
「海外にある不動産をドルで売ったけど、税金の計算はどうなるの?」
そんな疑問をお持ちの方へ。
専門用語をできるだけ使わずに、大切なポイントを分かりやすく解説します。
利益の計算について(所得税のお話)
不動産を売って利益が出ると、所得税がかかります。
海外での取引の場合、まず日本円に計算し直す必要があります。
ポイント① 取引は「その日の為替レート」で日本円に直す
不動産を「買った日」の代金と、「売った日」の代金を、それぞれ取引したその日の為替レートで日本円に換算して、利益を計算するのが基本です。
どのレートを使うの?
銀行が毎日公表している「TTS(お客様が円を外貨に替えるレート)」と「TTB(お客様が外貨を円に替えるレート)」の中間の値である「仲値(TTM)」を使います。
【例えるなら…】
海外旅行に行くとき、1ドル150円のレートで100ドルに両替したら、15,000円かかりますよね。
それと同じように、取引の日のレートで「日本円だったらいくらだったか」を考えるイメージです。
ポイント② すぐに両替した場合は、その時のレートでOK
より現実に近い計算方法も認められています。
- 売ったお金(外貨)を、すぐに円に両替した場合
→ その両替した時のレート(TTB)で売上を計算してOKです。 - 買うために、円を外貨に両替してすぐに支払った場合
→ その両替した時のレート(TTS)で取得費を計算してOKです。
ポイント③ 為替レートの変動による儲けや損も、全部まとめて計算!
「買った時より円安になったから、ドルでは同じ値段でも円にしたら儲かった!」というような、為替レートの変動によって生じた利益や損失(為替差損益)も、不動産を売った利益(譲渡所得)に含めて一緒に計算します。
わざわざ「為替で儲かった分」を別の所得として分けて計算する必要はありません。
「不動産の売却で、最終的に日本円でいくら儲かったか」を一度に計算すれば大丈夫です。
【補足】人に貸していた不動産を売った場合
もしその不動産を賃貸していた場合、買ったときの値段そのものではなく、そこから「これまでの減価償却費(げんかしょうきゃくひ)の合計額」を差し引いた金額が、税金計算上の取得費となります。
【減価償却費ってなに?】
建物や車などは、年々古くなって価値が下がっていきますよね。
その価値の減少分を、毎年少しずつ経費として計上する会計上のルールのことです。
この計算は、毎年の確定申告で行っているはずなので、売却の際に改めて為替レートを使って計算し直す必要はありません。
消費税について
次に、日本の消費税がかかるかどうか、というお話です。
結論:海外の不動産売却に、日本の消費税はかかりません。
なぜなら、日本の消費税は、あくまで「日本国内で行われた取引」が対象だからです。
不動産の売買は、「その不動産がどこにあるか」で判断します。
海外にある不動産は「国外取引」となり、日本の消費税の課税対象外です。
心配はご無用です。
【身近な例でいうと…】
私たちが海外旅行先のスーパーで買い物をしても、日本の消費税がかからないのと同じ理屈です。
【補足】売却のために日本で支払った経費について
もし、売却のために日本の不動産会社に仲介手数料などを支払った場合、その手数料には日本の消費税が含まれていることがあります。
もしあなたが事業者(消費税の納税義務者)であれば、支払った消費税分を、納める税金から差し引ける(仕入税額控除といいます)可能性があります。
これは状況によります。
まとめ
海外の取引が絡むと複雑に感じますが、まずはこの3点を押さえておきましょう。
- 利益の計算は、取引の都度、円に直すのが基本。
- 為替の儲けや損も、不動産の利益とまとめて計算してOK。
- 海外の不動産なので、日本の消費税はかからない。