役員社宅の家賃はいくら徴収すればよい?賃貸料相当額の計算方法と注意点を分かりやすく解説

役員社宅で給与課税されないために|家賃の決め方・計算式・注意点

会社が役員のために住宅を用意し、「役員社宅」として貸しているケースがあります。

たとえば、次のような場合です。

・会社が所有するマンションや一戸建てに社長が住んでいる
・会社名義で賃貸マンションを契約し、役員に貸している
・会社が家主へ家賃を支払い、役員の給与から社宅家賃を差し引いている

役員社宅は、正しい方法で運用すれば、会社と役員個人の費用負担を整理しやすい制度です。

ただし、役員から徴収する家賃を会社の判断だけで決めてしまうと、税務上必要な金額に足りず、その不足額が役員に対する給与として課税されることがあります。

「会社が家賃を払っているから、その半分を役員からもらえばよいのではないか」 「従業員の社宅と同じように、税務上の家賃の半分を取ればよいのではないか」

このように考える方もいらっしゃいますが、役員社宅には独自の計算ルールがあります。

この記事では、役員社宅について、次の内容を分かりやすく説明します。

・役員からいくら家賃を徴収すればよいのか
・「小規模住宅」とはどのような住宅なのか
・自社所有の社宅と借上社宅で計算方法がどう違うのか
・豪華社宅に該当するとどうなるのか
・固定資産税の課税標準額は、いつ確認し直すのか
・どのような資料を保管しておくと安心か
・電気代や駐車場代を会社が負担した場合はどうなるのか
・所得税だけでなく、法人税や社会保険にどのような影響があるのか

役員社宅をすでに利用している会社だけでなく、これから導入しようと考えている経営者の方も、ぜひ参考にしてください。

※この記事は、2026年7月25日に確認した国税庁および日本年金機構の公表情報に基づいて作成しています。
国税庁のタックスアンサーや質疑応答事例などは、それぞれ公表されている法令等の基準日が異なります。
また、実際の取扱いは、物件の状況、契約内容、利用方法などによって個別に判断する必要があります。
具体的な適用については、税務署にご確認ください。

役員社宅では「賃貸料相当額」の徴収が必要です

会社が役員に住宅を貸す場合、役員から税務上必要とされる家賃を受け取っていれば、原則として、その住宅の貸与による利益について給与課税は行われません。

この税務上必要とされる家賃を「賃貸料相当額」といいます。

一方、役員から実際に徴収している家賃が賃貸料相当額より少ない場合には、原則として次の差額が役員に対する給与として課税されます。

賃貸料相当額-役員から実際に徴収している家賃=給与として課税される金額

たとえば、税務上の賃貸料相当額が月額5万円であるのに、役員から月額2万円しか徴収していない場合、差額の3万円が役員に対する給与として扱われます。

役員に無償で住宅を貸している場合には、原則として賃貸料相当額の全額が給与として課税されます。

ここでいう給与は、現金で支給する役員報酬だけではありません。

会社が役員の個人的な費用を負担した場合や、本来受け取るべき家賃を受け取らなかった場合など、実質的に役員へ利益を与えたものも「経済的利益」(お金そのものではないけれど、実質的に役員の得になっている利益のこと)として給与に含まれることがあります。

役員社宅を通常より低い金額で貸すことによる利益も、その一つです。

最初に「小規模住宅に該当するか」を確認します

役員社宅の賃貸料相当額は、すべての住宅について同じ方法で計算するわけではありません。

まず、その住宅が税務上の「小規模住宅」に該当するかどうかを確認します。

小規模住宅に該当する場合と、該当しない場合とでは、賃貸料相当額の計算方法が大きく異なるためです。

小規模住宅に該当するかどうかは、建物の法定耐用年数と床面積によって、次のように判定します。

法定耐用年数が30年以下の建物

床面積が132平方メートル以下であれば、小規模住宅に該当します。

法定耐用年数が30年を超える建物

床面積が99平方メートル以下であれば、小規模住宅に該当します。

法定耐用年数とは、税務上、その建物の取得費用を何年間に分けて経費にしていくかを決めるための年数です。

一般的には、木造住宅などは法定耐用年数が30年以下になることが多く、鉄筋コンクリート造の住宅などは30年を超えることが多いと考えられます。

ただし、建物の構造や用途によって法定耐用年数は異なります。

そのため、「木造だから必ず132平方メートル以下」「マンションだから必ず99平方メートル以下」と建物の呼び方だけで判断せず、対象となる建物の法定耐用年数を確認することが大切です。

