会社清算の手続きと実務
中小企業を取り巻く環境は、ここ数年でかなり厳しくなっています。
物価の上昇、金利の上昇、海外情勢の影響、取引先の減少などにより、「このまま続けるより、今のうちに会社を閉じたほうがよいのではないか」と考える経営者も、これから増えていくかもしれません。
ただし、会社は「もうやめます」と言っただけでは終わりません。
会社には、取引先・借入金・未回収の売掛金・税金・従業員・株主など、さまざまな関係が残っています。
そのため、会社を正式に終わらせるには、法律で決められた順番に沿って、きちんと後片づけをする必要があります。
この後片づけの手続きが、一般にいう「清算」です。
1 清算とは何か
清算とは、一言で言えば、会社を終わらせるために、財産と借金を整理する手続きです。
会社は、人間とは別の「法律上の人格」を持っています。
会社名義で契約をしたり、お金を借りたり、物を買ったり、売上を受け取ったりできます。
その会社をいきなり消してしまうと、困る人が出てきます。
たとえば、会社にお金を貸している人がいるのに、会社だけが突然なくなってしまったら、その人はお金を回収できなくなります。
取引先への未払いが残っている場合も同じです。
そこで法律は、「会社を消す前に、まず会社の中身をきちんと整理してください」というルールを置いています。
引っ越しで考えると分かりやすい
長年住んでいた家やお店を引き払うとき、「もう出ます」と言っただけで終わりにはなりませんよね。
家の中には、家具・荷物・まだ払っていない家賃・原状回復の義務など、さまざまなものが残っています。
それらをきちんと片づけて、大家さんや近隣への義務を果たしてから、初めて「出て行った」と言えます。
会社も同じです。会社の中には、
・現金や預金
・売掛金(まだ受け取っていない代金)
・不動産
・借入金
・未払金
・税金
・株主への分配財産
などが残っています。
「もうやめます」と決めただけでは、これらはどこにも行きません。
清算とは、会社という”住まい”を正式に引き払う前に、中に残ったものをひとつひとつ片づける作業だと考えると分かりやすいです。
2 清算は大きく3段階で進む
会社の清算は、大きく分けると次の3段階です。
・第1段階 解散
・第2段階 清算中の処理
・第3段階 残った財産の確定・分配・清算結了
順番に見ていきます。
3 第1段階 解散
まず行うのが「解散」です。
解散とは、通常の営業活動をやめて、会社を閉じる準備段階に入ることです。
株式会社の場合、通常は株主総会で解散を決議します。
この時点で、会社は「事業を続けるための会社」ではなく、「会社を終わらせるための会社」になります。
解散したら、取締役ではなく清算人が中心になる
会社が解散すると、通常の取締役は退任し、代わりに「清算人」が置かれます。
清算人とは、会社をたたむための後片づけをする人です。
清算人の主な役割は次のとおりです。
・会社の財産を現金化する
・借金や未払金を支払う
・税金の申告をする
・残った財産を株主に分配する
・最後に清算結了の登記をする
通常の社長が、引き続き清算人になることもあります。
解散には登記が必要
解散を決めたら、法務局で登記をする必要があります。
ここで重要なのは、税理士だけでなく、司法書士との連携が必要になるという点です。
税理士は税務申告や会計処理の専門家ですが、登記手続きは司法書士の専門分野です。
そのため、会社の清算を進めるときは、税理士と司法書士が連携して動くことが大切です。
特にスケジュール管理が重要です。
税務申告の期限・登記の期限・公告の期間などが重なるため、最初に全体の流れを確認しておかないと、後で慌てることになります。
4 公告について
会社が解散すると、原則として債権者(会社にお金を貸している人や、未払い代金がある取引先)に対して、「会社を清算します。請求がある方は申し出てください」というお知らせをする必要があります。
これを公告といいます。
通常は官報(国が発行する公的な広報誌)に掲載します。
公告には、債権者を保護する意味があります。
会社に請求できる立場の人に、その機会を与えるためです。
実務上は省略されているケースも見かけますが、法律上は必要な手続きです。
