NISAなら医療保険料に影響なし?75歳以上の医療費に金融所得が反映される新制度と注意点

75歳以上の医療保険料が変わる?金融所得を反映する新制度とNISAの注意点

老後の生活を支えるものとして、多くの人が思い浮かべるのは年金や貯金でしょう。
最近では、株式や投資信託で将来に備える人も増えています。
ところが、こうした資産から得た利益が、75歳以上の医療保険料や、病院の窓口で支払う金額に影響する仕組みが導入されることになりました。

2026年5月、75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」に、金融所得を公平に反映させるための法律が成立しました。
厚生労働省は同年10月16日、この仕組みを2029年8月から始め、2030年8月から全面的に実施する予定を示しています。
一方、NISA口座で非課税となる利益は、今回の反映の対象外です。

「株を売ったら医療費が高くなるのでしょうか」「NISAなら負担は増えないのでしょうか」「75歳になる前に売っておくべきでしょうか」。
こうした疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
制度の仕組みと老後の家計への影響を、具体例を交えて考えてみます。

75歳以上の医療費は、所得によって負担が変わります

日本では、原則として75歳になると「後期高齢者医療制度」に加入します。
病院や薬局で支払う医療費の割合は、所得によって1割、2割、3割のいずれかになります。
一般的な所得の方は1割ですが、一定以上の所得があれば2割になります。
さらに「現役並み所得」と呼ばれる水準の方は3割です。
現役並み所得とは、住民税の課税所得が145万円以上ある場合などを指します。

例えば、保険が使える医療費が1万円なら、窓口で支払う金額は1割で1,000円、2割で2,000円、3割で3,000円です。
ただし、「高額療養費制度」などにより1か月の自己負担には上限があります。
そのため、すべての医療費が単純に2倍、3倍になるわけではありません。
なお、この上限額も所得によって区分されています。
所得の扱いが変われば、上限額に影響することもあります。

病院で支払うお金とは別に、毎年の医療保険料も納めます。
保険料は、加入者全員が同じ額を負担する「均等割」と、所得に応じて決まる「所得割」を合わせた金額です。
そのため、年金額が同じでも、ほかに所得があれば保険料が変わることがあります。

今回の見直しで問われているのは、この「所得」に、株式や投資信託から得た利益をどのように含めるかという点です。

これまでは「確定申告をしたか」で差が生まれていました

金融所得とは、株式の配当金や、投資信託の分配金のうち利益に当たる部分、株式などを売って得た利益などのことです。
例えば30万円で買った株式を50万円で売れば、手数料などを考えなければ20万円が売却益になります。
売却代金の50万円すべてが利益になるわけではありません。

医療保険料や窓口負担の判定は、市区町村が把握している住民税の所得情報をもとに行われています。
証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」を使えば、税金が差し引かれた時点で手続きが終わり、確定申告をしなくてもよい仕組みになっています。
この場合、金融所得は自治体に把握されません。
その結果、医療保険料や窓口負担の判定にも反映されませんでした。

ところが、同じ利益でも、配当控除を受けたり、差し引かれた税金の還付を受けたりするために確定申告をすると、その所得が判定に反映されます。
つまり、同じ配当や売却益を得ていても、申告したかどうかによって医療保険の負担に差が生じていたのです。
「税金を取り戻そうと申告したら、翌年の保険料が上がってしまった」という話は、税理士の世界では以前からよく知られた悩みでした。
以前は、所得税では申告しても住民税では申告しない形を選び、保険料への影響を避ける方法もありました。
しかし、2024年度分の住民税からは所得税と同じ課税方式に統一され、この方法は使えなくなっています。

改正後は、対象となる金融所得について、確定申告をしたかどうかにかかわらず、保険料などに反映する仕組みになります。
「申告しなければ負担に影響しない」という考え方が通用しなくなることが、この改正の大きなポイントです。

新しい仕組みは2029年8月から始まる予定です

今回の仕組みは、2026年5月29日に成立し、6月5日に公布された「健康保険法等の一部を改正する法律」に盛り込まれました。
法律では、公布から5年以内に始めることとされていました。
具体的な開始時期は、厚生労働省が2026年10月16日の社会保障審議会医療保険部会で示した予定です。

