国の借金が増えても、なぜ国債は買われ続けるのか?―国債を支える「国家への信頼」と、その限界
はじめに―国の借金が増えれば、国債の価値は下がるのでしょうか?
国の借金が増え続けていると聞くと、不安になる方も多いのではないでしょうか。
私たちの生活では、借金が増えれば返済の負担も増えます。
収入に見合わない借金を続ければ、やがて生活は苦しくなります。
会社の経営も同じです。
売上や利益が伸びないまま借入金だけが増えていけば、銀行の評価は厳しくなります。
追加の融資を受けにくくなったり、金利を引き上げられたりすることもあります。
では、国の場合はどうでしょうか。
国が借金を増やし続ければ、いずれ国債を買う人がいなくなり、財政が行き詰まるのでしょうか。
実際の世界を見ると、話はそれほど単純ではありません。
米国は長年にわたって大きな財政赤字を抱えています。
それでも米国債は、世界中の銀行や中央銀行、年金基金などが保有する重要な金融資産であり続けています。
日本の政府債務も、経済規模と比べて非常に大きな水準です。
国際通貨基金(IMF)が2026年4月に公表した報告では、2026年の日本の政府債務残高は国内総生産(GDP)の約204%と見込まれており、主要国の中でも突出しています。
それでも、日本の国債市場がこれまで常に危機に陥ってきたわけではありません。
一方で、財政政策への不安が急に高まり、国債が大きく売られた国もあります。
この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
私は、この問題を考えるうえで大切なのは、国債の価値は政府の借金の額だけで決まるものではない、という点だと考えています。
国債の価値を支えているのは、税収や財政状況だけではありません。
その国の経済力、通貨への信頼、金融市場の大きさ、政治の安定性、国際社会での立場など、さまざまな要素が関わっています。
今回は、国債が持つ特別な役割を確認しながら、米国と日本の財政がこれからどのような問題に直面する可能性があるのかを、できるだけわかりやすく考えてみたいと思います。
そもそも国債とは、どのようなものなのでしょうか?
まず、国債の基本を確認しておきます。
国債とは、国がお金を借りるために発行する債券です。
国は税金などで収入を得ていますが、それだけでは必要な支出をまかなえない場合があります。
そこで国債を発行し、投資家や金融機関からお金を借ります。
国債を買った人は、決められた利息を受け取り、満期になれば原則として額面の金額を返してもらえます。
例えば、額面100万円、利率が年2%の国債であれば、持っている人は毎年2万円の利息を受け取り、満期には100万円が返ってきます。
ただし、国債は満期まで持ち続けるだけでなく、途中で売買することもできます。
ここで重要なのが、国債の価格と金利の関係です。国債の市場価格と利回りは、基本的に反対方向に動きます。
例えば、年2万円の利息を受け取れる国債を持っているときに、新しく発行される国債では、同じ100万円で年4万円の利息を受け取れるようになったとします。
そうなると、以前の国債の魅力は相対的に小さくなります。市場で売ろうとしても、価格を下げなければ買い手が見つかりにくくなります。
これが、金利が上がると国債の価格が下がる基本的な理由です。
国債について考えるときには、政府が利息や元本を支払えるかという問題と、途中で売買される国債の価格がどう動くかという問題を、分けて考える必要があります。この違いは、後ほど重要になります。
国債には、利息を受け取ること以外にも価値があります
金融商品を買うとき、私たちはふつう、どれくらいの利益が得られるかを考えます。
預金なら金利、株式なら配当金や値上がり益です。
国債も同じように考えられがちですが、実は国債には、利息以外にも大きな役割があります。
例えば、銀行などの金融機関は、国債を持つことで資産を比較的安全に管理できます。
必要なときに資金を借りるための担保としても利用できます。
中央銀行も、外貨準備を運用するために、外国の国債を保有することがあります。
さらに、大きな金額を運用する投資家にとっては、必要なときにすぐ売買できることも重要です。
どれほど高い利息が付く金融商品でも、売りたいときに買い手が見つからなければ困ります。
その点、規模の大きな国債市場では、多くの金融機関や投資家が日々取引をしています。
相場が大きく混乱したときには、売買が難しくなることもあります。
それでも、普段から大量の取引が成り立っている市場には、それ自体に大きな価値があります。
つまり国債は、単に利息を受け取る商品ではありません。世界中のお金を動かすために使われる、重要な金融の道具でもあるのです。
この役割があるため、国債は利息だけでは説明しきれない価値を持つことがあります。
米国債が世界中から必要とされる理由
こうした国債の特徴が、特に強く表れているのが米国です。
世界では、貿易や投資など、さまざまな取引に米ドルが使われています。
日本企業が海外から資源を輸入するときにも、ドルで支払うことが少なくありません。
世界中でドルが使われているということは、それだけ多くの企業や金融機関がドルを必要としているということです。
そして、ドルで資産を持ちたいときの有力な選択肢となるのが米国債です。
米国債には、いくつもの強みがあります。
まず、市場の規模が非常に大きいことです。
世界にはさまざまな国の国債がありますが、米国債市場ほど大きく、日々活発に取引されている市場は限られています。
次に、ドルが世界の主要な準備通貨であることです。
各国の中央銀行は、海外との決済や為替市場への対応に備えて外貨建ての資産を持っており、米国債はその重要な運用先になっています。
さらに、米国には大きな経済力があります。世界的な企業が数多く存在し、技術開発や金融サービスでも大きな影響力を持っています。
法律や金融制度が整い、投資家が資産を売買しやすい環境もあります。
もちろん、米国の政治や制度に問題がないわけではありません。
それでも、経済力、金融市場、通貨、制度が組み合わさることで、米国債は世界の金融の仕組みに欠かせない存在になっています。
ここからわかるのは、米国債の強さは、米国政府の財政状況だけでは説明できないということです。
世界経済の中で、米国債を必要とする仕組みが、長い時間をかけて作られてきたのです。
なぜ米国は、大きな財政赤字を続けても国債を発行できるのでしょうか?
