食品が1%になると、うちの家計とお店はどう変わる?外食・支援金・消費税の還付まで、よくある勘違いをまとめて整理

食料品の消費税1%案をやさしく解説―家計、お店、働く人が知っておきたい減税と新しい支援金

「食料品の消費税が下がる」と聞くと、毎日の買い物が少し楽になることを期待される方が多いと思います。

お米、野菜、肉、魚、牛乳。生活に欠かせない食品の値上がりが続く中で、食費の負担が軽くなるかどうかは、家計にとって大切な話です。

ただ、今回の方針は「買い物の税率が下がる」だけの話ではありません。
働く人への新しい支援金、お店の消費税の計算方法、値札の表示の特例なども含まれています。

「食べ物なら何でも1%になるのですか」「外食はどうなりますか」「食品を売るお店は、消費税を納めなくてよくなるのですか」「支援金は誰でももらえるのですか」。暮らしや商売への影響を正しくつかむには、こうした点を一つずつ見ていく必要があります。

この記事では、税金に詳しくない方でも読めるように、日常の買い物や小さなお店を例にして説明します。
おおまかに、前半(1~12)は消費者の方、中盤(13~33)はお店や個人事業主の方、後半(34~48)は働く人や子育て世帯の方に関係の深い内容です。
ご自分に関係する部分から読んでいただいてもかまいません。

最初にお伝えしておきたい大切なこと

この記事は、2026年9月30日時点で公表されている大綱(制度づくりの基本方針)や国税庁の資料などに基づいています。

今回の内容は、今後、関連する法案が国会で審議され、可決・成立することを前提とした「改正案」です。
すでに始まっている制度ではありません。
以下の説明も、この方針どおりの制度が成立・施行された場合を前提にしています。

この記事のポイント

・食品の消費税は、2027年4月から2年間、原則8%から1%に下がる予定です(外食・お酒は10%のまま)。
・一般の方は、買い物の時点で税率が下がるだけなので、確定申告などの手続は必要ありません。
・食品を扱うお店は、消費税の計算方法によって、還付になる場合・納付が増える場合があり、届出の特例も用意される予定です。
・働く人向けの新しい支援金は、所得などの条件で対象者や金額が決まる予定ですが、具体的な基準はまだ決まっていません。

1.今回の方針には「食料品の減税」と「働く人への支援金」の二つがあります

2026年9月15日に閣議決定された大綱では、大きく二つの仕組みが示されています。

一つ目は、飲食料品の消費税率を、2年間に限って原則8%から1%へ下げることです。

二つ目は、中低所得の働く人を中心に、所得や負担の状況に応じてお金を支給する「就業者負担軽減支援金」を導入することです。

飲食料品の税率引下げは、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間を予定しています。
主な対象は、現在、軽減税率8%が適用されている飲食料品です。
その税率を、原則1%に引き下げる方針です。

外食や酒類は、原則として10%のままです。
また、一定の新聞の定期購読は、今回の引下げの対象には含めず、8%を維持する方針です。

新しい支援金は、2027年4月から制度を導入し、2029年度の本格導入へつなげる予定です。

ここで大切なのは、食料品の減税と支援金では、対象の決め方がまったく違うということです。

食料品の減税は、対象の商品を買う場面で適用されます。
買う人の年収によって、その食品の税率が変わることはありません。

一方、支援金は、本人の所得、社会保険料の負担、扶養する子どもの状況などによって、対象になるかどうかや金額が変わります。

たとえば、食料品の減税は「レジで計算される税金そのものが小さくなる」イメージです。
支援金は「条件を満たした人に、自治体が確認したうえでお金が支払われる」イメージです。
この二つを分けて考えると、制度がぐっと分かりやすくなります。

2.「大綱が決まった」と「法律が成立した」は、別の段階です

大綱とは、これから制度を作るための基本的な方針のことです。

「どんな制度にするか」という政府の方針が示された段階と、その制度を実際に動かす法律が成立した段階は、分けて考える必要があります。

家づくりにたとえると、大綱は「設計図ができた」段階で、法律の成立は「工事を始める許可が下りた」段階に近いイメージです。

国税庁の特設サイトやQ&Aにも、関連法案が国会に提出され、審議を経て可決・成立した場合の内容であることが明記されています。

そのため、2026年9月の買い物に、今回の1%が適用されることはありません。

お店の側も、今から飲食料品を一律1%として請求してよいわけではありません。
現時点では、今の制度どおりに処理します。

一方で、準備には時間がかかります。
レジ、会計ソフト、ネットショップ、請求書の仕組みを変える必要があるお店では、成立後に慌てないよう、今のうちに必要な作業を洗い出しておくことには意味があります。

ご家庭では制度の内容を知っておく。お店では準備を始めておく。
実際の切替えや届出は、成立後の正式な案内で確認する。
このように段階を分けて考えると、落ち着いて対応できます。

3.1%になる食品の範囲は、今の「8%の範囲」が基本です

今回の案では、対象となる飲食料品の範囲を大きく作り替えるわけではありません。

現在、軽減税率8%が適用されている飲食料品について、期間限定で税率を1%にするというのが基本の考え方です。

日常の買い物にあてはめると、次のようになります。

・原則1%になるもの:お米、野菜、果物、肉、魚、卵、パン、菓子、調味料、冷凍食品、牛乳・お茶・ジュースなどの飲料、スーパーやコンビニの持ち帰り弁当・総菜、飲食店から持ち帰る料理、単に料理を届ける出前・宅配の食品部分
・10%のままのもの:レストランなどでの店内飲食、ビール・日本酒・ワインなどの酒類、日用品、衣類、家電など
・8%のままのもの:要件を満たす新聞の定期購読

ここで挙げたのは一般的な例です。
古い契約についての特別な取扱いなどにより、引下げ期間中でも食品に8%が適用される場合があります(11で説明します)。

対象になる食品は、国産品に限りません。
対象範囲に入る輸入食品も含まれ、食品を輸入して保税地域から引き取る際の消費税にも、1%を適用する方針です。

新聞の8%は、週2回以上発行される一定の新聞を、定期購読契約で購入する場合の取扱いです。新聞に関係する商品やサービスが、すべて8%になるわけではありません。

よくある勘違い:「口に入れるものなら全部1%」

対象は、人の飲食用として販売される食品が基本です。
医薬品や医薬部外品は、対象の食品に含まれません。

たとえば、同じように健康に関係する商品でも、食品として売られているものと、医薬品などとして売られているものでは、扱いが異なります。
見た目や商品名だけで判断せず、商品の区分を確認することが大切です。

4.同じ料理でも、店内で食べるか持ち帰るかで税率が違います

今回も、外食と持ち帰りの区別は残ります。

レストランや喫茶店などで、テーブルや椅子といった飲食用の設備を使って食事の提供を受ける場合は、原則10%です。

一方、料理を持ち帰る場合は、対象となる飲食料品の販売として、原則1%になります。

たとえば、税抜価格がどちらも1,000円の料理があるとします。

店内で食べる場合は、10%の消費税100円を加えるので、税込1,100円です。
持ち帰る場合は、1%の消費税10円を加えるので、税込1,010円になります。
この例では、税込価格に90円の差が出ます。

ただし、実際のお店が、店内飲食と持ち帰りを同じ税抜価格にするとは限りません。
容器代やサービス内容を考えて、それぞれ別の価格を設定することもあります。

「税率が違う」ことと「実際の販売価格に必ず同じ差が出る」ことは、別の話だと考えておくとよいでしょう。

コンビニやスーパーにイートインスペースがある場合も、持ち帰りと店内飲食を区別します。
判定は、飲食料品を提供する時点で、お客さまの意思を確認するなどの方法で行います。

お客さまには利用方法を伝えていただき、お店では従業員全員が同じ方法で確認できるようにしておくと、会計がスムーズになります。

5.宅配の食品が1%でも、送料や別料金まで1%とは限りません

出前や宅配で、料理を届けるだけの場合、食品の販売部分は原則1%です。

ただし、食品以外の料金が別に設定されている場合は、その料金を分けて考えます。

たとえば、食品代とは別に請求される送料は、通常「配送」というサービスの対価です。
食品と同じ税率にはなりません。
別料金の贈答用包装や、別売りの袋なども、食品そのものの販売とは区別します。

一方、送料を別に求めない「送料込みの食品」や、食品の販売に通常必要な包装を含めた販売は、取引の内容に応じて食品の販売として扱われます。

「宅配だからすべて1%」「食品と一緒に払うからすべて1%」と決めつけず、明細の内容を確認しましょう。

また、料理を会場に届けて、その場で加熱、盛り付け、配膳などを行うケータリングは、原則10%です。
単に料理を届ける取引と、現地で食事のサービスを提供する取引は、扱いが異なります。

6.学校給食、施設の食事、食品とおもちゃのセットには個別のルールがあります

食事の提供の中には、外食の一般的なルールだけでは判断できないものもあります。

一定の学校給食や、一定の要件を満たす有料老人ホームなどでの飲食料品の提供は、今も軽減税率の対象です。
この範囲は今回も基本的に維持されるため、要件を満たすものは1%の対象となります。

ただし、「学校で食べるもの」「高齢者向け施設の食事」というだけで、すべてが対象になるわけではありません。
施設の種類、提供方法、金額などの条件を確認します。

食品と食品以外の商品が、あらかじめ一つにまとまって、一つの価格で売られる場合にもルールがあります。
お菓子とおもちゃのセットなどが代表例です。

このような商品を「一体資産(食品と食品以外がセットになった商品)」といいます。
税抜価格が1万円以下で、食品の価額が全体の3分の2以上を占める場合に限り、全体が軽減税率の対象となります。

