NISAだけで十分?iDeCoと併用する意味を初心者向けに整理

NISAとiDeCoはどう使い分ける?初心者が知っておきたい2つの制度の違い

「資産形成をするなら、とりあえずNISAを使えばいいのでは?」
そう考えている人は多いかもしれません。

現在のNISAは、以前の制度と比べてかなり使いやすくなっています。
非課税で保有できる期間に期限がなく、取得額ベースの非課税保有限度額は1,800万円です。
さらに、商品を売却すると、その商品の取得額分の枠を翌年以降に再利用できます。

これだけ大きな非課税枠があると、
「老後のお金もNISAで準備すればいいのでは?」
「わざわざiDeCoまで使う必要はあるの?」
という疑問が出てくるのも自然です。

ただ、NISAとiDeCoは、よく似た制度の中から一つを選ぶという関係ではありません。
それぞれに得意なことが違います。

特にiDeCoには、NISAにはない「掛金を出したときの所得控除」という特徴があります。
そのため、家計に余裕があり、老後まで使わないお金を準備したい人にとっては、NISAとiDeCoを組み合わせることも選択肢になります。

今回は、「NISAだけで十分なのか」という疑問から、2つの制度の違いを整理してみます。

NISAの1,800万円は「一生で投資できる金額」ではない

最初に、NISAの1,800万円について確認しておきましょう。

「NISAは生涯1,800万円まで」と聞くと、「人生を通して1,800万円投資したら、それで終わり」と思ってしまうかもしれません。
しかし、正確には少し違います。

1,800万円は、取得額をもとに管理される非課税保有限度額です。

たとえばNISAで100万円分の商品を購入し、その後売却した場合、その100万円分の枠は翌年以降に再利用できます。
値上がりして150万円で売れたとしても、復活するのは取得額である100万円分です。

つまり、売却と再投資を行えば、生涯を通じた実際の買付総額が1,800万円を超えることもあります。
ただし、売却したからといって、その年の年間投資枠が増えるわけではない点には注意が必要です。

「NISAでは一生1,800万円しか投資できない」と理解するのではなく、取得額ベースで1,800万円まで非課税で保有でき、その枠は売却後に再利用できると考えるとわかりやすいでしょう。
この自由度の高さは、NISAの大きな特徴です。

NISAとiDeCoでは、お金を入れた後の自由度が違う

NISAとiDeCoには、もう一つ大きな違いがあります。
それは、お金を使える時期です。

NISAで保有している商品は、必要になれば売却できます。
そのため、老後資金だけでなく、将来のさまざまな目的に備える資産形成にも使いやすい制度です。

一方、iDeCoは老後のための年金制度です。
基本的には60歳になるまで資産を引き出せません。
掛金を途中で止めることはできますが、積み立てた資産を自由に取り出すことはできません。

この違いを考えると、「どちらが得なのか」ではなく、「このお金はいつ使う可能性があるのか」と考えた方が整理しやすくなります。

近いうちに住宅購入などで使う可能性があるお金を、税金がお得だからという理由だけでiDeCoに入れてしまうと、必要なときに使えなくなる可能性があります。
まず生活に必要なお金を確保することが大切です。
そのうえで、老後まで使わないと考えられるお金についてiDeCoを検討する、という順番でも遅くありません。

iDeCoには、NISAにはない「所得控除」がある

では、資金が自由に使えるNISAがあるのに、なぜiDeCoを検討する意味があるのでしょうか。
大きな理由の一つが、掛金の所得控除です。

iDeCoで支払った掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。
簡単にいうと、税金を計算するときの所得から、iDeCoに出した掛金を差し引ける仕組みです。
その結果、所得税や住民税の負担が軽くなる場合があります。