通達の「木造家屋」は、単純に建物名だけで判断しません

所得税基本通達(国税庁が示す、所得税の取扱いについての細かいルール)では、「木造家屋」と「木造家屋以外の家屋」という区分が使われています。

ただし、ここでいう区分は、建物の名称や見た目だけで判断するものではありません。

税務上、この取扱いでいう「木造家屋以外の家屋」とは、住宅用建物の法定耐用年数が30年を超えるものをいいます。

一方、「木造家屋」とは、住宅用建物の法定耐用年数が30年以下のものをいいます。

したがって、役員社宅の計算をするときは、「契約書に木造と書いてあるか」だけではなく、建物の構造、用途、法定耐用年数を確認したうえで判断する必要があります。

マンションは共用部分を含めて判定します

マンションの場合、登記簿や賃貸借契約書に記載されている専有部分の床面積だけで、小規模住宅かどうかを判断しないように注意が必要です。

区分所有マンションについては、廊下、階段、エントランスなどの共用部分の床面積を合理的に割り振り、専有部分の床面積に加えて判定します。

国税庁の質疑応答事例でも、小規模住宅の判定と固定資産税の課税標準額による計算のいずれについても、共用部分を含めることが示されています。

たとえば、役員が使用している部屋の専有面積が95平方メートルで、割り振られる共用部分が8平方メートルあるとします。

この場合、判定上の床面積は次のとおりです。

95平方メートル+8平方メートル=103平方メートル

法定耐用年数が30年を超える建物では、小規模住宅の基準は99平方メートル以下です。

この例では103平方メートルとなるため、小規模住宅には該当しません。

「専有面積は99平方メートル以下だから小規模住宅だろう」と判断すると、計算を間違える可能性があります。

マンションを役員社宅とする場合は、共用部分を含めた床面積の資料も準備しておきましょう。

小規模住宅の賃貸料相当額の計算方法

役員に貸している住宅が小規模住宅に該当する場合、1か月当たりの賃貸料相当額は、次の3つの金額を合計して計算します。

・建物に関する金額:その年度の建物の固定資産税の課税標準額(固定資産税を計算するための基礎となる金額で、通常、実際の時価より低く設定されています)×0.2%
・床面積に関する金額:12円×建物の総床面積÷3.3平方メートル
・土地に関する金額:その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

以上を合計した金額が、1か月当たりの賃貸料相当額になります。

計算式にすると、次のようになります。

小規模住宅の賃貸料相当額 =建物の固定資産税の課税標準額×0.2% +12円×建物の総床面積÷3.3平方メートル +土地の固定資産税の課税標準額×0.22%

「固定資産税額」ではなく「課税標準額」を使います

ここは、実務で特に間違えやすいところです。

役員社宅の計算に使うのは、会社や所有者が実際に支払っている固定資産税の税額ではありません。

使用するのは、固定資産税を計算する基礎となる「固定資産税の課税標準額」です。

国税庁は、この課税標準額について、原則として固定資産課税台帳に登録された価格によるものと説明しています。

固定資産税の課税明細書には、次のような複数の金額が記載されていることがあります。

・評価額
・固定資産税の課税標準額
・都市計画税の課税標準額
・固定資産税額
・都市計画税額

役員社宅の計算で確認するのは、原則として「固定資産税の課税標準額」です。

固定資産税額や都市計画税額を計算式に入れないように注意しましょう。

また、土地と建物について、それぞれの課税標準額を確認する必要があります。

小規模住宅の計算例

次の条件で、小規模住宅の賃貸料相当額を計算してみます。

・建物の固定資産税の課税標準額:800万円
・土地の固定資産税の課税標準額:1,000万円
・役員に貸している住宅部分の床面積:90平方メートル
・豪華社宅には該当しない

