「休日出勤=1.25倍」ではない?パートの割増賃金を具体例でわかりやすく解説
「普段は月曜日から金曜日まで働いているパートさんに、土曜日も出勤してもらいました。休日出勤なので時給は1.25倍でしょうか?」
「お盆休みに出勤してもらった場合は、1.35倍にしなければならないのでしょうか?」
給与計算をしていると、このような疑問が出てくることがあります。
一般的な感覚では、「会社が休みの日に出勤したのだから、休日出勤」と考えます。
そのため、休日出勤=25%増し、あるいは休日出勤=35%増しと思われている方も少なくありません。
しかし、労働基準法上は、それほど単純ではありません。
たとえば、普段は月曜日から金曜日まで、1日5時間、週25時間働いているパートさんに、会社が休みとしている土曜日に5時間出勤してもらった場合。
一定の条件を満たせば、通常の時給、つまり1.00倍で計算して問題ありません。
同じことは、会社が定めたお盆休みや年末年始休みに出勤してもらった場合にも当てはまることがあります。
休日出勤の割増賃金を正しく判断するために大切なのは、「会社が休みの日だったか」ではなく、「労働基準法上、その日がどのような休日なのか」という点です。
今回は、
・法定休日とは何か
・法定外休日とは何か
・土曜日に働いた場合は何割増しになるのか
・パートさんの場合はどう考えるのか
・お盆休みや年末年始休みに働いたらどうなるのか
・祝日に働いた場合はどうなるのか
・「土日休み」としか決めていない場合はどうするのか
・1日8時間・週40時間との関係
・週44時間の特例とは何か
・36協定との関係
・振替休日と代休の違い
などについて、具体例を使いながら整理していきます。
「休日出勤」という言葉だけでは割増率は決まらない
最初に、この記事で最も重要なことを押さえておきましょう。
「休日に出勤した」という事実だけでは、割増率は決まりません。
休日出勤について考える場合、まず確認するのは、その日が「法定休日」なのか、それとも「法定外休日」なのかです。
法定休日であれば、原則として35%以上の割増が必要です。
一方、法定外休日であれば、「休日に働いた」という理由だけで35%増しになるわけではありません。
その場合はさらに、1日8時間・1週40時間という法定労働時間を超えているかを確認します。
したがって、「土曜日だから1.25倍」「日曜日だから1.35倍」「祝日だから割増し」「お盆休みだから割増し」と曜日や名称だけで判断するのではなく、労働基準法上の区分を確認する必要があります。
パートでも正社員でも割増賃金の基本ルールは同じ
まず確認しておきたいのは、パート・アルバイトだから割増賃金のルールが違うわけではないということです。
労働基準法上の時間外労働や休日労働の割増賃金に関するルールは、原則として雇用形態にかかわらず適用されます。
厚生労働省も、法定時間外労働については25%以上、法定休日労働については35%以上、深夜労働については25%以上の割増賃金が必要であることを示しています。
したがって、「パートだから休日出勤の割増しは必要ない」という考え方は正しくありません。
一方で、「パートでも休日に出れば必ず割増し」というわけでもありません。
この違いを理解するために、まず「法定休日」から確認していきましょう。
法定休日とは
労働基準法では、使用者は原則として労働者に、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています。
また、一定の方法によって、4週間を通じて4日以上の休日を与えることも認められています。
この労働基準法上必要となる休日が、法定休日です。
そして、この法定休日に働かせた場合には、35%以上の休日割増賃金が必要になります。
通常の時給を1.00とすると、1.35倍以上です。
たとえば、通常時給が1,200円なら、
1,200円 × 1.35 = 1,620円
となります。法定休日に5時間勤務した場合なら、
1,620円 × 5時間 = 8,100円
となります。
法定外休日とは
一方、会社が休日としている日がすべて法定休日になるわけではありません。
たとえば、土曜日・日曜日を休みとしている完全週休2日制の会社を考えてみましょう。
会社が、日曜日を法定休日と定めている場合には、土曜日も会社としては休日ですが、法律上の法定休日ではありません。
このような休日を、法定外休日といいます。
厚生労働省は、「所定休日」のうち「法定休日」以外の日を「法定外休日」と整理しています。
