日本の長期金利はどこまで上がるのか―「悪い金利上昇」が始まったときに考えておきたいこと
日本の長期金利が、大きく上昇するようになってきました。
長い間、日本では「金利はほとんど上がらない」という感覚が当たり前になっていました。
住宅ローンも企業向け融資も低金利が続き、国も非常に低い金利で国債を発行することができました。
しかし、その状況は少しずつ変わっています。
物価が上がるようになり、日本銀行も長く続けてきた大規模な金融緩和を修正しています。
それに加えて政府の財政支出が大きくなり、国債の発行額も増えやすい状況になっています。
こうした中で、日本の10年国債の利回りが3%近く、あるいはそれを超えるような世界を考える必要が出てきました。
ここで重要なのは、
「金利が上がったから危険だ」
と単純に考えないことです。
金利が上がる理由には、大きく分けて二つあります。
一つは、日本経済が長いデフレや超低金利の状態から抜け出し、物価や賃金が上がる普通の経済に戻っていく過程で起きる金利上昇です。
もう一つは、国の財政や通貨に対する不安が強まり、投資家が「もっと高い金利でなければ日本国債を持ちたくない」と考えることで起きる金利上昇です。
後者は、一般に「悪い金利上昇」と呼ばれるものです。
私は、日本でこの「悪い金利上昇」が本格的に起こった場合、10年国債の利回りについて、まず3.5%から4%程度を一つの重要な水準として考えておいた方がよいと思っています。
さらに状況が悪化すれば、4%台半ばまで上昇する可能性も考えられます。
5%を超える可能性も、完全には否定できません。
ただし、そこまで行く場合には、単に景気が良くなって金利が上がったという話ではすみません。
政府の財政運営、日本銀行の政策、円という通貨への信頼など、複数の問題が重なっている可能性を考える必要があります。
そもそも10年国債の金利は何を表しているのでしょうか
日本政府は、税金だけでは足りないお金を国債という形で借りています。
例えば10年国債であれば、政府が投資家から10年間お金を借りるイメージです。
その国債を買う側からすると、
「10年間、日本政府にお金を貸すなら何%の利回りが欲しいか」
という話になります。
将来も物価がほとんど上がらず、日本銀行の政策金利もほぼゼロで、政府財政にも大きな不安がなければ、それほど高い金利を要求する必要はありません。
実際、日本では長い間そのような状態が続いていました。
ところが、物価が上がるようになれば事情は変わります。
仮に年間2%ずつ物価が上がるのに、10年間ほとんど利息の付かない国債を持っていたら、実質的なお金の価値は目減りしてしまいます。
そのため投資家は、
「インフレが続くなら、もっと利回りが欲しい」
と考えるようになります。
さらに政府が国債を大量に発行するようになると、国債そのものの供給が増えます。
売られる国債が増えているのに買いたい人が十分に増えなければ、国債価格は下がります。
そして国債価格が下がると、利回りは上昇します。
つまり長期金利は、日本銀行の政策金利だけで決まっているわけではありません。
物価、景気、政府財政、国債の発行量、投資家の考え方など、さまざまな要因によって決まっています。
3%程度なら、まだすべてが「悪い金利」とは限りません
では、10年国債の利回りが3%になったら、日本はすぐに危険な状態なのでしょうか。
私はそうは考えていません。
仮に日本銀行の政策金利がこれから少しずつ上がり、日本の物価上昇率も2%程度で安定するなら、10年国債の利回りが3%程度になること自体は、それほど不自然ではありません。
むしろ長い間ほとんどゼロだった日本の金利が、普通の水準へ戻っているという面もあります。
例えば、企業が成長し、給料が上がり、物価も2%程度上昇し、経済がそれなりに安定しているのであれば、金利がある程度上がるのは自然です。
問題なのは、その先です。
日本銀行が利上げを止めたにもかかわらず、10年国債の金利が、
3%、
3.5%、
4%
と上がり続けていく。
しかも、その間に円安まで続いている。
こうなってくると、単純な金融政策の正常化だけでは説明しにくくなります。
市場が日本国債に対して、別のリスク分の金利を上乗せしている可能性が出てきます。
「長く貸すなら、その分だけ高い利息が欲しい」と考え始める
長期間お金を貸すことには、さまざまな不確実性があります。
今後10年間に物価がどうなるかは分かりません。
政府の財政がどうなるかも分かりません。
国債がどれだけ発行されるのかも分かりません。
日本円の価値がどうなっているかも分かりません。
そのため投資家は、
「今後10年間にはいろいろなリスクがあるので、その分を金利に上乗せしてほしい」
と考えます。
