さらに、
「住民票が日本にあるかどうかだけで決まる」
という考え方にも注意が必要です。
所得税法上の住所は、生活の本拠がどこにあるかを客観的な事実によって判断します。
そして、
「短期間でも海外へ出れば、居住期間がリセットされる」
とも限りません。
一時的な海外出張などであれば、引き続き国内に居所があるものとして取り扱われる場合があります。
居住者判定は「住所→1年以上の居所」の順に考えると分かりやすいです
実務では、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
まず、日本国内に住所があるかを確認します。
住所がある場合には、その時点で居住者となります。
また、日本で継続して1年以上居住することを通常必要とする仕事に就く場合など、住所の推定規定に該当しないかも確認します。
そのうえで、日本国内に住所がない場合には、日本国内に引き続き1年以上居所があるかを確認します。
この「1年以上」を計算するときに、所得税基本通達2-4のルールが登場します。
つまり、
入国した日は数えず、入国日の翌日から1年を数える
ということです。
たとえば4月1日に入国したのであれば、4月2日を起算日として期間を計算します。
それまで国内に住所を有しないケースでは、翌年4月1日に1年を経過し、翌年4月2日以後は居住者となります。
まとめ
所得税法上の「現在まで引き続いて1年以上居所を有する」という期間については、入国日の翌日から計算します。
これは税法上の期間計算における「初日不算入」の考え方によるものです。
ただし、このルールだけを見て、
「日本へ来て1年たつまでは非居住者」
と判断してはいけません。
居住者・非居住者の判定では、まず日本国内に「住所」があるかを確認する必要があります。
さらに、日本で仕事をするために来日した人については、予定されている勤務・滞在期間などによって、日本国内に住所があるものと推定される場合があります。
したがって、実務上は、
①国内に住所があるか
②住所の推定規定に該当しないか
③住所がなければ、国内に引き続き1年以上居所があるか
④その1年は入国日の翌日から正しく計算されているか
という順番で確認すると整理しやすくなります。
特に、外国人役員や外国人従業員への給与を支払う場合には、居住者・非居住者の区分によって源泉所得税の取扱いが変わることがあります。
入国日だけで判断せず、雇用契約、予定されている滞在期間、住居、家族の生活状況などを含めて確認しておくことが大切です。
また、日本と外国の双方で居住者に該当する可能性がある場合などには、国内法だけでなく、その国との租税条約(二重に税金がかからないよう、国同士であらかじめ取り決めているルール)による居住者判定を確認する必要がある場合もあります。
※この記事は2026年9月4日時点で確認した国税庁公表資料等に基づき、一般的な考え方を分かりやすく説明したものです。
実際の居住者・非居住者の判定は、勤務期間、契約内容、住居、家族の状況など個別の事情によって異なります。
具体的な案件については、最新の法令・通達を確認したうえで、税務署へご相談ください。