建物に関する金額 800万円×0.2%=1万6,000円

床面積に関する金額 12円×90平方メートル÷3.3平方メートル=約327円

土地に関する金額 1,000万円×0.22%=2万2,000円

合計額 1万6,000円+約327円+2万2,000円=約3万8,327円

この場合、1か月当たりの賃貸料相当額は、単純計算で約3万8,327円です。

役員から毎月3万円しか徴収していなければ、差額の約8,327円が給与として課税される可能性があります。

なお、建物全体の固定資産税の課税標準額や床面積に、役員へ貸していない部分が含まれている場合には、住宅の状況に応じて合理的に按分する必要があります。

小規模住宅なら、借上社宅でも同じ算式を使います

小規模住宅に該当する場合は、会社が所有している社宅だけでなく、会社が第三者から借りて役員に貸している借上社宅についても、原則として小規模住宅の算式を使用します。

つまり、会社が家主へ毎月30万円を支払っているからといって、必ず15万円を役員から徴収しなければならないわけではありません。

小規模住宅に該当するのであれば、固定資産税の課税標準額と床面積を使って賃貸料相当額を計算します。

ただし、借上社宅の場合でも、原則として建物と土地の固定資産税の課税標準額が必要です。

会社は物件の所有者ではないため、固定資産税の課税明細書を通常は持っていません。

そのため、家主や管理会社などへ、計算に必要な情報を確認する必要があります。

借上社宅を契約するときは、固定資産税の課税標準額に関する資料を提供してもらえるか、早めに確認しておくと安心です。

役員と従業員では必要な徴収額が異なります

小規模な役員社宅の計算式は、従業員に社宅を貸す場合の計算式と基本的に同じです。

ただし、給与として課税されないために必要な徴収額の考え方は、役員と従業員で異なります。

従業員の場合は、一定の条件のもとで、賃貸料相当額の50%以上を徴収していれば、賃貸料相当額との差額を給与として課税しない取扱いがあります。

一方、役員の場合は、原則として計算した賃貸料相当額以上を徴収する必要があります。

したがって、次のような考え方は適切ではありません。

従業員は賃貸料相当額の半分を払えばよいので、役員も半分でよいだろう。

役員社宅については、従業員社宅とは分けて計算し、家賃の徴収額を決めることが大切です。

小規模住宅に該当しない自社所有社宅の計算方法

役員に貸している住宅が小規模住宅に該当せず、会社がその住宅を所有している場合、賃貸料相当額は次のように計算します。

建物部分

建物の固定資産税の課税標準額×12%

ただし、法定耐用年数が30年を超える建物については、12%ではなく10%を使用します。

土地部分

土地の固定資産税の課税標準額×6%

建物部分と土地部分を合計し、12か月で割った金額が、1か月当たりの賃貸料相当額になります。

計算式にすると、次のとおりです。

1か月当たりの賃貸料相当額 ={建物の固定資産税の課税標準額×12%または10%+土地の固定資産税の課税標準額×6%}÷12か月

12%を使うか10%を使うかは、建物の呼び方だけではなく、住宅用建物の法定耐用年数が30年以下か、30年を超えるかによって判断します。

小規模住宅に該当しない借上社宅の計算方法

会社が第三者から借りた住宅を役員に貸しており、その住宅が小規模住宅に該当しない場合は、次の2つの金額を比較します。

・会社が家主に支払っている家賃の50%
・自社所有の場合と同じ算式で計算した賃貸料相当額

このうち、いずれか多い金額が役員社宅の賃貸料相当額になります。

したがって、単純に「会社が支払っている家賃の半額を徴収すればよい」と考えるだけでは十分ではありません。

固定資産税の課税標準額を使った計算結果と比較する必要があります。

小規模住宅に該当しない借上社宅の計算例

次の条件で考えてみます。

・会社が家主に支払っている月額家賃:30万円
・固定資産税の課税標準額を使って計算した金額:月額10万円
・役員から実際に徴収している家賃:月額12万円

まず、会社が支払っている家賃の50%を計算します。

30万円×50%=15万円

次に、固定資産税の課税標準額を使った計算結果と比較します。

会社が支払う家賃の50%:15万円
固定資産税の課税標準額による金額:10万円

多い方は15万円です。

したがって、このケースの賃貸料相当額は月額15万円になります。

役員から実際に徴収している家賃が12万円であれば、差額の3万円が給与として課税される可能性があります。

管理費、電気代、駐車場代の取扱い

借上社宅の契約では、家賃のほかに管理費、共益費、駐車場代などが発生することがあります。

また、会社が役員の電気代、水道代、ガス代を負担しているケースもあります。

これらは、すべて同じ取扱いになるわけではありません。

家主へ支払う家賃に管理費が含まれている場合

小規模住宅に該当しない借上社宅について、会社が家主に支払う家賃の50%を計算する場合、家主へ支払う賃借料に次のような管理費等が含まれていれば、その総額を使って計算して差し支えないとされています。