厚生労働省によると、2029年1月から、金融機関などに「法定調書」と呼ばれる所得情報の書類をオンラインで提出することを義務づける予定です。
提出先は、都道府県ごとに後期高齢者医療制度を運営している「後期高齢者医療広域連合」です。
これにより、確定申告をしない場合でも、対象となる金融所得を保険料などの計算に使えるようになります。

最初の反映は2029年8月です。ここでは主に、2028年中に得た金融所得のうち、年単位でまとめて報告される情報が使われます。
2030年8月からは、月単位で報告されるものも含め、対象となる法定調書の情報が全面的に反映される予定です。

ここで注意したいのは、株を売った翌日に病院で支払う金額が変わるわけではないことです。
過去の所得情報をもとに、その後の保険料や負担割合が判定されます。
また、細かな運用は今後の政令や通知で決まる部分もあるため、引き続き案内を確認する必要があります。

最初の判定に関わるのは、原則として2028年中の所得です。
2029年になってから考え始めても、判定の対象となる取引はすでに終わっている場合があります。
2028年中に大きな売却を予定している方は、早めに影響を確認しておくと安心でしょう。

どんな利益が対象で、何が対象外になるのでしょうか

今回の反映では、課税口座で得た上場株式の配当金と売却益、公募株式投資信託の普通分配金と売却益が主な対象です。
債券も対象になります。
日本国債(個人向け国債を含む)や外国の国債、国内外の上場企業が発行する公募社債など、税法上「特定公社債」と呼ばれる債券の利子や売却益です。
個人向け国債をお持ちの高齢の方も多いので、対象に含まれる点は覚えておきたいところです。

大切なのは、持っている資産の金額そのものではなく、原則として実際に受け取った所得や確定した利益が対象になるということです。

投資信託の分配金には、利益として課税される「普通分配金」と、元本の一部が戻る「元本払戻金(特別分配金)」があります。
元本払戻金は利益ではないため、今回の反映にも含まれません。
分配金の全額が金融所得になるわけではありません。

反対に、株価が上がっただけの「含み益」は対象ではありません。
例えば100万円で買った株式の評価額が150万円になっても、売っていなければ50万円の利益はまだ確定していません。
今回の仕組みでは、その50万円を金融所得として計算するわけではありません。
インターネット上では「特定口座の含み益も対象になる」といった誤解も見られますが、対象は売却益や配当などの確定した利益です。

銀行の普通預金や定期預金の利子は、今回の反映の対象外です。
預金の利子は、受け取る時点で税金が差し引かれて手続きが終わる仕組み(源泉分離課税)のため、これまでも保険料の判定には含まれていませんでした。
また、NISA口座で非課税となる配当や売却益も対象外です。
預貯金や株式など、保有する金融資産の残高そのものを調べて保険料に上乗せする制度でもありません。

「金融資産を持っているだけで保険料が上がる」わけではありません。
ただし、利益を確定させれば負担に影響する可能性があります。どの口座で持っているか、いつ売るかが重要になってくるのです。

同じ年金でも、保険料に大きな差がつく場合があります

では、実際の負担にどのくらい差が出るのでしょうか。
日本経済新聞の2026年10月26日付の記事では、MUFG資産形成研究所による概算値が紹介されています。
単身で暮らす75歳以上の方が、年間180万円の年金に加えて、株式や投資信託から年間120万円の配当・分配金を受け取るケースです。

この120万円を特定口座などの課税口座で受け取る場合、年金と合わせた収入・所得は300万円になります。
試算上の年間医療保険料は約21万1,000円、病院での窓口負担は2割です。
一方、同じ収益をNISA口座で非課税で受け取る場合、判定に使われるのは年金の180万円だけです。
年間保険料は約5万7,000円、窓口負担は1割にとどまります。
この約5万7,000円は、加入者全員が負担する均等割(全国平均)だけの金額です。

