メガバンク・地銀・信用金庫は、これからどう変わっていくのでしょうか
「金利が上がれば、銀行はもうかる」。そんな話を耳にすることがあります。
銀行は、お金を貸して利息を受け取る仕事をしています。
貸出金利が上がれば収入が増えるので、この考え方には確かに理由があります。
実際に、日本銀行は2026年9月、政策金利を1.25%程度へ引き上げました。
1995年以来の水準です。地方銀行全体の2026年3月期の最終利益も、過去20年で最も高い水準になりました。
それでも私は、これからの銀行を「金利が上がるから業績がよくなる」とだけ考えるのは難しいと思っています。
金利が上がれば、銀行が預金者に支払う利息も増えます。
以前に買った債券の価格が下がることもあります。
お金を借りている企業が、増えた利息を払い続けられるかという問題も出てきます。
しかも、その影響はすべての金融機関に同じように表れるわけではありません。
メガバンクにはメガバンクの強みと課題があり、地方銀行には地方銀行の事情があります。
信用金庫も、地域との関係、預金の集まり方、貸出先、お金の運用の中身によって、今後の姿が変わってくるはずです。
私が今のところ描いているのは、メガバンクが国内での事業を広げ、地銀が再編や共同化を進め、信用金庫では経営の対応力による差が大きくなる、という未来です。
ただし、「大きい金融機関ほど安心で、小さい金融機関ほど厳しい」と単純に分けることはできません。
地域の企業や住民から選ばれ続ける金融機関には、規模だけでは測れない強さがあります。
これから何が変わるのか。その変化がどのようにつながっていくのか。
私なりに考えてみたいと思います。
金利上昇の恩恵は、すぐに、同じようには届きません
銀行の基本的な収益は、受け取る利息と支払う利息の差から生まれます。
預金などで集めたお金を企業に貸し、企業から受け取る利息が預金者に支払う利息を上回れば、その差が収益になります。
この差を「利ざや」と呼びます。
貸出金利が上がり、預金金利の上がり方がそれより小さければ、銀行の収益は改善しやすくなります。
問題は、銀行が持っている資産が、すべて同時に新しい金利へ切り替わるわけではないことです。
金利を比較的早く見直せる融資もあれば、一定期間は金利が変わらない融資もあります。
以前に買った債券の中には、低い利息を長く受け取り続けるものもあります。
その一方で、預金者に支払う利息を引き上げる必要が出てくれば、費用はすぐに増えます。
つまり、収入が増える時期と、費用が増える時期にずれがあるのです。
このずれを考えると、「金利上昇は追い風だ」という見方と、「金利上昇は負担になる」という見方は、どちらも成り立ちます。
新しく貸すお金や新しく運用するお金には、高い金利の恩恵があります。
過去に低い金利で長く運用したお金には、負担が残ります。
これからの金融機関を考えるうえで、この「過去の資産と、これからの収益の時間差」が大きな分かれ目になると私は考えています。
含み損があることと、経営が立ち行かなくなることは同じではありません
金利が上がると、以前に発行された低い利息の債券は、市場での価格が下がりやすくなります。
新しく買える債券の方が高い利息を受け取れるなら、古い債券を同じ値段で買いたい人は少なくなるからです。
金融機関が持つ債券の価格が下がっても、まだ売っていなければ、その値下がりは「含み損」として扱われます。
実際に売って損を確定した場合などには、決算の利益に影響します。
値下がりが大きく、回復が見込みにくい場合には、売らなくても損失として処理することがあります。
会計上の扱いは、保有する目的や区分によっても変わります。
そのため、含み損が大きいことと、その年度に赤字になることは、必ずしも一致しません。
さらに、年度の赤字と、金融機関が預金の払い戻しに応じられなくなることも、別の問題です。
損失を吸収する自己資本がどれだけあるか。
払い戻しに対応できる資金がどれだけあるか。
本業でどれだけ利益を生み出せるか。
こうした条件によって、経営への影響は変わります。
