一般社団法人の「実費弁償による受託業務」は収益事業になる?非営利型法人との関係をわかりやすく解説

一般社団法人が委託料を受け取ると課税される?実費弁償と収益事業のポイント

一般社団法人が、他の団体から事務局の仕事などを任されて、その対価としてお金を受け取ることがあります。

こうしたとき、
「お金をもらっている以上、税金のかかる『収益事業』になってしまうのでしょうか」
「かかった費用だけを受け取っているなら、税金はかからないのでしょうか」
「こうした仕事を受けていると、税金面で有利な『非営利型法人』にはなれないのでしょうか」
といった疑問を持たれる方は少なくありません。

結論から先にお伝えすると、一定の条件を満たした「実費弁償(じっぴべんしょう)」による事務処理の受託であれば、税金の計算上、収益事業として扱わずに済む場合があります。
実費弁償とは、簡単にいうと「利益を上乗せしてもうけるためではなく、その仕事に必要なお金を、頼んできた相手に負担してもらう」という考え方のことです。

ただし、注意していただきたい点が2つあります。
ひとつは、「利益が出ていない」「実費くらいしかもらっていない」というだけでは、自動的に税金のかからない扱いになるわけではないということです。
もうひとつは、「実費弁償という形をとってさえいれば、どんな仕事でも税金がかからない」というものでもないということです。

この記事では、こうした受託業務がある一般社団法人・一般財団法人の運営に関わる方(理事や事務局の担当の方など)に向けて、法人税基本通達1-1-11を中心に、できるだけやさしい言葉で内容を整理しています。

この記事は、こんな方に関係があります

・一般社団法人や一般財団法人を運営していて、他の団体から事務局業務や調査・研究などを任され、その対価を受け取っている方
・これから一般社団法人を設立しようとしていて、他団体からの受託業務を予定している方
・税金面で有利な扱いを受けられる「非営利型法人」を目指している、または維持したい方
・これまで法人格を持たない団体(人格のない社団等)として活動していたが、法人化を検討している方

まずは、話の前提となる「非営利型法人」という制度から見ていきましょう。

まず知っておきたい「非営利型法人」とは

一般社団法人・一般財団法人だからといって、税金がまったくかからないわけではありません。
ここは誤解されやすいポイントです。

公益認定(国から「公益性の高い活動をしている」と認められること)を受けていない一般社団法人・一般財団法人は、税金の制度上、大きく次の2つに分かれます。

・一定の条件を満たす「非営利型法人」
・それ以外の一般社団法人・一般財団法人

非営利型法人にあてはまると、税金がかかるのは「収益事業(税金の対象になる特定の事業活動)」から生まれた利益だけになります。
それ以外の活動から得た収入には、原則として法人税がかかりません。

一方、非営利型法人にあてはまらない一般社団法人・一般財団法人は、株式会社などの普通の会社と同じように、原則としてすべての所得に法人税がかかります。

つまり、「うちの法人は非営利型法人の条件を満たしているだろうか」という確認は、税負担に直結する、とても大切なポイントなのです。

「共益的活動を目的とする法人」には、事業の内容についての条件があります

非営利型法人には、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

・非営利性が徹底された法人
・共益的活動を目的とする法人

このうち「共益的活動を目的とする法人」とは、会員から集めた会費などを使って、会員みんなの共通の利益になる活動を行う法人のことです。
たとえば、ある業界の団体が会員から会費を集めて、業界の情報提供や研修会の開催、業界全体の環境整備といった活動を行っているようなケースをイメージすると、わかりやすいと思います。

このタイプの非営利型法人になるためには、いくつかの条件を満たす必要がありますが、その中のひとつに、
「主な事業として、収益事業を行っていないこと」
という条件があります。

ここで問題になりやすいのが、会費とは別に、他の団体から事務処理などを引き受けて、その対価(委託料)を受け取っているケースです。
この委託料が、「主な事業として収益事業を行っていないこと」という条件にどう影響するのか、というのが今回のテーマです。

事務処理を引き受ける仕事は、原則として「請負業」にあたります

税金の制度では、公益法人等(非営利型法人などを含みます)が行う一定の事業を「収益事業」として、法人税の対象にしています。

そして、事務処理を引き受ける業務は、法人税基本通達15-1-27という通達のなかで、「請負業(うけおいぎょう。他から仕事を頼まれて行い、その対価を受け取る仕事のことです)」に含まれることが示されています。