たとえば、
・月曜日~金曜日 所定労働日
・土曜日 法定外休日
・日曜日 法定休日
という形です。
土曜日も会社にとっては「休日」ですが、法定休日ではありません。
したがって、土曜日に出勤した=35%増しとはならないのです。
土曜日に出勤しても1.25倍とは限らない
「35%増しではないとしても、休日出勤なら25%増しなのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、これも必ずしもそうではありません。
法定外休日に出勤しただけでは、労働基準法上の25%割増が当然に発生するわけではありません。
そこで確認するのが、法定労働時間です。
原則は「1日8時間・週40時間」
労働基準法では、原則として法定労働時間を、1日8時間、1週間40時間としています。
この法定労働時間を超えた部分について、原則として、25%以上の時間外割増賃金が必要です。
したがって、通常時給 × 1.25以上となります。
ここで重要なのは、会社が決めた勤務時間を超えたことと、労働基準法上の法定労働時間を超えたことは同じではないという点です。
パートさんは「所定労働時間」と「法定労働時間」を区別する
たとえば、9時から15時まで勤務し、途中1時間休憩するパートさんがいるとします。
実際の労働時間は、6時間-休憩1時間=5時間です。
この5時間が、そのパートさんの通常の所定労働時間だったとします。
ある日だけ2時間長く働いて、実働7時間になったとします。
通常より2時間多く働いているので、日常会話では「残業」と呼ぶことがあります。
しかし、1日の実労働時間は7時間です。
法定労働時間である8時間を超えていません。
その週の労働時間も40時間以内であれば、この2時間について労働基準法上の25%割増が当然に必要になるわけではありません。
つまり、所定労働時間を超えた時間と、法定労働時間を超えた時間は別物です。
具体例:月~金、1日5時間勤務のパートさん
では、具体的に考えてみましょう。
パートさんの勤務条件が、
・月曜日~金曜日
・勤務時間 9時~15時
・休憩時間 1時間
だとします。
実働は、1日5時間です。
通常の1週間の労働時間は、5時間 × 5日=25時間です。
そして土曜日・日曜日は休みとします。
このパートさんに、会社が休みとしている土曜日にも5時間働いてもらいました。
すると、25時間+5時間=週30時間です。
1日についても8時間を超えていません。
1週間についても40時間を超えていません。
そして土曜日が法定外休日であれば、法定休日労働にも、法定時間外労働にも該当しません。
したがって、就業規則や雇用契約等に会社独自の割増規定がなければ、通常時給1.00倍で計算できます。
厚生労働省も、法定外休日に働いた場合、週40時間を超えた部分について25%以上の時間外割増が必要になると説明しています。
裏を返せば、法定外休日に働いても法定労働時間を超えなければ、法律上の時間外割増は発生しないということです。
時給1,200円の場合の計算
通常時給が1,200円で、土曜日に5時間勤務したとします。
法定休日ではなく、1日8時間・週40時間も超えていなければ、
1,200円 × 5時間 = 6,000円
です。
1.25倍にする必要はありません。
1.35倍にする必要もありません。
これは、「パートだから割増しがない」のではありません。
正確には、法定休日ではなく、法定労働時間も超えていないため、労働基準法上の割増賃金が発生しないということです。
毎日8時間勤務する人なら同じ土曜日出勤でも結論が変わる
同じ土曜日出勤でも、通常の勤務時間によって結論が変わります。
たとえば、月曜日から金曜日まで毎日8時間勤務している人を考えてみます。
月曜日~金曜日ですでに、8時間 × 5日=40時間働いています。
さらに、法定外休日である土曜日に5時間勤務すると、週45時間になります。
この場合、土曜日そのものは法定休日ではないので、35%の休日割増ではありません。
しかし、すでに週40時間を超えるため、原則として土曜日の5時間について、25%以上の時間外割増が必要になります。
つまり、同じ土曜日出勤でも、Aさんは1.00倍、Bさんは1.25倍ということがあり得ます。
「週40時間」には一部例外がある
ここで一つ重要な補足があります。
これまで、「1日8時間・週40時間」と説明してきましたが、これは原則です。
常時使用する労働者が10人未満の一定の事業場については、週44時間を法定労働時間とする特例があります。