ここで一つ注意したいのは、国内だけで営業する多くの銀行や信用金庫では、保有する債券の含み損が、原則として自己資本比率の計算に反映されない点です。
自己資本比率の数字が十分に見えても、含み損を差し引いた実際の余力は、別に確かめる必要があります。
また、「含み損はまだ売っていない損だから、気にしなくてよい」という話でもありません。
預金が流出して資金が必要になれば、保有している債券を売らざるを得ない場合があります。
そのときには、含み損が実際の損失になります。
反対に、資金と自己資本に余裕があれば、時間をかけて対応することもできます。
年度の黒字や赤字だけで、金融機関の将来を判断するのは難しいと思います。
将来の負担を減らすために、あえて損失を確定する場合もあります。
2026年3月期には、大きな債券の損失処理を行い、最終赤字を計上した地銀もありました。
株式の売却益で損失を埋め合わせた銀行や、増えた利息収入で吸収した銀行もあります。
その年度は赤字でも、翌年度以降の収益やリスクが改善する可能性があります。
一方、損失を出す余裕がなく、低い利息の資産を持ち続けることで、収益の改善が遅れる場合もあります。
見たいのは、赤字になったかどうかに加えて、その対応によって将来の収益とリスクがどう変わるかです。
「満期まで持てばよい」という考えにも条件があります
債券の価格が下がっても、満期まで持てばよいと考えることがあります。
普通の債券は、発行した相手が約束どおりに返済すれば、満期に額面の金額が戻ります。
ただし、買った価格が額面と同じとは限りません。
外貨建てなら、為替の影響も受けます。
そして、元本が戻る場合でも、満期まで低い利息を受け取り続けるという問題は残ります。
その間に預金者へ払う利息が増えれば、収益は圧迫されます。
満期まで待てるだけの資金の余裕があるかどうかも重要です。
預金者は、金融機関が持つ債券の満期に合わせてお金を引き出してくれるわけではありません。
金融庁も、地域金融機関の国債の含み損について、満期まで持つ予定の国債も含めて点検する形で監視を強める方針を示しています。
長く動かせない資産と、いつ動くか分からない預金を、どのように組み合わせているか。
その管理が問われます。
古い債券を売って、高い利息の債券に買い替える方法にも、条件があります。
高い利息を受け取れるようになっても、売却で失ったお金が戻るわけではありません。
さらに金利が上がれば、買い替えた債券の価格も下がる可能性があります。
大切なのは、高い利息の商品に移ることだけでなく、どれくらいの期間お金を固定するのか、それが資金の必要になる時期と合っているのかまで考えることだと思います。
これからは、預金の「量」と同じくらい「質」が重要になります
銀行の強さを考えるとき、預金がどれだけ集まっているかは、分かりやすい目安です。
ただ、これからは預金の総額だけでは見えない違いが大きくなると思います。
高い金利を提示して集めた預金と、日々の生活や仕事に結び付いた預金では、費用も動きやすさも違います。
給与や年金の受取口座、公共料金の引落口座、企業の売上入金や支払いに使う口座には、金利以外にも使い続ける理由があります。
一方、金利の高さを理由に集まった預金は、他の金融機関がさらに高い金利を出せば、また移っていく可能性があります。
預金を増やすために支払う利息が大きくなれば、集めたお金で、それ以上の収益を上げる必要があります。
使い道が限られているのに、高い費用をかけて預金だけを増やしても、経営がよくなるとは限りません。
また、預金残高が変わらなくても、普通預金から金利の高い定期預金へお金が移れば、金融機関の費用は増えます。
これからの預金競争では、「どれだけ集めたか」とともに、「どれくらいの費用で、どれくらい安定して集められるか」が問われると考えています。
長年の取引は、次の世代まで続くとは限りません
地域の金融機関には、長く使い続けている顧客がいます。
慣れた窓口や、顔を知っている担当者がいることは安心につながります。
少し金利が違うだけでは、口座を変えない人もいるでしょう。
ただ、その関係が相続の後も続くとは限りません。
