非営利型法人の「特別の利益」とは?一般社団法人・一般財団法人が気をつけたいポイント

非営利型法人の「特別の利益」とは?一般社団法人が注意したい6つのケース

一般社団法人や一般財団法人を運営していると、「非営利型法人に該当するかどうか」という話を耳にすることがあると思います。
これは、法人税(会社などの利益にかかる税金)の取扱いを考えるうえで、とても大切なポイントです。

その中でも、特に気をつけたい要件の一つが、「特定の個人または団体に、特別の利益を与えていないこと」というルールです。

「特別の利益」という言葉だけを見ると、少し難しく感じるかもしれません。
ですが、内容はそれほど複雑ではありません。

簡単にいえば、法人のお金や財産を使って、特定の人や団体だけを不自然なほど有利にすることをイメージしていただくと分かりやすいでしょう。

たとえば、次のようなケースです。

・理事に、法人が持っている建物を極端に安い家賃で貸す
・理事に、無利息でお金を貸す
・理事から、相場よりかなり高い家賃で建物を借りる
・特定の人から、資産を相場よりかなり高い金額で買う
・特定の理事に、仕事の内容に比べて明らかに高すぎる報酬を支払う

ただし、ここで一つ安心していただきたいことがあります。
「相場より少し安い」「一般的な取引条件と少し違う」というだけで、すぐに「特別の利益」に当たるわけではありません。

国税庁の法人税基本通達では、「社会通念上不相当なもの」(世間一般の感覚から見て、明らかに行き過ぎていると感じられるもの)が「特別の利益」に当たるとされています。
つまり、その取引が一般的な感覚から見ても不自然なほど特定の人を優遇しているかどうかを、取引の内容や金額、法人の事業内容などから一つひとつ丁寧に見ていく、ということです。

この記事では、一般社団法人・一般財団法人を運営する方に向けて、「特別の利益」の考え方をできるだけ分かりやすくご説明します。
ご自身の法人に当てはまりそうな部分があれば、早めに確認しておくと安心です。

そもそも「非営利型法人」とは?

まず、「非営利型法人」という言葉の意味から確認しておきましょう。

一般社団法人や一般財団法人を設立したからといって、すべての法人が税務上まったく同じ取扱いになるわけではありません。

公益認定(公益社団法人・公益財団法人として国から認められること)を受けていない一般社団法人・一般財団法人は、大きく分けると次の2つに分かれます。

・法人税法上の一定の要件を満たす「非営利型法人」
・それ以外の法人

非営利型法人は、法人税法上「公益法人等」というグループに位置づけられ、原則として、収益事業(継続して行う事業のうち、法人税がかかる対象とされているもの)から生まれた利益についてだけ、法人税がかかります。

一方、非営利型法人に該当しない一般社団法人・一般財団法人は「普通法人」として扱われ、原則としてすべての所得(利益)が法人税の対象になります。

なお、公益認定を受けた公益社団法人・公益財団法人も、法人税法上は同じ「公益法人等」というグループに入りますが、今回お話しする「非営利型法人」とは別の区分です。
少しややこしいのですが、この記事でいう「非営利型法人」とは、公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人のうち、法人税法上の非営利型法人の要件を満たしている法人を指すとご理解ください。

非営利型法人には2つのタイプがあります

非営利型法人には、大きく分けて2つの類型があります。

一つは、利益を得ることや、その利益を構成員に分配することを目的としない法人です。
一般に「非営利性が徹底された法人」と呼ばれます。

もう一つは、会員から受け取る会費などを使い、その会員に共通する利益を図る活動を行う法人です。
一般に「共益的活動を目的とする法人」と呼ばれます。

この2つは、それぞれ満たすべき要件が異なります。
ですが、両方に共通して重要になるのが、「特定の個人や団体に特別の利益を与えないこと」という点です。
ここが今回の記事の中心テーマになります。

「特別の利益」とは何でしょうか?

