離婚で自宅を相手に渡すと税金はどうなる?
財産分与・3,000万円控除・贈与の違いをわかりやすく整理
離婚のとき、夫婦で住んでいた家やマンションを、どちらか一方が引き継ぐことがあります。
よくある場面ですが、実はここで気をつけたいのが、税金の扱いです。
「夫婦の間で財産を分けるだけなのだから、税金はあまり関係ないのでは?」
そう思う方も多いかもしれません。
しかし、不動産を渡す場面では、渡すタイミングや名目によって税金の結論が変わることがあります。
とくに大切なのは、次の3つの点です。
・離婚前に渡すのか、離婚後に渡すのか
・贈与なのか、財産分与なのか
・その家が税務上「自宅」といえるのか
今回は、離婚に伴って自宅を相手に渡す場合の税金について、できるだけわかりやすく整理します。
財産分与で家を渡すと、渡した側に税金がかかることがある
まず押さえておきたいのは、財産分与で不動産を渡した場合、受け取る側だけでなく、渡す側にも税金の問題が出ることがあるという点です。
離婚に伴う財産分与は、結婚生活の中で夫婦が協力して築いた財産を分けるものです。
そのため、受け取った側にすぐ贈与税がかかる、という単純な話ではありません。
ただ、税務では、不動産を財産分与として渡した場合、
「その不動産を時価(そのときの市場価格)で相手に譲った」
と考えることがあります。
少し不思議に感じるかもしれませんが、イメージとしては、
「現金の代わりに家で精算した」
という見方です。
そのため、買ったときより家の価値が上がっていると、渡した側に「譲渡所得(不動産などを譲ったことで生じる利益)に対する税金」がかかることがあります。
しかも、家を渡しただけで現金は入ってこないため、税金だけが発生する形になることもあります。
ここは、離婚時の不動産で特に見落とされやすいポイントです。
離婚後に渡すなら、3,000万円控除が使える可能性もある
財産分与で自宅を渡す場合、税金を軽くする方法はあるのでしょうか。
そこで関係してくるのが、居住用財産の3,000万円特別控除です。
これは、自宅を売ったときの利益から、一定の条件のもとで最大3,000万円まで差し引けるしくみです。
この特例が使えれば、税負担が大きく変わることがあります。
ただし、この特例には大切な条件があります。
渡す相手が配偶者など特別に近い関係(税務上「特殊関係者」といいます)にある場合は使えません。
つまり、離婚前に配偶者へ渡す場合は使えません。
一方で、離婚後に元配偶者へ渡す場合には、その時点ではもう法律上の配偶者ではありません。
そのため、ほかの条件を満たせば、この3,000万円控除を使える可能性が出てきます。
ただし、元配偶者なら必ず大丈夫とは言い切れない
ここでひとつ注意したい点があります。
離婚後の元配偶者であっても、必ず「特殊関係者」に当たらないと言い切れるわけではありません。
通常、元配偶者が特殊関係者に当たりにくい理由は、次の2点です。
・離婚後はもう法律上の「配偶者」ではない
・生活が完全に別になっていれば、「生計を一にする親族(同じ財布で生活している家族)」にも当たりにくい
このため、離婚後にそれぞれ独立して生活しているなら、一般的には特殊関係者には当たりにくいと考えられます。
ただし、話はそれで終わりではありません。
たとえば離婚後も、慰謝料や生活費の支払いによって元配偶者の生活が実質的に支えられているような場合、
「渡す側の資金で生活している人」
とみられる余地があります。
たとえるなら、戸籍の上では別々でも、生活のお金の面ではまだ強くつながっている状態です。
そうなると、「特殊関係者」に当たる可能性を完全には否定できません。
つまり、「離婚したかどうか」だけでなく、実際の生活の実態まで見て判断されるということです。
送金があるかどうか、その金額はどの程度か、元配偶者がどれくらいそれに頼っているか、といった点が大切になります。
別居している場合は、その家が本当に「自宅」かも確認が必要
もうひとつ気をつけたいのが、その不動産が税務上「自宅」といえるかという点です。
3,000万円控除は、自分が住んでいた家について使う制度です。
