準確定申告で気をつけたいポイント

準確定申告の注意点

準確定申告とは?

準確定申告とは、亡くなった方の代わりに行う、最後の所得税の申告です。
対象となるのは、その年の1月1日から亡くなった日までの所得(収入から経費を引いたもの)です。

「通帳を見て、亡くなった日までの入出金を集計すれば終わり」と思われるかもしれませんが、実はそれだけでは足りません。

税金の世界では、「お金が実際に動いた日」ではなく、「その収入や支払いがいつ確定したか」を基準に考えます。

たとえば、家計簿なら「入った日」「払った日」で記録しますが、税金では「受け取る権利がいつ決まったか」「支払う義務がいつ決まったか」で判断することがあります。
準確定申告では、この考え方が特に重要です。

収入や経費は「いつ確定したか」で判断します

所得税では原則として、亡くなった日までに

・受け取ることが確定していた収入
・支払うことが確定していた必要経費(仕事や事業に必要だった費用)

を申告に含めます。

亡くなった時点でまだ通帳に入金されていなくても、すでに確定していた家賃・給与・配当・売上などは、準確定申告に含める必要があります。
反対に、まだ確定していないものは含めません。

亡くなった後の通帳の動きも確認が必要です

亡くなった後に通帳に入金や引き落としがあった場合も、「それが亡くなる前のものか、亡くなった後のものか」を確認することが大切です。

亡くなった方の所得になるもの

亡くなる前にすでに確定していた収入で、入金だけが亡くなった後になったものが該当します。

例:すでに支給日が来ていた給与、すでに確定していた配当金 など

これらは、準確定申告では亡くなった方の所得として申告します。
また、相続税(亡くなった方から財産を受け継ぐときにかかる税金)では、まだ受け取っていなかった財産として扱うことになります。

相続人(財産を受け継いだ方)の所得になるもの

亡くなった後に新たに発生・確定した収入は、亡くなった方の所得にはなりません。

例:亡くなった日の翌日以降の期間に対応する家賃 → 財産を引き継いだ相続人の所得として扱います

亡くなる前に確定していた売上の扱い

商品の引き渡しやサービスの提供が亡くなる前に終わっていて、売上がすでに確定していた場合は、次のように考えます。

所得税(準確定申告)の場合

まだ入金されていなくても、相手に請求できる状態になっていれば、その売上は亡くなった方の事業の収入として準確定申告に含めます。

相続税の場合

亡くなった時点でまだ受け取っていない売上代金は、「お金を受け取る権利」そのものが財産です。
売掛金(まだ受け取っていない代金の権利)や未収入金として、相続税の対象になります。

亡くなる前の費用で、支払いが亡くなった後になる場合

亡くなる前に利用や契約が済んでいて、支払いだけが後になるものは、基本的に未払金(まだ払っていない費用)として考えます。

相続税の場合

亡くなった時点で支払う義務があるものは、「債務控除(借金や未払いの費用を遺産から差し引ける仕組み)」として遺産から引ける場合があります。

所得税(準確定申告)の場合

経費にできるかどうかは、支払いの内容によって異なります。

事業や不動産賃貸の必要経費

亡くなった日までに支払うべき内容が決まっていて、金額も合理的に見積もれるものは、まだ未払いでも必要経費にできることがあります。

医療費

医療費控除は、実際に支払った金額だけが対象です。
亡くなった時点で未払いの医療費は、準確定申告の医療費控除には含められません。
ただし、相続税では債務として差し引ける可能性があります。

青色申告特別控除はどうなるか

青色申告特別控除(青色申告をすることで受けられる所得の控除)は、年の途中で亡くなっても月割りにはなりません。
要件を満たしていれば、所定の控除額をそのまま使うことができます。

一括償却資産の残りはどうするか(ここは誤解しやすいポイントです)

一括償却資産とは、10万円以上20万円未満のものを3年間で均等に経費にしていく方法のことです。
まだ経費にしていない残額(未償却残高)の扱いは、事業を引き継ぐ方がいるかどうかで変わります。

事業を引き継ぐ方がいない場合

残額は原則として、亡くなった方の準確定申告で全額を必要経費にします。

事業を引き継ぐ方がいる場合

この場合、処理方法が1つに決まっているわけではありません。
国税庁の通達・質疑応答事例では、次の2つの方法が認められています。

選択肢A:残額を亡くなった方の準確定申告でまとめて経費にする方法

事業を引き継ぐ方がいる場合でも、未償却残高の全額を亡くなった方の準確定申告でまとめて必要経費にすることが認められています。

選択肢B:その年分だけを亡くなった方の経費にし、残りを相続人に引き継ぐ方法

亡くなった年分として計上できる額だけを亡くなった方の必要経費にして、残りは事業を引き継いだ相続人が翌年以降に必要経費として計上していく方法です。

どちらの方法を選ぶかは、どの年に経費を計上したほうが有利か、相続人の所得状況はどうかといった点も踏まえて判断することになります。

まとめ

準確定申告では、通帳の入出金だけを追うのでは足りません。
「その収入や支払いが、亡くなった日までに確定していたかどうか」で仕分けすることが、最大のポイントです。

特に迷いやすいのは、次の4つです。

1.亡くなった後に入金されたお金が、亡くなった方の所得なのか、相続人の所得なのか
2.未払いの費用が、準確定申告で必要経費になるのか
3.相続税でも財産や債務として計上が必要か
4.一括償却資産の残額を、亡くなった方の申告でまとめて経費にするか、相続人に引き継ぐか

準確定申告は「通帳どおりに処理する作業」ではなく、亡くなった日を境目にして、何がその日までに決まっていたかを丁寧に仕分けする作業です。
内容が複雑な場合は、一人で抱え込まず、早めに税務署へご相談ください。