親が地元の信用金庫に預けていたお金を、相続した子が、自分の普段使う銀行へ移すことは十分に考えられます。
「高齢の顧客の預金は動きにくい」という見方と、「高齢化によって預金が流出する」という見方は、この点で両立します。
本人が使い続けている間の安定性と、次の世代に渡った後の安定性は違うのです。
地域金融機関にとって、相続や資産承継への対応は、手数料を得る仕事であると同時に、次の世代との関係をつくる仕事にもなります。
預金の将来を考えるときには、目の前の残高に加えて、「このお金を次に持つ人は、どの金融機関を使うのか」という視点が欠かせないと思います。
国債への資金移動では、お金がどこへ戻るかも重要です
金利が上がれば、国債を持つ魅力も増します。
預金を中心にしていた人が、利回りを比べて一部を国債へ移すこともあるでしょう。
金融機関にとっては、預金を維持するための競争が強まります。
ただし、個人が国債を買った金額だけ、銀行全体の預金が永久に減るとは限りません。
新しく発行された国債を買えば、お金はいったん政府側へ移ります。
その後、政府が支出すれば、受け取った企業や家計の預金として戻ってくる経路があります。
すでに出回っている国債を銀行以外の人や会社から買う場合には、買い手の預金が減り、売り手の預金が増えることもあります。
それでも、個々の金融機関にとって、預金の流出が問題になり得ることは変わりません。
銀行全体にお金が戻っても、最初にお金が出ていった銀行や信用金庫へ戻る保証はないからです。
地域の信用金庫から出たお金が、別の企業のメガバンク口座に入ることも考えられます。
金融全体のお金の流れと、個々の金融機関が使えるお金の流れは、分けて考える必要があります。
また、国債や投資商品へお金が移っても、その金融機関が販売や資産運用のサービスを提供していれば、別の収益を得られる可能性があります。
ただし、販売による収益が、預金を使って得ていた収益を十分に補えるかは、実際の成果次第です。
預金が減っても、グループ全体では顧客との関係を保てる金融機関と、取引そのものを失う金融機関では、その後の影響が違ってくるはずです。
メガバンクの国内拡大は、地域金融機関の顧客構成にも影響します
国内でお金を貸す採算が改善すれば、メガバンクが国内の融資に力を入れる理由も強くなります。
大型の設備投資や企業買収には、多額の資金と専門知識が必要です。
大手の資金力や人材、広い取引網が役立つ場面は多いでしょう。
地銀や信用金庫にとっては、優良な企業との取引を守るための競争が強まる可能性があります。
私が気になるのは、貸出残高だけでは分からない、顧客の顔ぶれの変化です。
返済力が高く、成長も期待できる企業が他行へ移る一方で、利益の薄い融資や経営の難しい企業への融資が残れば、貸出残高が同じでも、経営の中身は変わってしまいます。
ただし、この変化がすべての地域金融機関で起きるとは限りません。
地元企業の事情をよく知っていることが、大手には見えにくい強みを評価する力になる場合もあります。
大手と地域金融機関が一緒に融資し、企業の投資を支えることもできます。
大手の国内拡大によって企業の資金の調達先が増え、地域の受注や雇用につながる可能性もあります。
また、融資の増加を、そのまま企業の成長と考えることにも注意が必要です。
設備投資のための借入もあれば、原材料費や人件費が上がったために必要になった借入もあります。
一時的な大型買収で貸出が増え、その後に返済されることもあります。
貸出が増えた理由と、借り手の返済力が本当に高まっているかを、合わせて見たいところです。
デジタル化は、便利さを高める一方で、競争を厳しくします
メガバンクは、銀行、証券、信託、資産運用、決済などを組み合わせて、顧客との関係を広げていくと考えられます。
スマートフォンで使いやすく、預金から投資まで同じグループで扱えるなら、顧客にとっては便利です。
大手の資金力とデジタルサービスが組み合わされば、地域を越えた競争も強まるでしょう。
ただ、新しいサービスを始めたことと、利益が増えることは別です。
他行から新しく預金を獲得したのか、グループ内でお金が移っただけなのかによって、効果は違います。