普通の企業であれば、借入金が増え続けると、金融機関から厳しい評価を受けます。
返済に見合う利益が出ていなければ、信用力が下がるからです。
しかし、世界の主要通貨を発行する米国は、一般の企業とは事情が異なります。
米国債を必要とする投資家が、米国内だけでなく世界中にいるからです。
銀行、保険会社、年金基金、中央銀行などには、それぞれの事情から米国債を持つ理由があります。
保有する金額や期間は変わっても、ドルを中心とする国際金融の仕組みが続く限り、米国債への需要が簡単になくなるとは考えにくいでしょう。
これは米国にとって大きな強みです。
他の国では難しい規模の資金調達を、長い期間にわたって続けられる可能性があります。
ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。
世界中から必要とされているからといって、いくら借金を増やしても問題がないわけではありません。
国債を買ってくれる人がいても、その人たちがこれまでと同じ低い金利で買い続けてくれるとは限りません。
財政赤字が膨らみ、将来への不安が強まれば、投資家はより高い金利を求めるようになるでしょう。
つまり、米国債への需要が残っていても、政府の利払いの負担は増えていく可能性があるのです。
国債を発行できることと、低い金利で発行できることは、同じではありません。
この違いを理解することが、これからの米国の財政を考えるうえで非常に重要だと思います。
国の借金は、経済成長との関係で考える必要があります
国の借金について考えるとき、もう一つ重要なのが経済成長です。
同じ500万円の借金でも、年収500万円の人と年収5,000万円の人とでは、返済の重さはまったく違います。
国の財政も同じで、借金の大きさは、その国の経済規模と比べて考えることが大切です。
経済規模を表す代表的な数字がGDPです。
GDPとは、簡単にいえば、国内で一定期間に新しく生み出された商品やサービスの価値を合計したものです。
借金が増えていても、それ以上に経済が成長していれば、経済規模に対する借金の割合はそれほど増えません。
そこで重要になるのが、経済の成長率と、政府が負担する金利の関係です。
例えば、物価の上昇も含めた経済規模(名目GDP)が毎年5%成長し、政府の借金の平均金利が4%程度であれば、借金の負担を管理しやすい条件の一つになります。
反対に、名目GDPが2%しか成長しないのに、政府の借金の平均金利が5%になれば、財政の負担は重くなりやすくなります。
ただし、実際にはこれだけで財政の安全性が決まるわけではありません。
政府が税金などでどれくらい収入を得ているのか、社会保障や公共事業などにどれくらい支出しているのか、もともとの借金がどれほど大きいのかも関係します。
また、新しく発行する国債の金利が上がっても、すでに発行した固定金利の国債の利息が、すぐに増えるわけではありません。
満期を迎えた国債の借り換えや新たな発行を通じて、時間をかけて影響が広がっていきます。
そのため、今の市場金利だけを見て、政府の利払いの負担を判断することもできません。
大切なのは、借金がどれだけあるかだけでなく、その国が将来どれだけ稼ぎ、どれだけの金利を負担し、財政をどう管理していくかということです。
財政赤字が続いても、国債がすぐに暴落するとは限りません
国の財政を見るときによく使われる数字に、プライマリーバランス(基礎的財政収支)があります。
これは、国債を発行して得たお金を除いた税収などの収入で、過去の借金の返済や利払いを除いた政策のための支出を、どれだけまかなえているかを示す数字です。
簡単にいえば、日々の政策に必要なお金を、新たな借金に頼らずに用意できているかを見るものです。
この数字が赤字であれば、国は政策に必要なお金の一部を、新たな借金に頼っていることになります。
では、この赤字を必ずゼロにしなければ、国債市場を維持できないのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