この条件を満たせば、今回の1%の対象です。
満たさなければ、その一体資産全体が原則10%です。

食品と物品のそれぞれの価格を示して販売する場合などは、この一体資産のルールとは扱いが異なります。
「食品が入っているセットだから一律1%」とはできない点に注意しましょう。

7.税率が8%から1%になると、税込価格は何%下がるのでしょうか

税率が8%から1%になると、差は7ポイントです。

ただし、今の税込価格から、そのまま7%を引けばよいわけではありません。

税抜価格が1,000円の商品で考えてみます。

今の税込価格は、1,000円に消費税80円を加えた1,080円です。
税率が1%になると、1,000円に10円を加えた1,010円になります。
支払額の差は70円です。

70円は、元の税込価格1,080円の約6.48%にあたります。

つまり、税抜価格が変わらず、税率の引下げがそのまま価格に反映される場合、税込価格は約6.48%下がる計算です。

今の税込価格から新しい税込価格を出すには、「今の税込価格÷1.08×1.01」で計算します。

たとえば税込1,080円なら、1,080円を1.08で割って税抜1,000円に戻し、それに1.01を掛けて1,010円です。

「税率の差(7ポイント)」と「税込価格の値下がり率(約6.48%)」は、計算の出発点が違います。
この違いを知っておくと、家計への効果を大きく見積もりすぎずに済みます。

8.家計への効果は「対象になる食費」だけで考えます

毎月の食費がいくらか分かれば、負担がどのくらい軽くなるかの目安をつかめます。

ただし、食費の中には、スーパーの食品、外食、酒類、宅配の別料金などが混ざっていることがあります。
1%の対象になる買い物だけを取り出して考える必要があります。

以下は、支出がすべて現在8%の対象食品で、同じ商品を同じ数量だけ買い、税抜価格が変わらず、減税がそのまま反映されると仮定した例です。

・月32,400円の場合:同じ買い物が30,300円になる計算です。月2,100円、12か月で25,200円の負担軽減が目安です。
・月54,000円の場合:50,500円になり、月3,500円、12か月で42,000円の負担軽減です。
・月86,400円の場合:80,800円になり、月5,600円、12か月で67,200円の負担軽減です。
・月108,000円の場合:101,000円になり、月7,000円、12か月で84,000円の負担軽減です。

これらは計算上の目安で、実際にその金額だけ家計が楽になることを約束するものではありません。
商品の値上げ、買う量の変化、税率の端数処理などによって、実際の支出は変わります。

まずは家計簿やレシートを見て、「食品の持ち帰り」「外食」「酒類」を分けてみてください。
ご自分の家庭にどのくらい関係するかが見えやすくなります。

また、引下げ期間は「2027年と2028年の2年間」ではなく、「2027年4月から2029年3月まで」です。2027年の1~3月は対象期間に入らない点にご注意ください。

9.減税があっても、すべての食品が同じ割合で値下がりするとは限りません

商品の価格は、消費税だけで決まるわけではありません。
原材料費、仕入価格、人件費、輸送費、電気代なども関係します。

消費税が下がる時期に原材料費などが上がれば、税抜価格そのものが変わることもあります。

たとえば、税抜1,000円だった食品の本体価格が1,050円に上がった場合、1%を加えた価格は、端数処理前で1,060.5円です。
元の税込1,080円よりは下がっていますが、1,010円にはなりません。

税率の引下げは税負担を軽くする仕組みですが、原材料などの値上がりをなくす仕組みではありません。

消費者としては、税率だけでなく、内容量と実際に支払う金額を確認することが大切です。
家計への効果も、制度上の計算と実際の支出の両方で見ていくとよいでしょう。

また、減税を見込んで食品を大量に買い置きするかどうかも、税率だけで決める必要はありません。
保管場所、賞味期限、必要な量を考え、ふだんの買い物の範囲で対応するほうが無駄を防げます。

10.値札の特例は、税率を自由に選べる制度ではありません

お店では、消費者が実際に払う税込価格を表示する「総額表示」が基本です。

法律上の総額表示の義務は、免税事業者を除く事業者が、不特定多数の消費者に向けて、あらかじめ価格を表示する場合に適用されます。
価格を表示していない場合にまで、表示そのものを義務付ける制度ではありません。

今回も、税込価格を表示する考え方は変わりません。
税抜価格だけを示す方法や、「本体価格+税」とだけ書いて税込価格を示さない方法を、今回の特例が認めるわけではありません。

ただ、食品の値札が何千枚もあるお店や、価格が印刷された包装・カタログを使う事業者では、切替えの日にすべてを直すのは大変です。

そこで、具体的に困難な事情があり、実際の支払額を誤解させないための分かりやすい掲示などをする場合に限って、税率変更の前後に、別の税率で計算した税込価格を表示できる特例が示されています。

期間ごとに整理すると、次のとおりです。

・2027年2月1日~3月31日(引下げ前):実際の税率は原則8%。条件を満たせば、1%で計算した税込価格を表示できます。
・2027年4月1日~5月31日(引下げ後):実際の税率は原則1%。条件を満たせば、8%で計算した税込価格を表示できます。
・2029年2月1日~3月31日(終了直前):実際の税率は原則1%。条件を満たせば、8%で計算した税込価格を表示できます。
・2029年4月1日~5月31日(終了後):実際の税率は原則8%。条件を満たせば、1%で計算した税込価格を表示できます。

これは、表示を準備・修正するための取扱いです。

たとえば、2027年2月に1%で計算した値札を付けても、その時点から販売に1%を適用できるわけではありません。
反対に、2027年4月に8%で計算した値札が残っていても、それを理由に、1%の対象取引に8%を適用することはできません。

お客さまには、どの値札がどの税率の価格なのか、レジではいくらになるのかが分かるようにします。
値札が混在する場合は、色や印で区別する方法も考えられます。

具体的な事情がないのに、古い表示をそのまま続けてよいという制度ではない点に注意しましょう。

11.食品の定期便や通販は、4月以後に届いても8%の場合があります

引下げ期間中の食品には、原則1%を適用します。

ただし、一定の古い契約については、8%を適用する特別な取扱いが示されています。
契約条件をすぐに変えるのが難しいケースに対応するためです。

一つ目は、定期供給契約です。

不特定多数の人に定期的に食品を届ける契約で、2027年1月1日より前に契約し、2027年4月1日より前に代金を受け取っている場合は、その代金に対応する4月以後の食品の販売は、原則として8%の対象になります。
最初から1%を前提とする契約などは除かれます。

たとえば、2026年中に契約し、2027年3月までに半年分の代金を支払った食品の定期便は、この取扱いに当てはまる可能性があります。

二つ目は、通信販売です。

通販の販売条件を2027年1月1日より前に示し、2027年4月1日より前に申込みを受けた場合、4月以後に行う食品の販売でも、原則として8%を適用する取扱いが示されています。
こちらも、1%を前提とする販売条件などは除かれます。

なお、国税庁のQ&Aでは、ここでいう「販売条件の提示」や「申込み」には、訪問して対面で行うものは含まれないとされています。
販売員が訪問して説明し、その場で申込みを受けるような販売は、この通信販売の取扱いには当たりません。

よくある勘違い:「4月に届いたから必ず1%」「3月に注文したものはすべて8%」

どちらも正確ではありません。契約や販売条件を示した時期、申込みや代金を受け取った時期、税率変更についての取り決めを確認します。

また、この取扱いは、お店が都合に合わせて8%と1%を選べる仕組みではありません。
該当する条件に沿って判断します。

税率1%を反映した契約に変更した場合などは、1%を適用できるとされています。
契約書、注文確認、カタログ、変更の案内などを残しておくと、どの税率を適用したかを説明しやすくなります。

12.一般の消費者は、食品の減税のために確定申告をする必要はありません

食品の減税は、対象となる販売取引の税率を下げる仕組みです。

一般の消費者が、レシートを税務署に出して減税分を返してもらう仕組みではありません。
対象食品を買うときに、自動的に引下げ後の税率が適用されます。

新しい支援金の手続は、これとは別です。
支援金は所得や負担の状況を確認して支給するため、所得情報の申告や、自治体による認定などが関係します。

次の三つは、それぞれ別の仕組みだと覚えておくと混乱しません。

・食品の税率の引下げ(買い物のときに適用)
・事業者が消費税の申告で受ける還付(お店の申告の話)
・個人が受け取る支援金(条件を満たした個人への支給)

ここからは、お店や事業者の方に関係する消費税の計算を見ていきます。

13.お店が納める消費税は、売上げの税率だけでは決まりません

消費税の通常の計算方法を「一般課税(本則課税ともいいます)」といいます。

一般課税では、売上げにかかる消費税から、仕入れや経費について差し引ける消費税を差し引いて、納める金額を計算します。

たとえば、八百屋さんがお客さまから消費税を預かり、仕入先には仕入れの際に消費税を支払っているとします。
お店が税務署に納めるのは、「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いた残りの部分です。
この関係が、理解の出発点になります。

なお、1%の販売は、消費税がかかる取引です。取引そのものが非課税になることや、事業者が消費税を納めなくてよくなることとは違います。
税率が小さくなっても、この区別と申告の仕組みは残ります。

