専従者給与、月ごとに変えて大丈夫?税務署が見るポイントと安全な運用ルール

青色事業専従者給与の適切な運用方法

結論から申し上げますと、「届出の金額の範囲内だから大丈夫」と考えて、青色事業専従者給与(家族に支払う給与)の月額を安易に増減させる運用は、税務調査で説明を求められやすくなります。

とくに「利益が出た月だけ増やす」「仕事が少ない月はゼロにする」といった動きは、税務署が実態を確認したくなる典型例です。

ここでは、税務署がどこを見ているのか、そして安全に運用するための考え方を、できるだけ分かりやすく整理します。

税務署が見る前提:専従者給与は「何でも経費」ではありません

青色事業専従者給与は、家族に支払う給与でも一定の条件を満たせば必要経費にできる制度です。
ただし、税務署は次の点を重視しています。

・本当に働いているか(実態)
・その金額が働き方に見合っているか(妥当性)
・あらかじめ決めたルールどおりに支払っているか(届出と運用の整合性)

法律上も、青色事業専従者給与は「労務の対価として相当であること」かつ「届出書に記載した方法どおりの支払いであること」の両方を満たす場合に限り、必要経費に算入できるという整理になっています(所得税法57条の趣旨)。

税務署が注目する「3つの視点」

労務の対価として妥当か

専従者給与は本来、「働いたことに対する報酬」です。
月によって金額が大きく変わると、税務署は次のように考えやすくなります。

・「利益が出た月だけ多く払って、経費を増やしていないか」
・「金額が”都合で決められている”のではないか」

たとえば、同じ仕事内容・同じ勤務時間なのに「今月は50万円、来月は10万円」のように乱高下すると、説明が難しくなります。

一般的な給与の考え方(常識)とズレていないか

通常の雇用では、理由なく基本給が毎月変わることはあまりありません。
もちろん、残業代・歩合・繁忙期手当など「変動する部分」がある給与もありますが、その場合でも次の3つがセットになっています。

・どういう条件で増える(減る)のか
・いくらの計算なのか
・記録(勤務表・日報)があるか

身内だからといって「特別ルールで自由に動かしている」と見えてしまうと、税務署は「不自然だ」と感じ、確認が入りやすくなります。

届出書の趣旨に沿っているか

「青色事業専従者給与に関する届出書」に書く金額は、たしかに”上限”の意味合いがあります。
ただし税務署は、「上限の範囲なら毎月好きに変えてよい」とは捉えていません。

税務署が見たいのは、次の点です。

・事前にルール(給与の決め方)があるか
・そのルールどおりに支払っているか
・後からつじつまを合わせていないか

税務署が問題視しやすい具体例

次のような運用は、税務調査で「理由」と「証拠」を求められやすくなります。

・利益調整に見える動き
 例:「儲かった月は多く、厳しい月は少なく」など、利益に連動しているように見える変動
・仕事内容・労働時間と給与が合っていない
 例:業務量が同じなのに給与だけが上下する
・さかのぼって増やす(遡及増額)
 例:年末に「1月分から増額したことにする」
 → 「後から作った」という印象になりやすく、説明が難しくなります

まずおすすめしたい基本方針(安全側)

原則は「毎月の固定給」

いちばん説明しやすいのは、毎月一定額で支払う形です。
もし仕事量に波があるなら、給与の形を次のように分けると整理しやすくなります。

基本給(毎月固定)+ 変動給(残業代・繁忙期手当・歩合など)