たとえば、
・他の団体から事務局の仕事を引き受ける
・調査や研究を引き受ける
・情報の収集や提供を引き受ける
・検査や検定を引き受ける
といった業務は、その内容によっては、税金の制度上の「請負業」にあたる可能性があります。

つまり、
「公益的な目的でやっているから大丈夫」
「もうけるためにやっているわけではないから収益事業ではない」
と、単純に考えることはできません。
まずは、その業務が制度上の収益事業にあたるかどうかを確認する必要がある、というのが出発点になります。

一定の「実費弁償」であれば、収益事業として扱わない仕組みがあります

ここからが本題です。事務処理を引き受ける業務であっても、一定の条件を満たした「実費弁償」の方法で行われている場合には、特別な取扱いが用意されています。

法人税基本通達1-1-11では、一般社団法人・一般財団法人が事務処理を引き受ける性質の業務を行っている場合に、次の条件を満たしていれば、その業務を収益事業として扱わずに、「主な事業として収益事業を行っていないこと」という条件を判定できるとされています。

・その業務が、法令の規定、行政官庁の指導、業務に関する規則、規約、契約などにもとづいて行われていること
・実費弁償の方法で行われていること
・所轄の税務署長などから、確認を受けていること

このうち、確認を受けられる期間は、おおむね5年以内とされています。
ずっと確認を受けたままにできるわけではなく、一定の期間ごとに区切られている、という点は覚えておいていただきたいところです。

「実費弁償」とは、どういう意味でしょうか

ここでいう実費弁償とは、通達の言葉を借りると、「委託してきた相手から受け取る金額が、その業務に必要な費用の額を超えないこと」をいいます。

かんたんに言い換えると、
「その仕事で利益を上乗せしてもうけるのではなく、その仕事を行うために本当に必要なお金だけを、相手に負担してもらう」
という考え方です。

たとえば、ある一般社団法人が、他の団体から事務局の仕事を引き受けているとします。

この仕事を行うためには、
・担当する職員の人件費
・事務所を使うための費用
・電話代やインターネット代などの通信費
・パソコンのシステムを使うための費用
・書類の印刷費
といった費用がかかります。
こうした「その業務のために必要な費用」をもとに委託料が決められているのであれば、実費弁償にあたる可能性が出てきます。

ただし、ここで注意が必要なのは、「必要な費用」の範囲は、その業務のために直接支払った費用だけとは限らない、ということです。
国税庁が公表している質疑応答事例では、一定の条件のもとで、将来の退職金の支払いに備えて計画的に積み立てる費用についても、実費弁償にあたるかどうかを判断するときの「必要な費用」として扱ってよいとされています。

そのため、「委託料が500万円で、実際にかかった経費が490万円だったから、10万円黒字になった分だけ、実費弁償とは認められない」といった、単純な引き算だけで判断するのではなく、その業務にとって何が必要な費用にあたるのかを、実態に沿って確認することが大切です。

反対に、その業務とは関係のない利益を明らかに上乗せして委託料を決めている場合には、実費弁償とは認められにくくなります。

「赤字だから実費弁償」というわけではありません

ここは特に誤解されやすいところなので、落ち着いて確認しておきましょう。

「この事業は毎年赤字だから、収益事業にはあたらないはずだ」
「利益がほとんど残っていないから、実費弁償にあたるだろう」

このように考えるだけでは、まだ十分ではありません。

先ほどご説明したとおり、法人税基本通達1-1-11の取扱いを受けるためには、実費弁償の方法で行われていることに加えて、その内容について、期間を区切って所轄の税務署長などから確認を受けることが必要とされています。

つまり、
「自分たちの法人としては実費だと思っている」
ということと、
「税金の制度上、実費弁償として正式に確認を受けている」
ということは、分けて考える必要があります。

この確認の手続きを経ていない場合には、たとえ実質的に赤字であっても、そのままでは実費弁償の取扱いを受けられない、という点にご注意ください。

実費弁償であれば、どんな事業でも収益事業から外れるわけではありません

これも、この制度を理解するうえでとても大切なポイントです。

法人税基本通達1-1-11や15-1-28が対象としているのは、あくまで「事務処理を引き受ける性質を持った業務」です。
ですので、単に「利益を取っていない」「実費しか請求していない」というだけで、その法人が行うすべての事業が、収益事業から自動的に除かれるわけではありません。