売上げにかかる税額のほうが多ければ、差額を納めます。
反対に、差し引ける仕入れなどの税額のほうが多ければ、申告によって還付を受けられる場合があります。

仕入れなどの税額を差し引くことを「仕入税額控除」といいます。
難しい言葉ですが、「事業のために支払った消費税を、一定の条件のもとで、売上げにかかる消費税から差し引く仕組み」のことです。

ただし、経費なら何でも差し引けるわけではありません。

たとえば、従業員への給与には消費税がかかりません。
給与をたくさん払っても、その金額に10%を掛けて差し引くことはできません。

消費税がかかる店舗家賃、設備、包装資材などと、人件費や非課税の支出などを区別する必要があります。
帳簿やインボイスの保存、事業に使っていることなどの条件も関係します。

以下の計算例は、国税と地方税を合わせた税額を使い、必要な保存要件などを満たして、仕入税額を全額差し引ける場合の説明用の例です。
実際の申告での端数処理や個別の調整は省略しています。

14.食品を売るお店では、消費税の還付が生じる可能性があります

食品販売店では、食品の売上げは1%になります。

食品の仕入れも原則1%になりますが、お店で使う設備、包装資材、消費税がかかる家賃などは、通常10%のままです。

その組合せによっては、売上げの税額よりも、差し引ける仕入れや経費の税額のほうが多くなる場合があります。

たとえば、ある期間に、税抜200万円の食品を販売したとします。
税率は1%なので、売上げにかかる消費税は2万円です。

その食品の仕入れが税抜100万円なら、1%の消費税は1万円です。
さらに、10%がかかる店舗経費が税抜20万円あれば、その消費税は2万円です。

差し引ける消費税は、1万円と2万円を合わせて3万円になります。
売上げの2万円から3万円を差し引くと、1万円の還付が生じる計算です。

一方で、食品の売上げが多く、10%の経費が少ないお店では、1%になった後も納付が生じることがあります。

よくある勘違い:「食品を売っていれば必ず還付になる」

必ずそうなるわけではありません。売上げと仕入れの金額、商品の構成、設備投資、差し引くための条件などを確認して判断します。

また、還付は、お店の利益に対して出る補助金ではありません。
売上げと仕入れなどの消費税を計算した結果、差し引ききれなかった税額を精算する仕組みです。

15.飲食店では、納税額が増えても、それだけで利益が減るとは限りません

飲食店の店内飲食は、原則10%のままです。
一方、料理に使う食材の仕入れは、原則8%から1%に下がります。

一般課税で計算する飲食店では、仕入れについて差し引ける税額が小さくなるため、納める消費税が増える場合があります。

ただし、「納税額が増えた分だけ、お店の利益が減る」と考えると、仕入れの支払額が減ることを見落としてしまいます。

税抜1,000円の料理を販売し、税抜400円の食材を仕入れる例で確認してみます。

食材の税率が8%の場合、お客さまから受け取る料理代は税込1,100円で、売上げにかかる消費税は100円です。
食材の税込仕入額は432円で、そのうち32円を差し引きます。
納める消費税は、100円から32円を引いた68円です。
受け取った1,100円から、食材代432円と納税額68円を引くと、600円が残ります。

食材の税率が1%になっても、店内飲食は10%のままなので、料理代1,100円と売上げにかかる消費税100円は変わりません。
一方、食材の税込仕入額は404円になり、差し引く消費税は4円です。
納める消費税は、100円から4円を引いた96円になります。
受け取った1,100円から、食材代404円と納税額96円を引くと、この場合も600円が残ります。

納税額は28円増えています。
しかし、食材の支払額も28円減っているため、ほかの経費を引く前に残る金額は、この条件では変わりません。

これは、売上げと仕入れの税抜価格が変わらず、仕入税額を全額差し引けることを前提とした例です。
一般課税以外の計算方法を使っている場合や、実際に価格が変わる場合に、そのまま当てはめることはできません。

飲食店にとっては、納税額の増減のほかに、お客さまが店内飲食から持ち帰りへ移る可能性、客数、客単価、容器代、配達の費用なども関係します。

「税金の精算による変化」と「商売そのものの変化」を分けて見ていくことが大切です。

16.免税事業者は、そのままでは消費税の還付を受けられません

小さなお店や個人事業主の中には、消費税を納める義務が免除されている「免税事業者」の方がいます。

基本的には、基準期間の課税売上高が1,000万円以下などの場合に、納税義務が免除されます。
基準期間とは、判定の基準になる過去の期間のことで、個人事業主なら原則として前々年、事業年度が1年の法人なら原則として前々事業年度です。

ただし、インボイス発行事業者として登録している場合など、売上高だけでは免税かどうかを判断できないケースもあります。
「今年の売上げが1,000万円以下だから免税」とは限りません。

免税事業者は、消費税を納めなくてよい一方で、仕入れや経費にかかった消費税を、申告によって還付してもらうことはできません。

食品の販売価格が下がっても、設備や包装資材などにかかる消費税は通常10%のままです。
そのため、免税事業者が受ける影響は、還付を受けられる一般課税の事業者とは同じになりません。

還付を受けるために、課税事業者(消費税を納める事業者)へ移る選択肢もあります。
ただし、課税事業者になると、還付になる期間だけでなく、納付になる期間も申告が必要です。
記帳、書類の保存、申告の事務も増えます。

今の売上げ、仕入れ、設備投資、今後の見通しを確認してから、移るかどうかを検討しましょう。

17.簡易課税は、実際に払った消費税を積み上げる方法とは違います

消費税には、小規模な事業者の事務負担を軽くするための「簡易課税制度」があります。

一般課税では、実際の仕入れや経費について、差し引ける税額を一つひとつ計算します。

簡易課税では、売上げにかかる税額をもとに、業種ごとに決められた一定の割合を「仕入れで払ったもの」とみなして差し引きます。
この割合を「みなし仕入率」といいます。

たとえば、小売業のみなし仕入率は80%です。
通常の計算なら、売上げにかかる消費税の80%を差し引き、残りの20%を納める形になります。

簡易課税は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの条件を満たし、必要な届出をしている事業者が使う制度です。
売上げが小さければ自動的に簡易課税になるわけではありません。

実際に設備や仕入れで多くの消費税を払っていても、その税額をそのまま差し引いて還付を受ける方法ではありません。

そのため、今回の食品の減税では、「簡易課税を続ける場合の特別な計算方法」と「一般課税へ変更するための特例」の両方が示されています。

18.簡易課税の1%の食品売上げには、納付額が出ない特例が示されています

今回の案では、簡易課税で申告する場合、1%の対象となる飲食料品の売上げについて、売上税額と同じ額を仕入税額として差し引くことになっています。

業種区分にかかわらず、1%の食品売上げに対応する部分は、売上税額と差し引く額が同じになります。

たとえば、引下げ期間中の対象食品の税抜売上げが1,000万円なら、売上げにかかる消費税は10万円です。
特例では同じ10万円を差し引くため、その部分の納付額はゼロになります。

ただし、理解しておきたい点が三つあります。

一つ目は、売上げの税率が0%になるわけではないということです。
販売の税率は1%です。
インボイスに書く税率や税額も、1%に基づきます。

二つ目は、実際に払った仕入税額が多くても、その差額を還付してもらえるわけではないということです。
簡易課税は、実際の仕入税額を積み上げて計算する方法ではないからです。

三つ目は、すべての売上げの納付額がゼロになるわけではないということです。
酒類、雑貨、店内飲食などの売上げは、別に計算します。

また、2027年1~3月の8%の食品売上げなどは、1%の対象売上げではありません。
個人事業主の2027年分について、「1年間の消費税がすべてゼロになる」と考えることはできません。

今回の資料では、インボイス登録に伴う小規模事業者向けの「2割特例(納める税額を売上げの消費税の2割にできる特例)」や、小規模個人事業者向けの「3割特例(納める税額を売上げの消費税の3割にできる特例)」を使う場合も、1%の対象食品について同じ取扱いとする方針が示されています。

ただし、2割特例と3割特例には、それぞれ対象者や使える期間などの条件があります。
どの事業者でも自由に選べる制度ではありません。
特に、使える時期、個人・法人の違い、インボイス登録との関係を確認しましょう。

2割特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日が属する各課税期間を対象とする制度です。
通常の1年単位で申告する個人事業主では、2026年分までとなります。

3割特例は、インボイス発行事業者の登録を受けたことで、免税事業者から課税事業者になった個人事業者を対象とする制度です。
2027年分・2028年分の申告で使うことができます。
主な要件は、個人事業者であること、インボイス発行事業者の登録を受けていること、基準期間(その年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなどです。法人には適用されません。

つまり、3割特例は、インボイス登録をしていなければ免税事業者だったはずの年分に限って使える制度です。
インボイス登録をしないまま「消費税課税事業者選択届出書」だけを出して課税事業者になった場合は、3割特例の対象にはなりません。
課税事業者になる方法(24で説明します)によって、使える計算方法も変わる点に注意しましょう。

法人の2割特例は、決算期によって使える課税期間が異なります。
一方、通常の1年単位で申告する個人事業主が、2027年分の申告で2割特例を選ぶことはできません。

また、課税期間を1か月または3か月に短くする特例を使っている課税期間では、2割・3割特例は使えません。
「食品の特例が示されていること」と「2割・3割特例そのものの条件を満たしていること」は、分けて確認します。