近年はコンプライアンス(法令やルールをきちんと守ること)が重視される時代ですので、安易に省略することは望ましくありません。
5 医療法人の解散は特に注意
一般の株式会社であれば、株主総会で解散を決めれば手続きを進められることが多いです。
しかし、医療法人などは違います。
医療法人の場合、都道府県の認可が必要になるケースがあります。し
かも、その認可の機会が年に数回しかないこともあります。
そのため、株式会社の感覚で「来月には解散できるだろう」と考えていると、スケジュールが大きくずれる可能性があります。
医療法人・社会福祉法人・公益法人など、特殊な法人を清算する場合は、最初に必ず手続きの内容と期間を確認する必要があります。
6 解散したときの税務上の大きな注意点
解散すると、税務上も重要な変化が起きます。
特に大事なのは、事業年度が途中で区切られるという点です。
通常、会社には決算期があります。
たとえば3月決算の会社であれば、4月1日から翌年3月31日までが1つの事業年度です。
しかし、事業年度の途中で解散した場合、そこで一度区切りが入ります。
たとえば、3月決算の会社が6月30日に解散した場合、
・4月1日から6月30日まで(解散前の期間)
・7月1日以降の清算期間
というように、税務上の区切りが変わります。
この区切りを意識していないと、申告期限を間違えるおそれがあります。
できれば決算期末に合わせて解散する
実務上は、できるだけ元の決算期末に合わせて解散するのが望ましいです。
たとえば3月決算の会社なら、3月31日に解散するようにします。
そうすれば、余計な途中決算が発生しにくくなり、手続きの手間を減らせます。
もちろん、事情によっては途中で解散しなければならないこともあります。
ただ、日程を自由に選べるのであれば、決算期末に合わせることを検討したほうがよいでしょう。
7 第2段階 清算中の処理
解散したあとは、会社は「清算中の会社」になります。
この期間に行うことは、主に次の2つです。
1.財産を現金化する
2.借金や未払金を支払う
具体的には、
・売掛金を回収する
・在庫を売却する
・不動産を売却する
・借入金を返済する
・未払の税金を支払う
・税理士や司法書士への報酬を支払う
といった処理です。
清算中も必要な範囲で営業活動はできる
解散した会社は、原則として通常の営業活動をする会社ではありません。
ただし、清算のために必要な範囲であれば、一定の取引は可能です。
たとえば、在庫を売却する・売掛金を回収する・資産を処分するといった行為です。
これは「商売を続けるため」ではなく、「会社を終わらせるため」の活動だからです。
8 途中でやっぱり会社を続けたい場合
まれに、いったん解散したあとで「やはり会社を続けたい」という状況が生じることがあります。
この場合、一定の手続きをすれば会社を継続できることがあります。
ただし、これは頻繁に使う手続きではありません。
また、会社が長期間登記をしていなかったために、法務局から「みなし解散」とされてしまうケースもあります。
その場合の回復手段として、会社継続の手続きが問題になることがあります。
9 第3段階 残余財産の確定・分配・清算結了
清算が進み、会社の財産を処分し、借金や未払金の支払いが終わると、最後に残った財産が見えてきます。
この残った財産を「残余財産」といいます。
残余財産とは、会社を片づけたあとに残ったお金や財産のことです。
残余財産が確定したら株主に分配します。
その後、株主総会などで報告し、最終的に「清算結了」の登記をします。
清算結了とは、会社の後片づけがすべて終わったことを意味します。
この登記が終わって、ようやく会社は正式に消滅します。
10 「残余財産が確定する」とはどういうことか
ここは非常に大切なポイントです。
「残余財産が確定する」と聞くと、「株主総会で決算を承認した日のことだろう」と思ってしまう方がいます。
しかし、実務上の考え方は少し違います。
残余財産が確定するとは、基本的には次のすべてが終わった状態のことです。
・財産の処分が終わった
・債権(売掛金など)の回収が終わった
・借金や未払金の支払いが終わった
・株主に分配できる金額が分かる状態になった