経済が成長し、金利が比較的低く、国債を必要とする投資家も多ければ、ある程度の赤字が続いても、借金の負担を管理できる可能性があります。
反対に、同じ赤字額であっても、経済成長が弱く金利が高い国では、財政への負担が大きくなります。
つまり、どの国にも共通する絶対的な安全ラインがあるわけではありません。
政府の借金は、経済成長、金利、物価、税収、支出、投資家の需要など、多くの条件によって支えられています。
私は、ここで重要なのは、毎年必ず黒字を出すことよりも、政府が将来にわたって財政を管理していく意思と能力を持っていると、市場から信じてもらえるかどうかだと思います。
もちろん、財政赤字が大きすぎれば、その信頼を失う原因になります。
しかし、赤字という数字だけを見て、すぐに財政危機が起きると判断するのも適切ではありません。
2022年の英国国債の急落が教えてくれること
ここで、2022年に英国で起きた出来事を振り返ってみます。
2022年9月、発足したばかりのトラス政権は、財源の裏付けが乏しい大規模な減税を中心とする経済政策を打ち出しました。
財政への影響を心配した投資家は英国国債を一斉に売り、利回りは急上昇しました。
通貨のポンドも、対ドルで過去最安値を付けるほど下落しました。
混乱は年金基金にも広がりました。
国債を使った運用をしていた一部の基金が、担保を差し入れるために保有資産の売却を迫られ、それがさらに国債の売りを呼ぶという悪循環が起きたのです。
事態を収めるため、英国の中央銀行であるイングランド銀行が、市場の安定を目的として一時的に国債を買い入れる事態になりました。
そしてトラス首相は、就任から2か月足らずで辞任を表明することになります。
この出来事が示しているのは、先進国の国債であっても、市場の評価が短期間に変わり得るということです。
英国は長い歴史を持つ経済大国で、金融市場も発達しており、ポンドは国際的に取引される主要通貨の一つです。
それでも、政府の政策への信頼が揺らいだとき、国債市場は大きく混乱しました。
もちろん、この混乱には年金基金の運用方法という、金融市場の側の問題も関係していました。
財政政策への不安だけで、すべてを説明することはできません。
それでも、私たちが学べることはあります。
長い年月をかけて築いた国家への信頼も、政策の進め方次第で、短期間に揺らぐ可能性があるということです。
政府に求められるのは、財政赤字をただ減らすことだけではありません。
政策の目的を説明し、財源や将来の負担を示し、市場が納得できる形で運営していくことも重要なのです。
国債が安全だということと、価格が下がらないことは別の話です
国債について考えるうえで、特に注意しておきたいことがあります。
それは、信用力の高い国の国債であっても、価格が安定しているとは限らないということです。
国債を満期まで持つ場合、政府が約束どおり返済すれば、額面の金額を受け取れます。
しかし、満期の前に売る場合には、そのときの市場価格で売ることになります。
金利が上がっていれば、買ったときより安い金額でしか売れないこともあります。
特に、満期までの期間が長い国債ほど、金利の変化による価格への影響は大きくなりやすいという特徴があります。
例えば、30年国債を持っている間に市場金利が大きく上がれば、以前の低い金利で発行された国債の魅力は小さくなり、価格が大きく下がる可能性があります。
これは、国が借金を返せなくなったわけではなくても起こることです。
つまり、国債には少なくとも二つの異なるリスクがあります。
一つは、政府が約束した支払いをできなくなるリスクです。
もう一つは、金利の変化によって、持っている国債の市場価格が変動するリスクです。
さらに、物価が上がれば、将来受け取るお金の実質的な価値が下がるという問題もあります。
国債を安全資産と呼ぶときには、どの意味で安全なのかを区別する必要があります。
元本や利息が約束どおり支払われる可能性が高いことと、投資したお金の価値が常に守られることは、同じではありません。
国債市場の値動きが大きくなることには、どのような意味があるのでしょうか?