これらの条件は、国税庁の「令和8年度税制改正特集」と「2割特例特設ページ」で確認できます。

19.食品と雑貨、店内飲食が混ざるお店は、分けて計算します

食品だけを売るお店よりも、いくつかの種類の売上げがあるお店のほうが、確認することは増えます。

たとえば、食品と日用品を売り、イートインもあるお店で、簡易課税を使っている場合を考えます。

1%の食品売上げについては、売上税額と同じ額を差し引きます。
食品以外は、その売上げの業種に応じた通常のみなし仕入率で計算します。

以下の金額はすべて税抜きで、引下げ期間中の取引とします。
次の20で説明する75%ルールなど、ほかの特例は使わない例です。

・1%の食品販売:売上高1,800万円、売上税額18万円。特例により同じ18万円を差し引きます。
・10%の日用品小売:売上高400万円、売上税額40万円。小売業のみなし仕入率80%で、32万円を差し引きます。
・店内飲食:売上高200万円、売上税額20万円。みなし仕入率60%で、12万円を差し引きます。

三つを合わせると、売上高2,400万円、売上税額は78万円です。
差し引く税額は、18万円、32万円、12万円を合わせて62万円になります。

この例では、78万円から62万円を引いた16万円が、納付額の目安です。

食品販売の部分は差し引きゼロになっていますが、日用品や店内飲食の部分には納付額が残ります。

お店全体を「食品関係の商売」と考えていても、消費税では一つひとつの売上げの中身を確認します。

レジや会計ソフトで、食品販売、酒類、雑貨、店内飲食を区別して集計できるようにしておくと、申告だけでなく、部門ごとのもうけも見えやすくなります。

20.簡易課税の75%ルールも、1%の食品売上げを外して判断します

簡易課税では、複数の事業を行っている場合に、一つの業種の売上げが全体の75%以上を占めていれば、その業種のみなし仕入率をまとめて使えるルールがあります。

今回の特例を使う場合、この判定や計算は、1%の対象となる食品売上げを除いて行うこととされています。

たとえば、1%の食品販売が2,000万円、日用品の小売が600万円、店内飲食が200万円のお店を考えます。

判定に使うのは、食品販売を外した800万円です。
日用品の600万円は、800万円のちょうど75%にあたります。

そのため、この例では、食品以外の売上げについて、日用品小売のみなし仕入率80%をまとめて使う計算ができます。

食品販売の2,000万円を含めた総売上高2,800万円で判定するのではありません。

計算に使う範囲が変わるため、複数の事業があるお店は、これまでの申告と同じ計算をそのまま続けないようにしましょう。

なお、三つ以上の業種がある場合には、ほかの組合せによるルールもあります。
実際の申告では、売上げを業種別・税率別に整理して確認します。

21.一般課税に変えるかどうかは、還付額と事務負担を比べて考えます

1%の食品売上げについて簡易課税で納付額が出ないのであれば、そのまま簡易課税を続けたほうがよい場合もあります。

一方、一般課税に変えれば、実際の仕入れや経費で差し引ける税額が多くなり、還付を受けられる場合があります。

どちらがよいかは、売上げの税額だけでは決まりません。

14の食品販売店の例では、売上税額2万円に対して、実際に差し引ける税額は3万円でした。
一般課税なら1万円の還付になる計算です。

同じ取引で簡易課税の食品特例を使うと、対象食品の部分の納付額はゼロになりますが、実際の仕入税額との差額1万円が還付されることはありません。

そこで、一般課税で見込まれる還付額と、増える記帳・資料整理・申告の手間を比べます。
ほかの売上げがある場合は、それも含めて事業全体で試算します。

特に、設備投資を予定しているお店、10%の経費が多いお店、食品以外の売上げも多いお店は、複数の方法で計算してみると判断しやすくなります。

ただし、還付を受けるためだけに必要のない設備を買うと、商売の資金を減らしてしまいます。
まず投資が本当に必要かを考え、そのうえで税金への影響を確認しましょう。

22.課税事業者への移行と、簡易課税をやめる届出に特例が設けられます

通常、免税事業者が自分から課税事業者になる場合や、簡易課税をやめる場合は、変更したい課税期間が始まる前に届出をする必要があります。

課税期間とは、消費税を計算して申告する期間のことです。
原則として、個人事業主は1月1日から12月31日まで、法人は事業年度です。

今回の案では、飲食料品を販売する事業者について、2027年4月1日を含む課税期間の途中に必要な届出をすれば、その課税期間から変更できる特例が示されています。

提出する届出書は、変えたい内容によって異なります。

・免税事業者から、自分で課税事業者になる場合:「消費税課税事業者選択届出書」
・簡易課税をやめて一般課税に変える場合:「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」

国税庁のQ&Aでは、今回の特例を使う場合、対象となる課税期間を記載し、届出書の「参考事項」欄に「飲食料品特例」と書く方法が示されています。

届出の時期について、大綱では、2027年4月1日を含む課税期間の末日までに届出書を提出すれば、その課税期間の初日の前日に提出したものとみなすとされています。
また、Q&Aでは、法案が成立した場合、これらの届出書は2027年4月1日より前でも提出できるようになる予定とされています。

また、簡易課税は原則として2年間続ける必要がありますが、飲食料品を販売する事業者の2027年4月1日を含む課税期間については、この継続の決まりを適用しない方針です。

よくある勘違い:「消費税の2年しばりが全部なくなる」

今回外れるのは、対象となる簡易課税の継続の決まりです。
課税事業者を選んだ場合の制限、インボイス登録に伴う制限、課税期間を短くした場合の制限などは、別に確認が必要です。

正式な様式、提出できる時期、期限の扱いは、法案成立後の案内で確認する必要があります。
「届出は後からでも間に合う」と準備を先送りせず、どの方法が有利かの試算は早めに始めておきましょう。

23.個人事業主が届出の特例を使うと、1~3月の取引も申告の対象になります

食品の1%は、2027年4月1日から始まる予定です。

しかし、個人事業主の通常の課税期間は、2027年1月1日から12月31日までです。
今回の課税事業者選択の届出特例を使うと、4月からの減税を見て年の途中で届け出たとしても、この方法では2027年1月1日から課税事業者になります。

その結果、1~3月の食品販売には8%を適用し、その期間も含めて消費税を申告することになります。

「4月以降は還付になりそう」という試算だけでは、1年全体の結果は分かりません。
1~3月の納付がどうなるかも確認しましょう。

簡易課税から一般課税へ変える特例も、対象となる課税期間全体の計算方法を変えるものです。
2027年1~3月と4月以降で、好きな方法を別々に選べる仕組みではありません。

法人の場合は、決算月によって、2027年4月1日を含む事業年度が異なります。
個人事業主と同じ日程になるとは限らないので、自社の課税期間を出発点に考えます。

24.4月1日から課税事業者になる方法もありますが、手続とその後の制限が違います

免税事業者が2027年4月1日から課税事業者になる方法として、インボイス発行事業者の登録に関する既存の経過措置を使うことも考えられます。

国税庁のQ&Aでは、登録希望日を2027年4月1日として、2027年3月17日までに登録申請書を提出する例が示されています。

この経過措置で登録する場合は、登録希望日から課税事業者になるため、示された個人事業主の例では、1~3月の取引は消費税の申告対象に入りません。

ただし、登録を受けると、課税事業者である取引先から求められた場合にインボイスを交付するなどの義務が生じます。

また、あとで登録をやめても、すぐに免税事業者へ戻れるとは限りません。

2027年4月1日に登録した個人事業主が通常の1年単位の課税期間を使う例では、原則として2029年分まで課税事業者となります。
食品の減税が2029年3月末に終わっても、課税事業者としての期間が同じ日に終わるとは限らないのです。

二つの方法を比べると、次のようになります。

・課税事業者選択の届出特例を使う方法:通常の個人事業主の例では、2027年1月1日から課税事業者となり、1~3月の取引も申告対象に含めます。この届出だけでインボイス発行事業者に登録されるわけではありません。Q&Aの例では、原則として2027年1月1日から2028年12月31日までは免税事業者に戻れず、2028年中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、2029年から免税事業者に戻ることができます(免税となる条件を満たしている場合)。
・インボイス登録の経過措置を使う方法:2027年4月1日を登録希望日にでき、この例では1~3月の取引は申告対象に含めません。一方、インボイス発行事業者になるため、交付などの義務が生じます。Q&Aの例(2027年4月1日登録)では、原則として2027年4月1日から2029年12月31日までは免税事業者に戻れません。免税に戻る際は、登録取消しの届出などを確認します。

ここで比べているのは、もともと免税事業者である個人事業主などの基本的な例です。
すでに課税事業者の方や、ほかの条件で納税義務がある方には、そのまま当てはまりません。

始める時期だけで選ばず、やめる時期、取引先にとっての必要性、事務の負担も含めて検討しましょう。

25.還付を早く受けるために、申告する期間を短くする方法があります

通常、消費税は、個人事業主なら1年分、法人なら事業年度分をまとめて申告します。

この期間を、届出によって3か月ごと、または1か月ごとに短くする制度があります。
今回新しくできる制度ではなく、今もある制度です。

還付になる事業者がこの制度を使うと、短く区切った期間ごとに申告するため、1年ごとの申告と比べて、還付を早く受けられる可能性があります。

たとえば、個人事業主が3か月ごとの期間を使うと、1~3月、4~6月、7~9月、10~12月に区切って計算します。

ただし、申告の回数が増えます。記帳、請求書の回収、仕入れの確認を、短いサイクルで済ませなければなりません。

また、この制度も原則2年間はやめられません。
還付が早くなる利点と、事務の負担やその後の運用を合わせて考えます。

18で説明したとおり、課税期間を短くする特例を使っている課税期間では、2割・3割特例は使えません。
検討する際は、この点への影響もあわせて確認しましょう。

2029年3月末に食品の減税が終わるのに合わせて、条件を満たす事業者が課税期間の短縮などを組み合わせて免税に戻る方法も、Q&Aで示されています。

インボイス登録を取り消して2029年4月1日から免税に戻る個人事業主の例では、登録取消しの届出は2029年3月17日まで、課税期間の短縮に関する届出は同じ年の3月31日までと、別々の日程になっています。