この場合は、変動給について「どういう条件で」「いくらになるか」を決め、勤務記録を残すのがポイントです。

たとえば、「基本給3万円(毎月の帳簿整理・清掃・SNS更新など)+ 繁忙期は追加支給」のようにすると、税務署にも説明しやすくなります。

恒久的に金額を変えるなら、変更届も検討

仕事内容が変わって、今後ずっと金額を変えるのであれば、実態に合わせて届出(変更届出書)を出し直すほうが、運用として整います。

※届出や手続きの要否・時期は状況によって異なることがありますので、正確な扱いは税務署にご確認ください。

「利益が出たから還元したい」は、賞与の設計が分かりやすい

月々の給与を動かすよりも、あらかじめ賞与(ボーナス)の支給月・上限額を届出書に書いておき、その範囲で支給するほうが、筋が通りやすいケースがあります。

【減額】15万円 → 12万円に下げる場合の考え方

減額は、増額に比べると「経費の水増し」を疑われにくい傾向はあります。
ただし、減額でも税務署が気にするのは「減らしたこと」そのものよりも、実態とのつながりです。

税務署が”裏読み”しやすいポイント

「働き方が変わったのでは?」という確認

月額が下がっていると、税務署は次のような確認をしたくなります。

・「勤務時間が減ったのか」
・「担当業務が軽くなったのか」
・「そもそも今も専従しているのか」

もし勤務時間や仕事内容が変わっていないのに給与だけが下がると、逆に「以前の15万円はどういう根拠だったのか」と、過去の妥当性も含めて説明を求められることがあります。

「生活費の調整」に見えないか

専従者給与は、あくまで労務の対価です。
家計の都合に合わせて上げ下げしているように見えると、「給与というより生活費の分配では?」と疑われやすくなります。

減額するなら、準備しておくと安心なこと

理由を言語化し、メモで残す

口頭説明だけでなく、後から見返せるように一言メモがあると安心です。

・例:「子どもの学校行事が増え、勤務時間を1日2時間短縮 → 時給換算で減額」
・例:「景況悪化により、事業主本人や従業員も含めて全体的に給与を見直した」

勤務記録・業務内容を残す

最低限、次のどれかがあると説明が通りやすくなります。

・出勤簿(いつ・何時間働いたか)
・業務日報(何をしたか)
・支給明細(基本給・残業等の内訳)

「今後ずっと12万円」でいくなら、届出の整合性も意識

届出の上限内での減額は、ケースによっては運用可能ですが、「今後の標準額が12万円」であれば、届出も実態に合わせて整えるほうが管理しやすくなります。

【極端な変動】「仕事がない月は0円、ある月は10万円」が危ない理由

このパターンは、税務調査で最も説明を求められやすい部類です。
理由は大きく2つあります。

「専従(もっぱら従事)」の要件を疑われやすい

青色事業専従者として認められるには、原則としてその事業に”主として従事している”ことが求められます(一般的に「年間を通じて」「一定期間以上」などの要件を踏まえて判断されます)。

「今月は仕事がないから給与ゼロ」が続くと、税務署は「それは専従ではなく、スポットの手伝いでは?」と見やすくなります。

もし専従者としての要件が否認されると、その年の専従者給与が経費として認められない可能性が出てきます。
ここは影響が大きいので、特に注意が必要です。

利益操作(所得分散)に見えやすい

身内への給与は第三者と比べて調整しやすい分、税務署は次のような観点で確認します。

・「利益が出た月だけ給与を出していないか」
・「税金を軽くするために所得を分けていないか」

この場合、調査ではほぼ確実に次の資料を求められます。

・出勤簿・タイムカード
・業務日報(10万円の月に何をしたか)
・他の従業員や外注との比較資料(同様の作業を外部に頼むならいくらか)

仕事量に波がある場合の「納得感のある整え方」

どうしても繁忙期と閑散期がある業種なら、ゼロ円を作るよりも次の形が現実的です。

「固定の役割」を決め、少額でも毎月支払う

たとえば、次のような”毎月必ず発生する仕事”を担当してもらいます。

・帳簿の整理、レシートのまとめ
・店内清掃、在庫チェック
・SNS更新、予約管理
・請求書の発行補助

基本給を毎月一定にしておけば、専従の実態も説明しやすくなります。

増減させるなら「変動のルール」と「記録」をセットにする

たとえば、次のようにルールを決めておきます。

・繁忙期は追加で○円
・残業は1時間○円
・週○日以上出勤した月は加算

このように、事前ルール+勤務記録で組み立てると、税務署に対して筋が通ります。

最後に(安心のための一言)

専従者給与は、「届出」「金額」「働き方」「記録」の整合性が取れていれば、必要以上に恐れるものではありません。

不安な場合は、いまの運用(給与の決め方・勤務実態・証拠の残し方)を一度整理していただくと安心です。
制度や取扱いはケースにより判断が分かれることもありますので、最終確認は税務署へのご相談をおすすめします。