年末調整の結果は、必ず給与明細に反映させる必要があります

年末調整結果を給与明細に反映させる必要性

年末調整をしたのに、その結果を給与明細に載せない。
実は、これは実務上も法令上も、原則として認められていません。

もし明細に反映させずにいると、税務署から「この会社はきちんと税金を預かって納めているのかな?」と疑われてしまう可能性があります。

ここでは、なぜ税務署がそこを重視するのか、そして実務で気をつけるべきポイントを、分かりやすく整理してご説明します。

税務署が注目している「3つのポイント」

税務署は、会社がきちんと「従業員から税金を預かり、正しく納めているか」を常にチェックしています。

その際、特に次の3つが確認されます。

過不足額の精算義務

年末調整では、1年間に天引きした所得税の合計と、本来納めるべき税額を比べます。
そして、払いすぎていたら返す(還付)、足りなければ追加で徴収する─これが法律で決められた義務です(所得税法第190条)。

この精算を、その年の最後の給与か、翌年1月の給与で必ず行わなければなりません。
明細に載せないということは、この精算をしていないとみなされてしまいます。

給与明細と帳簿の一致

税務署の調査が入ったとき、確認されるのが「源泉徴収簿(会社が管理する帳簿)」と「給与明細(従業員に渡す書類)」が一致しているかどうかです。

もし明細に反映されていないと、「帳簿と実態がズレている」と判断され、計算ミスや不正の疑いをかけられるリスクがあります。

「還付未済」の疑い

従業員に還付すべき税金を返していない場合、会社が預かっているお金をそのままにしている状態です。
これは、従業員の権利を侵害しているだけでなく、税務署から見ても非常に問題のある処理と判断されます。

税務調査で具体的に確認される項目

実際に税務調査が入ると、人件費に関して以下のような項目が細かくチェックされます。
一見複雑に見えますが、要するに「数字の整合性がきちんと取れているか」を確認されるということです。

納めた税金と帳簿の記録が一致しているか

「会社が税務署に納めた源泉所得税の金額」と「従業員ごとの記録帳簿(源泉徴収簿)に書かれた税額の合計」が合っているかを確認されます。

たとえば、12月に税務署へ10万円納めたのに、帳簿を合計すると8万円しかない…という場合、「差額の2万円はどこへ?」と疑問を持たれます。

会社の帳簿と給与明細が一致しているか(全員分)

「会社の会計帳簿に記録された給与の金額」と「各従業員に渡した給与明細の金額」、そして「源泉徴収簿の記録」が、すべて一致しているかを確認されます。

これは全従業員分、1人ひとりチェックされます。
もし一部の従業員だけ明細に反映していない…という状態だと、その不一致がすぐに発覚してしまいます。

架空人件費や水増しがないか

「会社の帳簿に記録された給与」と「タイムカードや出勤簿などの勤怠管理資料」を照らし合わせて、実際に働いている人に支払われているかを確認されます。

これは、架空の従業員を作って経費を水増ししていないか、実際には働いていない人に給与を払ったことにしていないか、をチェックするためです。

実務上のリスクと問題点

「明細に反映させない」ことで、具体的にどんな問題が起きるのでしょうか。

源泉徴収票との不整合が生じる

年末調整の結果は、最終的に「給与所得の源泉徴収票」という書類にまとめられます。
この源泉徴収票は、従業員本人に渡すだけでなく、税務署にも提出します。

もし給与明細に反映させていないと、
「従業員に渡した明細の金額」と「税務署に報告した金額」がズレてしまうことになります。

これは税務調査ですぐに指摘される事項です。

従業員とのトラブルにつながる

年末調整による還付金は、従業員にとって「払いすぎた税金が戻ってくる大切なお金」です。

明細に載せず、別の方法で渡そうとすると、
「本当にちゃんと返してもらえたのかな?」と不安にさせてしまいます。

場合によっては、従業員から税務署へ相談が入ることもあり得ます。

では、どうすればよいのか?─具体的な対策

もし「事務作業が大変だから」「手計算で処理しているから明細に入れにくい」という理由であれば、次のような対応を検討してください。

還付額・不足額を必ず明細に記載する

給与明細の「所得税」欄、または「年末調整還付金・徴収金」といった項目を設けて、必ず金額を記載してください。

たとえば

・還付の場合 → 「年末調整還付 ¥5,000」と記載し、手取り額に加算
・追加徴収の場合 → 「年末調整徴収 ¥3,000」と記載し、手取り額から差し引く

こうすることで、従業員にも分かりやすく、税務署への説明もスムーズになります。

どうしても別払いにする場合の注意点

給与振込と分けて還付金を渡したい場合でも、給与明細には必ず金額を記載してください。

そのうえで、「別途振込」や「現金支給」などの方法を取ることは可能ですが、
会社が管理する「源泉徴収簿」には、必ずその記録を残しておく必要があります。

まとめ

年末調整の結果を給与明細に反映させないという選択は、法令上も実務上も認められていません。
税務署の調査でも必ずチェックされるポイントですので、必ず明細に記載するようにしましょう。

もし現在の事務処理で難しい点があれば、給与ソフトの活用をおすすめします。
正しく処理しておくことで、従業員の信頼も得られ、税務調査でも安心して対応できます。