登録取消しに関する「15日前」の日は、土日祝日にあたっても翌日に延びないと、Q&Aで説明されています。
税金の一般的な申告期限と同じ感覚で考えず、余裕をもって準備しましょう。

なお、課税事業者選択の届出特例を使った場合も、課税期間の特例を組み合わせることで、税率引下げが終わる2029年3月31日まで課税事業者を選択し、4月1日から免税事業者に戻る方法がQ&Aで示されています。

ただし、基準期間の売上高など、免税になるための条件を満たしていることが前提です。
設備の購入などで別の制限がかかっている場合は、この日程で免税に戻れるとは限りません。

「2年間だけ課税事業者になりたい」という希望がかなうかどうかは、届出の組合せと条件によって変わります。
始める前に、終わるときの対応まで確認しておくことが大切です。

26.高額な設備を買うと、免税に戻る時期に影響する場合があります

還付を受けるために一般課税を選び、その期間に設備を買うこともあるでしょう。

その場合、設備の金額や買った時期によっては、免税事業者に戻る時期などに追加の制限がかかることがあります。

たとえば、届出により課税事業者になった日から2年を経過する日までの間に始まる各課税期間中に、1取引単位の税抜金額が100万円以上の「調整対象固定資産」を買い、その課税期間を一般課税で申告する場合は、買った課税期間の初日から原則3年間、免税に戻ることが制限されます。

調整対象固定資産とは、商品などの在庫以外の固定資産で、一定の金額以上の機械や建物などのことです。

また、1取引単位の税抜金額が1,000万円以上となる「高額特定資産」を取得し、その課税期間を一般課税で申告する場合にも、免税などの制限を確認します。
こちらは一定の在庫(棚卸資産)も対象になり得ます。
自分で建てる資産などには、別の判定ルールもあります。

すべての設備の購入で同じ制限がかかるわけではありません。
課税事業者になった方法、買った資産、申告方法などで判断します。

設備の必要性、支払の時期、還付の見込み、免税に戻る予定を、購入前にまとめて確認しておくと、その後の資金計画を立てやすくなります。

27.3月に仕入れた在庫を4月に売る場合、仕入れと売上げの税率は別々です

税率が変わる時期には、在庫の扱いも大切です。

2027年3月までに8%で仕入れた食品を、4月以降に1%で販売することがあります。

その場合でも、販売の税率が1%になったからといって、過去の仕入れの税率を1%に書き換えることはしません。

3月の仕入れはその時に適用された8%のまま、4月の販売には原則1%が適用されます。

同じ食品でも、仕入れと販売は、それぞれの時期と条件で判定します。

また、免税から課税へ、または課税から免税へ変わる際には、手元の在庫について、仕入税額の調整が必要になる場合があります。

たとえば、免税期間中に仕入れ、課税事業者になる直前に持っている一定の在庫については、条件を満たせば仕入税額控除を行う仕組みがあります。
そのためには、在庫の明細書の保存などが必要です。

反対に、課税から免税に戻る場合は、一定の在庫の仕入税額をそのまま差し引けない取扱いがあります。

切替え時の棚卸表(在庫の一覧表)には、商品名、数量、仕入れの時期、金額、適用税率などが分かる情報を残しておきましょう。
仕入先の請求書や納品書と結び付けておくと、調整の確認に役立ちます。

28.請求書には、1%、8%、10%が一緒に載ることがあります

税率が変わっても、インボイス制度の基本的な記載事項は変わりません。

1%の食品を販売した場合は、適用税率を1%とし、税額も1%で計算して記載します。

食品が軽減税率の対象であることを示す記載も、引き続き必要です。
今のように、対象商品に印を付け、その印が軽減税率の対象を表すことを示す方法などを使います。

「1%の対象商品です」という別の記載を、新しく加えなければならないわけではありません。

一方、月の途中で締める請求書では、2027年3月と4月の取引が混ざることがあります。
その場合は、税率ごとに集計します。

たとえば、次のような明細があるとします。

・3月に販売した食品:税抜10,000円、8%の消費税800円
・4月に販売した食品:税抜10,000円、1%の消費税100円
・日用品:税抜10,000円、10%の消費税1,000円

合計は、税抜30,000円、消費税1,900円で、税込の請求額は31,900円です。

請求書を3月分と4月分に分ける方法も、一枚の請求書の中で税率ごとに区分する方法も考えられます。

「4月に出す請求書だから、3月の取引まで1%にする」という処理はできません。
請求日や入金日だけで税率を決めず、取引の時期と内容を確認しましょう。

また、インボイスに書く消費税額に1円未満の端数が出る場合は、一つのインボイスにつき、税率ごとに1回だけ端数処理をします。
商品ごとに端数処理した税額を合計して、インボイスの消費税額とする方法は認められません。
なお、切上げ・切捨て・四捨五入など、端数処理の方法自体は自由に選べます。

29.返品、出荷日と納品日のずれ、深夜営業にも確認事項があります

まず、返品は、元の取引の税率で処理します。

2027年3月に8%で販売した食品が4月に返品された場合、その返品の税額の調整は8%です。
返品された日が4月だからといって、1%に変えるわけではありません。

次に、売り手と買い手で、売上げや仕入れを計上する基準が違う場合です。

売り手は出荷した日に売上げを計上し、買い手は納品・検収した日に仕入れを計上していると、3月末と4月初めで日付が分かれることがあります。

国税庁のQ&Aでは、売り手が3月の出荷について8%で請求し、買い手が4月に納品を受ける例では、買い手は売り手が適用した8%に基づいて仕入税額控除をすることが示されています。

買い手が自分の計上日だけを理由に、受け取った請求書の8%を1%に変えることはしません。
税率が分からないときは、取引先に確認しましょう。

深夜営業のお店にも、例外的な取扱いがあります。

Q&Aでは、継続している売上げの計上方法により、2027年4月1日の午前0時から1時までの売上げを3月31日分として計上しているスーパーの例について、その時間帯の食品販売に8%を適用して差し支えないとされています。

ただし、これは「どのお店でも自由に切替えを遅らせてよい」という意味ではありません。
継続している計上方法など、資料で示された前提に当てはまるかを確認する必要があります。

税率が切り替わる前に、返品処理、月をまたぐ取引、夜間のレジ締めについて、経理と店舗の担当者で処理方法を共有しておくと安心です。

30.中間納付は、減税によって自動的に減るとは限りません

消費税には、年度の途中で前もって税金を納める「中間申告・中間納付」の仕組みがあります。

原則として、直前の課税期間の国の消費税の確定税額が48万円を超える事業者が対象です。
この48万円には地方消費税を含めません。
金額に応じて、中間申告の回数が変わります。

中間納付は、基本的に前年などの確定税額をもとに計算します。

そのため、食品の税率が下がって今年の納付額が小さくなりそうでも、前年の8%の取引に基づいた中間納付額が、そのまま計算されることがあります。

1年間の最終的な税額は小さいのに、途中で大きな金額を払うことになれば、資金繰りに影響します。

そこで今回の案では、2027年4月1日以後に始まる中間申告対象期間について、一定の直前課税期間の食品の売上げ・仕入れに1%を適用したと仮定して計算し直し、それをもとに中間申告できる特例が示されています。

対象となる直前課税期間は、2027年3月31日以前に始まる課税期間です。簡易課税の場合は、今回の食品の特例も考えて計算します。

ここで注意したいのは、特例の対象かどうかは、中間申告対象期間の開始日などで判断するという点です。
「4月以降に納期限が来るものは全部対象」という意味ではありません。

また、中間申告の回数は、計算し直した金額に合わせて自由に減らせるわけではありません。
直前課税期間の税額に応じた回数を使います。

計算し直した結果がマイナスでも、この中間申告で還付を受けることはできません。
その場合は中間の税額をゼロとし、実際の取引に基づく確定申告などで精算します。

さらに、期限までに中間申告書を提出しないと、通常の前年税額に基づく中間申告書を提出したものとみなされます。
この特例による申告は仮決算による中間申告書で行うため、期限を過ぎてから出し直すことはできません。
少ない金額で申告したい場合は、必ず期限内に手続をしましょう。

なお、この特例で申告する場合は、税務署から送られてくることがある「中間申告書兼納付書」は使わず、仮決算による中間申告書を提出します。
Q&Aでは、この場合は申告書の第一表だけの提出で差し支えないとされています。

今もある制度として、実際の取引をもとに仮に決算して計算する方法や、課税期間を短くする方法も選択肢になります。
いずれの場合も、税務署から届いた納付書の金額を自分の判断だけで書き換えるのではなく、適切な計算と申告を行いましょう。

