長期の工事、売上はいつ計上する?

長期間にわたる工事の売上は、いつ計上するのでしょうか

建設業では、1年以上にわたる工事も珍しくありません。
「まだ完成していない工事の売上を、今期に計上すべきなのか」—そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

今回は、3月決算法人が受注した道路工事を例に、法人税と消費税の考え方をご紹介します。

今回の事例

今回取り上げる道路工事の概要は次のとおりです。
契約締結日は令和7年4月1日で、工期は令和7年7月1日から令和9年3月31日までの1年9か月です。
請負金額は15億円で、代金は着工時に5億円を受け取り、残額は引渡し時に受け取る契約となっています。
見積総工事原価は12億円で、当期末までにかかった工事原価は4億5,000万円です。

工期が長く、金額も大きい工事ですので、税務上は通常とは異なる考え方が必要になります。

まず「長期大規模工事」かどうかを確認する

法人税では、次の条件をすべて満たす工事を「長期大規模工事」と呼び、工事の進み具合に応じて売上と費用を計上するルール(工事進行基準)が適用されます。具体的には、工期が1年以上であること、請負金額が10億円以上であること、そして代金の受取条件が例外に当たらないことです。

今回の道路工事は、これらすべてに当てはまります。

ただし、「例外」がないか必ず確認を

長期大規模工事に当たる場合でも、事業年度末の時点で次のどちらかに当てはまれば、その期は工事進行基準による計上をしないことができます。
着手の日から6か月を経過していない場合、または進行割合が20%未満である場合です。

たとえるなら、映画が始まってまだ数分しか経っていない段階で、結末まで評価しないのと似ています。
工事も、まだ入り口の段階なら、その期に無理に成績をつけなくてもよい場合がある、ということです。

なお、この取扱いは、会計上も工事進行基準で処理している場合には使えません。

今回の工事は、例外に当たるか?

着手から6か月を経過しているか

着手日は令和7年7月1日、決算日は令和8年3月31日です。
当期末時点では着手から約9か月が経過しているため、この例外には当たりません。

進行割合が20%未満か

進行割合は、当期末までの工事原価4億5,000万円を見積総工事原価12億円で割って求めます。

4億5,000万円 ÷ 12億円 = 37.5%

37.5%ですので、20%未満ではありません。この例外にも当たりません。

当期は工事進行基準で計上します

2つの例外がどちらも当てはまらないため、当期は工事進行基準により、進んだ分の収益と費用を計上することになります。

当期の収益

請負金額15億円に進行割合37.5%を掛けると、当期の収益は5億6,250万円となります。

15億円 × 37.5% = 5億6,250万円

当期の費用

見積総工事原価12億円に同じく37.5%を掛けると、当期の費用は4億5,000万円となります。

12億円 × 37.5% = 4億5,000万円

当期の利益

売上から費用を差し引くと、当期の利益は1億1,250万円です。

5億6,250万円 - 4億5,000万円 = 1億1,250万円

「入金額=売上」ではありません

着工時に5億円を受け取っていても、それがそのまま当期の売上になるわけではありません。

税務上は、「いくら入金されたか」よりも「工事がどこまで進んだか」を基準に考えます。
今回も、着工時の入金は5億円ですが、当期の収益は進行割合に基づき5億6,250万円となります。

「お金が入った時期」と「売上として扱う時期」は必ずしも一致しない—これが税務の大切なポイントです。

消費税の扱いは法人税と異なります

消費税では、工事の売上は原則として「引き渡した時点」で認識します。
ただし、法人税で工事進行基準を適用している場合には、その期に計上した収益額をその期の課税売上とすることも認められています。

今回のケースでは、当期に計上した5億6,250万円を課税売上とする方法と、引渡し時に請負金額の全額を課税売上とする方法のいずれかが考えられます。

法人税と消費税では、売上を認識するタイミングが必ずしも一致しません。
申告の際には、処理方針を事前に確認しておくことが大切です。

まとめ

今回の道路工事は長期大規模工事に該当し、当期末時点で着手から6か月を超え、進行割合も37.5%と20%以上であるため、例外は使えません。
したがって、当期は工事進行基準により収益と費用を計上します。
当期の収益は5億6,250万円、費用は4億5,000万円、利益は1億1,250万円となります。

建設業の税務では、「長期大規模工事に当たるか」を確認するだけでなく、「例外に当たらないか」まで確認することが、正確な処理への近道です。

工期が長く、金額の大きい工事は、早めのご確認をおすすめします。