金利が高いのに株高は続く? 小さな会社の経営者こそ知っておきたいお金の話

金利上昇時の経営者向けお金の基礎知識

はじめに:税理士として、ずっと気になっていること

私は税理士として10年以上、中小企業の経営者や個人事業主の方々と一緒に決算書や資金繰りを見てきました。

その中でよく感じることがあります。「世界のお金の話は、自分には関係ない」と思っている経営者が、意外と多い。

でも、実はそうじゃないんです。

アメリカの金利が上がれば、日本の住宅ローン金利にも影響が出ます。
輸入コストが変わり、仕入れ値が動きます。
銀行がお金を貸すときの態度も、少しずつ変わっていきます。

今回お話しするのは「アメリカの超長期金利が上昇していて、株高との間に無理が生じているのではないか」というテーマです。
難しそうに聞こえますが、家計や小さな会社の話に置き換えると、ぐっと身近になります。
一緒に考えていきましょう。

30秒でわかるまとめ

今、アメリカでは超長期の国債の利回りが5%台に近づいています。
金利が高くなると、リスクのある株よりも安全そうな国債にお金が流れやすくなります。
これは遠い世界の話のようで、実は私たちの住宅ローン、仕入れコスト、会社の資金調達にも、じわじわとつながってくる話です。

金利って何?まず基本から

金利とは、「お金を借りるときに上乗せで払う料金」のことです。
たとえば、銀行から100万円を借りて、1年後に103万円返すとします。この3万円が金利です。

金利が高くなると、お金を借りることが「割高」になります。だから、企業は設備投資をためらい、家計はローンを組みにくくなります。
逆に、金利が低い時代は「借りやすい」ので、企業はどんどん投資し、個人もローンを組みやすい。
これが、低金利時代に株価が上がりやすかった理由の一つです。

今、何が起きているのか

アメリカでは、30年という長い期間の国債の利回りが5%前後に近づいています。
国債とは、国がお金を借りるために発行する証書のようなものです。
「安全な資産でも、年に約5%増やせる」という状況になってきたわけです。

するとどうなるか。「リスクを取って株を買わなくても、国債を持っているだけで5%もらえるなら、それでいいのでは?」と考える投資家が増えます。

家計でたとえると、こんな感じです。
今まで銀行の普通預金に置いていても、ほとんど増えなかった。
だから少しリスクを取って株を買っていた。
でも、もし定期預金で年5%増えるなら、無理して株を買わなくてもいい、という人が増えます。株に向かっていたお金が、安全な資産の側に戻り始める。
これが今起きていることの大まかな構図です。

なぜ金利は上がっているのか

大きな理由は、インフレ、つまり物価の上昇です。
コロナ禍以降、世界的にエネルギー価格や食料価格が上がりました。
物流のコストも上昇しました。

物価が上がり続けると、中央銀行(国のお金の流れを調整する機関)は金利を高めにします。
金利を上げるとお金を借りにくくなり、消費や投資が少し落ち着き、物価の上がりすぎを抑えられる、という仕組みがあるからです。

税理士の目線でいえば、これは「会社の経費を締めることで、無駄遣いを止める」のと似ています。
一時的に苦しくなりますが、長い目で見れば会社(経済)を健全な状態に戻すための処置です。
ただし、締めすぎると今度は売上が落ちたり、採用が止まったりする。
この加減が、中央銀行にとって難しいところです。

なぜ「金利高なのに株高」という矛盾が起きているのか

普通に考えれば、金利が上がると株は下がりやすいはずです。
でも現実には、株価がしぶとく高い水準を保っている場面があります。

これには理由があります。
投資家たちが、「AI関連の成長企業は金利が高くても利益を伸ばせる」「アメリカ経済はまだ底堅い」「いずれ金利は下がる局面が来るだろう」という期待を持っているからです。

ただし、期待が大きくなりすぎると、少し悪いニュースが出ただけで株価が大きく揺れます。
学校の話でたとえるなら、「次のテストで100点を取るはず」と期待されていた子が90点を取ったとき、「なんで100点じゃないの」と言われてしまう状況です。90点でも十分すごいのに、期待が先走りすぎた結果、評価が下がってしまう。
株式市場でも同じことが起きます。