法人税基本通達1-1-8では、「特別の利益を与えること」について、「経済的な利益を与えたり、お金や資産を渡したりする行為のうち、社会通念上不相当なもの」という考え方が示されています。

少し難しい表現ですが、かみ砕いていうと、「通常の取引として説明できないほど、特定の人や団体を優遇していないか」ということです。

ここで大切なのは、取引の名前ではなく、実際の中身を見るという点です。

たとえば、「家賃」という名目で支払っていたとしても、相場が月20万円程度の建物について、合理的な理由もなく月50万円を特定の理事に支払っているとしたらどうでしょうか。
この場合、「本当に家賃なのか。
それとも、家賃という形をとって、理事個人に利益を移しているのではないか」という問題が生じます。

逆に、相場より少し安い家賃で貸しているからといって、必ず「特別の利益」になるわけでもありません。
その程度や理由も含めて、総合的に判断する必要があるのです。

国税庁が示している6つの具体例

法人税基本通達1-1-8では、「特別の利益」に該当し得る代表的なケースとして、次の6つが挙げられています。順番に見ていきましょう。

土地や建物などを、無料または通常より安く貸す

法人が所有している土地や建物などを、特定の個人や団体に無料で貸したり、通常より低い賃料で貸したりするケースです。
たとえば、法人所有の建物を代表理事の家族にほとんど無料で使わせているような場合には、注意が必要です。

お金を無利息または通常より低い利率で貸す

法人のお金を特定の個人や団体に無利息で貸したり、通常より著しく低い金利で貸したりするケースです。
たとえば、法人から理事個人へ多額のお金を長期間、無利息で貸し付けているような場合が当てはまります。

法人の資産を無料または通常より安く譲る

法人が所有している不動産、車、設備、備品などを、特定の個人や団体に無料で渡したり、通常より低い価格で売却したりするケースです。

通常より高い家賃や利息を支払う

今度は反対に、法人がお金を支払う側になるケースです。
特定の個人や団体から土地や建物を借りて、通常よりかなり高い家賃を支払ったり、通常より高い金利でお金を借りたりする場合が当てはまります。

資産を通常より高い金額で買い取る

特定の個人や団体が持っている資産を、法人が通常より高い金額で購入するケースです。
また、そもそも法人の事業に使うとは考えにくい資産を取得する場合も、通達の例示に含まれています。

特定の個人に過大な給与などを支払う

理事などに対して、その人の仕事の内容、責任、勤務状況などから見て、明らかに高すぎる給与や報酬を支払うケースです。

以上の6つは、あくまで代表的な例です。
ですから、「この6つに当てはまらなければ絶対に問題ない」という意味ではありません。
国税庁の解説でも、たとえば役員の選任や事業運営について特定の人を優遇するようなケースも、必ずしも「特別の利益」に該当しないとはいえず、具体的な状況に応じて判断すると説明されています。

「少し相場より安い」だけで直ちに問題になるわけではありません

「相場より安い家賃で貸したら、すぐに非営利型法人ではなくなるのでしょうか?」

このような不安を持たれる方も少なくありません。
ですが、必ずしもそうではありませんので、まずは安心してください。

判断のポイントは、単純に「通常価格と違うかどうか」ではなく、その違いが「社会通念上不相当」といえるかどうかです。

実務上は、法人が特定の個人に建物を通常より低い家賃で貸していたとしても、その程度が、給与として課税されたり、寄附金(見返りなく渡した金銭や資産として扱われるもの)として取り扱われたりしない程度であれば、社会通念上不相当とはいえず、「特別の利益」には当たらないと解釈されています。

したがって、「相場より1円でも安ければ問題になる」という考え方ではありません。

一方で、「相場の〇%以内なら必ず大丈夫」「年間〇万円までなら大丈夫」という一律の安全基準が示されているわけでもない、という点にも注意が必要です。

最終的には、取引の内容、金額、法人の事業、その取引を行う理由などを見て、一つずつ個別に判断することになります。

実際に利益を与えていなくても、「与えることを決定した」段階で注意が必要です

ここは、非常に重要なポイントですので、少し丁寧にお伝えします。

非営利型法人の要件では、単に「特定の個人または団体に特別の利益を実際に与えていないこと」だけが求められているわけではありません。

国税庁の解説では、両方の類型に共通する要件として、「特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと」が示されています。

