みんなと同じが正解とは限らない─流行に振り回されない「自分の軸」のつくり方

自分の軸をつくる

「みんなと同じが正解とは限らない」

私はこの感覚が、いまの経営にいちばん効くと思っています。

最近、顧問先の社長さんたちとお話ししていて感じることがあります。
「周りがやっているから」「流行っているから」という理由で判断される場面が、以前より増えたのではないかということです。

世の中が「早く・安く・効率よく」に向かうほど、同じ情報、同じ判断、同じ動きになりやすい。
すると差がつかない。
最後は体力勝負になってしまいます。
資金も人手も限られる小さな会社にとって、これは厳しい戦い方です。

では、どうすれば良いか。

新聞や本を読み、背景を考え、この先を想像して視界を広げることです。
多くの人がやっていないからこそ、やる意味がある。
そして、これが回り回って「自分の軸」、つまりぶれない判断のものさしをつくる。私はここが本質だと思います。

「みんなと同じ」に向かいやすい時代

仕事では生産性、つまり同じ時間でより多くの成果を出すことを求められます。
私生活でも動画やSNS、ネットショッピングなど「短時間で満足」を促すものが増えました。
忙しい毎日のなかで、効率を求めるのは自然なことです。

ここで大事なのは、効率化そのものは悪ではないということ。
問題は、みんなが効率化に走ると、思考まで早送りになりやすい点です。

たとえるなら、登山で「最短ルート」ばかり選ぶ状態に似ています。
確かに早く山頂に着きます。
でも景色を見る余裕がない。
足元の石につまずきやすい。
そして意外と疲れる。

経営も同じです。
短い会議、短い文章、短い結論だけで回そうとするほど、見落としが増えます。
あとから手戻り、つまりやり直しが発生すると、結局は時間もお金も余計にかかってしまいます。

「ムダな時間」は本当にムダなのか

ここで「小さな会社の経営」に話を落とします。

ポイントは、ムダな時間イコール「サボり」ではない、という整理です。

一見ムダに見える時間のなかに、判断の精度を上げたり、人が辞めにくくなったり、値上げの説明がうまくなったりする「芽」があります。
その芽を摘んでしまうと、あとで大きなコストになって返ってくる。
私はそう考えています。

具体的にどういうことか、二つの事例でお伝えします。

事例1:社長の「読む・考える」を仕事として予定に入れる

従業員10人ほどの工務店、飲食店、EC事業者さんなどを思い浮かべてください。
日々の電話、現場対応、クレーム処理で、社長の頭は常に満員御礼状態です。

ここで「空き時間ゼロ」が続くと、判断が「反射」になります。
周りが値上げしているからうちも値上げ。
SNSで流行っているからとりあえず導入。
同業がやっているから真似してみる。こうなりがちです。

もちろん、それで当たることもあります。
でも、うまくいかなかったときに「なぜダメだったか」「次はどうするか」を考える材料がない。
判断の軸がないまま、また次の流行を追いかけることになります。

そこで提案したいのが、週に1回でもいいので「読む・考える」を予定に入れることです。

たとえば、こんな流れです。
・新聞や業界紙を読む(10分から20分)
・「なぜ今これが起きたのか」をメモにする(5分)
・「うちならどうする」を1行だけ書く(3分)

合計で30分もかかりません。
この「遠回り」が、視界を広げて、自分の軸を定めることに直結します。

重要なのは、読んだ量ではありません。
背景を考えるひと呼吸があるかどうかです。
このひと呼吸があると、同じニュースを見ても「自社の打ち手」に変換できるようになります。

事例2:チームに「雑談の余白」をつくり、離職とミスを減らす

「雑談」「飲み会」など、人との交流が「無駄なもの」として挙げられることがあります。
確かにタイムパフォーマンスという観点では、削りたくなる時間かもしれません。

しかし、小さな会社ほど、実はこれが効きます。
なぜなら、10人規模の会社では、一人の不調や退職の影響がとても大きいからです。

たとえば、毎朝の5分ミーティングを「数字と連絡事項だけ」で終わらせる。
タイパ的には正しい判断に見えます。

でも、その結果として「言いにくいこと」が溜まるとどうなるか。
現場のミスや不満が、あとから一気に噴き出します。
結局、社長が火消しに追われることになる。これは「効率化の副作用」です。

そこで試していただきたいのが、週に2回だけでも、ミーティングの最後の3分を「最近気になったこと」の時間にすることです。
仕事の話でも私生活の話でも構いません。

たった3分でも、空気が緩むと情報が出てきます。
「仕入れが遅れそうです」「お客さんがこんなこと言っていました」「新人の○○さん、実は困っているみたいです」。
こうした早期発見が増えます。

これはサボりではありません。
事故を小さくするための保険です。

一見ムダな時間でも、気持ちが整う、考えがまとまるからこそ価値がある。
会社でも同じで、雑談の余白は「人の回復」につながります。
回復できる職場は、人が辞めにくい職場でもあります。

まとめ:「遠回り」を経営の予定に入れる

タイパやコスパという言葉が広がるのは自然なことです。
忙しいから。
情報が多いから。
みんながそう言うから。

でも、みんなと同じが正解とは限りません。
むしろ同じになった瞬間、差が消えます。

だからこそ、新聞や本を読み、背景を考え、この先を想像する。
多くの人がやっていない「遠回り」を、経営の予定に組み込む。
それが自分の軸をつくり、流行に振り回されない判断につながる。
私はそう考えています。

最後に、明日からできることを三つだけ挙げておきます。
一つ目。予定表に「読む・考える」15分を固定で入れてください。「空いたらやる」だと、永遠に空きは生まれません。
二つ目。ニュースを見たら「なぜ今なのか」を1行メモしてください。答えが出なくても構いません。考える癖そのものが、軸になっていきます。
三つ目。会議の最後3分を「雑談OK」にしてください。現場の小さな異変を、早めに拾うためです。

効率は大事です。
でも効率だけだと、人も会社も息切れします。

「ムダに見える時間」を、あなたの軸を太くする時間に変えていきましょう。