小さな会社への具体的な影響

ここからが、私が特に経営者の皆さんに伝えたい部分です。

会計事務所で日々決算書を見ていると、売上は変わっていないのに利益が減っている会社が増えています。
「頑張って売ったのに、残らない」という状況です。
金利上昇の背景にあるインフレは、輸入コストや原材料費にも影響します。
特に原材料を海外から調達している中小企業では、仕入れコストの上昇が続きやすい。
今一度、原価率と粗利率を確認してみてください。粗利(売上から原価を引いたもの)が確保できているか。
できていないなら、価格の見直しや仕入れ先の再検討が必要かもしれません。

銀行融資や借入れを考えている会社も注意が必要です。
日本の金利環境はまだ世界ほど急上昇していませんが、借入れコストが上がる方向にあることは意識しておく価値があります。
融資を検討しているなら、早めに動いておくほうがいい場合もあります。
また、変動金利で借りている場合は、返済額が変わる可能性があることを頭に入れておきましょう。
これは「すぐ動け」という話ではありません。
ただ、「金利は永遠に低いまま」という前提で計画を立てるのは危険かもしれない、ということです。

個人で株式や投資信託を持っている経営者の方にも一言あります。
「株高が続いているうちにもっと買いたい」という気持ちはわかります。
でも、高金利が長引く場合、株価がいったん調整(下落や横ばい)する局面が来やすくなる、という見方もあります。
大事なのは、すぐに使うお金と、長期で置けるお金を分けることです。
税金の支払い、設備更新費、生活費など、半年から1年以内に使う予定のお金は、株に入れないほうが安心です。
株価が下がったタイミングで「売らなければいけない」状況になると、損が確定してしまいます。

「株高の終わり」より「休憩」が近いという見方

金利が高いまま景気が好調で株高が続く、というのは、正直なところ簡単な状況ではありません。
歴史的に見ると、金利が高い局面では株の割高さが意識されやすくなり、上値が重くなる傾向があります。

ただ、「だから今すぐ株は危ない」と断言することもできません。
企業の利益が本当に強ければ、株価は支えられます。
また、投資家が「将来の金利低下」を先読みして動くこともあります。

私が経営者の方々に伝えたいのは、暴落を予言することより、自分のお金の状態を把握することのほうが大事だということです。
相場を正確に予測できる人はいません。
でも、自分の資産がどんな状態にあるかは、確認できます。

まとめ:3つのポイント

金利が高くなると、株にとって向かい風になりやすいです。
安全な資産で高い利回りが得られるなら、株の魅力が相対的に薄れるからです。
それでも株高が続いているのは、企業の利益への期待が強いからですが、期待が先行しすぎると少しの悪材料で揺れやすくなります。
そして、小さな会社の経営者にとっては、原価率・借入れコスト・手元の資金の3つを確認することが、今できる現実的な対応です。

今日からできる一歩

所要時間は10〜15分ほどです。
まず、直近の原価率を確認してみてください。
売上に対して原価がどれくらいの割合を占めているかを見るだけでいい。
粗利が減っているなら、コスト上昇が始まっているサインです。

次に、借入れの金利タイプを確認します。
変動金利で借りている場合、金利が上がると返済額が増える可能性があります。
どんな条件で借りているか、通帳や契約書を一度確かめてみてください。

最後に、すぐ使うお金と投資しているお金を分けて考えてみましょう。
株や投資信託に入れているお金のうち、価値が一時的に下がったとき「売らずに待てるか」を自問してみてください。
待てないお金は、株向きではありません。

世界の金融ニュースを毎日追いかける必要はないと私は思っています。
でも、自分の会社と自分のお金の状態を定期的に確認することは、どんな時代でも大切です。
ニュースに振り回されるより、足元を確かめる。
それが、長く会社を続けていくための、地味だけれど一番確かな方法です。