高い預金金利を出せば、支払う利息も増えます。
ネット銀行にも、お金を集めるための費用はかかります。
店舗が少なくても、預金獲得の競争が厳しくなれば、収益は圧迫されます。
AIの活用も、すぐに利益を増やすとは限りません。
事務処理や情報検索、審査の支援に役立つ可能性はありますが、導入費用が先にかかります。
誤った判断への備えや、情報管理への対応も必要です。
デジタル化が進んでいるかどうかだけでなく、その便利さが安定した取引と収益に結び付いているかを見たいと思います。
メガバンクについては、海外事業も忘れられません。
国内の金利環境が改善しても、海外の景気悪化や貸倒れ、外貨を調達する費用の増加が、利益を押し下げることがあります。
国内での強さと、グループ全体の業績が、同じ方向に動くとは限りません。
地銀の再編では、規模を大きくした後に何が変わるかが問われます
人口や企業数が減れば、地域の金融需要にも影響します。
一方、システム、サイバー対策、人材育成、専門業務には、一定の費用がかかります。
顧客が減っても、必要な費用が同じ割合で減るわけではありません。
このため、地銀が県境を越えて協力したり、経営を統合したりする動きは、今後も続くと考えています。
ただ、金融機関が一緒になれば、すべての問題が解決するわけではありません。
組織やシステムが別々のままなら、費用が十分に減らない場合があります。
専門人材を集めても、顧客への支援に生かせなければ、収益にはつながりません。
人口減少という同じ課題を抱える地域の銀行が集まっても、そのリスクが十分に分散されるとは限りません。
規模が大きくなることと、収益を支える地域や産業が多様になることは違います。
一方、取引網が広がれば、地域内では見つからなかった取引先や、事業承継の相手を見つけられる可能性があります。
専門人材やシステムを共有し、一つの銀行では難しかったサービスを提供できる場合もあります。
再編の評価は、統合を発表した時点ではなく、その後に費用、収益、顧客への支援がどう変わったかで決まると私は思っています。
合併以外にも方法はあります。
事務やシステム、専門業務を共有しながら、地域の窓口や営業を残すことも考えられます。
信用金庫でも、こうした共同化が重要になるでしょう。
金融機関の数が減ったかどうかに加え、必要な機能を維持できているかを見る必要があります。
短期の見通し―今後半年は、収益改善と損失への対応が並行します
今後半年ほど、2027年春ごろまでを考えると、貸出や運用からの利息収入が増える一方で、預金の費用も増えていくと見ています。
メガバンクは国内融資や顧客獲得を進め、地銀は本業の収益を改善しながら債券のリスクに対応するでしょう。
信用金庫では、低い利回りの資産をどれだけ抱えているか、損失への対応をどこまで進めているかによって、差が出やすくなると思います。
この期間に、再編の大きな成果が表れるとは考えにくいところです。
組織やシステムを整え、顧客への支援を利益につなげるには時間がかかります。
標準的な見通しは、利息収入と預金の費用がともに増え、収益改善の程度に差は出ても、資金繰りや自己資本に大きな支障が生じていない状態です。
強気の見通しは、預金が安定し、利息収入の増加が預金の費用の増加を上回る展開です。
債券の損失処理が計画どおりに進めば、将来の収益改善も期待しやすくなります。
本業の収益と利ざやの改善、費用の低い預金の安定、債券の金利リスクの低下が、その目安になります。
最終利益が増えていても、株式の売却益などが主な理由なら、同じ評価はできません。
弱気の見通しは、預金の費用が先に増え、債券価格の下落や預金の流出が重なる展開です。
高い金利を出しても預金が減り、資金を確保するために債券を売る必要が出てくれば、負担は重くなります。
普通預金の減少、高い費用での資金調達、利ざやの悪化が重なれば、見方を弱気に改める必要があります。
中期の見通し―半年から2年では、借り手の返済力が分かれ目になります
半年から2年ほどの期間では、貸出金利の見直しが進み、企業が増えた利息をどこまで吸収できるかが見えてくると考えます。