株式市場では、将来の株価がどれくらい大きく動くと予想されているかを示す指標が注目されることがあります。
債券市場にも、似たような指標があります。
代表的なものの一つが、米国債市場の予想変動率を示すMOVE指数です。
簡単にいえば、市場参加者が今後の米国債金利の変動をどれくらい大きく見込んでいるかを表す指標です。
この数字が高くなれば、債券市場の先行きについて、不確実性が強まっている可能性があります。
ただし、この指数が上がったからといって、米国政府の信用が直ちに悪化したと判断できるわけではありません。
中央銀行の政策変更や物価の見通し、景気の変化などによっても、国債の値動きは大きくなるからです。
それでも、国債市場の変化を知るうえでは重要な手掛かりになります。
米国債は、世界中の金融取引で利用されているからです。
米国債の価格が大きく動けば、それを持つ銀行や投資家の資産価値も変わり、米国債を担保に資金を借りている金融機関にも影響が及びます。
さらに、米国債の利回りは、住宅ローンや企業の借入金利、株価などとも結びついています。
したがって、国債市場を見るときには、金利が高いか低いかだけでなく、金利の動きがどれほど不安定になっているかにも注意する必要があります。
米国債の価値は、米国という国の総合的な力に支えられています
ここまで考えると、米国債の価値を支えているものが、財政状況だけではないことがわかってきます。
米国には、世界有数の経済規模があり、国際的に競争力のある企業や研究機関が数多く存在しています。
金融市場が大きく発達し、世界中から資金が集まります。
ドルは国際取引で広く使われ、政治、法律、外交、安全保障など、さまざまな分野でも大きな影響力を持っています。
こうした要素は、それぞれ独立しているわけではありません。
世界中でドルが使われるからこそ、ドルで持てる安全性の高い金融資産が必要になります。
米国債への需要が大きいからこそ、米国の金融市場には多くのお金が集まります。
市場に厚みがあれば、さらに多くの投資家が参加しやすくなります。
こうして、ドルと米国債を中心とする仕組みが、長い時間をかけて強くなってきました。
ただし、軍事力や経済力が強いからといって、財政への不安がすべて消えるわけではありません。
投資家にとって重要なのは、その国に今力があることだけでなく、その力を将来も維持できるかどうかです。
そして、政府が自らの財政を適切に管理し、通貨の価値を守ろうとしているかどうかも重要です。
国債に対する信頼は、今の国力だけでなく、その国の仕組みが将来も機能し続けるという期待によって支えられているのです。
世界がドルを必要としなくなったら、何が起きるのでしょうか?
米国債の強さを考えるとき、避けて通れないのがドルの将来です。
もし世界でドルを使う機会が減っていけば、ドル建ての資産を持つ必要性も変わるかもしれません。
例えば、国と国の貿易で、ドル以外の通貨を使う動きが広がる可能性があります。
中央銀行が外貨準備の中身を見直し、ドル以外の通貨や金の保有を増やすことも考えられます。
国際的な政治対立や経済制裁をきっかけに、特定の通貨への依存を減らそうとする国もあるでしょう。
こうした変化が長い時間をかけて進めば、米国債を必要とする世界の仕組みにも影響が出る可能性があります。
ただし、ドルに代わる通貨がすぐに現れるとは限りません。
世界中で使われる通貨になるには、その国の経済が大きいだけでは足りません。
資金を自由に動かせること、金融市場が大きいこと、法律や制度が信頼されていること、必要なときに大量の資産を売買できることなど、多くの条件が必要です。
また、ドルを使った取引の仕組みは、すでに世界中に広がっています。
企業や金融機関が別の通貨に切り替えるには、時間も費用もかかります。
そのため、ドルの国際的な役割が急になくなるとは考えにくいのです。
しかし、変化がゆっくり進むからといって、何も変わらないわけではありません。
ドルが世界で最も重要な通貨であり続けたとしても、以前ほど圧倒的な地位ではなくなる可能性はあります。
そうなれば、米国が国債を発行するときに、投資家から以前より高い金利を求められることも考えられます。
米国債の特別な価値は、ある日突然なくなるというより、長い時間をかけて少しずつ変わっていく可能性があるのです。
日本の国債が、大きな借金を抱えながら維持されてきた理由
ここからは、日本について考えてみます。
冒頭で触れたように、日本の政府債務はGDPの2倍を超える水準にあり、主要国の中でも突出しています。
この点だけを見ると、日本はすでに深刻な財政危機に陥っていても不思議ではないように感じられます。
しかし実際には、日本国債は長年にわたり、金融機関や保険会社、年金基金などが持つ重要な金融資産として利用されてきました。
なぜでしょうか。
まず重要なのは、日本国債のほぼすべてが円建てで発行されていることです。
外国の通貨で借金をしている国は、その通貨を手に入れられなければ返済が難しくなります。
例えば、ドルで借金をしている国の通貨が大きく下落すると、ドルを返すために必要な自国通貨の額が膨らんでしまいます。
一方、日本政府の円建て国債は、基本的に円で返済する仕組みです。
また、日本には日本銀行という中央銀行があり、金融政策や金融市場の安定を目的として、国債の売買などを行うことができます。
もちろん、日本銀行が政府の借金を無制限に引き受けてよいという意味ではありません。
それでも、自国通貨で国債を発行していることには、外国通貨で借金をしている国とは大きく異なる特徴があります。
さらに、日本国債は、国内の金融機関や日本銀行が大きな割合を持ってきました。
日本には、預金や保険、年金などを通じて積み上げられた大きな金融資産があります。
日本全体で見れば、海外に持つ資産も多く、企業や個人、金融機関などが海外から得る所得もあります。
ただし、海外に資産が多いからといって、その資産を政府が自由に返済に使えるわけではありません。
日本全体の対外資産と政府自身の財政は、分けて考える必要があります。
それでも、こうした経済や金融の特徴が、日本国債への信頼を支える背景になってきたと考えられます。
日本の長期金利が上がることは、何を意味するのでしょうか?