・エレベーターの保守料
・火災報知機の保守料
・共用部分の電気料
・火災保険料

このような管理費等については、無理に役員個人の費用として分ける必要はないとされています。

役員個人が使用した電気代などを会社が負担する場合

一方、役員の住戸内で個人的に使用した電気代、水道代、ガス代などについて、個人ごとの金額が明確であり、本来役員が負担すべきものを会社が支払っている場合には、役員の個人的費用を会社が負担したものとして、別途給与課税を検討する必要があります。

役員の個人的費用を法人が負担した金額は、経済的利益の一つとされています。

なお、寄宿舎などで共用している水道光熱費について、各人の使用分が明らかでなく、通常必要と認められる範囲内である場合には、給与課税しなくても差し支えないとする取扱いがあります。

ただし、この取扱いが一般的な役員用マンションにそのまま当てはまるとは限りません。
利用状況や請求方法を確認したうえで判断する必要があります。

駐車場代を会社が負担する場合

駐車場が住宅の賃貸借契約に含まれており、家賃と区別されていない場合と、駐車場だけが別契約・別料金になっている場合とでは、取扱いを分けて考える必要があります。

特に、役員の私用車の駐車場代が住宅家賃とは別に請求され、その金額を会社が負担している場合には、役員の個人的費用として給与課税の対象にならないか確認が必要です。

一方、会社の業務に使用する車両の駐車場である場合などは、事業上の必要性を含めて別途判断します。

契約書や請求書を確認し、次の内訳を整理しておきましょう。

・住居部分の家賃
・管理費、共益費
・駐車場代
・水道光熱費
・インターネット代
・その他の設備利用料

豪華社宅には通常の計算式を使えません

役員社宅が、社会通念上一般に貸与されている住宅とは認められない、いわゆる「豪華社宅」に該当する場合、これまで説明した固定資産税の課税標準額を使った計算式は適用されません。

豪華社宅に該当する場合には、その住宅について通常支払うべき使用料に相当する金額が、賃貸料相当額になります。

豪華社宅かどうかは、床面積だけで自動的に決まるものではありません。

床面積が240平方メートルを超える住宅については、次のような事情を総合的に見て判断します。

・住宅の取得価額
・会社が支払っている賃料
・建物の内装や外装
・設備の内容
・一般的な社宅として貸される住宅といえるか

床面積が240平方メートルを超えているという理由だけで、必ず豪華社宅になるわけではありません。

一方、床面積が240平方メートル以下であっても、一般的な住宅には設置されていないプールなどの設備がある場合や、役員個人の好みを著しく反映した特別な設備がある場合には、豪華社宅と判断されることがあります。

高額な物件、広い戸建て住宅、特別な設備のある住宅を役員社宅とする場合は、通常の計算式を使ってよいか、契約前または入居前に確認しておくことをおすすめします。

住宅手当を現金で支給する場合は社宅扱いになりません

役員本人が個人名義で賃貸借契約を結び、会社がその家賃を負担するケースがあります。

また、会社が「住宅手当」という名目で、役員へ現金を支給することもあります。

これらは、原則として会社が住宅を役員に貸している「社宅の貸与」とは認められません。

現金で支給した住宅手当や、役員本人が直接契約している住宅の家賃を会社が負担した金額は、給与として課税されます。

借上社宅として取り扱うためには、基本的に会社が賃貸借契約の当事者となり、会社が借りた住宅を役員へ貸す形にしておく必要があります。

単に役員個人の家賃を会社口座から支払っているだけでは、役員社宅としての取扱いを受けることはできません。

固定資産税評価は原則3年ごとに見直されます

土地や家屋の固定資産税評価は、原則として3年ごとに評価替えが行われます。

これは、税負担の安定や行政事務の簡素化などの観点から、原則として3年ごとに固定資産の価格を見直す仕組みです。

ただし、「3年ごとの評価替えがある年だけ確認すればよい」という意味ではありません。

役員社宅の賃貸料相当額は、「その年度の固定資産税の課税標準額」を使って計算します。

評価替えの年でなくても、土地の利用状況、分筆・合筆(1つの土地を複数に分けたり、複数の土地を1つにまとめたりすること)、増築、取り壊し、用途変更などによって、課税内容が変わる可能性があります。

