離婚して実家に戻った妹は、兄・姉の扶養控除の対象になる?年金収入がある場合の目安も解説

離婚した妹の扶養控除と年金収入の判断

「離婚した妹が実家に戻ってきた」
「妹には今のところ収入がなく、生活費は世帯主である兄が負担している」
「こういう場合、扶養控除の対象にできるのだろうか」

このようなご相談は、実務でもよくいただきます。
家族の事情が変わったとき、税金の制度と照らし合わせてどう考えればよいか、迷ってしまう方も多いと思います。

結論から先にお伝えすると、一定の要件を満たせば、離婚して実家に戻った妹さんを、扶養控除の対象にできる可能性があります。

ただし、税務署は「同居しているかどうか」だけで判断するわけではありません。
親族関係・所得の金額・生活費を誰が負担しているか・年齢など、いくつかの要件を総合的に確認します。

この記事では、扶養控除の要件をひとつひとつ整理しながら、妹さんに年金収入がある場合の目安についても分かりやすくご説明します。

妹は扶養控除の対象になる親族か

まず最初の確認は、「そもそも妹は扶養控除の対象になる親族かどうか」です。

扶養控除の対象になるためには、扶養される方が納税者(ここでは兄または姉)から見て、配偶者以外の親族である必要があります。

妹さんは、兄または姉から見て2親等の血族です。
ですから、親族としての要件はクリアしています。

「妹である」という点では、扶養控除の対象になり得る親族に該当します。
あとは、以下に挙げるその他の要件を満たすかどうかが問題になります。

「生計を一にしている」ことが大切です

次に重要なのが、「生計を一にしているかどうか」という要件です。

「生計を一にする」とは、難しい言葉に聞こえますが、簡単に言えば、生活費をともにしている、または生活費を主に負担している関係のことです。

今回のように、妹さんが離婚後に実家へ戻り、食費・光熱費・住居費などを世帯主が負担しているのであれば、通常は「生計を一にしている」と考えられます。

ここで誤解されやすいのは、「生活費を現金で直接渡していないと認められないのでは?」という点です。

実際には、毎月まとまったお金を渡していなくても、同じ家で生活し、家賃や公共料金・食費などを世帯主がまとめて負担しているのであれば、実質的に妹さんの生活を支えているといえます。
税務署も、形式的に「現金を渡したか」だけではなく、生活の実態として誰が費用を負担しているかを確認します。

妹さんの所得が一定額以下であること

扶養控除の判定でもっとも重要なのが、妹さん自身の所得です。

令和7年分(2025年分)以後は、扶養親族に該当するための合計所得金額は、原則として58万円以下です。

給与収入だけの場合を例にとると、年収123万円以下であれば、合計所得金額が58万円以下になる目安です。

なお、令和6年分(2024年分)までは、合計所得金額48万円以下が基準でした。
年分によって基準が異なりますので、申告する年分をよく確認してください。

たとえばパートで働き始めた場合など、途中から収入が発生するケースでは、年の途中であっても年間の合計を確認することが大切です。

その年の12月31日時点で16歳以上であること

所得税の扶養控除の対象となる「控除対象扶養親族」は、その年の12月31日時点で16歳以上の方です。

妹さんが成人であれば、この要件は通常問題になりません。
ただし念のため、16歳未満の方は所得税の扶養控除の対象外となりますので、お子さんがいる場合などは年齢の確認をしておきましょう。

個人事業主の場合は「専従者」に注意

世帯主が個人事業主の場合には、もう一つ確認が必要です。

妹さんが世帯主の事業を手伝っていて、青色事業専従者給与の対象になっている場合や、白色申告で「専従者」として扱われている場合には、扶養控除の対象にすることができません。

「青色事業専従者」や「白色事業専従者」というのは、事業を手伝う家族に対して特別なルールが適用される制度です。
その対象になっている場合は、扶養控除と同時に使うことができないというルールがあります。