そのため、離婚前から長く別居していて、すでに別の場所で生活している場合には注意が必要です。
たとえば、数年前から別居していて、家を渡す側が別のマンションを借りて暮らしているような場合、もとの家について「自分の居住用財産」といえるのかが問われることになります。
ここは、住民票だけで決まる話ではありません。
実際にどこで生活していたのか、どれくらいの期間別居していたのか、生活の中心がどこにあったのか—そうした事情を見て判断されます。
「元は自宅だったから大丈夫」と考えるのは、少し危険です。
離婚前に贈与すれば、配偶者控除が使えることもある
では、離婚後の財産分与ではなく、離婚前に配偶者へ贈与する形を取ればどうでしょうか。
この場合、条件を満たせば、贈与税の配偶者控除が使える可能性があります。
これは、婚姻期間が20年を超える夫婦の間で、居住用不動産やその購入資金を贈与したときに使える制度で、最大2,000万円まで税負担を軽くできる可能性があります。
主なポイントは次のとおりです。
・婚姻期間が20年を超えている
・贈与を受けた配偶者がその家に実際に住む
・その後も住み続ける見込みがある
こうして見ると、場合によっては、離婚後の財産分与より、離婚前の贈与の方が有利に見えることもあります。
でも、名前が「贈与」でも中身が財産分与なら注意
ここでとても大切なのが、税務は「名前」より「中身」を見るということです。
たとえば、書類の上では「贈与」となっていても、実際にはすでに離婚の話し合いが具体的に進んでいて、
「離婚の条件としてこの家を渡す」
という話になっている場合には、税務上は実質的に財産分与の一部とみられる可能性があります。
ラベルだけ貼り替えても、中身までは変わらないという話に近いです。
箱に「贈与」と書いてあっても、中身が「離婚に伴う財産の清算」なら、税務ではそちらで判断されることがあるわけです。
そのため、単に離婚前に名義を移したからといって、必ずしも贈与税の配偶者控除が使えるとは限りません。
離婚協議がどこまで進んでいたのか、不動産を渡す目的は何だったのか、という実際の事情が大切になります。
離婚時の不動産は「いつ・どういう理由で渡すか」が大事
ここまで見てきたように、離婚に伴う不動産の移転は、見た目が似ていても、少し事情が違うだけで税金の扱いが変わります。
確認しておきたいポイントをまとめると、次のとおりです。
・不動産を渡すのは離婚前か、離婚後か
・書類上は贈与でも、実質は財産分与ではないか
・その不動産は税務上「自宅」といえるか
・離婚後の元配偶者が、なお相手の資金で生活していないか
・特例が使える場合と使えない場合で、税額がどのくらい変わるか
特に、不動産を渡した側に税金が出る可能性がある以上、「名義変更ができるか」だけでなく、「税金がどうなるか」まで確認しておくことが大切です。
まとめ
離婚に伴って自宅を相手に渡す場合、単に「夫婦の財産を分けるだけ」と考えてしまうと、思わぬ税負担につながることがあります。
ポイントを整理すると、次のとおりです。
財産分与で不動産を渡すと、渡した側に税金が出ることがある
受け取る側ではなく、渡す側に譲渡所得の税金が生じる可能性があります。
離婚後の引渡しなら3,000万円控除を検討できることもあるが、条件に注意
別居の状況や生活の実態によっては、使えないこともあります。
離婚後の元配偶者は通常「特殊関係者」に当たりにくいが、生活実態を確認
離婚後も生活費や慰謝料などで生活が支えられている場合には、注意が必要です。
書類上は「贈与」でも、実質が財産分与なら特例が使えないことも
税務は名目ではなく、実際の事情で判断されます。
結局のところ、離婚時の不動産は、
「いつ渡すのか」「どういう理由で渡すのか」「実際の生活はどうなっているのか」
この3つがとても大切です。
見た目が同じでも、税金の結論は大きく変わることがあります。
形式だけで判断せず、実態を丁寧に確認することが、トラブルを防ぐ一番の近道です。
なお、具体的な税額や適用できる特例については、ご自身の状況によって異なります。
早めに税務署にご相談されることをおすすめします。






