「決めないまま進む」のが一番こわい。原発と再エネ、日本の進路の決め方

電気の作り方は「固定費」と同じ─先送りが招く”やり直しコスト”の話

30秒でわかる要約

何が起きた?

世界の原発新設は中国・ロシアが主役になり、西側諸国は建設の遅れや供給網の弱体化が目立っています。

なぜ大事?

原発は建てた後も燃料・点検・部品供給で長い付き合いになるため、どの国から導入するかで外交関係まで左右されます。

生活にどう関係する?

AI普及で電力需要が増える中、日本が電源構成の方向性を決めないままでいると、電気代・産業立地・雇用にじわじわと影響が出てきます。

結論を先に言うと

いま必要なのは、「日本は電気をどう作る国になるのか」をはっきり決めることです。

原発を進めるのか。
再生可能エネルギー(太陽光や風力など)を中心にするのか。
どちらを選ぶにしても「準備すべきこと」が違います。
決めずにいると、人材も部品も技術も静かに消えていき、後から取り戻そうとしても難しくなります。

・中国とロシアは国家ぐるみで原発を進め、西側との差が開いている
・その原発に頼る国が増えつつある
・AIの普及で電力需要はさらに増える見込み
・日本では人材・技能の伝承が難しくなっている
・だからこそ、方向を決めないことが一番まずい

この順番で、ニュースの背景をほどいていきます。

なぜ起きた?──前提ゼロで読める背景

原発は「建てたら終わり」ではない

原発は建物を作って終わりではありません。
燃料の供給、定期点検、部品交換、トラブル時の支援、そして廃炉(運転をやめる作業)まで、何十年にもわたる長い付き合いになります。

たとえば、スマートフォンを想像してみてください。
本体を買うだけでなく、OSの更新、修理、バッテリー交換、アプリの対応が続きますよね。
原発はその超巨大版であり、しかも期間が何十年単位です。

原発を輸出すると、設計・建設・運転・保守・燃料供給まで関係が続き、100年近い付き合いになり得る。
つまり原発の輸出は、単なるモノの売買ではなく「長期の関係づくり」でもあるのです。

西側が遅れやすいのは「経験の断絶」が一因

西側諸国では長い間、原発の新設が少ない時期が続きました。
すると何が起きるか。設計できる人、作れる工場、品質を確認できる人、工事全体をまとめられる会社─こうした層が薄くなります。

いざ再開しようとしても、ゼロから立て直すには時間もお金もかかる。
中国やロシアが着々と建設を重ねて経験を積む間に、差が開いてしまったわけです。

AIで電力需要が増える、は「地味に効いてくる」話

AIは賢い答えを出すために大量の計算をします。
その計算をする場所がデータセンター(コンピューターがたくさん並んだ建物)です。
世界中でデータセンターが増えており、電力需要を押し上げる要因になっています。

「AIと原発、関係あるの?」と思うかもしれませんが、電気がなければAIは動きません。
安定した大量の電力をどう確保するかは、AI時代のインフラ問題でもあるのです。

生活への影響─良い面と注意点

不安をあおるのではなく、冷静に「起こりうる形」を整理します。

良い面(うまく設計できた場合)

電力が安定しやすい

夜でも雨でも発電できる電源があると、停電リスクや急な電力不足が減ります。

産業が動かしやすい

工場やデータセンターは安定電力を好みます。
電力供給が安定していれば、日本への投資が残りやすくなります。

技術と仕事が残る

方向性を決めて人を育てれば、部品メーカーや現場の仕事も維持しやすくなります。

注意点(見落とすと困る点)

「決めないコスト」が発生する

人材が減り、設備が古くなり、再開したくてもできない状態に陥ります。

海外依存の形が固定される可能性

原発は長期の関係になりやすいため、特定国への依存が強まる国が増えています。

再エネでも「作る力」は必要

中国は原発だけでなく太陽光パネルでも世界トップです。
つまり、どちらを選んでも「作る力」を持つ国が強いという現実があります。

身近な例で考える

例① 家計でたとえると─「固定費」を決めない家

電気の作り方は、家計でいう固定費に近い性質があります。
固定費とは、家賃やスマホ代のように毎月ほぼ必ず出ていくお金のことです。

固定費の方針を決めずに毎月その場しのぎで払っていると、ある日いきなり苦しくなりますよね。
電力政策も同じです。

・原発に寄せるなら:人材育成、部品工場の維持、規制対応に長い時間がかかる
・再エネに寄せるなら:送電網(電気の通り道)、蓄電池、調整力(足りないときの穴埋め手段)への投資が必要

どちらも「準備」という固定費的な支出が先に必要です。
方針を決めないと準備が進まず、後から高くつきます。

例② テスト勉強でたとえると──「教科を決めずに全部ちょっとずつ」

テスト前に、英語も数学も理科も社会も全部をちょっとずつ触るだけでは、なかなか点数が伸びませんよね。
電力政策も似ています。

原発を動かす技能は、訓練に長い時間がかかります。
「やる」と決めたなら、早くから人を育てないと間に合いません。
逆に「やらない」と決めるなら、代わりの仕組み(再エネ+蓄電+送電網強化+省エネ)を太くしておかないと、穴が開きます。

日本はどうする?

日本の選択肢は、大きく3つに分かれます。

原発を一定程度進める(再稼働+建て替え+次世代炉など)

その代わり、技能伝承と供給網の再建を本気で進める必要があります。

再エネ中心へ大きく寄せる(太陽光・風力+蓄電池+送電網+需要調整)

天候による発電量のブレを吸収する仕組みを太くし、安定性を別の方法で確保します。

現実的な「混ぜ方」を決める(比率と期限を明確に)

「2030年代はこう、2040年代はこう」と道筋を固定し、計画的に進めます。

いちばん避けたいのは、「どれも決めずに、なりゆきで進む」 ことです。
原発は人材が減れば元に戻せません。
再エネも送電網や蓄電設備の整備には時間がかかります。
決めないまま進むと、将来に「やり直しコスト」を残すことになります。

まとめ─大事なポイント3つ

世界の原発新設は中国・ロシアが主役

西側諸国は建設の遅れが目立ち、供給網も弱体化しています。

AIで電力需要が増える時代、「その場しのぎ」は通用しにくい

安定した電力供給の仕組みを、どう作るかが問われています。

日本は技能伝承が難しくなりつつある。

だから方向性を早く決める必要がある
原発を進めるにしても、再エネに寄せるにしても、準備には時間がかかります。
「決めないコスト」が一番高くつくのです。