妹さんがお店の手伝いなどをしている場合は、この点を事前に確認しておきましょう。

年金収入だけがある場合の目安

では、妹さんに給与収入はないものの、年金収入だけがある場合はどうなるでしょうか。

年金収入の場合、収入金額そのものではなく、「年金収入から公的年金等控除額を差し引いた後の所得」で判定します。

令和7年分以後の扶養控除の所得要件は、合計所得金額58万円以下ですから、それを逆算すると次のような目安になります。

65歳未満の場合

公的年金等控除の最低額は60万円です。
年金収入が118万円であれば、そこから60万円を差し引いた所得が58万円になります。
→ 65歳未満で年金収入のみの場合、年金収入118万円以下が所得要件を満たす目安です。

65歳以上の場合

公的年金等控除の最低額は110万円です。
年金収入が168万円であれば、そこから110万円を差し引いた所得が58万円になります。
→ 65歳以上で年金収入のみの場合、年金収入168万円以下が所得要件を満たす目安です。

ただし、企業年金や個人年金など、複数の年金を受け取っている場合は合算して判定しますので、注意が必要です。

遺族年金・障害年金はどう扱うか

「年金」といっても、すべてが同じ扱いになるわけではありません。

老齢年金・企業年金・課税対象となる個人年金などは、所得税の課税対象になりますので、扶養控除の判定でも金額を確認する必要があります。

一方、遺族年金や障害年金は、原則として非課税です。
そのため、通常は扶養控除の所得判定における「合計所得金額」には含めません。

ただし、税務署は「所得に入るかどうか」だけでなく、実際に誰が生活を支えているかという生活の実態も確認します。
非課税の年金を受け取っている場合でも、生活費の負担状況を整理しておくと、後から説明しやすくなります。

税務署が確認しやすいポイント

今回のようなケースで、税務署から確認される可能性があるのは、主に次のような点です。

・妹さんに給与収入がないか(パート・アルバイトを含む)
・年金収入がある場合、その種類(老齢年金か遺族年金かなど)と金額
・事業収入・不動産収入・配当収入などがないか
・離職後に雇用保険の失業給付を受けていないか
・養育費を受け取っていないか
・生活費を実際に誰が負担しているか
・他の親族の扶養に入っていないか
・個人事業の専従者になっていないか

なお、失業給付や通常の養育費は、所得税の扶養判定における「合計所得金額」には通常含まれません。
ただし、生活実態を確認する材料にはなりますので、状況の整理はしておきましょう。

税務署は申告書の内容だけでなく、必要に応じて住民票・所得証明書・年金の源泉徴収票・家計の負担状況などから実態を確認することがあります。

実務上、手元に残しておきたい資料

扶養控除として申告する場合には、後から実態を説明できるように、資料を保管しておくことをおすすめします。

たとえば次のようなものが考えられます。

・妹さんの所得証明書または非課税証明書
・年金を受け取っている場合は年金の源泉徴収票
・退職している場合は退職日が確認できる書類
・同居していることが分かる住民票
・世帯主が生活費を負担していることが分かる資料(家計簿や振込記録など)
・妹さんが他の人の扶養に入っていないことを確認できる資料

すべてを必ず用意する必要があるわけではありませんが、税務署から確認が入ったときに「実態をきちんと説明できる状態」にしておくことが大切です。
難しく考えずに、「この扶養が正しいと説明できる材料をひとまとめにしておく」というイメージで大丈夫です。

まとめ

離婚して実家に戻った妹さんについては、次の要件を満たせば、扶養控除の対象にできる可能性があります。

1.兄または姉の親族(2親等の血族)であること
2.生計を一にしていること(生活費を共にしている関係)
3.妹さんの合計所得金額が一定額以下であること(令和7年分以後は58万円以下が原則)
4.その年の12月31日時点で16歳以上であること
5.個人事業の専従者に該当しないこと
6.他の人の扶養控除の対象になっていないこと

年金収入だけの場合の目安は、令和7年分以後であれば、65歳未満で年金収入118万円以下、65歳以上で年金収入168万円以下です。

税務署は「同居しているか」だけでなく、所得の有無・年金の種類・生活費の負担状況・生計の実態を総合的に確認します。

妹さんに大きな所得がなく、世帯主が実際に生活費を負担しているのであれば、扶養控除の対象にできる可能性は十分あります。
ただし、年金やその他の収入がある場合は、種類と金額を確認したうえで判断することが大切です。

この記事は作成時点の情報に基づいています。
税制は年度によって変わることがあります。
実際の適用については個別の状況によって異なりますので、詳細は税務署にご確認ください。