湯治の交通費や宿泊費は医療費控除になる?-リウマチなどの療養で温泉を利用するときの注意点-

リウマチ治療で温泉へ行った費用は控除できる?対象になる費用・ならない費用

リウマチや関節炎など、持病のあるご家族のために、温泉地でしばらく療養をお考えになることがあると思います。

温泉に入って体を温めたり、ゆっくり休んだりすることで、痛みが和らぐと感じる方も多くいらっしゃいます。

そのため、「病気を治すために行ったのだから、宿泊費や交通費も医療費控除(1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、税金の計算のもとになる所得から差し引くことができる制度)の対象になるのではないか」と考えるのは、とても自然なことです。

しかし、税金の制度上は、「病気の療養のために温泉へ行った」というだけで、旅館代や旅費が医療費控除の対象になるわけではありません。

一般的な温泉旅館や湯治宿に滞在するための旅館代や旅費は、たとえ医師から温泉をすすめられた場合であっても、原則として医療費控除の対象外です。
国税庁も、関節炎の治療のために医師からすすめられて湯治に行った場合について、その旅館代や旅費は医療費控除の対象にならないと説明しています。

一方で、医師の指示にもとづき、厚生労働大臣が認定した「温泉利用型健康増進施設」で治療を目的とした温泉療養を行った場合には、一定の条件のもとで、施設利用料などが医療費控除の対象になることがあります。

つまり、判断のポイントは「病気のために温泉へ行ったかどうか」ではありません。
次のような点を、順番に確認していく必要があります。

・医師による治療の一環として行われたものか
・厚生労働大臣の認定を受けた施設を利用したか
・医師が作成した「温泉療養指示書」に従って利用したか
・施設の指導者による所定の指導を受けたか
・「温泉療養証明書」や領収書などを準備できるか

この記事では、一般的な湯治と、医療費控除の対象になり得る温泉療養との違いを、実際の手続きの流れに沿ってご説明します。
少し分かりにくい制度ですので、となりに座って一緒に確認していくつもりで、ゆっくり読み進めてみてください。

※この記事は、2026年7月26日時点で確認できる国税庁・厚生労働省などの公表情報にもとづいて作成しています。
実際にご自身のケースが対象になるかどうかは、病状や施設の認定状況、療養内容、支払い状況などによって個別の判断が必要です。
正確な取り扱いは、税務署にご確認ください。

一般的な湯治の旅館代や旅費は対象になりません

まず押さえておきたいのは、一般的な温泉旅行や湯治のために支払った費用は、原則として医療費控除の対象にならないということです。

たとえば、次のような費用が当てはまります。

・自宅から温泉地までの電車代やバス代
・温泉旅館や湯治宿の宿泊費
・宿泊中の食事代
・一般的な温泉施設の入浴料
・貸切風呂や岩盤浴などの追加料金
・湯治中に購入した日用品
・観光や外出にかかった費用
・同行した家族の宿泊費や食事代

ご本人やご家族としては、「持病の痛みを和らげるために、どうしても必要だった費用だ」と感じていらっしゃるかもしれません。
そのお気持ちはとてもよく分かります。

しかし、医療費控除の対象になるのは、基本的に、医師や歯科医師による診療・治療の費用や、その診療・治療を受けるために直接必要な費用に限られます。
通常の湯治にかかる旅館代や旅費は、医師による診療の対価でもなく、診療を受けるために直接必要な費用でもありません。
そのため、原則として対象にならないのです。

たとえば、お父様の持病の症状を和らげるために、ご家族で半月ほど温泉旅館に滞在したとします。
毎日温泉に入り、実際に痛みが軽くなったとしても、それだけで旅館代や交通費を医療費控除に含めることはできません。

税金の制度では、「実際に効果を感じたかどうか」だけで判断するのではなく、医師による治療との直接的な関係や、利用した施設、手続き、証明書類などをもとに判断される、という点を覚えておいていただけますと安心です。

医師から温泉をすすめられただけでは足りません

「主治医から温泉療養をすすめられたので、医療費控除の対象になるのではないか」と思われる方も少なくありません。

しかし、医師から一般的に温泉や静養をすすめられただけでは、通常の旅館代や旅費が医療費控除の対象になるわけではありません。

たとえば、診察のときに医師から、
・「体を冷やさないようにしてください」
・「温泉でゆっくり休むのもよいでしょう」
・「無理をせず、しばらく静養してください」
と言われたとしても、それだけで温泉旅行の費用が医療費になるわけではないのです。

