給与と年金の控除に上限設定
まず、ポイントをひとことで
令和9年分(2027年分)の所得税から、給与と年金の両方を受け取っている方について、税金の計算で使える「差し引き(控除)」の合計に、最大280万円という上限が設けられる予定です。
「控除」ってなんですか?
所得税は、収入のすべてにかかるわけではありません。
収入から一定の金額を差し引いた「残り」に対して税金が計算されます。
この「差し引ける金額」のことを控除といいます。
給与をもらっている方には給与所得控除、
年金(国民年金・厚生年金など)をもらっている方には公的年金等控除が、
それぞれ自動的に適用されます。
何が変わるのか
現行の制度では、給与と年金の両方がある方は、2つの控除をどちらも使えます。
そのため、同じくらいの収入でも「給与だけの方」より税負担が軽くなる場合があり、税負担の公平性という観点から見直しが検討されてきました。
今回の改正では、この2つの控除の合計額を最大280万円までとし、上限を超えた分は年金の控除(公的年金等控除)から差し引かれる仕組みになります。
給与の控除はそのまま変わりません。
背景:年金制度の見直しとの関係
この改正には、年金制度の変更も関係しています。
働きながら老齢厚生年金を受け取っている方(60歳以上)は、給与と年金の合計が一定額を超えると、年金の一部が減らされる仕組みがあります(在職老齢年金制度)。
なお、この制度は令和4年(2022年)の改正により、60歳〜64歳と65歳以上の区別がなくなり、60歳以上のすべての方に同じルールが適用されています。
この「一定額(基準額)」が、令和8年4月から引き上げられます。
改正前は月51万円だったものが、改正後は月65万円に引き上げられます。
基準額が上がることで、年金が減らされにくくなり、「給与+年金」の手取りが増える方が出てきます。
この変化にあわせて、税の計算でも控除の上限を設ける、という流れです。
具体例で見てみましょう(65歳以上の方)
給与収入が年900万円、公的年金収入が年200万円、年金以外の所得合計が1,000万円以下の方を例に考えてみます。
改正前は、給与所得控除195万円と公的年金等控除110万円をあわせた305万円が控除の合計でした。
改正後は、合計が上限の280万円を超えた分(25万円)を年金の控除から減らします。
そのため、給与所得控除は195万円のまま変わらず、公的年金等控除が110万円から85万円に減り、控除の合計は280万円になります。
その結果、課税される所得が25万円増え、所得税が少し増える可能性があります。
影響が出る方・出ない方
影響の大きさは、給与の額・年金の額・その他の収入・各種控除の状況によって異なります。
たとえば、給与も年金もそれほど大きくない方であれば、2つの控除の合計がもともと280万円に届かないため、改正の影響を受けないケースも多くあります。
ご注意ください
この内容は、令和8年度税制改正大綱に基づく方針です。
今後の国会審議などで細部が変わる可能性があります。
実際に確定申告や年末調整にどう影響するかは、制度が確定した後に最新情報をご確認いただくか、税務署にご相談ください。