企業の利益や現金収入が増えていれば、金利負担に対応できます。
価格を引き上げられず、費用の増加が続く企業では、資金繰りが厳しくなるかもしれません。
金融機関にとっては、融資先の業績悪化に備えた引当金や、貸倒れによる損失が重要になります。
こうした負担を「信用コスト」と呼びます。
貸出金利を上げて収入が増えても、信用コストがそれ以上に増えれば、収益は改善しません。
標準的な見通しでは、預金金利が貸出金利の上昇に追い付き、利ざやの改善は落ち着いてくると考えます。
その中で、顧客との関係、費用、信用リスクをうまく管理できる金融機関が、収益を維持するでしょう。
メガバンクでは国内融資やデジタルサービスが持続的な利益を生むかが問われ、地銀では再編や共同化が具体化し、信用金庫では債券の満期や入れ替えによる改善の速さに差が出ると思います。
強気の見通しは、企業の設備投資が利益や現金収入の増加につながり、地域金融機関にも収益の回復が広がる展開です。
一時的な大型案件に頼らない貸出の伸び、借り手の収益改善、信用コストの安定が確認できれば、強気の見方を持ちやすくなります。
共同化についても、計画が実際の費用削減や新しい収益につながっているかを見たいところです。
弱気の見通しは、預金の費用の増加と、融資先の信用悪化が重なる展開です。
企業の返済力が弱まり、金融機関が融資に慎重になり、そのことで企業がさらに苦しくなる、という悪循環が起こる可能性があります。
返済条件の変更や延滞が増え、信用コストが上がり、本業の収益も悪化するようなら、弱気の見通しに近づいていると判断できます。
なお、長い期間の低利回りの債券を多く持っている金融機関では、2年たてば負担が解消するとは限りません。
改善には、それ以上の時間がかかるところもあるはずです。
長期の見通し―2年以上では、地域の成長と金融機関の役割が問われます
2年以上の長期では、金利の動きに加え、企業の成長、事業承継、人口や企業数の変化、デジタル投資の成果が重要になります。
標準的には、メガバンクは大型融資、資産運用、決済などを組み合わせ、地銀は広域化や共同化を進めると考えます。
信用金庫は、地域との接点を残しながら、事務や専門機能を共有する方向へ進むでしょう。
金融機関や店舗の数には、減っていく圧力がかかると思います。
ただし、数が減ることと、金融サービスが悪くなることは同じではありません。
専門チームを共有して、企業への支援を充実させられる場合もあります。
反対に、金融機関の利益が改善しても、地域の企業が相談しにくくなることは考えられます。
地域の情報には価値があります。
経営者の考え、取引先との関係、事業の続く見込みなど、決算書だけでは分からない事情を理解することは、融資の判断にも役立ちます。
費用を減らす過程で、こうした情報を得る力まで失えば、長い目で見た収益にも悪影響が出るおそれがあります。
標準的な見通しは、店舗や金融機関の数が減っても、必要な融資や相談の機能が維持され、共同化によって費用とサービスの釣り合いが取れている状態です。
強気の見通しは、再編や共同化で生まれた余力を、地域企業の成長に使える展開です。
事業承継が進み、生産性や付加価値が高まり、新しい取引や投資が生まれれば、人口減少の影響を一部補える可能性があります。
弱気の見通しは、企業の廃業や投資不足が続き、金融機関が費用を減らしても、収益の縮小に追い付かない展開です。
その中で、地域外の融資や高利回りの運用へ急いで向かえば、新たなリスクを抱えることになります。
多くの金融機関が同じ地域外の優良企業を狙えば、競争が集中し、利ざやも薄くなるでしょう。
外へ出れば収益が増えるという戦略を、すべての金融機関が同時に成功させることは難しいはずです。
この場合には、再編や資本の支援が、より差し迫った課題になる可能性があります。
金利が上がっても、下がっても、厳しくなる道筋はあります
金融機関にとって望ましいのは、企業の収益改善と、無理のない金利の変化が組み合わさることだと思います。
企業の利益が増え、投資が実を結ぶ中で金利が上がれば、借り手は負担を吸収しやすくなり、金融機関にも利益を増やす機会が生まれます。