医療費控除の対象になるためには、単なる生活上のアドバイスではなく、医師が「治療の一環」として、一定の温泉療養を指示していることが必要です。

さらに、利用する施設についても、「どの温泉施設でもよい」というわけではありません。
次の章で、対象になり得る施設についてご説明します。

対象になる可能性があるのは「温泉利用型健康増進施設」です

厚生労働省では、健康づくりを安全かつ適切に行える施設について、「健康増進施設認定制度」という仕組みを設けています。

認定施設には、次の3つの区分があります。

・運動型健康増進施設
・温泉利用型健康増進施設
・温泉利用プログラム型健康増進施設

このうち、医師の指示にもとづいて治療目的の温泉療養を行った場合に、一定の条件のもとで施設利用料が医療費控除の対象になり得るのは、「温泉利用型健康増進施設」です。

温泉利用型健康増進施設は、単に温泉設備が整っている施設という意味ではありません。
温泉利用と運動を安全かつ適切に行うための設備があり、生活指導や温泉利用の指導を行うスタッフが配置され、医療機関との連携体制なども整えられている施設のことです。

有名な温泉旅館や、長い歴史のある湯治場であっても、厚生労働大臣の認定を受けた温泉利用型健康増進施設でなければ、この制度の対象にはなりません。
反対に、施設名に「健康」「療養」「リハビリ」といった言葉が入っていても、それだけで認定施設と判断することはできません。

利用を申し込む前に、厚生労働省が公表している認定施設一覧で確認したうえで、施設へ直接問い合わせておくことをおすすめします。
認定の状況や施設の運営内容は変わることもあるため、過去の情報だけで判断しないようにご注意ください。

医療費控除を受けるための手続きの流れ

温泉療養の費用について医療費控除を受けるためには、温泉へ行ってから手続きを始めるのではなく、原則として、療養を始める前から準備しておく必要があります。

温泉利用型健康増進施設連絡会が案内している一般的な手続きの流れは、次のとおりです。
順番に見ていきましょう。

温泉療養を始める前に、医師へ相談する

最初に、かかりつけの医師などに相談します。
このとき、単に「温泉に行ってもよいですか」と尋ねるだけでなく、治療の一環として温泉療養を行い、医療費控除の制度を利用したいと考えていることを、あわせて伝えましょう。

医師は、患者さんの病状や健康状態を確認したうえで、温泉療養が治療として適切かどうかを判断します。
病状によっては、長時間の入浴や高温の温泉が適さないこともあります。
そのため、ご本人が希望すれば必ず温泉療養を受けられるわけではない、という点も知っておいていただけますと安心です。

医師から「温泉療養指示書」を受け取る

医師が「治療として適切」と判断した場合には、「温泉療養指示書」を作成してもらいます。
この指示書には、温泉への入り方、入浴時間、回数、運動の内容などが記載されます。
診察の結果によっては、利用する認定施設が指定されることもあります。

医師から口頭で「温泉に行ってもよいですよ」と言われただけでは、この手続きを行ったことにはなりません。
後から証明書を作成してもらうことが難しい場合もありますので、必ず療養を始める前に相談するようにしましょう。

認定施設へ事前に問い合わせる

温泉療養指示書を受け取ったら、利用予定の認定施設へ連絡します。
認定施設であっても、医療費控除に対応した指導プログラムを毎日実施しているとは限りません。
予約の際には、次の点を確認しておくと安心です。

・医療費控除の対象となる温泉療養に対応しているか
・温泉療養指示書をいつ提出すればよいか
・指導を受けられる曜日や時間
・必要な利用日数
・施設利用料や指導料
・温泉療養証明書を発行してもらえるか
・宿泊費と施設利用料を分けて記載してもらえるか