日本では長い間、非常に低い金利が続いてきました。
しかし、物価の上昇や日本銀行の利上げ、国債の買い入れの段階的な減額などによって、国債の金利を取り巻く環境は大きく変わってきています。
2026年9月には、新しく発行される10年国債の利回りが約30年ぶりに3%を超えました。
10月の入札では、財務省が10年国債の表面利率を年3.1%に引き上げています。
特に注目したいのは、30年や40年といった、満期までの期間が非常に長い国債です。
こうした国債の金利は、現在の景気だけでなく、将来の物価や金利、財政への見方などにも影響を受けます。
例えば、投資家が将来の物価上昇を強く意識すれば、長い期間お金を貸すことに対して、より高い金利を求めるでしょう。
また、政府が大量の国債を発行する一方で、買い手が十分にいなければ、国債の価格が下がり、利回りが上がりやすくなります。
長期金利が上がる理由は、一つではありません。
将来の経済成長を前向きに評価して、金利が上がることもあります。
一方で、物価の上昇や財政への不安が強まり、投資家が高い金利を求めることもあります。
同じ金利上昇でも、この二つは意味がまったく異なります。
そのため、金利が上がったという事実だけで、日本の財政への信頼が失われたと判断することはできません。
重要なのは、なぜ金利が上がっているのかという理由です。
企業の稼ぐ力が高まり、賃金も増え、経済が成長するなかでの金利上昇であれば、政府の税収も増えやすくなります。
反対に、経済成長が弱いまま物価だけが上がり、金利も高くなるのであれば、政府にも企業にも家計にも厳しい状況になります。
日本の国債金利を見るときには、金利の数字だけでなく、その背景にある経済の変化を一緒に考える必要があるのです。
日本で起こり得る問題は、国債の返済不能だけではありません
日本の財政について考えるとき、私は、政府が円建ての国債を返済できなくなるかどうかだけに注目するのは十分ではないと思います。
もちろん、国債の返済能力は重要です。
しかし、自国通貨で国債を発行している国では、問題が別の形で表れる可能性があります。
それが、通貨の価値と物価の問題です。
例えば、政府の借金が増え続け、日本の財政に不安を感じる投資家が増えたとします。
その結果、日本国債を買うために、以前より高い金利を求める人が増えるかもしれません。
このとき、日本銀行が市場の安定を目的として大量の国債を買えば、国債の価格を支える方向に働くことがあります。
しかし、その政策が将来の物価上昇や通貨価値の低下につながると市場が考えれば、円が売られる可能性もあります。
円安が進めば、海外から輸入する資源や食料などの価格は上がりやすくなります。
その結果、私たちの生活費や企業の仕入価格が上がることがあります。
ただし、中央銀行が国債を買ったからといって、必ず円安や物価上昇が起こるわけではありません。
為替や物価は、海外の金利や景気、エネルギー価格など、多くの要素によって動きます。
大切なのは、国債の返済が続けられることと、円の購買力が守られることは別の問題だという点です。
将来受け取る100万円が、数字のうえでは今と同じ100万円だったとしても、物価が大きく上がっていれば、そのお金で買える商品やサービスは少なくなります。
政府が約束どおりお金を返したとしても、物価の上昇によって、お金の実質的な価値が下がる場合があるのです。
つまり、国債の返済が続いていても、私たちの生活が守られているとは限りません。
日本の財政を考えるときには、国債の返済能力に加えて、円の価値や物価の安定にも目を向ける必要があります。
国債の問題は、私たちの預金や生活にもつながっています
ここまでの話は、少し遠い世界の出来事に感じられるかもしれません。
しかし、国債の金利や通貨の価値は、私たちの生活に深く関わっています。
例えば、長期金利が上がれば、住宅ローンの固定金利や企業の借入金利も上がりやすくなります。
これから住宅を買う人にとっては、毎月の返済額が増える原因になります。
借入金の多い企業にとっても、資金繰りの負担が重くなる可能性があります。
一方で、金利が上がれば、預金や新しく買う債券から得られる利息が増えることもあります。
金利の上昇が、すべての人にとって悪いわけではありません。
円安や物価上昇の影響も、立場によって異なります。
海外に商品を輸出する企業には、円安が利益を押し上げる方向に働く場合があります。
一方で、海外から原材料や商品を仕入れる企業には、仕入価格の上昇という負担が生じます。
家計でも、食料品や電気代、ガソリン代などが上がれば、負担が増えます。
ここで特に考えておきたいのが、現預金の価値です。
例えば、物価が年3%上がり、預金金利が年1%だったとします。
預金残高は利息で増えますが、商品やサービスの価格はそれ以上に上がっています。
差し引きすると、お金で買えるものは、年に約2%ずつ減っていく計算になります。
預金の金額は増えていても、そのお金で買えるものは減っている。
これが、物価上昇によってお金の実質的な価値が下がるということです。
もちろん、生活に必要なお金を預金で確保しておくことは大切です。
しかし、物価が長く上がり続ける社会では、預金の金額だけを見て、資産の安全性を考えることはできません。
国債や通貨への信頼という問題は、最終的には、私たちが働いて得たお金の価値をどう守るのかという問題にもつながっているのです。
国債の価値を支えるものを、簡単に「バブル」と呼んでよいのでしょうか?