対象となるのは、
・商業
・映画・演劇業(映画製作の事業を除く)
・保健衛生業
・接客娯楽業
のうち、常時10人未満の労働者を使用する一定の事業場です。
たとえば、小規模な小売店や飲食店、理美容業などでは、この44時間特例に該当する可能性があります。
したがって、実際の給与計算では、その事業場が週44時間の特例措置対象事業場に該当するかどうかも確認する必要があります。
ただし、今回の例のように通常週25時間、土曜日を加えても週30時間というケースであれば、40時間か44時間かにかかわらず結論は変わりません。
なお、この週44時間特例については、厚生労働省の労働基準関係法制研究会で廃止の方向性が示されており、将来的に週40時間へ一本化される可能性があります。2026年8月時点ではまだ現行の制度が続いていますが、該当する事業場は今後の動向も併せて確認しておくと安心です。
お盆休みは法定休日ではない
夏になると、「8月13日から15日はお盆休み」という会社も多いでしょう。
では、お盆休みは労働基準法上の「法定休日」なのでしょうか。
答えは、お盆だからという理由だけで法定休日になるわけではありません。
労働基準法に、「8月13日~15日は必ず会社を休みにしなければならない」という規定があるわけではありません。
したがって、お盆休み=法定休日ではありません。
お盆休みは会社が「所定休日」として設定できる
会社が、労働契約や就業規則、会社カレンダー等によって、「8月13日~15日は夏季休日」などとあらかじめ定めることはできます。
厚生労働省は、所定休日について、労働契約、就業規則、労働協約等によって労働者が勤務を要さない日として定められた日と説明しています。
また、厚生労働省の2025年12月版モデル就業規則でも、休日の例として、
・土曜日・日曜日
・国民の祝日
・年末年始
・夏季休日
・その他会社が指定する日
という形が示されています。
したがって、あらかじめ会社の休日として定めた夏季休日であれば、その日は所定休日として整理できます。
ただし、その所定休日のすべてが法定休日になるわけではありません。
法定休日以外の夏季休日については、基本的には法定外休日として扱います。
「今年はお盆だから休みにしよう」と後から決める場合は注意
ここは特に注意したいポイントです。
たとえば雇用契約上、「月曜日から金曜日まで勤務」となっており、会社カレンダーや就業規則にも夏季休日について特に定めがなく、本来なら8月13日・14日は勤務日だったとします。
その状態で会社側が後から、「今年はお盆なので13日・14日は会社を閉めます。休んでください」とした場合です。
このケースは、最初から所定休日として設定されていたケースとは区別して考える必要があります。
本来の所定労働日に、会社側の事情によって労働者を休ませれば、労働基準法第26条の休業手当の問題が生じる可能性があります。
使用者の責に帰すべき事由によって休業させた場合には、原則として、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。
したがって、「お盆だから会社を休みにしたので、時給制パートには何も払わない」と単純に処理できるとは限りません。
「最初から休日」と「後から会社都合で休ませる」は違う
この違いは非常に重要です。
あらかじめ夏季休日として設定していた場合、就業規則や労働条件、会社カレンダー等によって、「8月13日・14日は夏季休日」とあらかじめ定めていたのであれば、最初から労働義務のない所定休日として整理できます。
一方、本来の勤務日を後から休みにした場合、本来は通常の勤務日だったが、会社の都合で、「今年はお盆だから休んでください」と後から休ませたのであれば、会社都合の休業として休業手当の問題が生じる可能性があります。
したがって、夏季休日を設ける会社では、あらかじめ休日として位置付けておくことが重要です。
今回の8月13日・14日のケースの計算
具体例として考えてみましょう。パートさんは通常、月曜日から金曜日まで勤務。勤務時間は、9時~15時、休憩1時間。実働は1日5時間です。
会社では2026年8月13日(木)・14日(金)をお盆休みとしていました。
しかし、実際には、13日・14日の両日とも出勤したとします。
この場合、実際に休業しているわけではないため、13日・14日について休業手当を支払うかどうかという問題は生じません。