この上乗せ部分が大きくなっていくことが、「悪い金利上昇」の重要な特徴です。
例えば日本銀行の政策金利の見通しだけなら10年国債3%程度で説明できるにもかかわらず、財政への不安などを理由としてさらに0.5%や1%が上乗せされれば、10年国債の利回りは3.5%から4%になります。
私は、この3.5%から4%程度が非常に重要な水準だと考えています。
10年金利が3.5%を超えてくると意味が少し変わってきます
仮に10年国債の利回りが3.5%程度まで上がったとします。
もちろん、それだけで財政危機だということにはなりません。
しかし、3%前後までの金利上昇と比べると、少し意味が変わってくる可能性があります。
特に注意したいのは、政府が大型の財政支出を発表した直後に国債金利が上昇するような場合です。
例えば政府が、
大規模な減税、
給付金、
補助金、
防衛支出、
社会保障支出、
大型の経済対策
などを次々と打ち出すとします。
それ自体が必要な政策である場合もあります。
しかし、その財源の多くを国債に頼るのであれば、投資家は将来の国債発行増加を意識します。
その結果、
「これから国債がもっと出てくるのではないか」
「政府の借金はさらに増えるのではないか」
「将来の利払いは大丈夫なのか」
と考える人が増えてきます。
すると国債を買う側は、以前よりも高い利回りを求めるようになります。
このような状態で3.5%から4%へ金利が上がっていくのであれば、単なる金融正常化とは意味が違ってきます。
私が4%を大きな境界と考える理由
10年国債の利回りが4%近くになると、日本の金融の風景はかなり変わると考えられます。
4%という利回りは、長年の日本の常識から考えるとかなり高い水準です。
生命保険会社、銀行、年金基金など、大きな資金を運用している国内の投資家からすれば、
「為替リスクを取らずに円で4%近く運用できる」
という商品が出てくることになります。
例えば海外の債券を買えば、円とドルなどの為替変動によって損失が出る可能性があります。
為替変動を避けるために為替ヘッジをすれば、その分の費用もかかります。
ところが日本国債であれば基本的には円建てです。
日本の保険会社や銀行にとっては、円で集めた資金を円の国債で運用できます。
そのため利回りが十分に高くなれば、
「海外債券ではなく日本国債でよいのではないか」
という資金の流れが起こりやすくなります。
つまり4%近くまで金利が上がれば、本来は国債の買い手がかなり増えても不思議ではありません。
国債を買う人が増えれば国債価格は上がり、金利上昇にはブレーキがかかります。
このため私は、10年国債の利回りが簡単に5%、6%へ上がり続けることを中心的なシナリオにはしていません。
逆に言えば、4%でも買い手が現れない場合はかなり重要です
しかし、ここで非常に大切なポイントがあります。
10年国債の金利が4%近くまで上がっている。それでも生命保険会社や銀行が、
「まだ買いたくない」
「もっと金利が上がるのではないか」
「今買うのは怖い」
と考えているとしたらどうでしょうか。
これはかなり大きな変化です。
普通であれば、金利が上がれば国債は魅力的になります。
ところが金利が上がっても、
「もっと上がると思うから買わない」
という投資家が増えていくと、国債価格の下落が止まりにくくなります。
国債価格が下がります。
すると金利はさらに上がります。
金利が上がることで政府の利払い負担への不安が強くなります。
その不安からさらに国債が売られます。
そうするとまた金利が上がります。
このような悪循環が始まる可能性があります。
私は、この段階になると単純に「金利が高くなった」と考えるのではなく、日本国債に対して市場が要求するリスク分の金利が増えている可能性を考えます。
4%になると企業や家庭にも影響が広がります
長期金利の上昇は、国だけの問題ではありません。
住宅ローンにも影響します。
企業の借入金利にも影響します。
社債を発行するときの金利にも影響します。
企業が設備投資をするときに求められる利益率にも影響します。
例えば、企業が銀行から1%でお金を借りられる世界と、4%や5%で借りなければならない世界では、投資判断が大きく変わります。
1%の借入金利なら実行できた設備投資でも、4%では採算が合わなくなることがあります。
不動産投資でも同じです。
借入金利が上がれば、それまで高い価格でも成り立っていた不動産投資が成立しにくくなります。
住宅購入にも影響します。
毎月の住宅ローン返済額が増えれば、購入できる住宅価格も下がります。
つまり10年金利4%というのは、単なる国債市場の数字ではありません。
日本経済全体の「お金を借りる値段」が変わっていく可能性を意味します。