そのうえで、温泉療養指示書を持参し、施設の温泉利用指導者などへ提出します。

指示書に従って温泉療養を行う

認定施設では、医師が作成した温泉療養指示書にもとづき、温泉利用指導者などから指導を受けます。

温泉利用型健康増進施設連絡会の案内では、医療費控除を受けるための温泉療養について、おおよそ1か月以内に7日以上、施設を利用することが必要とされています。
利用日は連続していなくても、通算できると案内されています。

ただし、この「おおよそ1か月以内に7日以上」という基準は、国税庁の通達本文に具体的な日数として書かれているものではありません。
温泉利用型健康増進施設連絡会が、実務上の目安として案内しているものです。
必要な利用日数や指導内容、予約方法などは、医師の指示や施設の運用によっても変わりますので、あわせて確認しておきましょう。

つまり、「温泉地に7日以上滞在すればよい」という意味ではありません。
たとえば、温泉旅館に14泊して毎日大浴場に入ったとしても、認定施設で医師の指示書にもとづく指導を受けていなければ、この制度による医療費控除は受けられません。
大切なのは宿泊日数ではなく、認定施設で所定の温泉療養を行った日数なのです。

施設から領収書と温泉療養証明書を受け取る

温泉療養が終了したら、認定施設から次の書類を受け取ります。

・施設利用料などの領収書
・温泉療養証明書

温泉療養証明書については、療養を行った期間や、施設の指導者による証明が記載されているかを確認しましょう。
領収書についても、施設利用料、指導料、宿泊費、食事代などの内訳が分かるようにしてもらうと安心です。

宿泊施設を併設している認定施設では、施設利用料と宿泊費が一括で請求されることがあります。
その場合は、請求額の全額を医療費控除に含めるのではなく、対象になる施設利用料などを分けて確認する必要があります。

医師から温泉療養の終了証明を受ける

施設から温泉療養証明書を受け取っただけで、手続きがすべて終わるわけではありません。

温泉利用型健康増進施設連絡会の案内では、施設の指導者による証明を受けたあと、医師のもとを訪ね、温泉療養証明書について終了証明を受ける流れが示されています。

つまり、次の両方を確認できるようにしておくことが大切です。

・認定施設で、指示書に従った温泉療養を行ったこと
・その温泉療養が、医師による治療の一環として行われたこと

施設の証明だけでなく、医師による証明も必要になりますので、療養を始める前に、医師と施設の双方へ手続きの流れを確認しておきましょう。

医療費控除の対象になり得る費用

必要な条件を満たした温泉療養では、主に次の費用が医療費控除の対象になる可能性があります。

・認定施設の施設利用料
・温泉療養のための指導料
・認定施設までの、通常必要な往復交通費

温泉利用型健康増進施設連絡会は、一定の利用条件を満たした場合、認定施設までの往復交通費と施設利用料金が医療費控除の対象になると案内しています。

交通費については、電車や路線バスなど、通常必要な公共交通機関の利用料金が中心です。
一般的な通院費の取り扱いでは、公共交通機関を利用できない事情がある場合を除き、タクシー代は医療費控除の対象になりません。
また、自家用車を利用した場合のガソリン代や駐車場代も対象外です。

温泉療養のための交通費についても、どこまでが「通常必要な費用」と認められるかは、移動方法や事情によって個別に判断される可能性があります。
新幹線のグリーン車や飛行機の上位クラス、観光を兼ねた遠回りの交通費などは、その全額が当然に対象になるとは限りません。
交通手段や金額が通常の範囲を超える可能性があるときは、事前に税務署へ確認しておくと安心です。

宿泊費や食事代は、原則として対象外です

認定施設で医師の指示にもとづく温泉療養を行った場合でも、宿泊費や食事代まで自動的に医療費控除の対象になるわけではありません。

温泉療養のために遠方へ行き、近くのホテルや旅館に泊まる必要があったとしても、宿泊費や食事代などの滞在費は、原則として対象外と考えられます。

たとえば、医師の指示により、半月ほど温泉地へ滞在し、その期間中に認定施設を7日以上利用した場合を考えてみましょう。

条件を満たしていれば、次の費用は対象になる可能性があります。

・認定施設の施設利用料
・温泉利用指導者による指導料
・認定施設までの、通常必要な往復交通費

一方、次の費用は原則として対象外です。

・ホテルや旅館の宿泊費
・朝食、昼食、夕食などの食事代
・売店で購入した飲食物や日用品
・観光施設の入場料
・観光のための交通費
・貸切風呂や美容サービスの追加料金
・同行した家族の宿泊費や食事代

