情報過多の時代に「選ばれる会社」がやっている、たった1つの発信の工夫

情報が多すぎて「選べない」時代に、発信で選ばれる会社がやっていること

情報があふれる時代に「選ばれる発信」とは何か。
最近の調査や報道を見ていると、ひとつの傾向がはっきり見えてきます。

それは、意味のない情報発信、大げさな広告、商品の特徴だけを並べた発信は、どんどん見向きされなくなっているということです。

これは感覚論ではありません。
日本経済新聞でも「情報が多すぎて選べない」ことが社会や経済に影響している、と取り上げられています。

記事によると、世界のデータ通信量は2010年から2024年までの約10年で87倍に増えたそうです(米IDC調べ)。
また、情報過多によって「決断をあきらめた」経験がある人が70%にのぼる、という調査結果(米オラクル)も紹介されています。

情報が多すぎると、選ぶこと自体が疲れてしまう。
疲れると、人は「比較検討」ではなく、「先延ばし」か「いつもの」に流れます。

つまり、発信する側にとっては「届けたつもり」でも、届いていない可能性がある。
ここに、発信の勝ち負けが出てきます。

選択肢が増えすぎて、脳が”省エネ運転”になっている

同じ記事では、選択肢があらゆる分野で増えている例も挙げられています。

たとえば、任天堂のゲームソフトの本数は、2010年ごろの約200本から、2025年には約3,400本と17倍に。
楽天市場の商品数も、約5,500万点から約5億点へと9倍に増えています。

これを私たちの商売に置き換えると、分かりやすいかもしれません。

飲食店で、メニューが分厚すぎるとどうなるか。
お客様は「選べる楽しさ」よりも先に、「決めるしんどさ」を感じます。
結果として、人気メニューばかりに注文が偏ったり、「今日はいいや」と店を出てしまったりする。

情報過多の時代は、まさにこれがインターネット上でも起きているわけです。

そして、記事が示す次のキーワードが重要です。
それが「チョイパ(チョイス・パフォーマンス)」という考え方。

ざっくり言うと、たくさんの情報を全部読み込むのではなく、必要な分だけで”納得して選べる”状態をつくるという発想です。
コスパ(コスト・パフォーマンス)やタイパ(タイム・パフォーマンス)に続く、新しい価値観として注目されています。

「商品の特徴をたくさん並べる」「自分の言いたいことを言う」「大げさに目立たせる」—これらは、言ってみればメニューをさらに分厚くしている行為です。

お客様の脳が省エネ運転を始めている今、それはむしろ逆効果になりやすい。
では、どうすればいいのでしょうか。

事例:従業員10名前後の現場で、発信をどう変えるか

ここからは、中小企業や個人事業の方が「明日から使える打ち手」として、具体例を見ていきます。

事例1:地域の工務店(従業員8名)—「特徴」ではなく「不安」を先に言う

工務店でよくある発信は、こんな感じではないでしょうか。

「耐震等級3」「高性能断熱」「自社一貫施工」……

もちろん、これらは大事な情報です。
でも、お客様は最初からそこを比較できるわけではありません。
家づくりの入口にいる人の頭の中は、もっと生活に近いところにあります。

「冬、リビングが寒いのを何とかしたい」
「光熱費が上がってきて不安」
「工事中、どれくらい生活が乱れるんだろう」

そこで、発信の順番を変えてみます。”特徴”を言う前に、”お客様の不安”を言葉にするのです。

たとえば、こんなイメージです。
×「高断熱の家を提供します」
○「朝、床が冷たくてつらい。その悩みを、どう変えるか。まず”体感”からご説明します」

伝えている内容は同じでも、受け手が「これは自分の話だ」と感じられるかどうかが変わります。
情報過多の時代は、この”自分ごと化”がないと、そもそも見てもらえません。

事例2:BtoBの小さな制作会社(従業員10名)——「全部できます」をやめて、1行で選ばれる

制作会社でよくある発信は、こんなパターンです。

「動画もWebもSNSもチラシも、全部やります!」

気持ちは分かります。
でも、情報があふれる中では、これだと埋もれてしまいます。
理由は単純で、お客様が「選ぶ基準」を持てないからです。

そこで、やることは2つだけです。

①「誰の、どんな面倒」を減らす会社かを決める

たとえば、「採用ページを作ります」ではなく、「応募が来ない原因を”言葉”から見直して、応募が増える状態に近づけます」と言い換える。
お客様の困りごとを具体的に言語化することで、「この会社は自分の悩みを分かっている」と感じてもらえます。

②実績の見せ方を「作品集」から「判断材料」へ変える

制作物をずらっと並べるのではなく、「何に困っていたか → 何を変えたか → どう楽になったか」という順番で見せる。
お客様が知りたいのは「作品のクオリティ」よりも、「自分も同じように助けてもらえるか」という判断材料だからです。

情報が多い時代、お客様が欲しいのは”選ぶための材料”です。
それを渡せる発信が、チョイパ的であり、選ばれやすくなります。

まとめ:発信は”追加”より”削る”。相手の脳を楽にする

日経記事が示しているのは、「選択肢が増えすぎると、人は決められなくなる」という現実です。
世界のデータ量が増え、決断をあきらめる人が多い—この話は、私たちの商売の現場ともつながっています。

だからこそ、意味のない情報発信や大げさな広告は、もう勝ち筋になりにくい。
これから必要なのは、お客様を想像し、お客様視点で「選びやすくする」発信です。

言い換えるなら、発信は”盛る”より”整える”。
メニューを増やすのではなく、「おすすめ3品」を作る。
そんな感覚が大切になってきます。

明日からできる3つのこと

最後に、すぐ実践できることを3つ挙げておきます。

①発信を書く前に、「誰のどんな不安を軽くするか」を1行で書く

書けなければ、その投稿は見直すか、削る判断をしてもいいかもしれません。

②商品特徴を並べる前に、お客様の”困りごとあるある”を3つ書き出す

「選べない」「不安」「面倒」など、見出しに使えるレベルで言語化してみてください。

③実績の見せ方を「何に困っていたか → 何を変えたか → どう楽になったか」の順に整える

作品の羅列をやめて、ストーリーで伝えることを意識します。

情報が多い時代は、発信の「量」ではなく、相手の頭の中をどれだけ正確に言語化できるかで勝負が決まります。
「お客様視点」—これが、これからの「選ばれる条件」になっていきます。