年間保険料だけでも、その差は約15万4,000円です。
同じ額の年金と運用収益を受け取っていても、保有する口座によって負担が大きく違う場合があるのです。

保険料の目安も押さえておきましょう。
所得に応じてかかる「所得割」の率は都道府県ごとの広域連合によって異なります。
2026年度の全国平均は、医療分の10.17%に、2026年度から加わった子ども・子育て支援金分の0.25%を合わせて10.42%です。
各種控除や保険料の上限などで変わるものの、金融所得が100万円増えると、全国平均ではおおむね10万4,000円ほど保険料が増える計算になります。

この試算は、単身世帯で全国平均の保険料率を用い、各種控除などを考慮していない概算です。
実際の負担は、住んでいる地域、所得、世帯の状況などで変わります。
また、NISAにも投資できる金額の上限があります。
「NISAを使えば誰でも15万円以上得をする」とは考えないようにしましょう。
ここで紹介した数字は、制度の影響を理解するための例です。将来の保険料を保証するものではありません。

売却する時期が違うだけで、負担が変わる可能性もあります

もう一つ見逃せないのが、利益を確定させる時期です。
長い間持っていた株式を少しずつ売るのか、まとめて売るのかによって、年ごとの金融所得は変わります。

例えば、購入時300万円だった株式が600万円に値上がりしたとします。
まとめて売れば、単純計算で300万円の売却益が発生します。
一方、一部だけを売れば、その年に確定する利益は小さくなります。
どちらがよいかは、生活費の必要額、今後の値動き、税金、保険料を合わせて考える必要があります。

先ほどの記事では、売却時期による違いの試算も紹介されています。
年金180万円の方が、元本4,000万円、評価益4,000万円の資産を20年かけて取り崩す例です。
75歳以降に課税口座で毎年少しずつ売ると、年間200万円の金融所得が判定に加わります。
その結果、保険料は約29万4,000円、窓口負担は3割になるとされています。
これに対し、75歳になる前にまとめて売って買い直し、その後の評価益がないと仮定した場合は、保険料は約5万7,000円、窓口負担は1割です。

ただし、この結果だけを見て「75歳になる前に全部売ればよい」とは限りません。
この例でも、まとめて売った時点で、4,000万円の売却益に対して800万円を超える税金を前倒しで納めることになります。
売った後の運用がどうなるかも分かりません。
また、所得が反映されるまでには時間差があります。
例えば74歳の年に得た売却益が、75歳になった後の判定に使われることもあり得ます。

保険料を抑えるためだけに資産を急いで売ると、かえって損をすることもあります。
生活に必要な資金を考え、落ち着いて判断しましょう。
そもそも、試算のような大きな金融所得がある方ばかりではありません。
金融所得が小さければ、保険料などへの影響も限られます。
老後の資金計画に沿って資産を選んできた方であれば、持ち方や売り方を慌てて変える必要はない場合も多いと考えられます。

NISAの価値は、税金がかからないことだけではありません

今回の改正で注目されるのがNISAです。
NISAは、決められた範囲内で投資した株式や投資信託などについて、配当や売却益が非課税になる制度です。
通常の課税口座では、上場株式などの利益に原則20.315%の税金がかかりますが、NISAで非課税となる利益にはその税金がかかりません。

今回の金融所得の反映でも、NISA口座で非課税となる利益は対象外です。
つまり、現在示されている仕組みでは、NISAは所得税などの負担を抑えるだけでなく、高齢期の医療保険料などへの影響を抑えるという面でも意味を持つことになります。

ただし、NISAは無制限に使える制度ではありません。
2024年からのNISAでは、年間に投資できる金額は二つの枠を合わせて最大360万円で、非課税で保有できる投資元本の上限は1,800万円です。
課税口座にある株式を、そのままNISAへ移すこともできません。
一度売って、NISA口座で新たに買い直す必要があります。

なお、NISA口座で保有する上場株式の配当金を非課税で受け取るには、原則として、証券会社の口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選ぶ必要があります。
銀行口座で受け取る方式などでは、NISA口座で保有している株式でも配当金が課税されてしまいます。
証券会社の口座設定を一度確認しておきましょう。

