給与振込先の税務リスク
「給与を本人ではなく配偶者の口座に振り込む」ことには、税務上、見過ごせないリスクがあります。
税務調査でこの事実が確認されると、単なる「振込先の間違い」では済まないケースもあります。
早めに内容を確認しておきましょう。
税務署がまず見るポイント
税務署が重視するのは、「実際に働いて、その収入を得たのは誰か」という点です。
口座の名義ではなく、「その収入が誰のものか」という中身で判断されます。
たとえば、荷物の送り先が別の家であっても、荷物の持ち主が変わるわけではありません。
それと同じで、給与の振込先が配偶者の口座であっても、実際に働いたのが本人であれば、その給与は本人の所得として扱われます。
税務署が特に確認するのは、次のような点です。
・所得を分けることで税負担を軽くしていないか
→ 本人の収入が多い場合に、配偶者の口座へ入れることで税額を減らそうとしていないか。
・実際には働いていない配偶者に給与を払ったように見せていないか
→ いわゆる「名前だけの従業員」として経費を多く見せていないか。
主な問題点
このケースでは、主に次の3つが問題になります。
本人の申告漏れを疑われる
給与は、実際に働いた本人のものです。
配偶者の口座に振り込まれていても、税金を納めるのは本人です。
・本人側:本来申告すべき所得を申告していなかった場合、修正申告が必要になり、追加の税金や延滞税がかかることがあります。
・配偶者側:その給与を配偶者の収入として申告していた場合、申告内容の見直しが必要になることがあります。
配偶者への「贈与」とみなされることがある
本来は本人のお金であるにもかかわらず、配偶者がそれを自分の預金や資産として使っている場合、「本人から配偶者へのプレゼント(贈与)」とみなされる可能性があります。
金額によっては、贈与税の問題につながることがあります。
会社側にも別の問題が出る
税金とは別に、給与(賃金)は原則として、働いた本人に直接支払うことが法律で定められています。
本人以外の口座へ振り込む運用を続けていると、労務管理の面でも問題になるおそれがあります。
特に問題視されやすいケース
次のような状況があると、税務署から強く疑われやすくなります。
・配偶者に実際の勤務がない、または仕事内容に比べて給与が高すぎる
・配偶者名義の口座を、本人が自由に使っている
・税金や社会保険の負担を減らす目的で、意図的に収入を分けている
こうした事情がある場合、単なるミスではなく、意図的な所得隠しと受け取られるおそれがあります。
今すぐ取るべき対応
すでにこのような支払いをしている、または検討中であれば、早めの見直しをおすすめします。
振込先を本人名義の口座に変更する
まず、これからの給与については、本人名義の口座へ振り込む形に改めましょう。
気づいた時点で早めに直すほど、「自分で問題に気づいて是正した」と説明しやすくなります。
配偶者が実際に働いているなら、記録を残す
配偶者が本当に働いているのであれば、出勤記録・業務日誌・シフト表・報告書など、勤務の実態が分かる資料をきちんと残しておきましょう。
過去の申告内容を確認する
過去数年分について、「誰の所得として申告していたか」を振り返ってみてください。
まとめ
給与は、振り込まれた口座の名義ではなく、実際に働いた人の所得として扱われます。
本人の給与を配偶者の口座に入れると、
・本人の申告漏れ
・配偶者への贈与の問題
・会社側の支払い方法の問題
と、複数のリスクが重なることがあります。
「口座が違うだけ」と軽く考えず、支払い方法と申告内容を早めに見直すことが、トラブルを防ぐいちばんの近道です。