「認定施設で療養したのだから、旅行全体の費用が医療費になる」というわけではありませんので、この点はぜひ押さえておいてください。
施設利用料と宿泊費などが一括になっている場合は、必ず内訳を確認しましょう。

付き添ったご家族の交通費について

高齢のお父様や、症状の重いご家族の場合には、お一人で認定施設まで移動することが難しく、ご家族が付き添うこともあると思います。

一般的な通院費について、国税庁は、患者さんの年齢や病状からみて一人で通院させることが危険な場合には、通常必要な付き添い人の交通費も医療費控除の対象になると説明しています。

ただし、この国税庁の事例は、通常の通院についての取り扱いです。
温泉療養のために遠方へ移動する場合の付き添い人の交通費は、患者さんの病状、年齢、移動距離、交通手段、付き添いの必要性などを踏まえた個別判断になる可能性があります。

単にご家族が心配で同行した場合や、観光を兼ねて一緒に行った場合には、付き添ったご家族の交通費まで対象になるとは限りません。
また、付き添い人の交通費が対象になる場合でも、付き添い人の宿泊費や食事代まで当然に対象になるわけではありません。

付き添いが必要な場合には、医師の意見や病状が分かる資料を残したうえで、事前に税務署へ確認しておくと安心です。

湯治先で受けたマッサージ、はり、きゅうについて

湯治先で、リウマチや関節の痛みなどの治療を目的として、マッサージ、はり、きゅうなどの施術を受けることがあります。

次の国家資格を持つ施術者による施術のうち、病気やけがの治療に直接関係するものは、原則として医療費控除の対象になります。

・あん摩マッサージ指圧師
・はり師
・きゅう師
・柔道整復師

一方、疲れを癒やすためのマッサージや、健康維持、体調管理、リラクゼーション、美容などを目的とした施術は対象になりません。

判断のポイントは、「温泉地で受けたかどうか」ではなく、資格を持つ施術者が、治療を目的として行った施術かどうかです。
たとえば、温泉旅館の中にある施術所で受けた場合でも、資格を持つ施術者が痛みの治療として行ったものであれば、対象になる可能性があります。
一方、「全身リラックスコース」「もみほぐしコース」「アロマトリートメント」などは、通常、治療目的とは認められにくいでしょう。

施術を受ける前に、施術者が医療費控除の対象となる国家資格を持っているかを確認してください。
領収書には、施術者または施術所の名称、施術日、支払金額などを記載してもらい、治療目的であることが分かる資料とあわせて保管しておくと安心です。

お父様の費用をお子様が支払った場合

医療費控除は、治療を受けたご本人だけが利用できる制度ではありません。
ご自身のほか、ご自身と生計を一にする配偶者や親族のために医療費を支払った場合には、実際に支払った方が医療費控除を受けられる可能性があります。

「生計を一にする」とは、簡単にいうと、日々の生活費や医療費などを、家計として実質的に共有している関係のことです。
必ずしも同居していることを意味するわけではありません。

そのため、お父様と生計を一にしているお子様が、お父様の対象となる温泉療養費を実際に支払った場合には、そのお子様の医療費控除に含められる可能性があります。

ここで大切なのは、「お父様が税金上の扶養親族になっているかどうか」だけではありません。
医療費控除では、対象となる親族が扶養親族に該当するかどうかよりも、費用を支払った時点で生計を一にしていたか、そして誰が実際に費用を負担したかが重要です。

お父様ご自身が、ご自身のお金で支払った費用を、後からお子様が自分の医療費控除に含めることはできません。
反対に、お子様のクレジットカードや預金口座から支払い、お子様が実際に負担している場合には、お子様の医療費控除の対象になる可能性があります。

誰が支払ったかを確認できるように、領収書だけでなく、通帳やクレジットカードの利用明細なども残しておきましょう。

お父様と別居していても、対象になる場合があります

お父様と別居しているからといって、必ず医療費控除の対象外になるわけではありません。

税金上の「生計を一にする」は、必ずしも同居していることを意味しません。
別居していても、お子様がお父様へ継続的に生活費や療養費を送っているなど、実際の生活状況から生計を一にしていると認められる場合には、お子様が支払ったお父様の医療費を、お子様の医療費控除に含められる可能性があります。

