特定親族と所得控除(令和7年度改正のポイント)

特定親族特別控除の仕組みと注意点

令和7年度の税制改正で、新しく「特定親族特別控除」という制度ができました。
令和7年分(令和7年中の所得)から、確定申告や年末調整で初めて使われます。

この制度を一言でいうと

お子さんなどの収入が増えて「扶養親族(扶養控除を受けられる親族)」から外れてしまっても、一定の範囲内であれば新しい控除を受けられる、という仕組みです。

ただし、注意点があります。
お子さんなどが「扶養親族」ではなく「特定親族」に該当する場合、親御さん側で今まで使えていた他の所得控除の一部が使えなくなることがあります。
ここが、実務上いちばん間違いやすいところです。

「特定親族」と「扶養親族」のちがい

まず、用語を整理しましょう。

特定親族とは

次のすべてに当てはまる親族等のことです。

・年齢が 19歳以上23歳未満
・合計所得金額(所得の判定に使う金額)が 58万円”超”123万円以下

扶養親族とは

一般的な「扶養控除」で使う考え方で、次の要件があります。

・合計所得金額が 58万円”以下” など

ポイントは次のとおりです

・合計所得金額が 58万円以下 → 扶養親族に当たる
・合計所得金額が 58万円を超える → 扶養親族から外れる
・ただし 19~22歳で、58万円超~123万円以下 → 特定親族に当たる

つまり、特定親族は扶養親族ではありません。
ここを混同してしまうと、控除の判定を誤りやすくなります。

「特定親族特別控除」が使えても、他の控除が使えないことがある

お子さんなどが扶養親族から外れても、特定親族に当たれば、親御さん側で「特定親族特別控除」を受けられる可能性があります。

しかし、注意が必要です。
お子さんなどが「扶養親族」ではなく「特定親族」である以上、「扶養親族がいること」を条件にしている別の控除については、条件を満たさなくなることがあります。

以下、代表的な例をご説明します。

影響が出やすい控除の具体例

寡婦控除(かふこうじょ)

寡婦控除は、一定の要件を満たす方が受けられる控除です。

たとえば「夫と離婚した後に再婚していない」ケースなどでは、扶養親族がいることが要件になる場面があります。
このとき、お子さんなどの合計所得金額が58万円を超えると、扶養親族ではなくなります。
そのお子さんが特定親族に当たっていても、「扶養親族がいる」という要件は満たしません。
結果として、親御さん側が寡婦控除を受けられないことがあります。

障害者控除

障害者控除も、扶養親族が障害者に当たる場合に使える場面があります。

この場合も要件はあくまで「扶養親族」ですので、お子さんなどが特定親族になっていると、要件を満たさないことになります。

所得金額調整控除

給与所得から一定額を調整する「所得金額調整控除」も、制度上「扶養親族がいること」が要件になるケースがあります。

お子さんなどが特定親族に当たる場合、扶養親族ではないため、その要件を満たさない扱いになります。

特に注意したい「ひとり親控除」と「雑損控除」

ひとり親控除

ひとり親控除では、対象となる「お子さん」がいることが条件ですが、そのお子さんについて 総所得金額等が58万円以下であることが求められています。

つまり、お子さんの所得が増えて「58万円超」になった場合、
そのお子さんが特定親族に当たる年齢であっても、ひとり親控除の要件は満たしません。

雑損控除(ざっそんこうじょ)

災害や盗難などで資産に損害を受けたときの雑損控除では、損害を受けた資産が「生計を一にする親族のもの」でも対象になることがあります。

ただしこの場合も、その親族は 総所得金額等が58万円以下であることが条件とされています。
よって、親族が特定親族に該当する所得水準(58万円超)だと、雑損控除の対象にならない場面が出ます。

「合計所得金額」と「総所得金額等」の判定が違う点にも注意

上で挙げた控除のうち、

・ひとり親控除
・雑損控除

この2つは、判定に使う所得のものさしが少し違います。
多くの制度は「合計所得金額」で判定しますが、ひとり親控除と雑損控除は、純損失や雑損失の繰越控除を適用した後の「総所得金額等」で、58万円以下かどうかを判定します。

たとえば、
前年からの損失繰越がある方は、「合計所得金額」では58万円を超えているように見えても、繰越控除を反映した後の「総所得金額等」で58万円以下になることがあります。

このため、どの控除がどの基準で判定するのかを分けて確認することが大切です。

実務での確認のしかた(間違いを防ぐコツ)

最後に、実際の確定申告や年末調整でのチェックの順番を、簡単にまとめます。

ステップ1:お子さんなどの年齢を確認する

・19~22歳か を確認します

ステップ2:お子さんなどの所得を確認する

・58万円以下 → 扶養親族
・58万円超~123万円以下 → 特定親族
・123万円超 → 原則どちらにも当たらない

ステップ3:親御さん側で使える控除を確認する

・特定親族特別控除の対象になるか
・ほかの控除(寡婦控除、障害者控除、所得金額調整控除、ひとり親控除、雑損控除など)の要件が「扶養親族」か「お子さん(総所得金額等58万円以下)」かを分けて確認する

このように整理しておくと、「控除を入れたつもりが、実は要件を満たしていなかった」というミスを防ぎやすくなります。

正確な判定については、最新の情報を税務署にご確認ください。