「α世代が入ってくる前に」社長が先に整える“会話の土台”

α世代との世代間コミュニケーション戦略

結論を先に一言で
「α世代に合わせる」よりも、全世代が同じ方向を向ける”意味”を会社が用意することが大事です。

30秒でわかる要約

何が起きた?

2010年代生まれの「α世代」が、これから社会に出てきます。
デジタルに強い一方で、対面のコミュニケーションには不安も指摘されています。

なぜ大事?

経営者や上司の立場で「どう接すればいいかわからない」という声が増えているからです。

生活にどう関係する?

職場の人間関係や、チームの回し方に直結します。
世代のせいにするより、「会話の仕組み」を整えるほうが現実的です。

何が起きた?—「α世代」ってどんな人たち?

まず、「α世代」という言葉を聞いたことがない方もいると思うので、簡単に説明します。

α世代とは、2010年〜2024年ごろに生まれた子どもたちのことです。
2026年の今、いちばん上の子で15〜16歳。まだ社会人になっている人は少ないですが、あと数年で職場に入ってきます。

この世代の特徴として、よく言われるのは次の3つです。

生まれたときからスマホやタブレットがある

「デジタルネイティブ」どころか、AIと一緒に育った「真のデジタル世代」とも呼ばれます。

動画やSNSでの発信に慣れている

文字より映像、長文より短いメッセージが得意な傾向があります。

一方で、対面のやりとりには不安も

オンライン上では意見を言えるけれど、目の前で人と話すのは苦手、という声もあります。

つまり、「すごく得意なこと」と「まだ慣れていないこと」の差が大きい世代、と言えるかもしれません。

なぜ起きた?—α世代が注目される背景

ここで「なぜ今、α世代の話が会社の話になるの?」という疑問が出てくると思います。

理由はシンプルで、これからの日本は、どの世代も「先が読みにくい」時代になるからです。

たとえば、住宅のことを考えてみてください。

2026年の今、東京でマンションを買おうとすると、平均で7,000万円を超えることも珍しくありません。
親の世代が「がんばって働けば家が買えた」時代とは、だいぶ様子が違います。

α世代が大人になる頃には、この傾向がさらに進むかもしれません。
「住宅ローン控除があるから大丈夫」とは言いにくい状況です。

たとえるなら、登山に近い話です。

天気がいい日(景気が安定している時代)なら、多少チームワークが雑でも山頂にたどり着けます。

でも、天気が荒れている日(先が読みにくい時代)は、「声かけ」「歩幅を合わせる」「休憩のタイミング」といった基本ができていないと、隊がバラバラになりやすい。

今の経営環境は、まさにこの「荒れやすい天気」の側にあります。

だからこそ、「若い世代とどう一緒に働くか」が、単なる世代論ではなく、会社の運営そのものの話になってきているのです。

生活への影響—職場でなにが起きる?

α世代が職場に入ってきたとき、良い面と注意が必要な面の両方があります。

良い面

デジタルツールの習得が早い

新しいシステムやアプリへの抵抗が少なく、すぐ使いこなせる可能性が高いです。

発信力がある

SNSや動画での情報発信を任せると、思わぬ成果を出すこともあります。

「なぜそうするのか」を大事にする

理由がわかれば納得して動く傾向があり、言われたからやる、ではなく、意味を求めます。

注意が必要な面

「言わなくてもわかるでしょ」が通じにくい

暗黙のルールや「空気を読む」前提が共有されていないことがあります。

対面でのやりとりに不慣れな場合がある

文字では言えても、目の前で話すと緊張する、という人もいます。

フィードバックの受け止め方に差がある

厳しい言い方をされると、必要以上に落ち込むケースも報告されています。

ここで大事なのは、これは「α世代が悪い」という話ではない、ということです。

どの世代にも得意・不得意があります。
問題は、その違いを「翻訳」する仕組みが会社にあるかどうか、です。

事例—従業員10人前後の会社で起きること

ここからは、もう少し具体的に、小さな会社で起きそうなケースを見てみましょう。

事例1:元部下が上司になったとき

従業員12人のサービス業を想像してください。

数年後、20代の若手がリーダーになり、40代のベテランがその部下になる。
これは今でも珍しくありません。

ここで起きがちなのは、こんな食い違いです。
・ベテラン:「言わなくても察して動いてほしい」
・若手(α世代):「ルールが見えない。判断の根拠を文字でほしい」
・社長:「どっちも間違ってないけど、かみ合わなくて仕事が止まる」

