
事務系社員に支払う販売手数料
「会社の事務員さんが、勤務時間外に頑張って不動産契約を取ってきた!そのお礼に『販売手数料』を支払いたいんだけど、これって税金はどうなるの?」
この「販売手数料」、毎月の給料と同じように考えていいのでしょうか?
実は、税金のルールではちょっと違う扱いになるんです。
今回は、国税庁の定めも参考にしながら、この仕組みをスッキリ解説します!
【結論】それは「給料」ではなく「外交員報酬」です
結論から言うと、ご相談のようなケースで支払う販売手数料は、税法上「給与」ではなく「外交員(がいこういん)報酬」という特別な報酬に分類されます。
「外交員」というと難しく聞こえますが、ここでは「会社の外で、個人事業主のように成果に応じてお仕事をしてくれる人」というイメージです。フリーランスの営業マンに近いですね。
なぜ給料と区別されるかというと、
- 勤務時間外の活動であること
- 契約成立という成果に基づいて支払われること
- 活動経費は本人が負担していること
といった点から、「雇用契約に基づく労働の対価」である給与とは性質が異なると判断されるためです。
税金の計算方法も特別ルール!「12万円」がカギ
「外交員報酬」になると、会社が天引きする税金(源泉徴収税)の計算方法も給料とは変わってきます。ここが一番のポイントです。
国税庁が定める基本の計算式はこうです。
(その月に支払う報酬額 - 12万円) × 10.21% = 源泉徴収する所得税額
なぜ12万円を引くのかというと、外交員は自分で交通費や交際費などの経費を負担しているため、その経費分を大まかに「12万円」とみなして、報酬額から差し引いてくれる、という考え方なんです。
最重要ポイント:給料も一緒にもらっている場合
ただし、この事務員さんは、もちろん会社から毎月の給料ももらっていますよね。
その場合、この「12万円の経費枠」は、まず給料から先に使うというルールになっています。
具体的に見ていきましょう!
具体例でスッキリ理解しよう!
ある事務員Aさんの頑張りで、会社は10万円の販売手数料を支払うことにしました。
ケース①:Aさんの月給が25万円の場合
- Aさんの月給25万円は、経費枠の12万円を大きく超えています。
- この場合、「12万円の経費枠」はすでにお給料で使い切ってしまった、と考えます。
- そのため、販売手数料の10万円からは、もう差し引ける経費枠(控除額)は残っていません。
- したがって、天引きする税金は、販売手数料10万円の全額に対して計算します。
計算式:10万円 × 10.21% = 10,210円
ケース②:Aさんの月給が8万円の場合
- Aさんの月給8万円は、経費枠の12万円に達していません。
- 「12万円の経費枠」のうち、まず給料分の8万円を使います。まだ枠が残っていますね。
残りの経費枠:12万円 - 8万円 = 4万円 - この残った4万円を、販売手数料の10万円から差し引くことができます。
税金の計算対象になる金額:10万円 - 4万円 = 6万円 - この6万円に対して、税率をかけて天引きする税額を計算します。計算式:6万円 × 10.21% = 6,126円
いかがでしょうか?
同じ10万円の手数料でも、月給の額によって天引きする税金の額が変わってくるのです。
まとめ
- 事務員さんなどが勤務時間外・自己負担で営業活動をして得た販売手数料は「外交員報酬」。
- 外交員報酬の税金計算では、経費として「12万円」を差し引ける特別ルールがある。
- ただし、給料ももらっている場合は、12万円の枠は給料から優先的に使う。
- その結果、月給が12万円以上なら手数料全額に、12万円未満なら月給と合わせて12万円を超えた部分に税金がかかる。
会社の経理担当の方はもちろん、手数料を受け取る社員さんご自身も、この仕組みを知っておくと「思ったより手取りが少なかった!」と驚くことがなくなりますね。