
亡くなった方の財産を、本来もらうはずだった人が先に亡くなっていた場合、その人の子どもが『代わりに』財産をもらうという仕組みのお話
野球でいう「ピンチヒッター」をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
本来の選手(相続人)が試合に出られない(先に亡くなっている)ので、その子どもがピンチヒッターとして代わりに出場する(相続する)わけです。
(1)お父さんが亡くなったケース(お子さんのピンチヒッター)
- 亡くなった人: お父さん
- 家族:
お母さん (Aさん) : ご存命
長男 (Bさん) : お父さんより先に亡くなっている
長男のお子さん (Dさん) : ご存命
次男 (Cさん・私) : ご存命
【結論】 誰がどれだけ財産をもらうか? (法律で決まった取り分)
- お母さん (Aさん): 1/2 (半分)
- 次男 (Cさん・私): 1/4 (4分の1)
- 長男のお子さん (Dさん): 1/4 (4分の1)
【なぜこうなるの?】
- まず、亡くなったお父さんの財産は、奥さんであるお母さん (Aさん) が半分 (1/2) もらう権利があります。
これは相続の基本ルールです。 - 残りの半分 (1/2) を、お子さんたちで分けることになります。
- 本来なら、長男 (Bさん) と次男 (Cさん) の2人で、残りの 1/2 を半分こ、つまりそれぞれ 1/4 ずつもらうはずでした。
- でも、長男 (Bさん) はお父さんより先に亡くなっています。
そこでピンチヒッターの出番です! - 長男 (Bさん) がもらうはずだった 1/4 は、そのお子さんである Dさん が「代わりに」もらうことになります。
- その結果、次男 (Cさん) が 1/4、長男のピンチヒッターの Dさん が 1/4 をもらうことになるわけです。
(2)お兄さんが亡くなったケース(ご兄弟のピンチヒッター)
- 亡くなった人: お兄さん (長男)
- 家族:
お父さん・お母さん : 既に亡くなっている
お兄さんにはお子さんがいない
次男 (Xさん・私) : ご存命
長女 (Yさん) : お兄さんより先に亡くなっている
長女のお子さん (Zさん・甥) : ご存命
【結論】 誰がどれだけ財産をもらうか? (法律で決まった取り分)
次男 (Xさん・私): 1/2 (半分)
長女のお子さん (Zさん・甥): 1/2 (半分)
【なぜこうなるの?】
- 亡くなったお兄さんには、奥さんもお子さんもいません。
また、お父さん・お母さんも既に亡くなっています。 - こういう場合、財産は「ご兄弟」がもらうことになります。(相続の順番は、①子、②親、③兄弟姉妹、と決まっています)
- 本来なら、次男 (Xさん・私) と長女 (Yさん) の2人で、財産全部を半分こ、つまり 1/2 ずつもらうはずでした。
- でも、長女 (Yさん) はお兄さんより先に亡くなっていますね。
- そこで、ここでもピンチヒッターの出番です!
- 長女 (Yさん) がもらうはずだった 1/2 は、そのお子さんである Zさん (甥) が「代わりに」もらうことになります。
- その結果、次男 (Xさん) が 1/2、長女のピンチヒッターの Zさん が 1/2 をもらうことになるわけです。
「代わりに相続する(代襲相続)」の仕組みについて
もう少しだけ、「代わりに相続する」仕組みのルールをご説明しますね。
「代わりの相続」が起こる理由
ピンチヒッターが出てくるのは、主に次のような場合です。
- 先に亡くなっている (今回のケース): 財産をもらうはずだった人 (子や兄弟姉妹) が、亡くなった方(財産を残した方)より先に亡くなっている場合。
- 相続する権利を失った (相続欠格・廃除): これは特別なケースですが、法律で定められた重大な理由(例えば、亡くなった方を脅して遺言書を書かせたなど)や、生前に家庭裁判所の手続きで相続人から外された場合です。
※ 注意! 「相続放棄」は違います 「私は財産をもらいません」と自分で相続放棄をした場合は、ピンチヒッター(その人の子ども)は出てきません。
「最初から相続人じゃなかった」と扱われるためです。
お子さん側のピンチヒッターは、どこまでも続く
- 亡くなった方の「お子さん」が先に亡くなっていたら、その子どもである「お孫さん」が代わりになります。(ケース1のパターンですね)
- もし、その「お孫さん」も先に亡くなっていたら?
今度は、お孫さんのお子さん、つまり「ひ孫さん」がさらに代わりに相続します。 - このように、お子さん側の相続は、ピンチヒッターがまたピンチヒッターを呼ぶように、下の世代へどこまでも続いていきます。
ご兄弟側のピンチヒッターは、一代限り
- 亡くなった方の「ご兄弟」が先に亡くなっていたら、その子どもである「甥(おい)・姪(めい)」が代わりになります。(ケース2のパターンですね)
- ただし、こちらは一代限りです!
- もし、その「甥・姪」も先に亡くなっていたとしても、そのお子さん(亡くなった方から見ると「又甥(またおい)」などと呼ばれます)が、さらに代わりに相続することはできません。
重要なポイントのまとめ
相続のピンチヒッター(代襲相続)には、大事な違いが2つあります。
- 亡くなった方の「子」が相続する場合: ピンチヒッターは、下の世代(孫、ひ孫…)へどこまでも続きます。
- 亡くなった方の「兄弟姉妹」が相続する場合: ピンチヒッターは、その子ども(甥・姪)までの一回きりです。
相続はご家庭の事情によって様々です。これはあくまで法律上の基本的なルールです。