つまり、実際にお金を支払ったり、資産を引き渡したりする前の段階であっても、法人として特別の利益を与える行為を「決定した」時点で、非営利型法人の要件に影響する可能性があるということです。

そのため、「まだ支払っていないから大丈夫」 「契約しただけで、実際にはお金を動かしていないから問題ない」と単純に考えないことが大切です。
理事や関係者との取引については、契約や決議をする前の段階から、条件が適正かどうかを確認しておくことをおすすめします。

特に理事や関係者との取引は慎重に

「特別の利益」の対象となる相手は、理事やその親族だけに限りません。
条文上は「特定の個人又は団体」とされていますので、法人、任意団体その他の団体なども対象になり得ます。

ただ、実務上は、代表理事、理事、その親族、これらの人が経営している会社などとの取引について、特に慎重に確認しておくとよいでしょう。

たとえば、次のような取引です。

・代表理事個人の建物を法人が借りる
・理事から法人がお金を借りる
・法人から理事へお金を貸す
・理事個人の車などを法人が買い取る
・理事に役員報酬を支払う

このような取引自体が禁止されているわけではありません。
大切なのは、金額や条件に合理的な理由があり、第三者にも説明できる内容になっていることです。
「取引そのものがダメ」なのではなく、「条件が不自然に有利になっていないか」がポイントだと考えていただくとよいと思います。

給与や役員報酬は「高額だからダメ」とは限りません

通達では、「特定の個人に対して過大な給与等を支給していること」も、特別の利益の例として挙げられています。

ただし、給与や役員報酬の金額が高いというだけで、直ちに特別の利益になるわけではありません。
仕事の内容、責任の重さ、勤務実態、法人の規模などを踏まえて判断する必要があります。

たとえば、法人の事業運営をほぼ一人で担当している常勤の理事と、年に数回会議へ参加するだけの理事とでは、合理的な報酬額が同じとは限りません。

そのため、役員報酬を決める場合には、「なぜこの金額なのか」を説明できるようにしておくことが大切です。
報酬の決定手続を適切に行い、必要に応じて社員総会や理事会などの議事録、職務内容が分かる資料なども保存しておくとよいでしょう。

「収益事業ではないから関係ない」は注意が必要です

非営利型法人については、「収益事業から生じた所得に法人税がかかる」という説明を聞くことが多いため、「収益事業ではない活動なら、特別の利益についても関係ないのでは?」と思われることがあります。

しかし、ここは注意が必要なポイントです。
法人税基本通達1-1-8では、「特別の利益を与えること」には、収益事業だけでなく、収益事業以外の事業で行われた利益供与も含まれると明記されています。

たとえば、収益事業以外の活動のために理事から建物を借りていて、その理事に通常より著しく高い家賃を支払っている場合でも、「特別の利益」の問題が生じる可能性があります。

実務上は、収益事業以外の事業において、特定の理事から土地・建物を通常より高い賃料で借り、その理事について給与課税が行われるような場合には、「特別の利益」を与えたことになると解釈されています。

「一度非営利型法人から外れたら戻れない」は、すべての場合ではありません

ここも誤解されやすい部分ですので、特に注意してお伝えします。

非営利型法人の要件を一度満たさなくなったからといって、どのような理由であっても二度と非営利型法人に戻れない、というわけではありません。

たとえば、理事とその親族等の割合に関する要件を一時的に満たさなくなり、非営利型法人に該当しなくなった場合でも、その後その要件を再び満たし、ほかの要件もすべて満たしていれば、再び非営利型法人に該当する場合があります。
国税庁の解説でも、この取扱いが示されています。

しかし、今回取り上げている「特別の利益」に関する要件を欠いた場合は、話が別になります。

法人税基本通達1-1-9では、法人税法施行令第3条第1項第3号または第2項第6号の「特別の利益」に関する要件を欠いたことによって普通法人となった一般社団法人・一般財団法人は、その後、再びその類型の非営利型法人には該当しないことが示されています。