これは、能力の問題ではなく、「翻訳」が足りないだけです。

たとえるなら、料理のレシピに近いです。
ベテランは「塩は適量」「いい感じになったら火を止める」で料理ができます。
長年の経験があるからです。

でも、初めて料理する人には「塩は小さじ1」「3分たったら火を止める」と数字で書かないと、同じ味にならない。

どちらが正しいわけでもなく、「書き方を揃える」だけで解決することが多いのです。

社長が打てる手

・「約束ごと」を紙1枚にまとめる(返信はいつまで?困ったら誰に聞く?判断の基準は?)
・月に1回、15分だけ「困っていること」を共有する時間を作る
・話すときのルールを決める(否定から入らない、結論→理由→次にやること、の順番で話す)

事例2:SNS発信を任せたら思わぬトラブルに

従業員9人の飲食店を想像してください。

「α世代は発信が得意だから、SNSを任せよう」と考えたとします。
ところが、ここに落とし穴があります。

発信の「技術」はあっても、「この店は何のためにあるのか」という意味が共有されていないと、投稿がバラバラになります。
お店の雰囲気が伝わらなかったり、言い方が誤解されてクレームになったり。

「任せる」ではなく、「一緒に作る」が正解です。

社長が打てる手

・まず「うちの店の存在意義」を30秒で言える形にする
例:「うちは”早い・安い”じゃなくて、”疲れた人がホッとできる味”を出す店」
・投稿する前に「3つだけ守るルール」を決める
例:お客さんをネタにしない、競合の悪口を言わない、断定しない(推測は「たぶん」と書く)
・α世代の強み(テンポ、編集、短い動画)に、上の世代の強み(現場の経験、言葉の重み)を足す

料理でたとえると、「強火だけ」だと焦げます。
弱火でじっくり火を通す経験があると、ちょうどいい仕上がりになる。

世代の強みを「足し算」する発想が大事です。

不安定な時代だからこそ、会話の土台を整える

ここまで読んで、「結局どうすればいいの?」と思った方もいるかもしれません。

答えはシンプルです。

「敬意」と「共通の目的」を、会社の中に用意すること。

時代の流れが速いからこそ、どの世代も「知らないこと」が増えています。
ベテランだってスマホの新機能についていけないこともあるし、若手だって対面の交渉は苦手かもしれない。

だから、「知らないことがあっても恥ずかしくない」「お互いに教え合える」という空気を作ることが大事です。

これは精神論ではなく、実務の話です。

住宅が買いにくい、世界情勢が不安定、AIが普及する—こうした「個人ではどうにもならない波」が強いほど、職場のストレスは「すれ違い」として出やすくなります。

だから社長の仕事は、能力を評価するより先に、会話が壊れない仕組みを用意することです。

まとめ—大事なポイント3つ

世代で決めつけない

α世代だから、ベテランだから、ではなく、「その人」を見る。
得意・不得意は人それぞれ。

「翻訳」の仕組みを作る

暗黙のルールを言葉にする、約束ごとを紙にまとめる。
これだけでかなりの衝突が防げる。

会社の「意味」を共有する

何のためにこの仕事をしているのか、30秒で言える形にして、全員で持つ。

今日できる一歩

明日からできることを、3つに絞ります。

1.自社の「存在意義」を30秒で言えるように書き出す(できれば社員にも共有する)
2.「約束ごと」を紙1枚にまとめる(返信の期限、相談する順番、判断の基準)
3.月1回、15分だけ「困りごと共有」の時間を作る(話す順番は「結論→理由→次にやること」で)

世代は変わります。環境も変わります。
でも、敬意と会話の土台は、会社が作れます。

そこが整っていれば、α世代の発信力も、ベテランの経験も、きっと「会社の力」として活きてきます。