たとえば、毎月2万円をiDeCoに積み立てるとしましょう。

年間の掛金は、2万円 × 12か月 = 24万円です。

ここでは説明をわかりやすくするため、所得税と住民税を合わせた税負担の軽減効果を20%と仮定します。

24万円 × 20% = 4万8,000円
となります。

つまり、この例では年間約4万8,000円の税負担が軽くなる計算です。月平均にすると約4,000円に相当します。

ただし、「毎月4,000円が口座に振り込まれる」という意味ではありません。
所得税は年末調整や確定申告などを通じて調整され、住民税にも反映されるため、「年間の税負担が合計で約4万8,000円軽くなる」と考える方が正確です。

iDeCo公式サイトでも、所得税10%、住民税10%という条件を使った同様の税負担軽減例が示されています。

もちろん、実際の効果はその人の所得や税率によって変わります。
課税される所得がなければ、掛金の所得控除による税負担軽減を生かせない場合もあります。
だからこそ、iDeCoは「誰でも同じだけ得をする制度」ではないのです。

税負担が軽くなった分を使わずに積み立てるとどうなる?

iDeCoの所得控除を考えるとき、もう一つ面白い見方があります。
税負担が軽くなった分を、そのまま使ってしまうのではなく、将来のために積み立てたらどうなるでしょうか。

仮に、30歳から65歳まで35年間積み立てられる人を想定します。
毎月2万円を積み立て、年4%で一定に運用できたと仮定すると、35年後の金額は計算上、約1,827万円になります。

一方、先ほどの例で年間4万8,000円の税負担が軽くなり、その金額もNISAなどで積み立てたとしましょう。
年間4万8,000円は、月平均にすると4,000円です。

つまり、
iDeCoへの積立 2万円
税負担軽減分の積立 4,000円
として、家計全体では毎月2万4,000円を将来のために回すイメージです。
同じように35年間、年4%で一定に運用できたと仮定すると、計算上は約2,193万円になります。
毎月2万円の場合との差は、約365万円です。

ただし、この数字はあくまで仕組みを理解するためのシミュレーションです。
35年間にわたって制度上拠出できること、毎月一定額を積み立てること、年4%で運用できることなどを仮定した単純計算です。
実際の投資では、毎年同じ利回りになるわけではありません。
投資信託などを利用すれば価格が下がることもありますし、iDeCoには各種手数料もあります。

また、iDeCoに加入・拠出できる条件は年齢や働き方などによって異なります。2026年12月には加入可能年齢などの制度改正も予定されています。

そのため、「35年続ければこの金額になる」と考えるのではなく、税負担が軽くなった分も将来のために残せば、長い時間では差が広がる可能性があるという考え方を知っておくとよいでしょう。

iDeCoが向いている人、NISAを優先したい人

ここまで見ると、所得控除のあるiDeCoをできるだけ使った方がよいようにも感じます。
しかし、そうとも限りません。

iDeCoを検討しやすいのは、
「現在ある程度の課税所得がある」
「老後まで使わないお金を準備できる」
「老後資金を計画的に積み立てたい」
という人です。

一方、
「生活費の予備資金がまだ十分ではない」
「数年以内に大きな支出を予定している」
「必要なときにお金を使える状態にしておきたい」
という場合は、NISAの方が使いやすいことがあります。

iDeCoは税制上のメリットが大きい一方、原則として60歳まで引き出せないことを考慮して、無理なく続けられる金額を設定することが公式にも案内されています。また、所得控除の効果がほとんどない人の場合、限られた資金の中ではNISAの自由度を優先する考え方もあります。

重要なのは、「税金がお得な制度を限度額まで使う」ことではありません。
自分の生活を守ったうえで、将来に回せるお金を考えることです。

iDeCoは「受け取る時の税金」も知っておきたい

iDeCoには、「掛金を出すとき」「運用しているとき」「受け取るとき」のそれぞれに税制上の仕組みがあります。

掛金は所得控除の対象になり、制度内の運用益は非課税で再投資されます。
さらに受取時には、一時金で受け取れば「退職所得控除」、年金として受け取れば「公的年金等控除」の対象になります。

ここで注意したいのは、iDeCoなら最後まで必ずすべて非課税になる、という意味ではないことです。
特に一時金で受け取る場合、会社から受け取る退職金との関係が重要になることがあります。

