インボイスを発行しない相手からの仕入れで、消費税を差し引けるルールが変わります
はじめに ─ この文章で伝えたいこと
インボイス制度が始まってから、「インボイスを出せない相手(免税事業者など)から買った分は、消費税を全額は差し引けない」というルールになりました。
ただし、急な負担増を避けるため、しばらくの間は「一部だけ差し引いてOK」という特例が設けられています。
この特例のことを、ここでは「経過措置」と呼びます。
今回、この経過措置の内容が見直される方針が出ました。
ポイントは2つあります。
1つ目は、差し引ける割合の下がり方がゆるやかになること(その代わり、特例の期限は2年延びます)。
2つ目は、特例を使える上限額が大きく引き下げられることです。
以下、順番にご説明します。
今のルール(おさらい)
現在は、インボイスを出せない相手からの仕入れでも、一定の割合までは消費税を差し引くことが認められています。
具体的には、令和5年10月から令和8年9月までは80%、令和8年10月から令和11年9月までは50%を差し引くことができます。
また、令和6年10月以降は、「同じ相手からの仕入れが年間で税込10億円を超えた分」については、この特例が使えなくなっています。
見直し案のポイント(令和7年12月発表の税制改正大綱より)
今回示された方針では、次のように変わる予定です。
差し引ける割合の変更
現行ルールでは、令和8年10月から差し引ける割合が50%に下がる予定でした。
しかし見直し案では、令和8年10月からの2年間は70%に据え置かれます。
その後、令和10年10月から50%、令和12年10月から30%と、段階的に下がっていきます。
つまり、「50%に下がるタイミングを2年後ろ倒しにして、段階的に減らしていく」という方向です。
特例の最終期限は、令和13年9月末まで延びる形になります。
特例を使える上限額の引き下げ
同じ相手からの仕入れについて、特例を使える上限が年間10億円から1億円に引き下げられる見込みです。
仕入れ規模が大きい会社ほど、この変更の影響を受けやすくなります。
なお、この見直し案は「税制改正大綱」という政府の方針であり、正式には国会で法律が成立して初めて確定します。
今後の国会審議によって、内容が変わる可能性もありますので、その点はご留意ください。
結局、何が起きるの?(かんたんに言うと)
ひと言でまとめると、「インボイスを出せない相手から買ったとき、将来になるほど消費税を差し引ける額が減る=実質的なコストが増える」ということです。
たとえば、税込110万円(うち消費税10万円相当)の仕入れをした場合で考えてみましょう。
80%差し引けるときは約8万円、70%のときは約7万円、50%のときは約5万円、30%のときは約3万円が差し引ける目安になります。
同じ仕入れでも、将来ほど買い手側の負担が大きくなる、というわけです。
今からできる備え
「また制度が変わるのか…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
だからこそ、早めに整理しておくと安心です。
まず、主な仕入先や外注先が「インボイスを発行できる事業者かどうか」を一覧にしておきましょう。
免税事業者との取引が多い場合は、消費税分の価格をどうするか、取引条件を見直すかどうか、相手がインボイス登録をする予定があるかといった点を、早めに話し合っておくと後から慌てずに済みます。
また、同じ相手からの仕入れが年間1億円を超えそうな場合は、上限の引き下げで影響が出る可能性がありますので、事前に確認しておきましょう。
この経過措置を使うには、帳簿に「経過措置の対象である旨」を記載するなど、一定の保存要件があります。
記載漏れがないか、今のうちに確認しておくと安心です。
まとめ
今回の見直し案は、「制度を先送りする」というよりも、「負担が増えるペースをゆるやかにして、準備期間を長くする」という方向です。
ただし、令和10年10月、令和12年10月と、節目ごとに差し引ける割合が下がるため、その時期が近づくたびに議論が起こる可能性は十分あります。