問題になるのは、実際に働いた時間について何倍の時給を支払うかです。
13日・14日が法定休日ではなく、1日8時間を超えず、その週の実労働時間も原則40時間を超えなければ、労働基準法上の割増賃金は発生しません。
したがって、就業規則や雇用契約等に独自の休日出勤割増の定めがなければ、通常時給1.00倍で計算できます。
たとえば時給1,200円、1日5時間なら、
8月13日 1,200円 × 5時間 = 6,000円 8月14日 1,200円 × 5時間 = 6,000円
2日間で、12,000円です。「お盆休みだった」という理由だけで1.25倍や1.35倍になるわけではありません。
土曜日出勤を加えても週40時間以内なら
同じパートさんが、月曜日から金曜日まで合計25時間勤務し、さらに土曜日に5時間勤務したとしても、25時間+5時間=30時間です。土曜日が法定外休日であれば、1日8時間以内、週40時間以内ですから、この土曜日の5時間も原則として、通常時給1.00倍となります。
したがって今回のような短時間パートでは、会社の休業日・土曜日に複数回出勤していても、実労働時間が法定労働時間以内に収まっているため、法律上の割増賃金が発生しないケースがあります。
年末年始休みも基本的な考え方は同じ
年末年始についても、「12月29日から1月3日は年末年始休暇」という会社は多いと思います。
しかし、年末年始だから自動的に法定休日になるわけではありません。
厚生労働省のモデル就業規則では年末年始や夏季休日を会社の休日として定める規定例が示されていますが、労働基準法が12月29日や1月2日などを一律に法定休日としているわけではありません。
したがって、会社が年末年始休日として設定している日に出勤しても、その日が法定休日でなく、1日8時間・週40時間を超えなければ、法律上は通常時給でよい場合があります。
もちろん、会社が、「年末年始勤務は25%増し」「12月31日~1月3日は50%増し」など、法律より有利な独自規定を設けている場合は、その規定に従う必要があります。
祝日に出勤しても1.35倍とは限らない
祝日についても、よく誤解があります。
「祝日は休日だから、出勤すれば35%増し」と思われるかもしれません。
しかし、国民の祝日=労働基準法上の法定休日ではありません。
厚生労働省も、労働基準法では何曜日を休日とするか、国民の祝日を休日とするかについて規定していないと説明しています。
したがって、祝日を通常勤務日としている会社であれば、祝日に働いても通常勤務です。
祝日を会社の所定休日としている場合でも、それが法定外休日なら、1日8時間・週40時間を超えない範囲では通常時給でよい場合があります。
つまり、祝日だから何割増しではなく、その祝日が会社においてどのような休日として位置付けられているかを確認する必要があります。
土日休みの場合、法定休日はどちらか
「うちの会社は土日休みですが、土曜日と日曜日のどちらが法定休日なのでしょうか?」これもよくある疑問です。
法定休日を、必ず日曜日にしなければならないという法律上の決まりはありません。
会社が就業規則等で、法定休日は日曜日とすると定めれば日曜日が法定休日になります。
厚生労働省も、土日休みで日曜日を法定休日と定めている場合には、日曜日の勤務について35%以上、土曜日については法定外休日として、週40時間を超えた部分に25%以上の時間外割増が必要になると説明しています。
法定休日を決めていない場合
現行法では、法定休日をあらかじめ特定すること自体が必須ではありません。
しかし、厚生労働省は、「毎週○曜日」など、就業規則等で法定休日をあらかじめ特定することが望ましいとしています。
理由は、給与計算や36協定の管理が分かりやすくなるからです。
土日休みで法定休日を決めていない場合
たとえば、土曜日・日曜日が所定休日で、法定休日を特に定めていないとします。
そして、土曜日に出勤し、日曜日は休んだという場合。
日曜日に1日の休日が確保されています。
したがって、土曜日の勤務が当然に35%増しの法定休日労働になるわけではありません。
厚生労働省も、完全週休2日制の場合、2日の休日のうち一方に働かせたとしても、もう一方の休日が確保されている限り、週休1日の原則には反しないと説明しています。
土曜日も日曜日も両方出勤した場合
少し複雑になるのが、土曜日も日曜日も両方働いた場合です。
就業規則等で週の起算日を定めていない場合には、原則として日曜日から土曜日までを1週間として取り扱います。