そのため、固定資産税の課税明細書は毎年度確認しておくと安心です。

課税標準額が改訂された場合は再計算します

住宅の固定資産税の課税標準額が改訂された場合には、原則として役員社宅の賃貸料相当額も再計算します。

新しい課税標準額を使う時期は、改訂後の課税標準額に係る固定資産税の第1期の納期限が属する月の翌月分からです。

たとえば、第1期の納期限が4月にある場合には、原則として5月分から新しい課税標準額を使って計算します。

市区町村によって固定資産税の納期限は異なることがあるため、実際の納税通知書で確認してください。

なお、固定資産税の課税標準額の改訂幅が20%以内であれば再計算を省略できる取扱いがありますが、これは使用人に貸与した社宅についての特例です。

役員社宅にそのまま適用することはできません。

毎年確認しておきたい事項

一度計算した役員社宅の家賃を、何年もそのままにしている会社は注意が必要です。

少なくとも毎年、次の点を確認しましょう。

・固定資産税の課税標準額が変わっていないか
・会社が家主へ支払う家賃や管理費が変わっていないか
・増築や改装によって床面積が変わっていないか
・役員から実際に徴収している家賃が計算額以上か
・社宅の契約名義が会社になっているか
・入居している役員や利用状況が変わっていないか
・駐車場代や水道光熱費を会社が追加で負担していないか
・社宅が豪華社宅に該当するような利用状況になっていないか

家賃や課税標準額が変わっていなくても、毎年確認した記録を残しておくと、後から説明しやすくなります。

新築で課税標準額が決まっていない場合

新築したばかりの建物などでは、固定資産税の課税標準額がまだ決まっていないことがあります。

この場合も、役員社宅の賃貸料相当額を計算しなくてよいわけではありません。

所得税基本通達では、状況が似ている住宅の固定資産税の課税標準額に比準する価額を使って計算することとされています。

新築物件や完成直後の物件を役員社宅とする場合は、次のような資料を使い、合理的な計算根拠を残しておく必要があります。

・近隣の類似物件の情報
・同じ建物内の他の住戸の情報
・建物の構造や床面積
・土地の面積や利用状況
・市区町村へ確認した内容

判断が難しい場合は、市区町村の固定資産税担当窓口へ相談しましょう。

月の途中から入居した場合

役員が月の途中から社宅に入居した場合には、原則として、入居した日の属する月の翌月分から役員社宅としての賃貸料相当額を計算します。

たとえば、4月15日に入居した場合には、原則として5月分から賃貸料相当額を計算します。

ただし、会社が家主へ支払う家賃の発生日、給与計算の締め日、役員から実際に家賃を徴収する時期などは、契約内容や社内制度によって異なります。

次の資料を残しておくと安心です。

・入居日が分かる書類
・賃貸借契約書
・鍵の引渡し日が分かる資料
・社宅家賃の徴収開始月
・給与明細や入金記録

計算根拠を説明するために保管したい資料

役員社宅では、計算結果だけでなく、「なぜその金額を役員から徴収しているのか」を後から説明できるようにすることが大切です。

次に挙げる資料は、すべてが法律上の必須書類というわけではありません。

ただし、役員社宅の契約内容、計算方法、実際の家賃徴収を説明するために、できるだけそろえておくと安心です。

賃貸借契約書

借上社宅の場合は、会社が契約者になっていることを確認します。
契約期間、月額家賃、管理費、共益費、更新料、駐車場代などの内訳も確認しましょう。

固定資産税の課税標準額が分かる資料

自社所有の社宅であれば、固定資産税の納税通知書や課税明細書などを保管します。
借上社宅の場合は、家主や管理会社などから提供を受けた資料や、確認した内容を記録しておきます。