また、「受託」という形をとっていたとしても、その事業の実質から見て、税金の制度上の別の種類の収益事業にあたると判断される場合には、そちらの事業として、あらためて収益事業にあたるかどうかを考える必要があります。
法人税基本通達15-1-29でも、請負や事務処理の受託という性質を持っていても、その性格から見て請負業以外の収益事業として判断すべき場合には、そちらの事業として扱うことが示されています。

つまり、
「実費弁償=どんな仕事でも税金がかからない」
というわけではない、ということを覚えておいていただければと思います。
まずは業務の中身を確認したうえで、実費弁償に関する取扱いが使えるかどうかを判断していく、という順番になります。

「主な事業」かどうかは、売上高だけで決まるわけではありません

共益的活動を目的とする非営利型法人では、「主な事業として収益事業を行っていないこと」が条件のひとつになっています。
それでは、何をもって「主な事業」と判断するのでしょうか。

法人税基本通達1-1-10では、その法人が、主な事業として収益事業を行うことが通常の状態になっていないかどうかで判定する、とされています。

その際には、
・収入金額
・費用の金額
・そのほか、法人の実態に応じた合理的な指標
などを、総合的に見て判断します。
そのひとつの目安として、合理的な指標で見たときに「収益事業以外の事業」の割合が、おおむね50%を超えるかどうかを見て判定する、という考え方が示されています。

ただし、ここにも大切な注意点があります。国税庁の通達には、収益事業以外の割合がおおむね50%を超えなかったとしても、そのことだけをもって、直ちに「主な事業として収益事業を行っている」と判断するわけではない、という趣旨の注意書きが添えられています。

つまり、
「非収益事業が51%あれば必ず大丈夫」
「49%しかなければ必ずアウト」
という、機械的に線を引けるルールではない、ということです。
実際の事業の中身も含めて、総合的に判断される仕組みになっています。

似ている「1-1-11」と「15-1-28」、何が違うのでしょうか

実費弁償について調べていると、「法人税基本通達1-1-11」と「法人税基本通達15-1-28」という、よく似た2つの通達が出てきます。
混乱しやすいところですので、簡単に整理しておきます。

・1-1-11は、一般社団法人・一般財団法人が「共益的活動を目的とする非営利型法人」の条件を満たしているかどうかを判定する場面での取扱いです。
・15-1-28は、公益法人等が実際に事務処理の受託業務を行っている場合に、その業務を法人税の対象になる収益事業として扱うかどうかを判定する場面での取扱いです。

そして、15-1-28では、非営利型法人が1-1-11の確認を受けている場合には、15-1-28の確認も受けたものとみなす、という取扱いが明記されています。
似ている内容ですが、判定される場面が違う、と理解しておくとわかりやすいと思います。

以前の団体で確認を受けていても、あらためて確認が必要になることがあります

たとえば、法人格を持たない任意団体(いわゆる「人格のない社団等」)が、すでに実費弁償について法人税基本通達15-1-28の確認を受けていたとします。

その後、この団体が新たに一般社団法人を設立した場合、「同じ事業を続けているのだから、以前の確認をそのまま使えるのではないか」と思われるかもしれません。

しかし、法人格を新たに取得する場合には、法人としての組織やガバナンス(意思決定の仕組みなど)が整い、法的な性格も変わることから、実務上は、あらためて事業の実態を税務署に確認してもらうことが望ましいとされています。
以前の確認がそのまま自動的に引き継がれると考えるのではなく、法人化のタイミングで一度、所轄の税務署にご相談いただくことをおすすめします。

同じように、次のようなケースでも、あらためて確認が必要になることがあります。

・公益社団法人・公益財団法人が、公益認定を取り消された場合
・別の種類の非営利型法人の条件を満たさなくなった場合

団体の形が変わるタイミングでは、「以前受けた確認がそのまま続く」とは考えず、あらためて確認の要否をチェックしていただくことをおすすめします。

設立したばかりの法人の、最初の1年目はどうなるのでしょうか

法人税基本通達1-1-11では、原則として「あらかじめ」確認を受けることが定められています。そうすると、「これから設立する法人は、設立前には確認を受けられないから、最初の1年目には使えないのではないか」という疑問が出てきます。