法定休日をあらかじめ特定していない会社で、日曜日と土曜日の両方に働いた場合について、厚生労働省は、暦週の中で後に位置する土曜日を法定休日労働として取り扱う例を示しています。
このように、法定休日を明確にしていないと、実際の勤務状況によって判断が複雑になります。
そのため、通常が月~金勤務、土日休みという会社なら、「法定休日は日曜日とする」などと明確にしておくと、給与計算の管理がかなりしやすくなります。
会社のルールを整理する方法
たとえば、
・土曜日
・日曜日
・国民の祝日
・夏季休日
・年末年始休日
・その他会社が指定する日
を休日とし、そのうえで、法定休日は日曜日とするという整理をしておく方法があります。
そうすれば、
・日曜日 法定休日なので、勤務すれば原則1.35倍以上。
・土曜日・祝日・夏季休日・年末年始休日 原則として法定外休日。その日に働いた結果、法定労働時間を超えた部分には原則1.25倍以上。法定労働時間以内なら原則1.00倍。
という形で整理しやすくなります。
ただし、実際に就業規則等を変更する場合は、会社の勤務体系や従業員数、変形労働時間制の有無なども考慮して設定する必要があります。
休日出勤の判断は3段階で考える
給与計算をする場合には、次の順番で確認すると分かりやすいでしょう。
第1段階 その日が法定休日かを確認する
法定休日なら、1.35倍以上です。そこで基本的には判断終了です。
なお、法定休日に8時間を超えて勤務したからといって、その部分についてさらに25%の時間外割増を重ねるわけではありません。
法定休日労働については休日割増35%以上が適用されます。
ただし、後述する深夜労働と重なれば、深夜割増は加算されます。
第2段階 法定労働時間を超えているかを確認する
法定外休日なら、原則として、1日8時間、1週40時間を超えたかを確認します。
超えた部分は、1.25倍以上です。
第3段階 どちらにも該当しない場合
法定休日ではなく、1日8時間・週40時間も超えていない。
この場合は、原則として、通常時給1.00倍です。
非常に簡単にまとめると、
・法定休日 → 1.35倍以上
・法定外休日+法定時間外 → 1.25倍以上
・法定外休日+法定労働時間以内 → 1.00倍
となります。
深夜まで働いた場合は別途25%の割増
午後10時から翌朝5時までの労働については、25%以上の深夜割増が必要です。
たとえば、法定休日に深夜労働をした場合には、休日割増35%+深夜割増25%=60%以上となります。
通常時給が1,200円なら、
1,200円 × 1.60 = 1,920円以上
です。
月60時間を超える法定時間外労働は50%以上
1か月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、その超えた部分については、50%以上の割増賃金が必要になります。
2023年4月の法改正により、このルールは中小企業についても適用されています。
労働基準法第37条でも、月60時間を超える時間外労働について50%以上の割増を定めています。
短時間勤務のパートさんで該当するケースは多くないでしょうが、給与計算の基本として知っておく必要があります。
36協定にも注意する
割増賃金さえ支払えば、自由に時間外労働や休日労働をさせられるわけではありません。
原則として、法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
したがって、「割増賃金を払ったから問題ない」というものではありません。
割増賃金の問題と、時間外・休日労働をさせるための手続きは、分けて考える必要があります。
なお、法定外休日に勤務しても、法定労働時間を超えないケースについては、その勤務だけを理由として労基法上の時間外・休日労働になるわけではありません。
「振替休日」と「代休」は違う
休日出勤に関連して、「休日に出てもらった代わりに別の日を休みにすれば、休日割増はいらないのでは?」という疑問もあります。
ここでは、振替休日と代休を区別する必要があります。
振替休日とは
振替休日とは、あらかじめ休日と労働日を入れ替えることです。
たとえば、「今週の日曜日は勤務日とし、その代わり水曜日を休日にする」と事前に決める方法です。
適切に休日を振り替えれば、もともとの休日は労働日になるため、その日の勤務は法定休日労働にならない場合があります。
ただし、振替によって別の週の労働時間が40時間を超えれば、その超えた部分について時間外割増が必要になる場合があります。
