軽減税率ありきではなく「給付方式」や「還元方式」も含めての議論を!

 

11月4消費税軽減税率の線引き日付けの日本経済新聞で一橋大学教授の佐藤主光氏は「軽減税率には「線引き」の問題が伴う。対象を外食と酒類を除く食料品などとして、テークアウト商品などでどこまで外食サービスとみなすのかは定かではない。
英国では同じピザでも冷凍のままか温めて販売するかで適用される税率が異なる。温かいピザは外食とみなされる。
カナダでは、ドーナツを6つ以上買うと自宅用としてゼロ税率が、5つ以下は店内で食べるものとして標準税率が課される。生鮮食品に限っても豆腐や刺し身の盛り合わせの扱いなど境界線は明確ではない。現場で混乱が生じるほか、軽減税率適用の有無を逐一課税当局に確認するとなれば、新たな商品開発を妨げかねない。
加えて、この線引きには政治的な裁量が働きやすい。租税特別措置の新設や継続を巡っては毎年、関係する利益団体が省庁や政治家に陳情合戦をしている。同様のことが軽減税率の適用範囲の決定でも起きるだろう。軽減税率はいったん導入すれば、その範囲は際限なく拡大しかねない。」としています。

また、11月5日付けの日本経済新聞では「肉の切り身と合いびき肉で税率が違うなんて紛らわしくなるわね。都内の専業主婦、杉井真美さん(32)は軽減税率を巡る報道に当惑気味だ。

与党が検討する消費税の軽減税率制度では生鮮食品(軽減規模は3400億円)を対象とする案が出ている。

食品表示法に基づき生鮮食品の対象を定めた場合、牛肉の切り身は軽減税率が適用されるが牛肉や豚肉を混ぜた合いびき肉は対象外になってしまう。

公明党内では生鮮食品に加工食品も加える案も浮上する。加工食品を対象に加え外食を外した場合は、ハンバーガーを家に持ち帰ると軽減税率が適用されるが、店内で食べると標準税率を払うことになる。
~(略)~
品目の線引きは一筋縄ではいかない。
消費税の導入で先行した欧州でも品目の線引きは神学論争の様相だ。英国ではポテトチップスは標準税率が適用されるが、ビスケットやケーキは税率がゼロ。日用品大手プロダクター・アンド・ギャンブル(P&G)はポテトチップスを使った商品がビスケット類だと主張。最高裁まで争ったが結局敗れた。」

これらの記事からも軽減税率の対象品目の線引きは、誰もが納得いく形での合意は難しいと言わざるを得ません。

また、複雑な税制にすることによって現場での混乱や経済活動にマイナスの影響が生じることも想定されます。

軽減税率については各種団体(経済同友会、日本税理士会連合会、日本チェーンストア協会等)が反対を表明しています。

現在、低所得者対策として住民税非課税世帯に一人あたり6千円の給付措置が行われています。現行の給付方式の方が簡素な仕組みで良いという意見も数多くあります。

そして、この議論で忘れてならないのは、事務負担増加の問題です。軽減税率導入に合わせて議論されているインボイス方式によって中小企業者の事務負担は2倍以上になるという試算もあります。

「現場での混乱」、「経済活動にマイナスの影響」、「低所得者対策」、「中小企業者の事務負担」をキーワードに軽減税率ありきではなく、「給付方式」や「還元方式」も含めての議論をすべきではないでしょうか。