ここで、国債の価値について、もう少し考えてみたいと思います。
金融市場では、資産の価格が本来の価値よりも高くなっている状態を、バブルと呼ぶことがあります。
例えば、不動産価格が上がり続けると、さらに値上がりすると期待する人が増え、購入が集中することがあります。
本来の収益力では説明しにくい価格になっても、値上がりへの期待によって取引が続きます。
しかし、その期待が変わると、価格は大きく下がります。
国債にも、こうした期待によって価格が支えられている面があるかもしれません。
ただし、米国債のような国際的に重要な金融資産には、単なる値上がり期待とは異なる価値があります。
世界中で使われる通貨と結びつき、金融機関の担保として利用され、中央銀行の準備資産にもなっているからです。
こうした役割があるからこそ、国債を必要とする投資家が存在するのです。
例えば、駅に近い土地は、同じ広さであっても、交通の不便な土地より高い価格が付くことがあります。
土地の広さだけでなく、立地がもたらす便利さに価値があるからです。
国債にも、これと似た面があります。持っていることで得られる利息だけでなく、金融取引に使える便利さそのものにも価値があるのです。
専門的には、こうした価値を「利便性の利回り(コンビニエンス・イールド)」と呼ぶこともあります。
このように考えると、国債の価格のうち、財政状況や利息だけでは説明しきれない部分を、すべて実態のない値上がりとみなすのは適切ではありません。
むしろ、国債が金融の仕組みの中で果たしている役割が、その価格を支えている面もあると考えられます。
そして、この役割が保たれる限り、その価値も長く続く可能性があります。
ただし、役割そのものが変わったり、政府への信頼が弱まったりすれば、価格に影響が出ることもあります。
国債の特別な価値は、簡単に消えるものではありません。
しかし、永久に保証されているものでもないのです。
政府が本当に守るべきものは、財政の数字だけではありません
国債への信頼を保つために、政府はどのような政策を取る必要があるのでしょうか。
財政赤字や借金を減らすことは、重要な目標の一つです。
しかし、単純に支出を減らせばよいというものでもありません。
例えば、将来の成長につながる教育や研究開発、社会基盤の整備まで大きく削ってしまえば、長い目で見た成長力が弱くなるかもしれません。
経済が成長しなくなれば、税収も増えにくくなります。
その結果、財政を立て直すために支出を減らしたにもかかわらず、経済規模に対する借金の負担が、かえって重くなる可能性もあります。
一方で、将来の経済成長を理由に、あらゆる支出を正当化することもできません。
政策にかかる費用と、その政策によって得られる効果を見極める必要があります。
さらに、高齢化による社会保障費の増加など、長期的に見込まれる支出にも対応していかなければなりません。
政府に求められるのは、目先の数字を整えることだけではなく、長期的に経済と財政を維持できる仕組みを作ることです。
そのためには、政策の内容を説明し、必要な財源を示し、状況が変われば修正することも大切です。
市場は、政府が一度決めた政策を絶対に変えないことだけを評価しているわけではありません。
むしろ、環境の変化に応じて現実的に対応できるかどうかも見ています。
国債への信頼を保つには、政府が将来にわたって責任ある判断を続けられると、市場に考えてもらう必要があるのです。
私は、財政の健全性とは、単に借金が少ないことではなく、その国が将来も経済を成長させながら、必要な支出と負担のバランスを調整し続けられる状態ではないかと考えています。
これからの米国債市場では、何に注目すればよいのでしょうか?
