手形の廃止にともなう「でんさい」への移行と、印紙税の考え方

手形廃止とでんさい移行における印紙税の実務

はじめに

2027年(令和9年)4月1日から、従来の手形による決済が事実上なくなる流れを受けて、取引銀行から「電子的な決済(例:でんさいネット)への切り替え」を案内されている方も多いと思います。

よくある誤解:「でんさいにすれば印紙税はゼロ?」

ここでよく誤解されやすいのが、「でんさいに変えれば、印紙税は一切かからないのでは?」という点です。

結論からお伝えすると、次のようになります。

でんさいの「記録」そのものには、印紙税はかかりません。
しかし、別途、紙で作成する契約書や約定書については、その内容が「課税文書」にあたれば、印紙税がかかります。

つまり、「でんさいを使う=無条件で印紙税ゼロ」ではありません。
紙で契約書を作れば、その契約書自体が課税の対象になる、という点がポイントです。

以下、具体的な文書ごとに整理していきます。

「債権(電子記録債権)譲渡契約書」の印紙税

これまでの債権譲渡契約書を、「電子記録債権の譲渡契約書」という形に見直して作成する場合を考えます。

この場合、内容が「債権を譲渡する契約」である以上、印紙税法上は「債権譲渡に関する契約書」として扱われます。
印紙税額は200円です。

印紙を貼る責任は誰にあるか?

一般的には、契約の当事者(たとえば甲と乙)が連帯して負担します。
契約書に第三者(丙など)の署名欄があっても、「債権譲渡という内容を直接証明する当事者かどうか」で判断されますので、実務上は甲・乙が中心になることが多いです。

ただし、契約の立てつけによって見え方が変わることもありますので、最終的には文面と運用で確認しておくと安心です。

「継続的な電子記録債権の譲渡」を定める取引基本契約書の印紙税

特定の取引先との間で、「今後は手形ではなく、継続的にでんさいで決済する」という運用にするため、いわゆる「取引基本契約書」や「基本合意書」を結ぶケースもあります。

このような基本契約書は、「継続的な取引のルール(基本条件)を定める契約」にあたる場合、印紙税法上は「継続的取引の基本となる契約書」として扱われます。印紙税額は4,000円です。

判断のポイント

「継続的に繰り返す取引のルール」を定める契約であれば4,000円、「単発の譲渡契約」であれば200円になります。
契約書の内容が「継続反復する取引の基本条件を定めるもの」と評価されると、印紙税額が高くなる点にご注意ください。

「電子記録債権譲渡担保約定書」の印紙税

銀行の電子記録債権取引(割引、融資、与信取引など)を利用する際に、「電子記録債権譲渡担保約定書」を銀行に差し入れることがあります。

この約定書は、「電子記録債権を銀行に譲渡して担保にする」という内容ですので、印紙税法上は「債権譲渡に関する契約書」として扱われます。
譲渡担保も債権譲渡の一種ですので、印紙税額は200円です。

この種の約定書は銀行取引約定書を引用していることが多いですが、一般的には「継続的取引の基本契約」とまでは評価されにくく、200円で整理されるのが通常です。

売上代金を電子記録債権で受け取った場合の「受取書」の扱い

売上代金をでんさいで受け取った場合、買い手に対して受取書を交付することがあります。
ここで問題になるのが、その受取書に印紙税がかかるかどうかです。

結論:受取書の書き方によって変わります

「電子記録債権で受領した」と明記していれば、印紙税はかかりません(不課税)。
一方、その明記がなく、「有価証券を受け取った」ように読める書き方になっていると、印紙税がかかる可能性があります。

なぜこのような違いが出るのか?

印紙税法では、「金銭または有価証券の受取書」が課税対象になります。
しかし、電子記録債権は、手形のような「有価証券」にはあたりません。

そのため、受取書に「でんさいで受け取りました」と書いておけば、「金銭でも有価証券でもない方法で受け取った」という整理がしやすくなり、印紙税がかからない(不課税)と判断されやすくなります。

おすすめの記載例

上記金額を電子記録債権(でんさい)により受領しました。

この一文を、受取書のただし書きなどに入れておくと安心です。

実務上のまとめ(判断のコツ)

最後に、実務で迷いにくくするための「ざっくりした見分け方」をまとめます。

まず、でんさいの発生・譲渡の「記録そのもの」については、印紙税は基本的に問題になりません。

一方、紙で作る契約書・約定書については、内容が課税文書にあたれば印紙税がかかります。
具体的には、単発の債権譲渡契約であれば200円、継続取引の基本契約であれば4,000円、銀行向けの譲渡担保約定であれば200円です。

受取書については、「電子記録債権で受領した」と明記しておけば、不課税になりやすいです。

覚えておきたいポイント

印紙税は、「紙の課税文書を作成したかどうか」が出発点になります。
契約の作り方(紙で締結するのか、電子的に締結するのか)によって結論が変わることもありますので、運用を決める際は、文書の作成方法も含めて整理しておくと安心です。

制度や取り扱いは改正・見直しが入ることもあります。
最終的な確認は、最新の国税庁の情報をご確認ください。