さらに、NISAだから投資の損失がなくなるわけではありません。
株価が下がれば資産は減ります。
医療保険料だけを理由に、生活費まで無理に投資に回すことは避けるべきです。
NISAはあくまで、余裕資金を使って長期的な資産形成をするための選択肢として考えましょう。

この改革は公平なのでしょうか

制度の目的は理解できます。
年金額が同じでも、資産から多くの利益を得ている人と、年金だけで暮らしている人とでは、支払い能力が違う場合があります。
それなのに、同じ金融所得を得ていても、確定申告をしたかどうかによって負担に差が生じるのは、公平とは言いにくいでしょう。

特に医療保険は、病気になった人を社会全体で支える仕組みです。
支払う力がある人に、ある程度多く負担してもらうという考え方には理由があります。
現役世代の保険料負担が重くなっていることを考えても、見直しそのものを否定するのは難しいと思います。

一方で、金融所得だけを見ても、本当の経済力が分かるとは限りません。
多額の預貯金を持っていても、今回対象となる金融所得がほとんどない人もいます。
反対に、まとまった生活費を用意するために一度だけ株式を売った人は、その年の所得が高くなり、負担が重くなることがあります。

長年こつこつと投資を続けてきた人が、老後にその資産を使おうとしたときに負担が増える場合もあります。
その一方で、NISA口座に十分な資産を持つ人の利益は対象外です。
この差をどう受け止めるかは、簡単な問題ではありません。

NISAの利益は、もともと税金がかからない所得です。
税の所得情報をもとにする今回の判定では、対象外となるのが自然な面があります。
国が長期の資産形成を後押ししてきた政策との整合性も考慮されていると考えられます。
ただ、公平な負担という目標だけで見れば、同じ利益なのに口座によって扱いが変わることには議論の余地があるでしょう。

さらに大切なのは、負担が重くなったときに、必要な受診をためらう人が出ないようにすることです。
窓口負担が1割から2割へ変われば、「少しくらい具合が悪くても病院に行くのを控えよう」と考える人が出るかもしれません。
しかし、受診を先延ばしにして病気が悪化すれば、本人の健康だけでなく、結果として医療費全体にも影響しかねません。

今回の法律に対する衆議院厚生労働委員会の附帯決議でも、制度が始まった後に後期高齢者の受診などへの影響を把握・検証し、必要な見直しを行うことが求められています。
保険料を集める仕組みだけを整えればよいのではなく、必要な人が必要な医療を受けられることも守らなければなりません。
負担の公平さと安心して受診できることは、どちらも大切です。

なぜ今、高齢者の金融所得を見直すのでしょうか

背景にあるのは、日本の少子高齢化です。
高齢者が増える一方で、医療や介護を支える働く世代は減っていきます。
医療の技術が進み、治療できる病気が増えることは喜ばしいことですが、医療にかかる費用も大きくなりがちです。

これまでは「高齢者は収入が少ないから負担を軽くする」という考え方が制度の基本にありました。
もちろん、年金だけでぎりぎりの暮らしをしている方も少なくありません。
しかし、同じ高齢者でも、生活に余裕がある方とそうでない方の差は大きくなっています。
年齢だけで一律に考えることには限界があります。

一方、働く世代も、物価の上昇や住宅費、子育て費用などに直面しています。
社会保険料が増えれば、給料が上がっても手取りが増えにくくなります。
若い人も高齢者も安心して暮らすには、負担の分け方を見直す必要があります。

ただし、今回の改正だけで医療費全体の問題が解決するわけではありません。
医療の無駄を減らす努力、必要な治療を受けられる仕組み、医療を支える人材の確保なども欠かせません。
高齢者の負担を増やせば、現役世代の保険料が必ず下がると決まっているわけでもありません。

老後に備えるため、今から確認したいこと

では、私たちは何をすればよいのでしょうか。
最初に確認したいのは、ご自身の金融商品がどの口座に入っているかです。
証券会社の口座画面などで、NISA口座と課税口座の保有商品を確認できます。
特定口座の取引は、毎年届く「特定口座年間取引報告書」でも確かめられます。
口座が違えば、利益の扱いも変わります。