政府にとって本当に怖いのは、金利上昇が時間をかけて効いてくることです
日本政府の借金は、非常に大きな規模になっています。
しかし、10年国債の利回りが4%になったからといって、翌日からすべての国債に4%の利息を払うわけではありません。
過去に0%台や1%台で発行した国債は、その条件が満期まで続きます。
そのため最初のうちは、
「金利が上がった割には政府の利払い費はそれほど増えていない」
ように見えます。
ところが国債には満期があります。
満期になった国債は返済する必要があります。
実際には、多くの場合、新しい国債を発行して借り換えていきます。
例えば以前0.5%で借りていた国債が満期を迎え、新しく4%で借り換えることになれば、その部分の利払い費は大きく増えます。
これが毎年少しずつ積み重なっていきます。
そのため長期金利上昇の影響は、数年かけて政府財政に入り込んでいきます。
これは非常に厄介な問題です。
最初は大したことがないように見えるため、対応が遅れやすいからです。
国債が増え、金利が上がり、利払いが増える悪循環
財政運営で最も警戒すべきなのは、次のような流れです。
政府支出が増えます。
税収だけでは足りないため国債を増発します。
国債が増えるため、投資家はより高い利回りを要求します。
金利が上がります。
政府の利払い費が増えます。
利払い費を支払うために、さらに国債発行が必要になります。
その結果、国債残高がさらに増えます。
そして市場は、
「ますます財政が厳しくなるのではないか」
と考えます。
こうしてさらに金利が上がる可能性があります。
もちろん、実際の財政はここまで単純ではありません。
景気が良くなれば税収も増えます。
物価上昇によって名目GDPが増えれば、政府債務の重さが相対的に小さくなる可能性もあります。
しかし、金利上昇の速さが税収や経済成長を上回るようになると、状況は難しくなります。
特に政府債務の規模が大きな国ほど、金利上昇の影響は無視できません。
では10年国債5%はあり得るのでしょうか
私は、可能性がゼロだとは思いません。
しかし、5%を通常の金利正常化の延長線上にある水準とは考えていません。
そこまで金利が上がるには、複数の悪材料が同時に重なる可能性を考えた方がよいでしょう。
例えば、大規模な財政支出が続きます。
国債発行額が増えます。
物価上昇率も3%や4%程度から下がりません。
それでも政治的な事情などから、日本銀行が十分な金融引き締めを行えないと市場が考える。
さらに円安も止まりません。
国債の入札でも買い手が集まりにくくなります。
生命保険会社や銀行などの国内投資家も購入を控えます。
海外投資家も日本国債や円に慎重になります。
このようなことが同時に起きると、10年国債が4%台後半、場合によっては5%を試すような局面も考えられます。
ただし5%まで行けば、かなり特殊な状態です。
市場が単に、
「日本の政策金利は上がりそうだ」
と考えているだけでは説明しにくいでしょう。
政府財政と日本銀行の政策能力、さらに円という通貨への信頼そのものが問われるような局面を想定する必要があります。
「政府の借金が大きすぎて、日銀が自由に動けない」と疑われることが怖い
財政と金融政策の関係で、もう一つ注意したいことがあります。
国の借金が非常に大きくなると、金利上昇による政府の負担も非常に大きくなります。
すると市場では、
「日本銀行は本当はもっと金利を上げたいのに、政府の利払い費が増えすぎるので上げられないのではないか」
という疑いが出る可能性があります。
これは非常に重要な問題です。
中央銀行が物価を安定させるためではなく、政府財政を守るために金融政策を決めているように見えてしまえば、中央銀行に対する信頼が低下します。
仮に物価が上がっているのに十分な利上げができないと考えられれば、
「今後もインフレが続くのではないか」
という予想が広がります。
そうすると投資家はさらに高い長期金利を要求するようになります。
また、円を持つことそのものに慎重になる人も増えるかもしれません。
これは政府と日本銀行にとって、非常に難しい状況です。
ただし、金利が5%へ行く前に政策対応が入る可能性は高いでしょう
日本の10年国債の金利が短期間で4.5%や5%まで上昇した場合、日本銀行が何もせず見ているとは考えにくいでしょう。
市場の流動性を確保するために国債を買ったり、国債買い入れの方法を変更したりすることが考えられます。
金利の急激な上昇が金融システムを不安定にすると判断すれば、何らかの対応を行う可能性があります。
そのため、市場の力だけで10年国債が5%、6%と一直線に上がっていくことは考えにくい面があります。
ただし、ここで注意が必要です。
日本銀行が国債を大量に買えば、国債金利を下げることは可能かもしれません。
