会社から「モノやサービス」をもらうと、税金がかかることがあります

経済的利益に係る源泉所得税の取扱い

会社が従業員や役員に対して、「お金」ではなく、モノやサービスなどを渡すことがあります。
たとえば、次のようなケースです。

  • 会社の商品をタダであげる
  • 会社の車や社宅を安く使わせる
  • 会社が本人の借金を肩代わりする

こうした「お金ではないけれど、受け取った本人にとって得になるもの」は、税務では 「経済的利益」 と呼ばれます。
「現物給与」と呼ばれることもあります。

所得税の考え方では、収入は現金だけでなく、モノや権利などの利益も含まれます。
そのため、こうした経済的利益も、原則として 給料の一部 として税金の対象になります。

よくある「経済的利益」の例

実務でよく出てくるものを整理すると、次のようになります。

モノを無償または格安でもらう

会社の商品・備品などをタダでもらったり、市場価格より安く買ったりする場合です。
→ 原則として「市場価格(時価)」または「市場価格 − 実際に払った金額」が、給料として扱われます。

土地・建物・車などを無償または格安で借りる

社宅を極端に安い家賃で借りる、会社の車をプライベートで使う、などのケースです。
→ 原則として「通常払うべき金額」または「通常額 − 実際の負担額」が、給料として扱われます。

お金を無利息または低い金利で借りる

会社から従業員にお金を貸すとき、利息がゼロだったり、一般的な金利より低かったりする場合です。
→ 原則として、本来払うはずの利息との差額が、お給料として扱われます。
ただし、次のような場合は、給料として課税しなくてよい取扱いがあります。

  • 災害や病気など緊急の資金として借りた場合
  • 会社の平均的な借入金利と同じ利率で貸し付けている場合
  • 差額が年間5,000円以下の場合 など

サービスを無償または格安で受ける

会社が本来は有料のサービスを、タダや著しく安い価格で提供する場合です。
→ 原則として「通常の料金」または「通常額 − 実際の負担額」が、給料として扱われます。

借金をチャラにしてもらう・払ってもらう

従業員が会社に返すべきお金を免除してもらったり、本人が払うべきものを会社に負担してもらったりする場合です。
→ 免除された金額、または会社が負担した金額が、お給料として扱われます。

税金の天引き(源泉徴収)はどうなる?

経済的利益が給料として扱われる場合、会社はその分を「給料に上乗せしたもの」として処理します。

具体的には、その経済的利益を提供した月の給料に合算して、所得税を天引き(源泉徴収)します。

年末調整の対象にもなります。

おさえておきたいポイント

  • 金額の評価は「市場価格」や「通常の料金」が基準になります
  • 従業員が一部を自己負担している場合は、差額が給料になりやすいです
  • 「福利厚生のつもり」で提供していても、条件から外れると給料として課税されることがあります

条件を満たせば「課税されない」ケースもあります

経済的利益は原則として課税されますが、一定の条件を満たすと、課税されない(または非課税になる)ものもあります。

ただし、条件から外れると課税対象になりますので、あらかじめ社内ルールを決めておくと安心です。

通勤手当

交通機関を利用する場合、1か月あたり合理的な運賃の額(上限15万円)までは非課税です。
車や自転車で通勤する場合は、距離に応じた限度額があります。

食事の支給

次の両方を満たす場合、給料として課税されません。

  • 従業員が食事代の半分以上を自己負担していること
  • 会社の負担分が月3,500円(税抜)以下であること
宿直・日直の手当

一定の条件のもとで、1回あたり4,000円までは課税されない目安があります。
食事の支給がある場合は調整が必要です。

創業記念品・永年勤続表彰の記念品

次のような条件を満たす場合、課税されない取扱いがあります。

  • 記念品の価額が1万円以下であること
  • 創業記念は、おおむね5年以上の間隔で行うこと
  • 永年勤続表彰は、勤続10年以上の人が対象で、同じ人への2回目以降はおおむね5年以上の間隔があること
社員旅行(レクリエーション旅行)

社会通念上、一般的な範囲の旅行であれば、給料にしなくてよい整理が示されています。
目安として「4泊5日以内」「参加割合50%以上」などがあります。

ご注意ください:不参加の人にお金を渡すと、参加者も含めて全員が給料扱いになります。

社宅(従業員向け)

一定の計算式で求めた 「賃貸料相当額の50%以上」 の家賃を従業員から徴収していれば、会社が負担している差額の部分はお給料として課税されません。

たとえば、賃貸料相当額が月2万円の社宅であれば、従業員から1万円以上の家賃を徴収していれば、残りの部分について給与課税の問題は起きません。

ただし、従業員から徴収している家賃が賃貸料相当額の50%未満の場合は、「賃貸料相当額 − 実際に徴収している家賃」の全額が給料として課税されます。

ご注意ください:役員社宅については計算方法や取扱いが異なります。
また、いわゆる「豪華社宅」は別の扱いになります。

社員割引(値引販売)

会社が扱う商品を社員に割引販売する場合でも、次の条件を満たせば課税されない取扱いがあります。

  • 仕入価格(取得価額)以上で販売していること
  • 通常の販売価格のおおむね70%以上で販売していること

トラブルを防ぐための実務のコツ

経済的利益に関するトラブルを防ぐために、次の点を心がけておくと安心です。

社内でルールを統一する

「誰に、何を、いくらで、どんな条件で」提供するかを、あらかじめ決めておきましょう。

証拠を残す

非課税として処理するものは、要件(上限額、負担割合、実施間隔など)を満たしている証拠を保管しておきましょう。