退職所得控除には、退職金やiDeCoの一時金を複数回受け取る場合に、同じ期間について控除を重ねて使うことを調整するルールがあります。
さらに2026年1月から、このルールの一部が変更されています。

具体的には、会社などから退職手当を受け取る年から見て、前年以前9年以内にiDeCoなどの確定拠出年金の老齢一時金を受け取っていた場合、勤続期間などが重なる部分について退職所得控除を調整する対象となりました。
実務上は「10年ルール」と呼ばれることもあり、以前の「前年以前4年以内」という基準から対象期間が広がった形です。

少し難しい話ですが、投資を始めたばかりの段階で細かな税計算まで覚える必要はありません。
今の段階では、「iDeCoは入れるときだけでなく、受け取るときにも税金のルールがある」と知っておけば十分です。
退職金の金額や受け取る順番、時期などによって結果が変わるため、実際に受取時期が近づいたら、その時点の最新制度を確認することが大切です。

NISAとiDeCoは「どちらか一つ」と考えなくていい

NISAとiDeCoを比べると、それぞれの役割が少し見えてきます。

NISAは、利益を非課税にしながら、必要になれば資産を売却できる自由度があります。
iDeCoは、老後までお金を使いにくい代わりに、掛金の所得控除という特徴があり、運用益も非課税で再投資され、受取時にも一定の控除があります。

そのため、「NISAかiDeCoか」という二者択一で考える必要はありません。

たとえば、
・生活に必要なお金は預金で確保する。
・将来使う可能性のある資金はNISAで運用する。
・老後まで使わないと決められる資金の一部はiDeCoで準備する。
このように、お金を使う時期に合わせて置き場所を分ける考え方もできます。

家計に余裕があれば、NISAを使いながらiDeCoを組み合わせることもできます。
一方、余裕がなければ無理に両方を利用する必要はありません。
制度を最大限使うことよりも、自分が無理なく続けられることの方が大切です。

まとめ|「一番お得な制度」より、自分に合う組み合わせを

NISAの非課税保有限度額は取得額ベースで1,800万円あり、売却した商品の取得額分は翌年以降に再利用できます。
これだけ使いやすい制度があれば、「NISAだけで十分なのでは?」と思うのも自然です。

しかし、iDeCoにはNISAにはない掛金の所得控除があります。
一定の課税所得がある人なら、老後資金を積み立てながら、現役時代の所得税や住民税の負担を軽くできる可能性があります。
一方で、iDeCoは原則として60歳まで資産を自由に引き出せません。受取時にも税金のルールがあります。

つまり、NISAにはNISAの良さがあり、iDeCoにはiDeCoの良さがあります。
どちらか一つを正解にする必要はありません。

まず生活に必要なお金を確保する。
そのうえで、将来使う可能性のあるお金と、老後まで使わないお金を分けて考えてみる。
そして、自分に合う範囲でNISAやiDeCoを使う。

投資を始める前には、そのくらいの考え方から整理してみてはいかがでしょうか。
制度を限度額まで使い切ることより、仕組みを理解して、自分の家計に合った距離感で付き合うことの方が大切です。

補足

この記事は2026年8月19日時点の制度をもとにしています。

iDeCoについては2026年12月1日から制度改正が予定されており、拠出限度額や加入可能年齢などが変更されます。
第2号被保険者では企業年金と合わせた拠出限度額が月額6万2,000円、第1号被保険者では国民年金基金等と合わせて月額7万5,000円になる予定です。
また、一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の人にも加入・継続拠出の範囲が広がります。

制度は今後も変更される可能性があるため、実際に利用するときは金融庁、厚生労働省、iDeCo公式サイト、国税庁などの最新情報を確認してください。

本文中の運用例は、毎月末に一定額を積み立て、年4%の利回りが35年間続くと仮定した単純なシミュレーションです。
将来の運用成果を保証するものではありません。