しかし、それで問題そのものがなくなるとは限りません。
例えば市場が、
「政府の財政問題を、日本銀行が国債を買うことで支えているだけではないか」
と考えた場合です。
その場合、国債金利は抑えられても、円が売られる可能性があります。
つまり財政への不安が、国債金利上昇として表れるのか、円安として表れるのか、あるいは物価上昇として表れるのか、その形が変わるだけということもあり得ます。
これは今後の日本を見るうえで、とても重要な視点です。
金利だけを見ていると、本当の危険を見落とすかもしれません
そのため私は、「10年国債が何%になったら危険か」という数字だけを見るべきではないと考えています。
同じ3.5%の金利上昇でも、背景によって意味が大きく違います。
例えば日本銀行が利上げを行い、それによって10年国債の金利が上昇するとします。
同時に円高が進んだのであれば、
「日本の金利が正常化し、円の魅力が高まった」
と考えることもできます。
これは比較的健全な金利上昇です。
ところが政府が大型の経済対策を発表した直後に10年国債の金利が上昇し、同時に円安が進んだらどうでしょうか。
これは市場が、
「国債発行が増える」
「財政がさらに悪化する」
「将来の物価上昇につながる」
と考えている可能性があります。
こちらは警戒が必要です。
さらに国債の入札が弱く、国債が売られ、金利が上がり、円も売られ、株価も下がるという状態まで重なったら、意味はさらに深刻になります。
市場が日本全体に対して、以前より大きなリスクを感じている可能性があるからです。
特に注目したいのが「金利上昇と円安が同時に起こる状態」です
普通に考えれば、日本の金利が上がれば円は買われやすくなります。
日本円で持っているだけでも得られる利息が高くなるからです。
もちろん為替はさまざまな要因で動くので、必ずそうなるわけではありません。
それでも、金利が大きく上がっているのに円安が続く場合には注意が必要です。
例えば日本の10年国債が4%になっているとします。
以前よりかなり高い利回りです。
本来であれば、
「円で4%近く運用できるなら魅力的だ」
と考える投資家が増えてもよいはずです。
それにもかかわらず円が売られるのであれば、
「4%も利息を払ってくれるから買いたい」
ではなく、
「4%程度の利息ではリスクに見合わない」
と考える投資家がいる可能性があります。
これは非常に重要な違いです。
金利が魅力として高くなっているのか。
それともリスクに対する補償として高くなっているのか。
この違いを見極める必要があります。
超長期金利にも注意が必要です
私は10年国債だけでなく、30年や40年といった非常に長い国債の金利も重要だと考えています。
10年国債は、日本銀行の政策金利の見通しから比較的大きな影響を受けます。
一方、30年や40年といった超長期国債は、それ以上に長い期間のお金を貸すことになります。
そのため、
将来の政府債務、
長期的なインフレ、
国債発行量、
人口減少、
財政運営
などの影響を受けやすくなります。
例えば日本銀行が、
「これ以上政策金利を上げる必要はない」
という姿勢を示しているのに、30年や40年国債の金利だけが上がり続けるような場合です。
これは市場が日本銀行の利上げを織り込んでいるというより、
「長い目で見た日本の財政やインフレが不安だ」
と考えている可能性があります。
そのため10年国債と同じくらい、あるいはそれ以上に超長期国債の動きを見ておく必要があります。
日本には大きな国内資金という強みもあります
ここまで読むと、日本国債について悲観的に聞こえるかもしれません。
しかし、日本には大きな強みもあります。
日本国内には非常に大きな金融資産があります。
銀行、生命保険会社、年金基金、個人などが多くの円資産を持っています。
日本国債の利回りが高くなれば、この国内資金が日本国債へ戻ってくる可能性があります。
特に長期の負債を持っている生命保険会社や年金基金にとって、長期国債は運用先として使いやすい資産です。
そのため10年国債が3.5%、4%という水準になれば、かなり大きな買い需要が出てくる可能性があります。
これが日本国債市場の大きな支えです。
海外投資家だけに依存している国とは、少し事情が違います。
また日本銀行も非常に多くの国債を保有しています。
これも日本国債市場の特殊な点です。
そのため日本では、金利が少し上がったからといってすぐに国債危機になると考える必要はありません。
むしろ重要なのは、
「どの金利水準なら国内投資家が本格的に買い始めるのか」
を見ることです。
私が一番警戒するのは「4%でも買い手が戻らない」場面です
先ほど、4%まで金利が上がれば国内の買い手が増えやすい、という話をしました。
