家賃保証料は課税?非課税?継続保証料の消費税区分を税理士が解説
賃貸物件を借りていると、家賃保証会社から「家賃継続保証料」「年間保証料」「更新保証料」といった名前で、お金を請求されることがあります。
オフィスやお店を借りている経営者の方はもちろん、住居用の物件を借りている方でも、目にしたことがあるかもしれません。
経理の処理をするときに迷いやすいのが、「この家賃継続保証料に、消費税はかかるのか、かからないのか」という点です。
消費税がかかる取引を「課税取引」、消費税がかからない取引を「非課税取引」と呼びますが、家賃継続保証料がどちらに当たるのかは、名前だけでは判断できません。
結論から先にお伝えすると、家賃継続保証料が、「借主が家賃を払えなくなったときに、保証会社が代わりに家賃を立て替えて支払う」という保証(専門的には「信用の保証」と呼ばれます)そのものへの対価であれば、原則として消費税はかかりません(非課税です)。
ただし、「保証料」という名前がついているからといって、機械的に非課税と決めつけるのではなく、契約の中身や実際にどんなサービスを受けているのかを確認することが大切です。
以下で、その理由と確認のしかたを、順を追ってご説明します。
家賃継続保証料は、家賃を保証してもらう対価なら非課税です
一般的な家賃保証の契約では、借主が家賃を滞納してしまった場合に、保証会社が貸主(大家さん)に対して家賃を立て替えて支払います。
そのうえで、保証会社は、立て替えた分のお金を借主に請求する、という仕組みになっています。
このように、「家賃を払えなくなったときに備えて、保証会社に保証してもらう」ことそのものへの対価であれば、消費税法上の「信用の保証料」に当たると考えられます。
国税庁は、消費税がかからない取引(非課税取引)の一つとして、「信用の保証料」を挙げています。
また、消費税法基本通達6-3-1(国税庁が消費税の取り扱いについて示している解釈の指針です)でも、信用の保証料を対価とするサービスの提供は、消費税がかからないとされています。
したがって、「初回保証料」「年間保証料」「家賃継続保証料」「更新保証料」「保証委託料」など、どのような名前で請求されていたとしても、その実質が家賃を滞納したときの保証(信用の保証)に対する対価であれば、原則として消費税はかかりません。
大切なのは、請求書に書かれている料金の名前ではなく、実際の契約の中身です。この点は、経理処理をするうえで、ぜひ覚えておいていただきたいポイントです。
経理処理では、消費税の区分をどうすればいい?
たとえば、保証会社から「家賃継続保証料11,000円」という請求書が届いたとします。
契約の内容を確認したところ、この11,000円のすべてが、家賃の保証を続けてもらうことへの対価だったとします。
この場合、原則として11,000円全額が非課税として扱われます。
ここで注意したいのは、11,000円を「本体価格10,000円、消費税1,000円」というように、消費税額を逆算して分ける必要はない、という点です。
非課税取引には、そもそも消費税が含まれていないためです。
会計ソフトを使って入力する際は、一般的に「非課税」や「非課税仕入」といった、非課税取引専用の区分(消費税コードのようなもの)を選んで処理します。
なお、「非課税仕入」という言い方は、会計ソフトなどで便宜的に使われている実務上の呼び方です。
消費税の法律上は、非課税の取引はそもそも「課税仕入れ」には含まれません。
「課税仕入れ」とは、会社や個人事業主が仕入れや経費として支払ったお金のうち、消費税がかかっているものを指す言葉です。
そのため、家賃継続保証料が非課税であれば、その支払いについて「仕入税額控除(自分が支払った消費税分を、自分が納める消費税額から差し引ける制度です)」を行うことはできません。
うっかり課税取引として処理し、消費税分を差し引いてしまうと、あとで修正が必要になることがありますので、注意しておきたいところです。
「住宅の家賃が非課税だから、保証料も非課税」ではありません
ここは、誤解しやすいポイントです。
家賃継続保証料が非課税になる理由は、「住宅の家賃が非課税だから」ではありません。
保証会社に支払う料金そのものが、消費税法上の「信用の保証料」に当たるからです。
たとえば、住居として使う建物の家賃は、一定の条件のもとで非課税とされていますが、事務所やお店として使う建物の家賃は、原則として消費税がかかります(課税取引です)。
一方で、その事務所やお店について家賃保証会社と保証契約を結び、保証会社に支払う料金が、家賃を滞納したときの保証そのものへの対価であれば、その保証料については、原則として非課税になります。
つまり、事務所の家賃そのものには消費税がかかっていても、その事務所の家賃保証料には消費税がかからない、ということが起こり得ます。
少し不思議に感じるかもしれませんが、家賃そのものと、家賃の保証料は、それぞれ別の取引として、消費税の区分を考える必要があるためです。
税務署は「保証料」という名前だけで判断しません
税務署が確認するのは、請求書に「保証料」と書かれているかどうかだけではありません。
それよりも重視されるのは、「その料金を支払うことで、実際にどのようなサービスを受けているのか」という点です。
たとえば、契約書に、借主が家賃を滞納した場合に保証会社が代わりに支払うこと、保証会社が一定期間にわたって家賃の保証を続けること、年間保証料を支払うことで保証の期間が更新されることなどが定められていれば、それは信用の保証への対価であると判断するための、重要な手がかりになります。