つまり、「会議で承認したから確定する」というより、実際に会社の財産と負債の整理が終わり、残りがいくらになるかが分かる状態になったことを意味します。
11 未収の税金がある場合の注意
清算の最後に、税金の還付(納め過ぎた税金が返ってくること)が発生することがあります。
たとえば、法人税や消費税の還付です。
問題は、還付金が実際に振り込まれるまで時間がかかることです。
還付金を会社名義の口座で受け取る必要がある場合、還付金が入るまで清算を終えられないことになります。
そのため実務では、清算人が還付を受ける方法などが検討されます。
ただし、税務署や県税事務所など、役所によって取扱いが異なる場合があります。
清算の終盤では、事前に税務署や自治体に確認しておくことが大切です。
12 税理士報酬・司法書士報酬も忘れない
会社を清算する場合、最後まで残る費用として、税理士や司法書士への報酬があります。
これを残余財産の計算に入れ忘れると、後でお金が足りなくなることがあります。
清算の終盤では、
・税理士報酬
・司法書士報酬
・登記費用
・官報公告費用
・源泉所得税
・地方税の均等割(法人が存在する限り毎年かかる税金)
・その他の未払費用
なども見込んだうえで、残余財産を計算する必要があります。
会社を閉じるからといって、最後の支払いを軽く考えてはいけません。
13 債務超過の場合はどうするか
清算を進めていくと、会社の財産より借金のほうが多いことがあります。
これを「債務超過」といいます。債務超過の場合、誰への借金が残っているかによって対応が変わります。
第三者への借金が残る場合
銀行や取引先など、第三者への借金が残る場合には、通常の清算だけでは済まないことがあります。
場合によっては、特別清算や破産などの手続きが必要になります。
これは税理士だけで判断するのではなく、弁護士の関与が必要になる領域です。
役員や株主からの借入金が残る場合
中小企業でよくあるのは、社長や株主から会社への貸付金(社長が会社に貸しているお金)が残っているケースです。
たとえば、会社の資金繰りが苦しいときに、社長が個人のお金を会社に入れている場合です。
こうした借入金が残っていると、会社は債務超過のままです。
清算結了の登記を進めるためには、社長や株主がその貸付金を放棄する、つまり「もう返さなくてよい」とする処理が必要になることがあります。
これを債権放棄または債務免除といいます。
債権放棄のタイミングはとても重要
ここで注意が必要です。債権放棄を早くしすぎると、会社に「借金を免除してもらった利益」が発生します。
これを「債務免除益」といいます。
会社に利益が出ると、場合によっては税金が発生する可能性があります。
つまり、良かれと思って早めに債権放棄をした結果、余計な税金が生じてしまうことがあるのです。
そのため、債務超過の会社の清算では、債権放棄のタイミングを慎重に考える必要があります。
実務上は、清算の最後の段階で行うべきケースが多いです。
14 残余財産を株主に分配すると税金が関係する
会社の財産を整理して、最後にお金が残った場合、そのお金は株主に分配されます。
ここで、税務上、非常に重要な問題が出てきます。
それが「みなし配当」です。
みなし配当とは
会社が株主に残余財産を分配すると、その一部は税務上「配当」とみなされることがあります。
通常の配当ではなくても、税金の世界では配当として扱う、という意味でみなし配当と呼びます。
たとえば、株主が会社に出資した金額を超えてお金を受け取る場合、その超えた部分は「配当のようなもの」と考えられます。
この場合、会社には源泉徴収の義務が生じることがあります。
源泉徴収とは、お金を支払う側があらかじめ税金分を差し引いて国に納めるしくみです。
源泉徴収税率は、原則として20.42%です。
分配日は慎重に決める
残余財産を分配する日をいつにするかは、非常に重要です。
なぜなら、分配を行うと税務申告の期限にも影響するからです。
残余財産の分配がある場合、申告期限が短くなることがあります。
そのため、「お金が残ったから、先に株主に払ってしまおう」と安易に進めるのは危険です。
分配する前に、
・みなし配当が発生するか
・源泉徴収が必要か
・申告期限はいつか
・納付期限はいつか
