事務負担を考慮して大きな変更点がないということは評価すべきですが、課税の公平性を担保した制度設計にすべき!

 

10月21日の日本経済新聞に自民党税制調査会の宮沢会長が「2017年4月に消費税を10%に引き上げる際の軽減税率導入を明言」したとされています。

また、「公明党が現行の請求書を使った簡易方式を主張している。宮沢氏は公明党案でも企業の事務負担は大きい」という考えを示されています。

10月22日の日本経済新聞には「軽減税率を巡り、商店など事業者の事務負担を軽くする「みなし課税」方式を暫定採用する案が、自民党税制調査会内に浮上してきた」という記事が載っています。

このみなし課税方式は「売上高に占める軽減税率品目の比率を業種ごとに推計する。品目ごとに税率を分けた経理をしなくても売上高をもとに税額をはじき出せる利点がある」とされています。

宮沢会長が中小企業や小規模事業者の事務負担を考慮していることは評価できると思いますが、「みなし課税方式」については個人的に反対です。

例えば、全ての売上のうち生鮮食料品を4割扱う小売店で考えた場合、みなし課税方式の比率を20%で決められたとすると、大幅に損をしてしまうことになります。
<計算例>
実際:生鮮食料品×8%(売上全体の4割)、残りの商品全て10%(売上全体の6割)
みなし課税方式:生鮮食料品×8%(売上全体の2割)、残りの商品全て10%(売上全体の8割)

ほぼ正確な比率を業種ごとに決めることは難しいと言わざるを得ません。同じ業種でもお店によって売上の構成比は違います。それを一律の比率にすることには無理があります。

税制というのは「課税の公平性」という基本的な考え方があります。明らかに得する人と損する人がでてしまう制度は、この原則に反します。

インボイス方式と違い、事務負担を考慮して今のやり方をベースに大きな変更点がないということは評価すべきですが、課税の公平性を担保した制度設計にすべきです。

2017年4月の消費税10%引き上げ時の軽減税率導入を目指すあまり、問題のある制度にしては本末転倒です。
消費税という国民のだれもが関係する税金だからこそ、しっかりとした議論をし、不備のない制度にすることを望みます。