床面積が分かる資料

次のような資料が考えられます。

・登記事項証明書
・建物図面
・売買契約書
・賃貸借契約書
・物件のパンフレット

マンションの場合は、共用部分を含めた床面積の計算根拠も残しておきましょう。

社宅家賃の計算書

次の内容を記載します。

・使用した固定資産税の課税標準額
・建物の法定耐用年数
・床面積
・小規模住宅の判定
・使用した計算式
・会社が支払う家賃
・役員から徴収する家賃
・計算日
・適用開始月

計算結果だけでなく、途中の計算過程も残しておくことが大切です。

社宅規程や社内決定資料

社宅規程や取締役会議事録がなければ、直ちに税務上認められないというものではありません。

ただし、次の事項を社内で明確にしておくと、会社と役員個人の負担関係を説明しやすくなります。

・社宅を利用できる人
・役員が負担する家賃
・会社が負担する費用
・水道光熱費や駐車場代の負担
・入居や退去の条件
・家賃を見直す時期

会社の機関設計や社内手続に応じて、社宅規程、取締役会議事録、取締役の決定書、稟議書などを残しておくとよいでしょう。

給与明細や入金記録

役員から毎月いくら家賃を徴収したかが分かる資料を残します。
給与から控除している場合は給与明細を、役員が会社へ振り込んでいる場合は会社の通帳や入金記録を保管します。

計算上は正しい家賃を設定していても、実際に徴収していなければ、税務上問題になる可能性があります。

税務調査で確認されやすいポイント

役員社宅は、会社の費用と役員個人の生活費が関係するため、税務調査でも説明を求められることがあります。

特に、次の点を整理しておきましょう。

・賃貸借契約の名義は会社になっているか
・役員から実際に家賃を徴収しているか
・家賃の計算根拠が残っているか
・小規模住宅の床面積判定は正しいか
・マンションの共用部分を含めているか
・固定資産税額ではなく課税標準額を使っているか
・貸与していない部分を合理的に按分しているか
・課税標準額の変更後に再計算しているか
・豪華社宅に該当する可能性はないか
・役員個人の電気代や駐車場代などを会社が負担していないか
・家賃の不足額がある場合に給与処理を検討しているか

税務調査を必要以上に心配する必要はありません。

契約書、計算書、給与明細などを整理し、会社として合理的に処理していることを説明できるようにしておくことが大切です。

家賃不足額は法人税にも影響することがあります

役員から徴収する家賃が賃貸料相当額より少ない場合、その差額は役員に対する経済的利益、つまり現物による役員給与として扱われます。

法人税では、役員に対して継続的に与えられる経済的利益のうち、その利益の額が毎月おおむね一定であるものは、「定期同額給与」(毎月ほぼ同じ金額が支払われる役員給与のことで、原則として損金=会社の経費として認められます)として損金に算入される場合があります。

一方、金額が毎月著しく変動するもの、不相当に高額なもの、事実を隠したり仮装したりして処理したものについては、損金に算入されない可能性があります。

そのため、役員社宅の家賃不足が見つかった場合は、役員個人の所得税だけを修正すれば終わりとは限りません。

次の事項をあわせて確認する必要があります。

・源泉所得税(会社が役員への支払い分からあらかじめ差し引いて国に納める税金)
・役員給与の処理
・法人税の損金算入
・住民税
・社会保険

過去の家賃徴収額に不足が見つかった場合は、会社だけで判断せず、税務署へ相談することをおすすめします。

所得税と社会保険では計算方法が異なります

役員社宅については、所得税の賃貸料相当額だけでなく、健康保険や厚生年金保険の取扱いも確認する必要があります。

社会保険では、会社から住宅などを現物で提供された場合、厚生労働大臣が定める現物給与(給与の一部を、現金ではなく住宅や食事などの形で支給すること)の価額に基づいて金額を換算し、保険料を計算する基礎となる標準報酬月額(社会保険料や将来の年金額を計算するときの基準になる、月あたりの給与額)に加えることがあります。