次に、毎年どれくらいの配当や分配金を受け取り、将来どれくらいの資産を取り崩す予定なのかを考えます。
毎年安定して受け取る所得と、住宅の修繕費などのために一度だけ資産を売って得る所得とでは、家計への意味が違います。
必要なときに必要なお金を使えることが、何より大切です。

また、税金や保険料だけで有利不利を判断しないことも重要です。
課税口座の株式を売却してNISAで買い直す場合、売却益に対する税金や取引の費用がかかることがあります。
売却後に株価が上がってしまえば、同じ数の株を買い戻せないかもしれません。
医療保険料の軽減だけを見て判断すると、全体として不利になることがあります。

退職後は、年金の見込額、生活費、入院への備え、家族への援助なども整理しておきましょう。
医療保険料だけが老後の家計を決めるわけではありません。

家族で話し合っておくことも役立ちます。
例えば、75歳を過ぎた親が株を売る際、税金と保険料の関係を知らないこともあります。
本人の生活の希望を聞き、資金を使う予定を共有しておけば、慌てた売却を防ぎやすくなります。

最後に、制度の新しい情報を確認することです。
開始時期の予定は示されましたが、細かな計算方法や個々の取引への当てはめ方については、今後の案内が重要になります。

将来は国民健康保険や介護保険にも広がるのでしょうか

今回の改正で金融所得の反映が決まったのは、後期高齢者医療制度です。
一方、介護保険については、厚生労働省が2026年10月、介護サービスの自己負担割合や保険料の算定にも金融所得を反映させる検討に入りました。
報道によると、社会保障審議会介護保険部会での議論を踏まえて判断し、早ければ2027年の国会に介護保険法の改正案を提出する見通しとされています。
国民健康保険についても、同じ考え方をどこまで広げるかが今後の検討課題になりそうです。

ただし、2026年10月26日時点で、介護保険や国民健康保険への導入が決まったわけではありません。
議論や検討が始まったことと、制度が決まったことは分けて考える必要があります。
なお、会社員などが加入する健康保険は、給料をもとに会社と本人が保険料を折半する仕組みのため、金融所得を反映させるのは難しいという見方が専門家から示されています。

将来の議論では、金融所得だけでなく、預貯金などの資産額まで負担の判定に使うべきかという問題も出てくるでしょう。
実際、介護保険では、預貯金などの把握のあり方を話し合う検討の場が2026年5月に設けられています。
しかし、資産の把握には、個人情報の管理や、不動産、借入金との関係など、解決すべき課題が多くあります。今後も丁寧な議論が欠かせません。

まとめ―「いくら持つか」だけでなく「どう使うか」が大切になる時代へ

今回の改正は、金融所得について確定申告をした人としなかった人の間にあった不公平を減らそうとするものです。
その方向性には理解できる理由があります。
ただし、医療保険の負担を決めるうえで、どの口座で運用し、いつ利益を確定したかが大きな意味を持つようになる点は見逃せません。

資産があるからといって、誰もが生活に余裕があるわけではありません。
老後の医療費や生活費に備えて、長い時間をかけて貯蓄や投資をしてきた人もいます。
必要なお金を使うタイミングだけで負担が急に重くなるのであれば、その仕組みが公平かどうかは考え続ける必要があるでしょう。

一方で、医療制度を次の世代につないでいくためには、負担できる人に応じた協力を求めることも必要です。
大切なのは、高齢者と現役世代を対立させることではなく、どの世代も納得できるルールをつくることではないでしょうか。

これからの資産形成では、運用の利益や税金に加え、社会保険料や医療費への影響にも目を向けることが大切です。
ただし、制度に振り回されて投資や売却を急ぐ必要はありません。
まずは仕組みを知り、ご自身とご家族が安心して暮らすために、資産をどう使っていくかを考えることから始めましょう。

※2026年10月26日時点で公表されている法令、政府資料、報道に基づき解説しています。
開始時期は厚生労働省が示した予定であり、今後変更される可能性があります。
試算の数値は、日本経済新聞(2026年10月26日付)で紹介されたMUFG資産形成研究所の概算値です。
保険料や窓口負担割合は、所得、世帯構成、住所地などによって変わります。
個別の判断にあたっては、市区町村の窓口にご相談ください。