31.還付の見込みと、実際にお金が入る時期は分けて考えます

消費税が還付になりそうでも、そのお金が、仕入れの支払と同時に入ってくるわけではありません。

お店は、食品や資材、家賃などの代金を先に支払います。
その後、対象期間の取引をまとめて申告し、そこから還付の手続が進みます。

その間の資金は、お店が自分で用意しなければなりません。

特に設備投資がある場合は、還付される税額だけでなく、税込の購入代金全体、支払日、借入れの返済日、還付の見込み時期を並べて確認しましょう。

まだ入金されていない還付額を、確実な現金として使い切る計画にしないほうが、お店を運営しやすくなります。

飲食店のように、仕入れの支払は減る一方で納税額が増える場合も、手元資金だけを見て使ってしまわないようにします。
15の例では、仕入れのときに28円の支出が減りましたが、その分だけ後の消費税の納付が増えました。

「今月の通帳残高が増えたこと」と「自由に使ってよい利益が増えたこと」は同じではありません。
月ごとの利益と、納税を含めた資金繰りの両方を確認しましょう。

32.レジだけでなく、会計ソフト、ネットショップ、請求書も確認します

お店の準備は、レジの税率を8%から1%に変えるだけでは終わらないことがあります。

食品の1%、一定の新聞や古い食品取引の8%、酒類や日用品などの10%を区別できることが必要です。
過去の8%の取引の返品や訂正も処理できるようにします。

確認しておきたい主なポイントは、次のとおりです。

・レジ・POS:1%、8%、10%を正しく集計できるか
・会計ソフト:新しい税区分を登録できるか、改正後の申告計算に対応できるか
・ネットショップや自動注文の仕組み:適切な時期に税率を切り替えられるか
・請求書・領収書:適用税率と税額を正しく記載できるか
・店舗での入力:店内飲食と持ち帰りを区別し、従業員全員が同じ方法で処理できるか
・通常の販売以外:値引き、返品、定期購入、月をまたぐ請求に対応できるか

会計ソフトでは、「新しい税率を登録できること」と「改正後の特例を使って正しく申告計算できること」が別の場合があります。

ソフトの提供会社の対応予定を確認し、販売、請求、会計の各段階で、同じ取引が正しく引き継がれるかを確認しましょう。

また、2029年には8%へ戻す切替えも予定されています。
最初の変更だけでなく、戻す作業も見据えて準備しておくと、二度目の対応が楽になります。

33.農林漁業者、食品事業者、外食事業者への支援も示されています

税率の引下げは、消費者の買い物だけでなく、食品を作ったり売ったりする事業者の経営にも影響します。

大綱では、農林漁業者への資金繰りの支援が示されています。

特に、一般課税に移るのが難しい簡易課税事業者や免税事業者である農林漁業者については、個別の売上高をふまえた金額を給付する仕組みを導入する方針です。

食品事業者や外食事業者に対しても、資金繰り、省力化、生産性の向上などへの支援が示されています。
外食については、持ち帰りなどへ事業を広げることを支援する方針もあります。

さらに、対象となる事業者が一般課税に移る際の相談対応や、税理士費用などの経費への支援も盛り込まれています。

ただし、大綱では、これらの具体的な支援内容を、事業者の実情を確認しながら予算編成の中で決めるとしています。
対象、金額、申請方法などが、すべて決まったわけではありません。

なお、2026年9月29日には、中小企業などのスマートレジ導入やPOSレジ改修などへの支援に781億円を充てる予備費の使用が閣議決定されました。
報道では、1事業者あたり最大350万円を補助する方向とも伝えられています。
ただし、対象となる事業者、対象経費、申請方法などの詳細は、正式な公募の案内で確認する必要があります。

支援を使いたい事業者は、正式な募集案内が出たときに、対象となる経費や、いつから着手してよいかを確認しましょう。
先に経費を払ってしまうと補助の対象にならない場合もあるため、予定している改修などは、案内の日程と照らし合わせて進めると安心です。

34.新しい支援金は、働く人の手取りを増やすための制度です

ここからは、個人の家計に関係する「就業者負担軽減支援金」を見ていきます。

この支援金は、中低所得の働く人を中心に、税金や社会保険料の負担を軽くし、働くことで生活がよくなったと実感しやすくするための制度として示されています。

背景には、働いて収入が増えても、税金や社会保険料の負担も増えて、手取りが増えた実感を持ちにくいという問題があります。

大綱では、税金と社会保険料を合わせた負担から、受け取る社会保障の現金給付を差し引き、それが収入の何%にあたるかを見る「純負担率」という考え方を使っています。

言葉は難しいですが、「生活の負担を考えるときは、払う税金だけでなく、社会保険料や受け取る給付も一緒に見ましょう」という考え方です。

たとえば、所得税はあまりかかっていなくても、社会保険料が家計の大きな負担になっている方がいます。
こうした方には、所得税を減らすだけでは十分な効果が届きません。

そこで、本人の所得や負担などをふまえて、現金を支給する仕組みを導入する方針です。

なお、「支援金」という名前ですが、今回の就業者負担軽減支援金は、対象者に支給されるお金です。
名前が似た別の制度と混同しないよう、制度名を確認しましょう。

35.2027・2028年度の支援金は、本格導入までの先行制度です

大綱では、2029年度の本格導入までのつなぎとして、2027年度と2028年度に、食品の減税と支援金を組み合わせる方針です。

この2年度の支援金は、支援金全体に必要な費用を、飲食料品にかかる消費税1%相当分の範囲とすることが示されています。

ここでいう「1%相当分」は、制度全体の費用の規模についての考え方です。

よくある勘違い:「食品に払った消費税1%分が返ってくる」

支援金は、一人ひとりが払った食品の消費税1%を、レシートと引き換えにそのまま返す制度ではありません。
「食品を1万円買えば100円もらえる」という仕組みでもありません。

食品の販売には1%の税率が適用され、支援金は所得などの条件で別に判定します。
そのため、食品の減税を受ける人と、支援金を受け取る人が、完全に同じになるわけではありません。

また、先行制度と本格制度では、子どもの年齢や配偶者の所得の条件などに違いがあります。
2027年度の説明を、2029年度以降にそのまま当てはめることはできません。

36.対象は給与で働く人だけではありませんが、具体的な所得基準はまだ決まっていません

大綱では、支援金の対象を判断する「勤労所得」に、前年の給与収入に応じて計算する金額だけでなく、事業所得や業務にかかる雑所得も含める方針が示されています。

ただし、事業所得や業務にかかる雑所得は、「働いている」とみなせる水準として定める額を超える場合に、勤労所得に含める設計です。
少額の副業の所得まで、すべて無条件に含めるという意味ではありません。

そのため、会社員やパート・アルバイトだけに限った制度ではありません。
個人事業主や、業務による所得がある方も、条件を満たせば対象になり得ます。

ただし、働いている人なら全員が対象というわけではありません。

一定の勤労所得があること、合計所得金額が上限以下であること、一定の負担があることなどを確認する設計です。

具体的な所得の下限・上限、負担の基準、支援金の金額などは、これから検討して決めるとされています。

したがって、今の時点では「年収がこの金額なら必ず対象」「この職業ならいくらもらえる」といった確かな計算はできません。

副業をしている方も、副業があるだけで対象になるわけではありません。
給与と副業などを合わせ、制度で決める方法で判断することになります。

会社の経営者の方は、会社の利益と、ご自身が受け取る役員報酬などの個人の所得を分けて考えます。
支援金は会社に支給されるものではなく、個人を単位とする制度です。

37.支給条件は、先行制度と本格制度を分けて確認します

大綱で示された本格制度では、主に次の四つの条件を確認します。

一つ目は、前年の勤労所得が、定められる下限額を超えていることです。
働いて得た所得が、一定の水準を超えている必要があります。

二つ目は、前年の合計所得金額が、定められる上限額以下であることです。
この上限額は、19歳未満の居住者である扶養親族の有無や人数に応じて決める方針です。

三つ目は、大綱で示す方法で計算した負担の額が、定められる「純負担基準額」を超えていることです。
その年度の住民税額をもとに計算した額と、前年分の本人が負担すべき社会保険料にかかる控除額を合計し、そこから前年の公的年金等の収入額を差し引いて判断します。

四つ目は、基準日である1月1日に配偶者がいる場合、その配偶者の前年の合計所得金額が、定められる上限額以下であることです。

さらに、基準日に日本国内に住所があることも必要です。

一方、2027年度と2028年度については、四つのうち最初の三つの条件を使い、負担の基準などは社会保険料控除額で判断するという先行的な取扱いが示されています。

先行制度と本格制度の共通点と違いを整理すると、次のようになります。

・共通点:どちらも個人単位で支給し、本人の所得に下限・上限などを設けます。
・負担の確認:先行制度(2027・2028年度)は社会保険料控除額で判断します。本格制度(2029年度以降)は、税・社会保険料・公的年金などを考える方針です。
・扶養する子どもの範囲:先行制度は16歳未満の扶養親族、本格制度は19歳未満の居住者である扶養親族です。
・配偶者の所得の条件:先行制度では使いません。本格制度では、配偶者がいる場合にこの条件を設ける方針です。