たとえば、地方で一人暮らしをしているお父様へ、お子様が毎月生活費を送り、医療費も継続的に負担している場合が当てはまります。

一方、お父様がご自身の収入や財産だけで独立して生活しており、お子様との間で生活費や療養費の負担関係がない場合には、生計を一にしているとは認められない可能性があります。

大切なのは、住民票の住所や同居・別居という形式だけではなく、実際に生活費や療養費をどのように負担しているか、という実態です。

医療費控除の計算方法

対象となる温泉療養の費用を支払ったとしても、その金額がそのまま税金から差し引かれるわけではありません。

医療費控除は「所得控除」と呼ばれる仕組みの一つです。
所得税を計算する前の所得金額から、一定の金額を差し引く制度、とイメージしていただくと分かりやすいと思います。

一般的な医療費控除額は、次のように計算します。

医療費控除額 = その年に支払った対象医療費 - 保険金などで補てんされた金額 - 10万円

ただし、その年の総所得金額等(1年間の収入から必要経費などを差し引いた金額の合計です)が200万円未満の場合には、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。医療費控除額の上限は200万円です。

温泉療養の費用だけで10万円を超えているかどうかを判断するわけではありません。
その年に支払った病院代、歯科治療費、薬代、治療目的のはり・きゅう・マッサージ代など、ほかの対象医療費と合計して計算します。

なお、医療費控除は、支払った医療費と同じ金額が戻ってくる制度ではありません。
実際に減る税金の金額は、申告される方の所得や税率などによって異なりますので、この点もあわせて知っておいていただけますと安心です。

正確な金額や控除額の基準は、年度によって見直されることがあります。最新の内容は、国税庁のホームページや税務署にご確認ください。

確定申告で準備する書類

温泉療養に関する医療費控除を検討するときは、次の書類や記録を整理しておきましょう。

・医師が作成した温泉療養指示書
・医師の終了証明を受けた温泉療養証明書
・認定施設の領収書
・指導料の領収書
・電車代やバス代が分かる記録
・はり、きゅう、マッサージなどの領収書
・保険金などで補てんされた金額が分かる書類
・誰が支払ったか分かる通帳やカード利用明細
・別居しているご家族については、生活費や療養費の送金記録

確定申告(1年間の所得と税額を計算して、税務署へ申告する手続きです)では、原則として、領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書へ添付します。

医療費の領収書は、通常、確定申告書へ添付する必要はなく、ご自宅などで保管しておきます。
ただし、税務署から内容の確認を求められることがありますので、確定申告期限等から5年間は保管しておく必要があります。

温泉療養証明書は、添付を省略できる場合があります

温泉療養証明書については、「必ず確定申告書に添付しなければならない」とは限りません。

国税庁は、おむつ使用証明書などの医療費控除に関する証明書類について、次の3つを医療費控除の明細書の欄外余白などに記載すれば、確定申告書への添付や提示を省略して差し支えないと案内しています。

・証明年月日
・証明書の名称
・証明者の名称

添付や提示を省略した証明書は、医療費の領収書とともに、確定申告期限等から5年間、ご自宅などで保管しておく必要があります。
温泉療養証明書についても、この取り扱いにしたがい、必要事項を記載することで添付等を省略できる場合があります。

ただし、添付を省略できるからといって、証明書そのものが不要になるわけではありません。
税務署から提出や提示を求められる可能性がありますので、医師の証明を受けた温泉療養証明書や施設の領収書は、必ず保管しておいてください。

なお、この添付省略の取り扱いは、国税庁がおむつ使用証明書など特定の証明書類について案内しているものです。
温泉療養証明書についても同様の取り扱いが認められると考えられますが、これを国税庁が名指しで案内している文書は確認できていません。
実際に添付を省略される場合は、念のため、申告前に税務署へご確認いただくと確実です。

e-Tax(国税庁のシステムを使って、インターネット上で確定申告書を提出する方法です)で申告される場合の具体的な入力方法や添付方法は、申告する年分の確定申告書等作成コーナーや国税庁の案内でご確認ください。

