社員割引で値引き販売をしたとき、税金はかかるの?

社員値引販売と税金の扱い

会社が役員や従業員に対して、自社で扱っている商品を「社員割引」などで安く販売することがあります。

このとき、「値引きされた分だけ得をしているのだから、その分は給与として税金がかかるのでは?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

結論からお伝えすると、一定のルールを守った値引販売であれば、その値引き分について給与として課税しなくても問題ありません。

※ただし、この取扱いの対象となるのは、原則として自社製品や取扱商品などです。株式などの有価証券や、食事の提供は別のルールが適用されます。

課税されないための3つの条件

値引販売による利益に課税しなくてもよいのは、次の3つの条件をすべて満たす場合です。

条件①:値引後の価格が「仕入れ値以上」で、安すぎないこと

値引きして販売する価格について、次の2点が求められます。

・会社がその商品を仕入れた金額(または製造にかかった原価)より安くなっていないこと
・通常の販売価格と比べて「極端に安い価格」になっていないこと

目安として、値引後の価格が「通常の販売価格の70%未満」になると、税務上問題になりやすくなります。

たとえば、お客様には10,000円で販売している商品を、社員に6,000円(通常価格の60%)で販売するようなケースは、この条件に引っかかる可能性が高くなります。

条件②:値引率が公平で、合理的なバランスがあること

値引率(割引の割合)について、次のいずれかであることが必要です。

・役員・従業員の全員に同じ割引率が適用されている
・役職や勤続年数などで差をつける場合でも、全体として合理的なバランスが保たれている

一部の人だけが特別に大きな割引を受けられるような仕組み(たとえば、特定の役員だけ半額になるなど)は、その値引き分が「実質的な給与」とみなされ、課税される可能性が高まります。

条件③:購入数量が「家庭で使う範囲」にとどまること

値引販売で購入できる数量は、一般の消費者が自宅で使うと考えられる程度であることが必要です。

転売を疑われるような大量購入や、事業用に使う目的での大量購入と見られる場合は、この条件を満たさなくなります。

たとえば、日用品を「家で使う分」として少量購入するのは問題になりにくい一方、同じ商品を何十個もまとめて購入していると、「家庭用の範囲を超えている」と判断される可能性があります。

「通常の販売価格」とは?

「通常の販売価格」は、会社の業態によって考え方が変わります。

製造業が自社製品を扱う場合は、製造業者としての販売価格が基準になります。
卸売業が自社商品を扱う場合は卸売価格、小売業が自社商品を扱う場合は店頭での小売価格が基準となります。

つまり、「普段、外部のお客様に対してどの段階の価格で販売しているか」によって、比較対象となる価格が変わるということです。

具体例で確認してみましょう

◎ 課税されにくいケース

ある小売業の会社が、従業員向けに「店頭価格の10%引き」で商品を販売しています。

・値引後の価格は、仕入れ値よりも高い
・割引率は全従業員一律で、特定の人だけ優遇されていない
・購入は月に数回、家庭で使う範囲に限られている

このような運用であれば、値引き分がすぐに給与として課税されるリスクは低く、「課税しなくても問題ない」扱いになりやすいと考えられます。

△ 課税が問題になりやすいケース

一方で、次のような運用には注意が必要です。

・値引後の価格が通常価格の60%など、目安の70%を大きく下回っている
・特定の役員だけが大幅な割引(たとえば半額)を受けている
・家庭用とは言いにくい数量を継続的に購入している

このような場合は、値引き分が「実質的に給与(または役員への報酬)」とみなされ、課税対象になる可能性が高まります。

トラブルを防ぐためのポイント

社員割引を安心して運用するために、次の点を整えておくことをおすすめします。

・ルールを明確にする:対象者、割引率、上限数量などを社内規程として文書化しておく
・記録を残す:誰にどの割引を適用したかが分かるよう、レジ記録や販売記録を保管する
・公平な制度設計にする:役員だけが特別扱いにならないよう注意する
・数量制限を設ける:家庭で使う範囲に収まるよう上限を決めておく

こうした準備をしておくと、万が一税務調査があった場合にも、スムーズに説明することができます。