代休とは
一方、「日曜日に働いてもらったので、あとから水曜日を休みにする」というものが代休です。
法定休日に働いた後で代休を与えても、すでに発生した法定休日労働がなかったことにはなりません。
したがって、法定休日に勤務していたのであれば、休日割増35%以上が必要です。
つまり、事前に休日を入れ替える=振替休日、休日出勤の後に休みを与える=代休という違いがあります。
会社独自の割増規定がある場合はそちらも確認する
ここまで説明してきたのは、労働基準法上の最低基準です。
会社によっては、就業規則、給与規程、雇用契約書などで、「休日出勤は一律25%増し」「土曜日勤務は25%増し」「年末年始勤務は50%増し」など、法律よりも労働者に有利な規定を設けている場合があります。
その場合には、会社の規定に従う必要があります。
厚生労働省も、法定基準を上回る規定が就業規則等にある場合には、その規定が適用されると説明しています。
したがって、実際の給与計算では、
・就業規則
・給与規程
・雇用契約書
・労働条件通知書
・会社カレンダー
なども確認する必要があります。
お盆休み・年末年始休みは事前に整理しておく
特に小さな会社では、「今年のお盆は何日から何日まで休みにするか」を毎年直前に決めることもあるでしょう。
しかし、時給制のパートさんがいる場合には、その日が最初から労働義務のない休日なのか、それとも本来の勤務日を会社都合で休ませるのかによって扱いが変わる可能性があります。
そのため、「夏季休日」「年末年始休日」「その他会社が指定する日」などを就業規則や労働条件の中で位置付け、具体的な日程については事前に会社カレンダー等で知らせる方法が分かりやすいでしょう。
厚生労働省のモデル就業規則でも、年末年始・夏季休日・その他会社が指定する日を休日として定める規定例が示されています。
今回のパートさんについて最終的に整理すると
今回のケースを改めて整理してみましょう。
パートさんの通常勤務は、月曜日~金曜日です。
勤務時間は、9時~15時、途中1時間休憩です。
したがって、1日5時間勤務です。
通常の週の勤務時間は、5時間 × 5日=週25時間です。
そして、会社では2026年8月13日・14日をお盆休みとしていましたが、両日とも実際には出勤しています。
さらに別途、土曜日にも勤務しています。
これらの日が法定休日ではなく、変形労働時間制などの特殊な制度を採用しておらず、1日の実労働時間が8時間以内、週の実労働時間が40時間以内であれば、労働基準法上の割増賃金は原則として発生しません。
したがって、会社独自の休日出勤割増の規定がなければ、通常時給1.00倍で計算できます。
お盆休みだったから1.25倍、土曜日だったから1.25倍、会社が休みだったから1.35倍、という計算にはなりません。
最後に
「休日出勤」と聞くと、「会社が休みの日に働いたのだから、当然割増しになる」と思いがちです。
しかし、労働基準法では、会社が決めた休日と、法定休日は同じものではありません。
また、会社が決めた所定労働時間を超えたことと、労働基準法上の法定労働時間を超えたことも同じではありません。
休日出勤の給与計算では、まず、その日は法定休日なのかを確認します。
法定休日なら、35%以上の割増です。
法定休日でなければ、1日8時間・原則週40時間を超えているかを確認します。
超えた部分については、25%以上の時間外割増が必要です。
どちらにも該当しなければ、通常時給で計算します。
この考え方は、土曜日、祝日、お盆休み、年末年始休みについても基本的には同じです。
そして、もう一つ重要なのが、「最初から休日だったのか、それとも本来の勤務日を会社都合で後から休みにしたのか」という点です。
本来の所定労働日を会社側の事情で休ませれば、平均賃金の60%以上の休業手当が必要になる可能性があります。
特に時給制のパートさんがいる会社では、休日の設定、法定休日の特定、夏季休日・年末年始休日の事前の明確化をしておくことで、給与計算上の迷いをかなり減らすことができます。
「休日だから何割増し?」と考えるのではなく、その日の労働が、労働基準法上どの区分に該当するのかを一つずつ確認していくことが大切です。
なお、実際の取扱いは、変形労働時間制、週44時間の特例措置対象事業場、週の起算日、休日振替、就業規則、労働契約、会社独自の割増規定などによって変わる場合があります。
個別の給与計算を行う際には、実際の勤務状況と会社の規程を確認したうえで判断するようにしましょう。