一方、企業の収益が改善しないまま金利だけが急に上がれば、債券価格が下がり、資金を集める費用や借り手の負担が増えます。
反対に、景気が悪くなって金利が下がる場合にも、問題は起こります。
債券価格が回復しても、融資先の売上減少や貸倒れの増加を補えない可能性があるからです。
短期金利と長期金利の動き方も重要です。
短い期間で集めたお金の費用が増える一方、長く運用して得られる利息が十分に増えなければ、収益は圧迫されます。
金利の高さだけでなく、上がった理由、期間ごとの金利の違い、借り手の状態まで合わせて考える必要があります。
金融機関が生き残ることと、地域が豊かになることは分けて考えたい
私が見落としたくないのは、銀行の利益が増えることと、地域の企業や住民の暮らしがよくなることは、必ずしも同じではないという点です。
貸出金利を引き上げて金融機関の利益が増えても、借り手の収益が増えていなければ、企業側の負担が重くなるだけです。
融資が企業の成長につながり、企業と金融機関の両方の収益が増えてこそ、持続的な改善と言えるのではないでしょうか。
再編についても、銀行が存続できるようになったかだけでなく、企業が必要な支援を受けられるかを見たいと思います。
人口減少も、人数だけでは判断できません。
人口が減っても、生産性が高まり、地域外に商品やサービスを売り、企業の利益が増えれば、金融需要を支える余地があります。
反対に、人口の減り方が緩やかでも、企業の稼ぐ力や投資意欲が弱ければ、金融機関の成長は難しくなります。
地域金融機関の未来は、その地域に何人住んでいるかだけでなく、どのような仕事が生まれ、どれだけの価値を生み出せるかに左右されると思います。
最も読みにくいのは、預金者と借り手の動きです
金利の見通しが当たっても、金融機関の収益予想が当たるとは限りません。
預金を守るためにどこまで金利を上げる必要があるかを読み違えると、貸出から受け取る利息が増えても、利益は思うように増えないからです。
日々の支払いに使う口座、長く利用している口座、相続したお金、金利を比べて動く預金では、動き方が違います。
デジタルサービスの便利さや国債の魅力に、どの顧客がどれだけ反応するかも、金融機関によって変わります。
今の預金残高だけでは、その動きを十分に予測できません。
この預金者の反応の速さと大きさが、今回の見通しの中で最も不確実な部分だと私は思っています。
もう一つの大きな不確実性は、企業の現金収入が、増える金利負担をどこまで吸収できるかです。
売上が増えても、費用がそれ以上に増えたり、入金が遅れたりすれば、返済力が強くなるとは限りません。
こうした違いは、金融機関ごと、企業ごとにあります。
そのため、特定の銀行や信用金庫が、いつ、どの程度苦しくなるかを言い切ることはできません。
中小企業の経営者として、いま確かめておきたいこと
ここまでは金融機関の側から見てきましたが、借りる側の準備も大切です。
まず、自社の借入が変動金利か固定金利か、金利が見直されるのはいつかを確認しておきたいところです。
そのうえで、金利が今より上がった場合に、毎月の返済や利息がどれくらい増えるかを、一度試算しておくと安心です。
また、金融機関との関係は、業績が厳しくなってから築こうとしても間に合いません。
決算の内容や今後の計画を、普段から担当者と共有しておくことが、いざというときの支えになるのではないでしょうか。
おわりに
今後の方向として、メガバンクの国内拡大、地銀の再編や共同化、信用金庫の対応力による差の広がりは、続く可能性が高いと考えています。
その中で私が注目したいのは、預金を無理のない費用で守れるか、過去の運用の負担に向き合えるか、そして借り手の成長を支えられるか、という三つの点です。
金利のある経済は、金融機関に収益回復の機会を与えます。
その機会を持続的な利益につなげられるかどうかは、預金者との信頼関係と、企業の返済力を育てる地道な仕事にかかっているのだと思います。
※本記事は、金融機関をめぐる環境についての筆者の考えをまとめたものであり、特定の金融機関の評価や、金融商品の売買をお勧めするものではありません。