つまり、「今年問題があっても、来年直せばまた非営利型法人に戻れるだろう」と簡単に考えることはできない、ということです。
特別の利益については、後から修正すれば済むとは限らないため、取引を行う前の事前確認が非常に重要になります。

要件を外れた日は、法人税の計算にも影響します

特別の利益に関する要件を欠いて普通法人になった場合には、「いつ要件を満たさなくなったのか」という点も重要になります。

国税庁の解説では、一定の場合、非営利型法人として扱われる期間と普通法人として扱われる期間とで事業年度が区切られ、要件を満たさなくなった日以後については、普通法人として全所得(すべての利益)に課税が適用されることが説明されています。

そのため、実際に問題が生じてしまった場合には、
・どの行為が問題になったのか
・いつ決定したのか
・いつ実際に行ったのか
・どの時点から普通法人になるのか
といった点まで、丁寧に確認する必要があります。
法人税の申告にも影響しますので、該当する可能性があると感じた場合には、早めに所轄の税務署へご相談ください。

実務では「相場・理由・記録」の3つを意識しましょう

特別の利益について税務上の問題を防ぐためには、日頃から次の3つを意識しておくと安心です。

相場を確認する

家賃、売買価格、金利などについて、第三者との通常の取引ではどの程度になるのかを確認しておきます。

その条件にした理由を説明できるようにする

相場と違う条件で取引するのであれば、「なぜその金額なのか」を説明できるようにしておきます。

資料を残しておく

契約書だけでなく、金額を決めた根拠となる資料も保存しておきます。

たとえば、不動産の賃料であれば、近隣の賃貸事例や不動産会社の査定資料などが参考になります。
資産の売買であれば、複数の見積書、中古市場の価格、査定資料などが考えられます。
役員報酬であれば、職務内容、勤務状況、報酬を決定した社員総会・理事会等の議事録などを整理しておくとよいでしょう。

「もし税務署に聞かれたら、何と答えるか」を取引を行う時点で考えておくと、必要な資料も自然と残しやすくなります。
難しく考えすぎず、「あとで振り返って説明できる状態にしておく」ことを意識していただければ十分です。

まとめ

非営利型法人の「特別の利益」とは、簡単にいえば、法人のお金や財産を使って、特定の個人や団体を社会通念上不相当なほど有利にすることです。

代表的な例としては、次のようなケースがあります。

・法人の資産を無料または極端に安く貸す
・無利息や著しく低い利率でお金を貸す
・資産を無料または極端に安く譲る
・相場より著しく高い家賃や利息を支払う
・資産を相場より著しく高く買い取る
・特定の個人に過大な給与等を支給する

ただし、単に相場と少し違うだけで、直ちに問題になるわけではありません。
法人の事業内容や取引の事情を踏まえて、「社会通念上不相当」といえるかどうかを個別に判断していくことになります。

また、非常に重要な点として、実際に特別の利益を与えた場合だけでなく、特別の利益を与えることを「決定した」段階でも要件に影響する可能性があることを、ぜひ覚えておいてください。

さらに、「一度非営利型法人から外れたら、どのような場合でも二度と戻れない」というわけではありませんが、特別の利益に関する要件を欠いて普通法人になった場合には、その後、再び非営利型法人には該当しないという取扱いがあります。

そのため、代表理事、理事、その親族、関係会社などとの間で、不動産の賃貸、金銭の貸し借り、資産売買、給与・役員報酬などの取引を行う場合には、契約・決議・支払いを行う前の段階で、条件が適正かどうかを確認しておくことが大切です。

問題になってから対応するよりも、取引を行う前に「この条件は第三者にも説明できるか」を確認しておくほうが、ずっと安心です。

※この記事は2026年8月12日時点で確認した法人税法、法人税法施行令、国税庁の法人税基本通達・公表資料に基づき、一般の方向けに整理したものです。
「特別の利益」に該当するかどうかは、取引金額、契約条件、取引の目的、相手との関係などによって個別に判断されます。
実際の適用には個別の事情に応じた判断が必要ですので、実際の取引について判断が必要な場合は、契約や決議を行う前に、所轄税務署へご確認ください。