所得税の役員社宅の計算方法と、社会保険の現物給与の計算方法は同じではありません。

所得税上、適正な社宅家賃を徴収しているからといって、社会保険の確認が不要になるわけではありません。

また、日本年金機構は、住宅に関する現物給与の価額と算出方法について、2026年10月1日から改正されると案内しています。

そのため、次の時期を分けて確認する必要があります。

・2026年9月までの取扱い
・2026年10月1日以後の取扱い

社会保険の計算については、最新の全国現物給与価額一覧表を確認し、必要に応じて年金事務所や社会保険労務士へ相談しましょう。

役員社宅でよくある勘違い

「会社が支払う家賃の半分を取れば必ず大丈夫」

小規模住宅に該当しない借上社宅では、会社が支払う家賃の50%が計算に関係します。
しかし、小規模住宅では、固定資産税の課税標準額などを使った別の算式で計算します。
すべての役員社宅について、一律に家賃の半分を徴収すればよいわけではありません。

「従業員と同じように計算額の半分を取ればよい」

役員と従業員では、給与課税を避けるために必要な徴収額のルールが異なります。
役員については、原則として賃貸料相当額以上の徴収が必要です。

「専有面積が99平方メートル以下なら小規模住宅」

マンションの場合は、共用部分を合理的に割り振った面積を専有面積に加えて判定します。
専有面積だけで判断すると、区分を誤る可能性があります。

「固定資産税として支払った税額を使う」

計算に使うのは、実際の固定資産税額ではなく、固定資産税の課税標準額です。

「3年に1回だけ確認すればよい」

固定資産税評価は原則として3年ごとに見直されますが、役員社宅の計算では、その年度の課税標準額を使います。
固定資産税の課税明細書は毎年度確認しておくと安心です。

「一度計算すれば、その後は変更しなくてよい」

課税標準額、会社が支払う家賃、管理費、床面積、利用状況などが変わった場合には、再計算が必要になることがあります。

「役員個人の契約でも、会社が払えば社宅になる」

役員本人が直接契約している住宅の家賃を会社が負担した場合は、原則として社宅の貸与ではなく、給与として扱われます。

「電気代や駐車場代もすべて社宅家賃に含められる」

家主へ支払う賃借料に含まれている共用部分の管理費等と、役員個人が使用した水道光熱費や私用車の駐車場代は分けて考える必要があります。

まとめ

役員社宅の家賃を決めるときは、まず、その住宅が小規模住宅に該当するかどうかを確認します。

そのうえで、次の順番で整理すると分かりやすくなります。

・建物の法定耐用年数と床面積を確認する
・マンションの場合は共用部分を含める
・小規模住宅に該当するか判定する
・自社所有か借上社宅か確認する
・固定資産税の課税標準額を確認する
・税務上の賃貸料相当額を計算する
・役員から実際に徴収する家賃と比較する
・不足額があれば給与課税と法人税処理を確認する
・契約書、計算書、給与明細などを保管する
・固定資産税の課税明細書を毎年度確認する
・家賃や利用状況が変わったら再計算する
・電気代、駐車場代、社会保険も別に確認する

役員社宅は、正しく設計し、計算根拠を残して運用すれば、会社と役員個人の費用負担を明確にできる制度です。

一方、家賃を会社の感覚だけで決めてしまうと、後から給与課税の問題が生じることがあります。

すでに役員社宅を利用している会社は、まず次の点を確認してみてください。

・現在の徴収額は賃貸料相当額以上になっているか
・小規模住宅の判定は正しいか
・マンションの共用部分を含めているか
・計算に使った資料と計算書が残っているか
・固定資産税の課税標準額や家賃が変わっていないか
・役員個人の水道光熱費や駐車場代を会社が負担していないか

資料が十分にそろっていない場合でも、今から整理していけば問題ありません。

契約内容、物件の床面積、固定資産税の課税標準額、会社が支払っている金額、役員から徴収している金額を一つずつ確認していきましょう。

実際の賃貸料相当額は、住宅の構造、床面積、所有関係、契約内容、設備の状況などによって変わります。

特に、高額な物件、広い住宅、共用部分のあるマンション、特別な設備がある住宅については、個別の判断が必要です。

判断に迷う場合は、最新の国税庁および日本年金機構の情報を確認したうえで、税務署、年金事務所へご相談ください。