ここでいう扶養する子どもは、同居している子ども全員という意味ではありません。
年齢だけでなく、制度上の扶養親族としての要件などを満たす必要があります。

また、個人単位で支給するといっても、本格制度では配偶者の所得も確認します。
「本人の収入だけ見ればよい」とは限りません。

所得基準、判定の細かいルール、扶養する子どもの確認方法などは、成立する法律やその後の案内で確認する必要があります。

38.「年収」と「所得」を分けると、支援金の条件が読みやすくなります

支援金の説明には、「給与収入」「事業所得」「合計所得金額」といった言葉が出てきます。
これらは、同じ意味ではありません。

会社員などの「給与収入」は、給与や賞与の額面の合計です。
そこから、制度上決められた「給与所得控除(会社員の必要経費にあたる、一定の差引き額)」を差し引いたものが「給与所得」です。

個人事業主の売上げも、そのまま事業所得になるわけではありません。
「事業所得」は、事業の収入から必要経費などを差し引いて、税法のルールに従って計算します。

「合計所得金額」は、給与や事業など、それぞれの所得を税法上の方法でまとめた金額です。
所得控除をすべて差し引いた後の「課税所得」とも違います。

そのため、「会社員の年収500万円」と「個人事業主の売上げ500万円」を、支援金の条件の上で同じ金額と考えることはできません。

また、この制度は、前年の所得などをもとに判断する方針です。

今年、急に収入が増えた方や、退職・休業で収入が減った方は、今の家計の状態と、判定に使う前年の情報が違うことがあります。
今の時点で、その差を調整する手続まで決まっていると考えることはできません。

源泉徴収票、確定申告書、社会保険料の資料などを見て、ご自分の「収入」と「所得」がどう書かれているかを知っておくと、正式な案内が出たときに読みやすくなります。

39.支援額は、所得に応じて増えたり減ったりする設計です

今回の支援金は、対象者全員に同じ金額を配るだけの制度ではありません。

大綱では、比較的低い勤労所得の範囲にあり、条件を満たす方には、定額を支給する方針が示されています。

そこから勤労所得が一定の範囲で増える段階では、支援額も一定の割合で増やします。
その後の一定の所得の範囲では、基本となる定額を支給する設計です。

一方、合計所得金額が一定の水準を超える段階では、所得に応じて支援額を減らします。
対象となる扶養する子どもがいる場合には子どもに関する加算を設け、年収の壁などで一定の社会保険料の負担がある場合には、働くことを後押しするための特例加算を設ける方針です。

「働いて収入を増やすと、支援金がすぐ減ってしまう」ということにならないよう、一定の範囲では支援額を増やす考え方が盛り込まれています。

一方で、所得が高くなる段階では、支援を絞るために減額する設計です。

ただし、どの所得から増え始めるのか、どの水準で定額になるのか、いくら加算するのか、どの割合で減るのかは、これから決める内容です。

大綱には、支援額を1,000円単位とし、端数を切り上げる方針も示されています。
しかし、具体的な金額表が決まるまでは、ご自分の支援額を計算することはできません。

40.子どもの加算があっても、子育て世帯の全員が同じ額を受け取るわけではありません

支援金には、扶養する子どもの有無や人数に応じた加算を設ける方針があります。

ここで、先行制度(2027・2028年度)は16歳未満、本格制度の方針では19歳未満という違いがあります。

本格制度では、19歳未満であることに加えて、居住者である扶養親族という条件も示されています。
子どもの年齢だけで、加算の対象かどうかを判断することはできません。

たとえば、16歳や17歳の子どもがいる家庭で、「19歳未満だから2027年度から加算される」と考えることはできません。

また、子どもがいるだけで、本人の所得や負担の条件を満たしたことにはなりません。
まず本人が支援金の対象になるかを確認し、そのうえで加算の条件を見ます。

夫婦のどちらの扶養親族として加算の対象とするのか、判定日をどう扱うのか、具体的な加算額はいくらかなど、具体的な取扱いはまだ示されていません。
同じ子どもについて、夫婦がそれぞれ当然に加算を受けられるとは限らないため、正式な案内で確認しましょう。

年末調整や確定申告、住民税の申告では、16歳未満の子どもの情報も大切です。
所得税の扶養控除の対象にならない年齢でも、子どもの記載が、ほかの制度の判断に関係することがあります。

「扶養控除を受けられるかどうか」と「子どもの情報を正しく申告する必要があるかどうか」は、分けて考えましょう。

41.年収の壁への加算があっても、社会保険料がなくなるわけではありません

パートなどで働く方の中には、働く時間や収入を増やすと、社会保険に加入して保険料の負担が新たに生じ、手取りが減ってしまうことを心配される方がいます。

大綱では、こうした年収の壁に直面する方や、同じ程度の社会保険料の負担がある方に対し、「就業促進特例加算」を設ける方針が示されています。
この加算は、別に進める取組によって年収の壁が解消するまでの、期間限定の措置とされています。

これは、一定の所得の範囲や保険料の負担の条件を満たす方への加算です。
なお、2027・2028年度の先行制度では、この就業促進特例加算についても、社会保険料控除額により適用するとされています。

社会保険に加入した方全員に、払った保険料を全額返すと決まったわけではありません。
加算額や具体的な対象範囲は、これから検討して決める内容です。

また、支援金ができても、健康保険や年金への加入義務、保険料の支払義務がなくなるわけではありません。

税金上の扶養、社会保険上の扶養、勤務先の配偶者手当なども、それぞれ別のルールです。

働く時間を増やすかどうかは、給与の増加、保険料、税金、手当、支援金の正式な条件を並べて考えます。
今回の方針だけを見て、「年収の壁はすべてなくなった」と判断するのは早いといえます。

42.高齢者は、年齢だけで対象・対象外が決まる設計ではありません

この支援金は、中低所得の現役で働く人に着目した制度です。

ただし、働いている高齢者を、年齢だけで一律に対象外とする説明は正確ではありません。

大綱では、働いていて、税金や社会保険料などの負担が現役世代と同じ程度ある中低所得の高齢者も、対象とする考え方が示されています。

その一方で、公的年金などの収入や負担の状況も関係するため、給与を受け取っている高齢者全員が対象になるわけではありません。
先行制度では負担の確認方法にも違いがあるため、年度ごとの正式な条件を確認します。

働かずに年金だけで生活している方も、食品を買うときの税率引下げとは関係があります。
しかし、だからといって、働く人向けの支援金も当然もらえるとはいえません。

大綱では、働いていない高齢者や、病気・障害などで働くことが難しく支援金の対象にならない方について、既存の社会保障制度との関係を整理して、必要な対応を検討する方針も示されています。

食品の減税、働く人向けの支援金、年金や生活支援などの既存の制度は、それぞれ別に確認する必要があります。

43.支援金は原則年1回の予定で、4月に全員へ振り込まれるとは限りません

支援金は、年度を単位として支給する方針です。

原則として毎年1回、自治体が受給資格や金額を認定・決定し、その認定などから2か月以内に、その年度分を支払う設計が示されています。

したがって、「2027年4月から制度導入」という説明を、「対象者全員の口座に2027年4月1日に入金される」という意味に読むことはできません。

具体的な認定や申請の時期、締切り、実際の支払日は、今後の案内を確認しましょう。

また、2029年度は、食品の減税の終了と本格制度への移行をつなぐため、特別な支給方法が示されています。

2029年4月に、2028年度の受給資格者へ、本格制度による支援額の半年分相当額を基本とする額を先に支給します。
その後、2029年度の受給資格者へ、半年分相当額を基本とする額を支給する方針です。

この年度は、通常の支給と4月の先行支給を合わせて2回とする設計です。
ただし、前の年度と新しい年度で対象者が違う可能性があるため、誰でも同じ金額を2回受け取れるという意味ではありません。

毎月の家計を考える際は、支援金が毎月の給与に上乗せされるものとは考えず、金額と時期が正式に分かった段階で計画に組み込みましょう。

44.公金受取口座の登録は便利ですが、それだけで受け取れるわけではありません

支援金は、原則として基準日に住所がある市区町村で、受給資格の認定を行う仕組みです。

本人の請求に基づいて認定する方法のほか、自治体が受給資格や支援額を確認でき、公金受取口座が登録されている場合には、本人の申請を待たずに自治体が認定する方法が示されています。

公金受取口座とは、給付金などを受け取るために、ご自分の口座を国にあらかじめ登録しておく仕組みです。
大綱では、申請なしで認定する方法を基本として運用し、口座情報の記入や通帳の写しの提出などの手間を減らす考え方が示されています。

ただし、口座を登録すれば誰でも支援金を受け取れるわけではありません。
本人が支給の条件を満たし、必要な情報を自治体が確認できることが前提です。

また、口座を登録していない方についても、本人の請求による手続が想定されています。
「登録していないと受け取れない」というわけではありません。

登録している方は、氏名や口座の状況が今のものと合っているかを確認しておくとよいでしょう。
登録の有無とは別に、所得や社会保険料などの申告情報を正しく整えておくことも大切です。

45.税金がかからない方でも、所得の申告が大切になる場合があります

支援金は、本人の所得、扶養する子ども、社会保険料などの情報をもとに判断する仕組みです。

そのため、「税金を納める必要がないこと」と「所得の情報を行政に伝える必要がないこと」は、同じではありません。

大綱では、税金がかからない方にも、積極的な確定申告を含めて周知することや、申告書、源泉徴収票、住民税申告書、給与支払報告書などの様式を変更することが示されています。
この様式の変更は、2029年度以降の支援金制度の実施に必要な情報を市町村が把握するための措置とされています。

ただし、今回の方針だけで、今すぐ全員に新しく確定申告の義務が生じたわけではありません。
所得税の申告が必要か、住民税の申告が必要か、支援金に関する情報をどの手続で伝えるのかは、ご本人の状況と正式な案内で確認します。