私が本当に警戒しているのは、その逆の場面です。
つまり、4%という利回りを見ても国内の大きな投資家が積極的に買わない状態です。
4%という利回りが十分に魅力的だと考えられれば、多くの買い手が現れます。
国債価格は下げ止まり、金利も安定しやすくなります。
ところが4%になっても、
「まだ買えない」
「もっと金利が上がりそうだ」
「財政が不安だ」
という理由で投資家が買わないのであれば、市場の考え方そのものが変わっている可能性があります。
私は、これが本当の意味での危険なサインだと思っています。
金利の目安をあえて分けるなら
ここまでの話を数字で整理してみます。
まず10年国債が2.5%から3%程度であれば、金融政策の正常化や物価上昇でかなり説明できます。
3%を少し超えたからといって、直ちに財政への信頼が失われたとは言えません。
3.2%から3.5%程度になると、金融政策以外の要因にも少し注意する必要が出てきます。
特に国債発行量や財政政策、国債入札の状況を見る必要があります。
そして3.5%から4%程度になれば、私は「悪い金利上昇」の可能性をかなり意識します。
もちろん経済成長や物価によっては4%でも説明できる場合があります。
しかし、円安や国債入札の弱さ、財政拡張などが同時に起きていれば、警戒度はかなり高くなります。
4%から4.5%程度になると、単なる金融正常化だけでは説明しにくくなってきます。
政府財政に対して市場が以前より高いリスク分の利回りを要求している可能性を強く考えます。
5%以上になれば、かなり厳しい局面です。
その場合は政府の財政運営だけではなく、日本銀行が自由に金融政策を行えるのか、円という通貨への信頼は保たれているのか、といったところまで市場が疑っている可能性があります。
私の中心的な想定は「まず4%前後」です
したがって、
「日本で本格的な悪い金利上昇が起こったら、10年国債の金利はどこまで行くのか」
と聞かれた場合、私はまず4%前後を想定します。
具体的には3.5%から4%程度です。
このあたりまでは、現在の状況から考えても十分にあり得る範囲だと思います。
さらに財政不安、円安、インフレ、国債需給の悪化が重なれば、4%台半ば程度まで上昇する可能性も考えておく必要があります。
5%を超える場面については、可能性がないとは言いません。
ただし、そこは通常の金利正常化ではなく、政策対応がうまくいかなかった場合の厳しい場面として考えています。
本当に大切なのは「何%になったか」ではありません
最後に、最も大切なことをまとめます。
これから日本の金利を見るときに、
「10年国債が3%になった」
「4%になった」
という数字だけを見て判断するのは危険です。
重要なのは、
「なぜ金利が上がったのか」
です。
経済が正常化して金利が上がっているのであれば、必ずしも悪いことではありません。
日本銀行が金融政策を正常化し、賃金と物価が安定して上昇し、その結果として長期金利も上がる。
これは日本経済が何十年も続いた超低金利から抜け出しているという面があります。
一方で、
政府支出の拡大、
国債発行増加、
物価上昇への不安、
国債入札の不調、
円安
などを背景として長期金利が上昇しているのであれば、意味は違います。
特に私が注意したいのは、10年国債の金利が4%近くまで上がっているのに円安が続くこと、さらに30年や40年といった超長期国債の金利も大きく上昇すること、そして4%近い利回りになっても生命保険会社や銀行など国内の大きな投資家が十分に国債を買わないことです。
この三つが同時に起きれば、単なる金融政策の正常化では説明しにくくなります。
市場が日本国債に対して、
「もっと高い利回りをもらわなければ持ちたくない」
と考え始めている可能性があります。
それこそが、本当の意味で警戒すべき「悪い金利上昇」だと思います。
今後の日本を見るときには、10年国債の数字だけではなく、円相場、超長期国債、国債入札、国内投資家の動き、政府の財政政策、日本銀行の政策を一つにつなげて見ることが重要になります。
そして、もし10年国債が4%近くまで上昇しても買い手が十分に戻らず、同時に円安まで続くのであれば、日本の金利を見る目を一段変える必要があります。
そこでは、単に「金利が高くなった」のではありません。
日本という国にお金を貸すことに対して、市場がこれまでより大きなリスクを意識し始めている可能性があるからです。
※本稿は、現時点で得られる情報をもとにした一つの見立てであり、将来の金利水準や市場の動きを保証するものではありません。
実際の投資判断にあたっては、最新の市場動向をご確認のうえ、ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。