この点について、実務上は、新しく設立する法人の場合には事前に確認を受けることができないため、設立後できるだけすみやかに所轄の税務署長または国税局長に確認の相談を行うことで、設立1年目からこの取扱いの適用について相談に応じてもらえる場合がある、と理解されています。

ただし、「新しく設立した法人なら必ず1年目から使える」と言い切ってしまうのは、正確ではありません。
1年目からこの取扱いを受けたい場合には、設立後できるだけ早い段階で、所轄の税務署に確認・相談していただくことが大切です。

実務では、どんなことを準備しておけばよいでしょうか

実費弁償による受託業務がある一般社団法人・一般財団法人では、次のような点を、あらかじめ整理しておくと安心です。

・誰から、どのような業務を引き受けているか
・契約書、規約、規則などで、業務の内容が明確になっているか
・委託料を、どのような根拠で計算しているか
・その業務のために必要な費用には、具体的に何が含まれるか
・人件費や家賃などの共通の経費を、どのように配分しているか
・受託業務と、それ以外の事業を、経理のうえで区分できているか
・実際の収入と費用のあいだに、大きな差が生じていないか
・所轄の税務署長などから、確認を受けているか
・確認を受けている期間は、いつまでか
・法人の組織、契約の内容、事業の内容に、大きな変更がなかったか

このなかでも特に大切なのは、「なぜ、この委託料の金額になるのか」を、きちんと説明できる状態にしておくことです。
「前の年も500万円だったから、今年も500万円」といった決め方ではなく、「担当職員の人件費がこれくらい、事務所の費用がこれくらい、システムの費用がこれくらい必要なので、この金額になる」というように、委託料と必要な費用のつながりを説明できるようにしておくと安心です。

税務調査で確認されやすいポイント

実費弁償の扱いを受けている団体では、一般的に、次のような点が確認の対象になりやすいと言われています。

・委託料の金額が、どのような計算根拠にもとづいているか
・受託業務にかかった費用と、その他の事業の費用が、きちんと区分して経理されているか
・契約書や規約の内容と、実際の業務の実態が一致しているか
・税務署の確認を受けた期間が、現在も有効な状態かどうか

日ごろから、委託料の算定根拠や経費の内訳がわかる資料を整えておくことが、いざというときの安心につながります。

まとめ

一般社団法人・一般財団法人が、他の団体から事務処理の受託業務を行い、その対価として委託料を受け取っていたとしても、それだけで直ちに非営利型法人になれなくなるわけではありません。

事務処理を引き受ける性質を持った業務が、
・法令、行政官庁の指導、規則、規約、契約などにもとづいて行われていること
・委託してきた相手から受け取る金額が、その業務に必要な費用を超えない、実費弁償の方法になっていること
・所轄の税務署長などから、一定の期間について確認を受けていること
という3つの条件を満たしている場合には、その確認を受けている期間について、その業務を収益事業として扱わずに、「主な事業として収益事業を行っていないこと」という条件を判定することができます。

ただし、次のように考えるだけでは、まだ十分ではない、という点にはあらためてご注意ください。

・利益が出ていなければ大丈夫、という考え方
・実費という名前で請求していれば大丈夫、という考え方
・受託業務であれば、何でも実費弁償の取扱いが使える、という考え方

対象となる業務の内容、契約の内容、委託料の計算根拠、必要な費用の範囲などを確認したうえで、所轄の税務署長などから確認を受ける必要があります。

また、一般社団法人・一般財団法人が非営利型法人にあてはまるためには、実費弁償の問題だけでなく、法律で定められているその他の条件もあわせて満たす必要があります。

そのため、
・これから一般社団法人を設立しようとしている
・受託業務の金額が大きくなってきた
・これまで任意団体だったものを、一般社団法人にしようとしている
・委託料の決め方を変更しようとしている
・事業の内容が大きく変わろうとしている
といったタイミングでは、契約や事業を先に進めてから税金のことを考えるのではなく、できるだけ早い段階で、税金の取扱いを確認しておくことをおすすめします。

※この記事は2026年9月1日時点で確認できる国税庁の法人税基本通達および国税庁公表資料をもとに、一般の方向けに内容を整理したものです。
実際の適用については、法人の定款、規約、契約内容、業務内容、委託料の算定方法、費用負担の実態などにより判断が異なる場合があります。
正確な取扱いや最新の情報については、必ず所轄の税務署にご確認ください。