状況別に、今のうちにできることを整理すると、次のようになります。

・会社で年末調整を受けている方:源泉徴収票の内容を確認します。
・個人事業主の方:帳簿、収入、必要経費、申告書を整理します。
・複数の勤務先や副業がある方:情報が一部だけになっていないかを確認します。

社会保険料については、税金の計算で使う社会保険料控除の情報と、この制度で確認する「本人が負担すべき社会保険料」との関係も、正式な取扱いを確認する必要があります。

家族の保険料をまとめて払っている場合などは、今の税金の控除額を、そのまま本人の支援金の判定額と考えず、制度のルールに沿って整理します。

会社やお店で給与計算を担当する方も、今後の帳票の変更に対応する必要があります。
従業員個人への支援金と、会社が負担する社会保険料や人件費は、分けて考えましょう。

46.支援金は非課税とする方針ですが、ほかの制度との関係も確認します

大綱では、この支援金に税金などをかけない方針が示されています。

受け取った支援金に、そのまま所得税や住民税をかける制度にはしないという考え方です。

ただし、「非課税だから、ほかの制度に一切影響しない」とまではいえません。

既存の社会保障制度の支給条件などに影響しないための取扱いを設ける一方で、生活保護制度では、支援金を収入として認定する方針が明記されています。

生活保護を受けている方などは、支援金の額がそのまま生活費の上乗せになるとは考えず、担当窓口で取扱いを確認しましょう。

また、将来の制度では、金融所得を判定に反映するための措置や、預金の利子、保有資産の扱いについての検討も示されています。

今の時点で、預金残高の具体的な基準や、資産をどう扱うかまで決まったわけではありません。
「自分で所得を申告するかどうか」だけで、支援金への影響を決めつけることはできません。

所得基準や資産の扱いが今後どう決まるかを、正式な情報で確認しましょう。

47.2029年に食品の税率が戻ることも、最初から考えておきます

今回の食品の税率引下げは、2年間に限る方針です。

大綱どおりに進めば、2029年3月31日で1%の期間が終わり、4月1日から原則8%に戻ります。

税抜価格が変わらなければ、税込1,010円の食品は1,080円に戻る計算です。
この場合の税込価格の上昇率は、70円を1,010円で割った約6.93%です。

始まるときの約6.48%の値下がりと、終わるときの約6.93%の値上がりは、同じ70円でも、比べる元の金額が違うため一致しません。

ご家庭では、減税期間中の支出の水準がずっと続くわけではないことを、家計の見通しに入れておきましょう。

お店では、レジ、請求書、値札、通販の価格、簡易課税の計算などを、もう一度確認することになります。

現時点の大綱やQ&Aには、始まるときの定期供給契約・通信販売についての経過的な取扱いと同じような取扱いを、終わるときにも設けるという記載はありません。
そのため、「終了前に代金を受け取っていれば、終了後の食品にも1%を使える」とは考えず、今後の正式な案内を確認しましょう。

また、2029年4月1日以後に始まる中間申告対象期間についても、一定の直前課税期間の食品取引を8%として計算し直す特例が示されています。

この終了時の特例で対象となる直前課税期間は、2029年3月31日以前に始まる課税期間です。
なお、簡易課税の事業者がこの終了時の特例で計算する場合は、始まるときとは異なり、1%の食品売上げについての簡易課税の特例を使わずに計算します。

これは、食品の仕入税額が増える飲食店などで、前年の税額に基づく中間納付が大きくなりすぎる場合への対応です。
始まるときだけでなく、終わるときも中間納付や資金繰りを確認しましょう。

支援金は2029年度から本格導入する方針ですが、減税の終了による支出の増加を、どの家庭でも支援金が同じだけ埋めてくれるとは限りません。
ご本人が対象になるか、支援額はいくらかを、別に確認します。

48.財源と地方への影響も、制度を理解するうえで大切です

税率を下げると税収が減り、支援金を支給すれば、そのための費用が必要になります。

大綱では、これらの財源について、特例公債(いわゆる赤字国債)に頼らず、補助金や税制上の特別措置の見直しなど、歳出・歳入全般の見直しで確保する方針が示されています。

2029年度以降の本格制度については、続けて必要になる財源を確保しなければなりません。

ただし、この方針が書かれたことと、具体的な財源の中身がすべて決まったことは、同じではありません。
今後の予算編成などで具体化される内容があります。

また、消費税には、国に納める部分と、地方に関係する部分があります。
今回の1%は、国の消費税率0.78%と、地方消費税率0.22%相当を合わせた率です。

大綱では、2027年度と2028年度の地方消費税の減収について、全額を地方特例交付金で補うことなどが示されています。

消費税は、社会保障や行政サービスにも関係します。家計の負担軽減と、必要な財源の確保を合わせて見ることが大切です。

49.家計、働く人、お店で、今からできることを整理します

制度の細かい部分がまだ決まっていなくても、今からできる準備はあります。

一般の消費者の方

食品の持ち帰り、外食、酒類の支出を分けて、今回の引下げの対象になる食費をつかんでおきましょう。
食品の定期便や通販を使っている方は、契約日、販売条件、支払時期、税率変更についての取り決めも確認しておくと安心です。

会社員やパートなどで働く方

源泉徴収票、社会保険料、扶養する子どもの情報を確認しておきましょう。

個人事業主の方

売上げ、必要経費、所得を整理し、ご自分がどの消費税の計算方法(免税・一般課税・簡易課税)を使っているかを確認しておきましょう。

子育て世帯の方

子どもの年齢と扶養の情報に加え、支援金の先行制度と本格制度の違いを確認しておきましょう。

年金を受け取りながら働く方

給与や事業の所得、公的年金、社会保険料の資料を整理しておくと、正式な条件が公表されたときに確認しやすくなります。

食品販売店や飲食店の方

税率ごとの売上げと仕入れを整理し、レジ、請求書、会計ソフトの対応を確認しましょう。
免税事業者や簡易課税を使っている事業者は、一般課税に移った場合の試算と、始まるとき・終わるときの手続を確認しておきましょう。

農林漁業者などの方

税率変更による影響を整理し、正式な支援策の案内を確認しましょう。

事業者の方がご相談される際は、次の資料があると、具体的な比較がしやすくなります。

・直近の消費税申告書
・過去に出した届出書
・インボイス登録の状況
・売上げ・仕入れの内訳
・設備投資の予定
・決算月
・在庫の資料

個人の支援金については、具体的な所得基準や支援額が公表されてから、源泉徴収票や申告書の数字を使って確認します。
基準が決まっていない今の段階で、受け取れる金額を家計の確実な収入として計算に入れる必要はありません。

50.制度の数字を、ご自分の暮らしと商売の数字につなげましょう

食料品の消費税を1%にする案は、多くの家庭の買い物に関係します。
ただし、家計の支出全体が同じ割合で下がるわけではありません。

外食や酒類は対象が異なり、実際の価格には税抜価格の変化も関係します。
まずは、毎月の買い物のうち、どの支出が対象になるかを知ることが役に立ちます。

お店では、販売の税率、仕入れの税率、申告の方法を分けて確認します。
また、「消費税の納付額が変わること」「利益が変わること」「手元のお金が変わること」も、それぞれ別に見ていきましょう。

働く人への支援金は、食品の減税とは別の条件で判断します。
年収だけでなく、所得、社会保険料、家族の情報、判定に使う年度を確認することが大切です。

ご家庭なら、1か月分の買い物を分けてみる。
事業者の方なら、ご自分が免税・一般課税・簡易課税のどれに当たるかを確認し、税率ごとの売上げと仕入れを並べてみる。
働く方なら、源泉徴収票や申告書を手元にそろえておく。

こうした準備をしておけば、正式な制度が決まったときに、必要な手続や判断へスムーズに進むことができます。

どこから手を付ければよいか分からない場合や、ご自分のお店ではどの方法が有利なのか試算してみたい場合は、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。
一緒に数字を確認しながら、落ち着いて準備を進めていきましょう。

ご注意

本記事は2026年9月30日時点の公表資料に基づく解説です。
改正案の内容、施行日、届出の手続、支援金の基準などは、成立した法令と最新の公的資料で確認する必要があります。
実際の適用には個別の判断が必要です。
詳しくは税務署にご確認ください。計算例は理解のための仮定であり、実際の申告税額や支援金の額を示すものではありません。

参考資料

本記事は、2026年9月15日に閣議決定された「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を主な根拠としています。

消費税の具体的な取扱いについては、国税庁の「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」(2026年9月)を参照しました。税率・経過的取扱いは問1-1~1-6、インボイスの記載は問2-1~2-2、課税方法の変更・課税期間の短縮は問3-1~3-5、簡易課税・中間申告・価格表示の特例は問3-6~3-9を参照しています。

公表情報については、国税庁「消費税率引下げ特設サイト」と「消費税の軽減税率制度」を参照しました。
対象となる取引や端数処理については、同庁の「軽減対象課税資産の譲渡等」と「端数計算」も参照しています。

2割・3割特例の適用時期と対象者については、国税庁の「令和8年度税制改正特集」と「2割特例特設ページ」を参照しました。
資産取得後の免税制限等については、同庁の「高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例」を参照しています。

レジ改修等への支援に向けた予備費の使用については、財務省・2026年9月29日の閣議後記者会見を参照しました。
補助の上限額に関する記述は、同日の報道によります。