深夜勤務者に夜食の代わりとして支給する金銭について
看護師さんや守衛さんなど、勤務時間の一部または全部が午後10時から翌日の午前5時までにかかる従業員は、税務上「深夜勤務者」として扱われます。
こうした深夜勤務者に対して、夜食の代わりとして支給する手当(いわゆる夜食手当)については、一定の条件を満たせば、給与として課税しなくてもよいという特例があります。
これは、深夜勤務という特殊な働き方に配慮した制度です。
人手不足が続く医療・警備・運送などの業種では、実務上も大切なポイントになります。
現在の非課税ルール(2025年12月時点)
2025年12月現在、夜食手当を「給与として課税しない(=非課税)」で処理するためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
現物支給が難しいこと
深夜帯のため、夜食をお弁当などの「現物」で支給することが難しく、やむを得ず現金で支給していること
手当として区分していること
基本給や残業代とは別に、「夜食手当」として区分して支給していること
勤務1回ごとの定額支給であること
勤務1回ごとに、あらかじめ決めた定額で支給していること
1回あたり300円以下(税抜)であること
この300円が、現在、企業が守るべき非課税の上限額です
たとえば、夜勤1回につき300円を「夜食手当」として別枠で支給している場合は、この特例の対象になります。
令和8年度税制改正で「変わる予定」のポイント
令和8年度の税制改正では、この夜食手当の非課税限度額について、次のような見直しが予定されています。
300円 → 650円に引き上げ
物価上昇や、深夜勤務者の負担増を踏まえた改正です。
経営者にとっては、従業員への配慮を手厚くしやすくなる、前向きな改正といえます。
ただし、今の時点で前倒しするのは要注意です
この650円の非課税限度額は、税制改正法案が国会で成立し、施行された後に適用される予定です。
現時点では、2026年4月以降に施行される見込みとされています。
そのため、2025年12月の段階で650円を非課税として支給してしまうと、300円を超える部分が給与として課税される可能性があります。
その結果、
・源泉所得税(給与から天引きする税金)の追加徴収
・社会保険料の修正手続き
といった、思わぬ実務負担につながるおそれがあります。
経営者として、今やっておきたいこと
現時点では、次のような対応が安心です。
・夜食手当の非課税限度額は、300円(税抜)のままで運用する
・650円への引き上げは、法令が正式に成立・施行されてから社内規程を見直す
・支給方法(定額・勤務1回ごと)が要件を満たしているか、いま一度確認しておく
制度改正は「予定」の段階では動かず、正式に変わってから対応するのが、経営上のリスクを避けるポイントです。