反対に、「保証料」という名前で請求されていても、その中に、保証とは別の事務手続きや、家賃の収納代行、物件の管理サービスといった対価が含まれている場合には、全額を当然に非課税と判断できるとは限りません。
税務の世界では、名前よりも、取引の中身を見ることが重視されます。
保証料とは別に、更新事務手数料などが請求されている場合
特に気をつけていただきたいのが、保証料とは別の料金が、請求書の中で分けて記載されている場合です。
たとえば、「継続保証料10,000円」と「更新事務手数料2,200円」が、それぞれ別の項目として請求されていたとします。
このうち、継続保証料10,000円が、家賃を保証してもらうことそのものへの対価であれば、原則として非課税です。
一方で、更新事務手数料2,200円については、名前だけを見て課税・非課税を決めることはできません。
この手数料が、保証そのものへの対価ではなく、保証とは別の事務処理やサービスへの対価であれば、消費税がかかる取引(課税取引)になる可能性があります。
そのため、「保証会社に払ったお金だから、まとめて全部非課税」と処理してしまうのではなく、それぞれの料金が、何に対して支払われているのかを、一つずつ確認していただくことをおすすめします。
インボイスが発行されないから非課税、というわけではありません
インボイス制度(正式には「適格請求書等保存方式」といい、消費税の仕入税額控除を受けるために、一定の要件を満たした請求書等を保存しておく制度です)との関係についても、触れておきたいと思います。
消費税の区分は、「インボイス(適格請求書)が発行されているかどうか」によって決まるものではありません。
まず考えるべきなのは、その取引そのものが、消費税のかかる取引なのか、かからない取引なのか、という点です。
信用の保証料そのものが非課税取引であれば、そもそもその保証料については、消費税額を仕入税額控除する対象の取引ではありません。
したがって実務では、まず取引の中身から課税・非課税を判断し、そのうえで、課税取引に当たる場合に、必要に応じてインボイスの有無を確認する、という順番で考えていただくとわかりやすいと思います。
税務調査では、どんなところが確認されますか
税務調査で、家賃継続保証料の消費税区分が確認される場合、税務署はまず、保証会社との契約書を確認します。
家賃を滞納した際に、保証会社が実際に立て替えて支払う契約になっているかどうかなど、信用の保証を行う契約であるかを確かめるためです。
次に、請求書や領収書を確認します。
「継続保証料」「年間保証料」「更新保証料」「保証委託料」「更新事務手数料」など、どのような項目で請求されているのかを見ていきます。
複数の料金が記載されている場合には、それぞれが何への対価なのかを、一つずつ確認します。
さらに、契約書や請求書の内容と、会計帳簿上の消費税区分が一致しているかどうかも確認されます。
本来は非課税である信用の保証料であるにもかかわらず、誤って課税取引として処理し、消費税相当額を仕入税額控除してしまっている場合には、税務調査で指摘を受ける可能性があります。
指摘を受けた場合は、その分の税額を修正して納め直す必要が出てくることもありますので、日頃の経理処理の中で、少し気をつけておいていただけると安心です。
実務では、どのように確認すればよいでしょうか
家賃継続保証料の請求書が届いたときは、請求書に書かれている名前だけで消費税の区分を決めてしまうのではなく、保証会社との契約内容まで、あわせて確認していただくことをおすすめします。
まずは、その契約が、家賃の滞納に備えた保証(信用の保証)であるかどうかを確認します。
そのうえで、今回支払う継続保証料や更新保証料が、実際にその保証を継続して受けるための対価であるかどうかを確認します。
さらに、保証料とは別に、事務手数料や収納代行手数料、管理サービス料などが含まれていないかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。
その結果、支払った金額が、家賃の保証そのものへの対価であると確認できれば、原則として非課税として処理していただくことになります。
まとめ
家賃継続保証料は、家賃の支払いについて保証会社が「信用の保証」を行うことへの対価であれば、原則として消費税はかかりません(非課税です)。
そのため、一般的な家賃保証契約にもとづく継続保証料であれば、会計ソフトでは「非課税」または「非課税仕入」といった区分を使い、その保証料について仕入税額控除は行わない、という処理になります。
ただし気をつけていただきたいのは、「家賃継続保証料」という名前がついているからといって、それだけで自動的に非課税になるわけではない、という点です。
税務署では、保証契約書や請求書の中身を確認し、その支払いが本当に信用の保証への対価であるかどうかを判断します。
また、保証料とは別に、事務手数料やサービス料が請求されている場合には、それぞれのサービスの内容に応じて、課税・非課税を個別に判断する必要があります。
経理処理で迷われた際は、請求書だけを見て判断するのではなく、保証契約書まであわせて確認したうえで、消費税の区分を決めていただくことをおすすめします。
なお、本記事の内容は、消費税法上の「信用の保証料」に関する一般的な取扱いを、家賃保証料に当てはめて解説したものです。
本記事は、一般的な家賃債務の保証契約を前提とした解説であり、作成時点の情報にもとづいています。
実際の消費税区分は、契約の内容や取引の実態によって異なる場合がありますので、個別の判断が必要です。
正確な取り扱いについては、最寄りの税務署へご確認いただけますと幸いです。