では、国債市場に大きな変化が起きているかどうかを知るには、どのような数字を見ればよいのでしょうか。
私は、いくつかの指標を組み合わせて見ることが大切だと思います。
国債を買いたい人が十分にいるかどうか
まず注目したいのが、米国が新しく国債を発行するときの売れ行きです。
米国政府は、定期的に入札を行って国債を発行しています。
その際、どれくらいの投資家が購入を希望したのか、どのような利回りで発行されたのかを見ることで、米国債への需要を知る手掛かりになります。
ただし、一度の入札で買い手が少なかったからといって、米国の信用が急に低下したと判断することはできません。
そのときの市場金利や金融機関の事情なども関係するからです。
大切なのは、こうした変化が一時的なものなのか、それとも長く続いているのかを確かめることです。
長期金利と、その値動きの不安定さが同時に大きくなっていないか
次に注目したいのが、米国の10年国債や30年国債の金利です。
長期金利が上がると、政府が新たに借金をする際の負担が増える方向に働きます。
株式や不動産など、さまざまな資産の価格にも影響が出ます。
ただし、長期金利の上昇そのものが、必ず悪いわけではありません。
経済成長への期待が高まって金利が上がる場合もあるからです。
そこで、先ほど紹介したMOVE指数も一緒に見ることが重要になります。
金利が上がり、同時に値動きへの不安も大きくなっている場合には、その背景を丁寧に確かめる必要があります。
物価の見通しが変わったのか、中央銀行の政策が変わったのか、それとも財政に対する不安が広がっているのか。
こうした理由を考えることが大切です。
国債、ドル、金の価格がどのように動いているか
もう一つ注目したいのが、米国債とドル、そして金の値動きの組み合わせです。
一般に、世界経済への不安が強まると、安全を求める資金が米国債に向かうことがあります。
しかし、米国そのものへの不安が強まった場合には、米国債が売られ、ドルも弱くなり、金が買われるという、普段とは違う動きが起こる可能性があります。
もちろん、こうした動きが同時に起きたからといって、米国の信用が低下したと断定できるわけではありません。
金利の見通しや世界経済の状況など、別の理由で同じような値動きになることもあります。
それでも、この組み合わせが長く続くようであれば、投資家がどのような資産に安心を求めているのか、注意深く考える必要があります。
重要なのは、どれか一つの数字だけで結論を出さないことです。
国債、通貨、金利、物価などを組み合わせて見ることで、世界のお金の流れを、より広い視点からとらえることができます。
日本についても、国債だけを見ていては全体像がわかりません
日本の財政を考える場合も、同じことがいえます。
例えば、日本の長期金利が上がったとします。それだけでは、日本の経済が強くなっているのか、それとも将来への不安が強まっているのかはわかりません。
そこで、円相場や物価、賃金、企業の利益なども合わせて確認する必要があります。
企業の業績が良くなり、賃金が上がり、国内の消費や設備投資が増えるなかで金利が上がっているのであれば、経済の成長に伴う変化と考えられる部分があります。
一方で、賃金が十分に増えないまま物価が上がり、円安が進み、国債の金利も上がるような状況であれば、話は別です。
企業は、仕入価格と借入金利の両方の上昇に直面するかもしれません。
家計も、生活費の増加と住宅ローンの負担増に直面する可能性があります。
政府も、社会保障費などの支出を維持しながら、国債の利払いの増加に対応しなければなりません。
ここで注意したいのは、物価が上がると、税収や名目GDPといった金額の数字は増えやすいということです。
実際、IMFも、物価上昇と名目での成長によって、日本の政府債務のGDP比は今後改善に向かうと見込んでいます。
しかし、物価の上昇で税収が増えたとしても、同じ金額で買える商品やサービスが減っていれば、それだけで財政や国民生活が良くなったとはいえません。
名目上の金額が増えているのか、それとも実質的な経済活動が成長しているのかを区別することが大切です。
日本の経済を見るときには、株価、国債金利、為替、物価、賃金を、それぞれ別々のものとして考えないことが大切です。
これらは互いに影響し合い、同じ経済の変化を違う角度から映し出しているからです。
国家への信頼は、数字だけでは測れません
ここまで考えてくると、国債の価値を理解することが、単に金利や借金の額を調べることではないとわかります。
国債への信頼には、数字で確認できる部分があります。
政府の借金の額、税収、経済成長率、物価上昇率、金利などです。
こうした数字は、国の財政を理解するうえで欠かせません。
しかし、数字だけでは判断できない部分もあります。
政府が、財政の問題をどのように説明しているのか。
政治家が、将来の負担について国民に正面から向き合っているのか。
必要な政策を実行できる政治的な環境があるのか。
中央銀行が、物価の安定に向けて適切な政策を続けられるのか。
税金や社会保障の負担について、社会の中でどれくらい合意が得られているのか。
こうしたことも、長い目で見れば国の信用に関わってくると思います。
同じ借金の額であっても、問題を認識して長期的な対応策を示している国と、問題を先送りし続けている国とでは、市場の評価は違ってくるのではないでしょうか。
経済成長によって将来の税収が増えると期待される国と、経済が縮小し続けると考えられている国でも、評価は異なるでしょう。
もちろん、市場の判断が常に正しいとは限りません。
投資家は、必要以上に楽観的になることもあれば、反対に悲観的になりすぎることもあります。
そのため、国債の金利が国家の信用を正確に表しているとはいえません。
それでも、世界中の投資家がどのような条件で国にお金を貸そうとしているのかは、その国の将来を考えるうえで重要な情報になります。
私は国債の金利を、政府の借金に対する評価であると同時に、その国の将来に対する市場の見方を知るための手掛かりとして捉えています。
国債への信頼が揺らぐとき、何が起きるのでしょうか?
