車の売却と税金|所得税・消費税の計算手順をやさしく解説
帳簿上の残り金額(簿価)が6万円の車を100万円で売却できた場合、見た目の利益が大きくなります。
ここでは「事業で80%使っていた車を、5年を超えて持っていて売却した」という前提で、所得税と消費税の計算の流れと、申告で気をつけたいポイントを順番に整理します。
所得税(譲渡所得)の計算シミュレーション
結論:課税対象となる金額は「12.6万円」 になります(以下の前提で計算した場合)。
前提条件
・売却価格:100万円
・売却時の簿価:6万円(※本来は売却した月までの減価償却を反映して計算します)
・事業で使っていた割合:80%
・所有期間:5年超(長期保有)
※車などを売ったときの利益は「譲渡所得」として計算します。
5年を超えて持っていた場合は「長期譲渡」となり、最終的に利益の半分だけが課税対象になる優遇があります。
ステップ① 全体の利益を計算する
まず、売却でいくら増えたか(利益)を出します。
100万円 − 6万円 = 94万円
ステップ② 事業で使っていた分(80%)だけを取り出す
この車は「プライベートと事業の両方で使っていた」想定です。
税金の計算では、事業に使っていた部分が対象になります(減価償却で経費にしてきたのもこの部分だからです)。
94万円 × 80% = 75.2万円
ステップ③ 特別控除(50万円)を差し引く
車などの譲渡所得には、年間で最大50万円まで差し引ける「特別控除」があります。
75.2万円 − 50万円 = 25.2万円
※その年に他にも車や貴金属などを売った利益がある場合、50万円の枠は合計で1回分です。
複数の売却がある方はご注意ください。
ステップ④ 長期保有(5年超)なので、さらに半分に
5年を超えて持っていた資産の譲渡所得は、最終的に半分だけが課税対象になります。
25.2万円 × 1/2 = 12.6万円
この12.6万円が、事業所得など他の所得と合算され、その合計額に応じた税率で所得税が計算されます。
たとえるなら、「譲渡所得だけで税率が決まる」のではなく、「お財布に入ってきたお金を全部まとめてから税率が決まる」というイメージです。
申告で気をつけたいポイント(所得税)
「事業で80%使っていた」という割合に一貫性があるか
減価償却で80%を経費にしてきたのに、売却のときだけ100%を事業扱いにしたり、逆に50%に変えたりすると、つじつまが合わなくなります。
日ごろの使用実態がわかるもの(走行記録、スケジュール帳、訪問先のメモなど)があると、万が一確認を求められたときも安心です。
プライベート分(20%)の扱い
プライベートで使っていた分は、「生活に通常必要な財産」として、一般的には所得税がかかりません。
今回の例では、残り20%部分は課税計算から外す整理が自然です。
消費税について(課税事業者の方へ)
実務では、所得税よりも消費税のほうが「うっかり漏れ」が起きやすいです。
理由はシンプルで、所得税には50万円の控除がありますが、消費税にはそのような控除枠がないからです。
消費税がかかる方の条件
次のような理由で「課税事業者」になっている方は、車の売却も消費税の計算に含める必要があります。
・インボイス登録をして課税事業者になっている
・2年前の売上(課税売上高)が1,000万円を超えている など
※「免税事業者」の方は、消費税の申告は必要ありません。
消費税の対象になる金額
事業とプライベートの両方で使っていた車を売った場合、事業で使っていた割合の売却額が「課税売上」になります。
100万円 × 80% = 80万円(課税売上の対象)
納める消費税の目安(原則的な計算方法の場合)
売却額が「税込金額」として扱われる前提だと、預かった消費税は次のように計算します。
80万円 × 10/110 = 約72,727円
※普段から「税込経理」「税抜経理」のどちらで帳簿をつけているかで、記帳のしかたが変わります。
車の売却も、普段選んでいる方法に合わせるのが基本です。
簡易課税を選んでいる方へ(区分に注意)
「簡易課税」を選択している方は、車などの固定資産を売った取引は、本業が何業であっても原則として 「第4種事業」 として扱います。
ここは間違えやすいポイントです。
納税額のイメージ(第4種・みなし仕入率60%の場合)
・課税売上(税込):80万円
・預かった消費税:80万円 × 10/110 = 約72,727円
・納付する消費税(概算):72,727円 ×(1 − 60%)= 約29,000円
つまり、この車の売却があることで、消費税の納税が約2.9万円増えるイメージです。
やることリスト(申告・記帳の実務ポイント)
最後に、ミスが起きやすいところを「やること」としてまとめておきます。
売却の証拠を保管する
売買契約書、買取店の明細、振込明細など、「100万円で売れた」とわかる資料を残しておきましょう。
購入時の資料もセットで保管する
購入したときの契約書、領収書、ローン明細など、取得費の根拠になる資料も大切です。
帳簿で固定資産を除却し、売却損益を計上する
会計ソフトでは「固定資産売却益」などで処理されることが多いですが、確定申告では「譲渡所得」として整理します。
事業とプライベートで共用していた場合は、80%部分を意識して計算しましょう。
所得税と消費税は「別々のミス」が起きると理解しておく
所得税には50万円控除や長期1/2の優遇がありますが、消費税には控除枠がなく、課税売上への入れ忘れが起きやすい点に注意が必要です。
まとめ
所得税(譲渡所得)については、利益94万円のうち事業で使っていた80%分の75.2万円から50万円の特別控除を差し引き、さらに長期保有の優遇で半分になるため、最終的に12.6万円が課税対象になります。
消費税については、課税事業者の場合、売却額のうち事業で使っていた80%分(80万円)が課税売上になりやすく、申告漏れが起きやすいので注意が必要です。
簡易課税を選んでいる方は、固定資産の売却が原則「第4種事業」扱いになる点を押さえておきましょう。
本業の業種とは異なる区分になるため、間違えやすいポイントです。
正確な金額や期限は、最新の情報を税務署にご確認いただくと安心です。