よくある勘違い

温泉療養と医療費控除については、次のような勘違いが起こりやすいため、ここで一つずつ確認しておきましょう。
決して珍しい勘違いではありませんので、気負わず読んでみてください。

医師に温泉をすすめられたので、旅館代も対象になると思った

医師から一般的に温泉をすすめられただけでは、通常の旅館代や旅費は対象になりません。
認定施設で、医師の指示書にもとづく治療目的の温泉療養を行っていることが必要です。

半月滞在したので、利用日数を満たしていると思った

必要なのは、温泉地に滞在した日数ではなく、認定施設で所定の指導を受けた利用日数です。
旅館に14泊していても、認定施設を利用していなければ対象にはなりません。

有名な湯治場なので、認定施設だと思った

認定を受けるのは温泉地全体ではなく、個別の施設です。
同じ温泉地の中にも、認定施設と認定されていない施設があります。

施設利用料と宿泊費をまとめて全額申告した

宿泊費や食事代は原則として対象外です。
一括請求の場合には、施設利用料、指導料、宿泊費、食事代などの内訳を確認しましょう。

施設から証明書をもらえば、手続きが終わると思った

施設から温泉療養証明書を受け取ったあと、医師から終了証明を受ける流れがあります。
施設の証明だけで終わらせないよう、注意しましょう。

温泉地で受けたマッサージは、すべて対象だと思った

資格を持つ施術者が、病気やけがの治療として行った施術が対象です。
疲労回復やリラクゼーションを目的とした施術は対象になりません。

父親と別居しているので、申告できないと思った

別居していても、継続的に生活費や療養費を送っているなど、生計を一にしていると認められる場合には、実際に支払ったお子様の医療費控除に含められる可能性があります。

温泉へ行く前の確認が、いちばん大切です

温泉療養の医療費控除で最も大切なのは、療養を始める前に、医師と施設へ確認しておくことです。
すでに通常の温泉旅館へ宿泊したあとで、医師から証明書をもらえば対象になる、という制度ではありません。

温泉療養を検討されている場合には、次の順番で準備を進めてみてください。

1.かかりつけの医師へ相談する
2.温泉療養が治療として適切か判断してもらう
3.医師から温泉療養指示書を受け取る
4.厚生労働大臣の認定施設を確認する
5.施設へ利用日、指導内容、料金、証明書の発行方法を確認する
6.指示書にしたがって認定施設を利用する
7.施設から領収書と温泉療養証明書を受け取る
8.医師から温泉療養の終了証明を受ける
9.交通費や支払記録を整理する
10.ほかの医療費とあわせて確定申告を行う

一般的な湯治には、体を休めたり、気分転換をしたりする大切な意味があります。それ自体は、とても価値のあることです。

ただし、税金の制度では、「病気のために行った」というご本人の目的だけで判断するのではなく、医師による治療との関係、利用施設の認定、指示書にもとづく利用、証明書類などをもとに判断されます。

通常の温泉旅館や湯治宿に滞在するための旅館代や旅費は、病気の療養を目的としていた場合や、医師から温泉をすすめられた場合であっても、原則として医療費控除の対象になりません。

一方で、医師の指示にもとづき、厚生労働大臣が認定した温泉利用型健康増進施設で治療目的の温泉療養を行い、医師の証明書と認定施設の領収書を準備できる場合には、施設利用料や通常必要な往復交通費が医療費控除の対象になる可能性があります。
ただし、その場合でも、宿泊費や食事代などの滞在費は原則として対象になりません。

必要な手続きや利用日数については、温泉療養を始める前に、医師と利用予定の認定施設へ確認しておきましょう。

実際に医療費控除へ含められるかどうか、判断に迷う場合は、温泉療養指示書、温泉療養証明書、施設の領収書、交通費の記録などをそろえたうえで、税務署にご相談いただくと安心です。

※この記事は、2026年7月26日時点で確認できる情報をもとに作成しています。
医療費控除の対象範囲や手続き、認定施設の情報などは、法令改正や制度の見直しにより変更される可能性があります。
実際の適用にあたっては、個別の事情を踏まえたご判断が必要です。正確な内容は、国税庁のホームページ、所轄の税務署に直接ご確認ください。