最後に、国債市場への信頼が変化していくときの流れを考えてみます。
最初から大きな混乱が起きるとは限りません。
はじめは、政府の財政政策に対する小さな疑問かもしれません。
借金が増える一方で、経済成長が十分ではないという見方が広がることもあるでしょう。
あるいは、物価がなかなか落ち着かず、中央銀行が金利を高い水準に保たざるを得ないと考えられるかもしれません。
こうした変化によって、投資家が国債を買う際に、以前より少し高い利回りを求めるようになることがあります。
すると、新しく発行する国債の金利が上がります。政府は、満期になった国債を借り換える際に、以前より高い利息を負担することになります。
利払いの負担が増えれば、他の政策に使えるお金が圧迫されます。
その結果、財政への不安がさらに強まり、投資家がより高い金利を求めるという悪循環が生まれる可能性もあります。
ただし、こうした流れが必ず続くわけではありません。
政府が財政政策を修正したり、経済が成長したり、物価が落ち着いたりすれば、市場の不安は和らぎます。
中央銀行の政策や金融市場の状況によって、金利が再び下がる可能性もあります。
重要なのは、国債への信頼が失われるかどうかを、借金の額だけで予測するのは難しいということです。
同じように大きな借金を抱えていても、安定した状態を長く保てる国もあれば、短期間で市場の評価が大きく変わる国もあります。
その違いを生むのは、財政の数字だけではなく、経済成長や金融市場の仕組み、政策への信頼などの組み合わせだと考えられます。
これから本当に問われるのは、国家が将来も信用され続けるかどうかです
国債について考えてきましたが、最後は「国家の信用とは何か」という問いに行き着くように思います。
国債は、国が将来お金を返すという約束です。
その約束が信用されるためには、返済を支える経済力が必要です。
税金を集める仕組みも必要です。
通貨の価値を安定させる金融政策も重要です。
そして、将来の問題に対応できる政治や行政の仕組みも欠かせません。
米国が大きな財政赤字を続けながらも、世界中から資金を集められているのは、借金そのものが安全だと考えられているからだけではありません。
ドルが世界で広く使われ、金融市場が発達し、米国の経済や制度が国際社会の中で重要な役割を果たしているからでもあります。
日本が大きな政府債務を抱えながら国債市場を維持してきたことにも、日本独自の経済や金融の仕組みが関係しています。
しかし、米国にも日本にも共通していることがあります。
それは、今の仕組みが将来も同じように続くとは限らないということです。
人口構造は変わります。世界経済の中心も移り変わる可能性があります。
技術革新によって、企業の競争力や国の経済力が変わることもあります。
国際的な政治関係が変われば、通貨や金融資産に対する需要も変わるかもしれません。
さらに、政府の政策によって、将来への信頼が強まることもあれば、弱まることもあります。
つまり、国債の価値を支えている国家への信頼は、過去の実績だけで永久に保たれるものではありません。
将来に向けて、少しずつ積み上げ続けていく必要があるのです。
おわりに―国債は、政府の借金であると同時に、国家への信頼を映す鏡です
国債の価格は、政府の借金が多いか少ないかだけで決まるものではありません。
その国の経済は成長するのか。
物価は安定するのか。
通貨は世界で必要とされ続けるのか。
金融市場は安心して利用できるのか。
政府は将来の負担に責任を持って対応できるのか。
こうしたさまざまな要素が組み合わさって、国債への需要や金利が決まっていきます。
そして、米国債のように世界の金融の仕組みで重要な役割を果たしている資産には、利息だけでは説明できない特別な価値があります。
その価値は、世界中の金融機関や投資家が国債を必要とする仕組みによって支えられています。
だからこそ、政府の借金が増えたからといって、すぐに国債が暴落するとは限りません。
一方で、国債が世界中から必要とされているからといって、無制限に借金を増やせるわけでもありません。
投資家が求める金利が高くなれば、政府の負担は重くなります。
財政や通貨への信頼が弱まれば、それまで当たり前のように続いていた金融の仕組みが変わる可能性もあります。
日本についても、政府が円建ての国債を返済できるかどうかだけを考えていれば十分ではありません。
円の価値はどうなるのか。
物価はどう動くのか。
企業や家計の負担はどう変わるのか。
そして、日本の経済はこれからも成長していけるのか。
こうした問題を、一緒に考える必要があります。10年国債の利率が約30年ぶりの水準まで上がった今、これはもう遠い将来の話ではないのかもしれません。
私が今回のテーマで最も大切だと思うのは、国債への信頼は借金の少なさだけで決まるのではなく、その国が将来も経済と財政を維持していけるという期待によって支えられている、ということです。
一つの金利や借金の額だけを見ても、国債市場の大きな変化を予測するための十分な答えは得られません。
経済成長、物価、財政政策、通貨、国際的なお金の流れなどを幅広く見ながら、その国に対する市場の評価がどう変わっているのかを考える必要があります。
国債の問題は、金融市場だけの問題ではありません。
国の経済や政治のあり方、そして私たちがこれからどのような生活を送ることになるのかという問題にもつながっています。
国債を通して見えてくるのは、政府がどれだけ借金をしているかという数字だけではありません。
その国がこれからも信頼され続けるために、何を守り、何を変えていく必要があるのか――その問いなのだと思います。