・分配後に支払う費用は残っていないか
を必ず確認する必要があります。
15 清算では税理士の関与が重要
会社の清算は、登記手続きだけで終わるものではありません。
むしろ税務上の判断を間違えると、思わぬ税金や申告漏れが発生することがあります。
特に注意すべきなのは、
・解散時の申告
・清算中の申告
・残余財産確定時の申告
・みなし配当の源泉徴収
・欠損金の繰戻し還付(後述)
・期限切れ欠損金の利用(後述)
・債務免除益の処理
・親会社・子会社間の清算
などです。
会社をたたむときは、通常の決算よりも特殊な判断が増えます。
そのため、清算の経験がある税理士と、商業登記に慣れた司法書士が連携して進めることが大切です。
16 役員退職金を検討する場面
会社を清算するとき、何もしなければ株主に残余財産が分配され、みなし配当が発生する場合があります。
このようなとき、検討されることがあるのが役員退職慰労金(役員退職金)です。
会社を解散すると、取締役は退任します。
その退任に伴い、役員退職金を支給することがあります。
役員退職金を支給すると会社の財産が減ります。
その結果、株主に分配される残余財産が減り、みなし配当を抑えられる場合があります。
ただし、役員退職金は自由にいくらでも支給してよいわけではありません。
金額が不相当に高いと、税務上、損金(経費)として認められない可能性があります。
つまり、「会社にお金が残っているから、全部退職金で払ってしまおう」という考え方は危険です。
役員退職金は、勤続年数・役職・功績・会社の規模などを踏まえた適正な金額を、税理士と相談しながら検討する必要があります。
17 欠損金の繰戻し還付
会社が赤字になった場合、一定の要件を満たせば、過去に納めた法人税の一部を返してもらえる制度があります。
これを「欠損金の繰戻し還付」といいます。
簡単に言えば、「前の年は黒字で税金を払ったけれど、今年は赤字になったので、前に払った税金の一部を返してください」という制度です。
通常は中小企業などに限って使える制度ですが、解散の場合には通常とは違った扱いが認められることがあります。
解散時は対象になる赤字の範囲に注意
解散の場合、当期の赤字だけでなく、解散の日の前1年以内に終了した事業年度の赤字も対象になることがあります。
このあたりは期間計算が非常に細かく、1日違いで結論が変わる可能性があります。
そのため、解散日を決めるときには、
・決算期
・過去の黒字
・直近の赤字
・還付の可能性
・申告期限
をあわせて検討する必要があります。
還付請求書の提出方法にも注意
欠損金の繰戻し還付を受けるには、確定申告書だけでなく還付請求書の提出が必要です。
電子申告の場合、提出方法を間違えると還付請求が認められない可能性があります。
特に、PDFで添付すればよいのか、専用の形式で提出する必要があるのかについては、慎重に確認する必要があります。
実務上は、税務ソフト任せにせず、「還付請求書が正しい形式で提出されているか」を必ず確認することが大切です。
ここを間違えると、本来受けられるはずの還付を受けられず、税理士の責任問題になる可能性もあります。
18 期限切れ欠損金の利用
清算中の会社で特に重要なのが、「期限切れ欠損金の利用」です。
通常、会社の赤字は一定期間しか繰り越せません。
期間が過ぎた赤字(欠損金)は、通常の会社では税務上使えなくなります。
しかし、清算中の会社では、一定の要件を満たすと、この期限切れの赤字を使える場合があります。
なぜ期限切れ欠損金が重要なのか
清算の場面では、債務免除益が発生することがあります。
たとえば、社長から会社への貸付金1,000万円を放棄した場合、会社側では「1,000万円の借金を返さなくてよくなった」という利益(債務免除益)が発生します。
普通に考えると、この利益に税金がかかる可能性があります。
しかし、会社が実質的に債務超過で、残余財産がない場合には、期限切れ欠損金を使って課税を抑えられることがあります。
つまり、期限切れ欠損金は、清算時の余計な課税を防ぐための重要な制度です。
「残余財産がない」とはどういうことか
期限切れ欠損金を使うには、基本的に「残余財産がないと見込まれる」ことが必要です。
これは、会社を清算した場合に、株主へ分配する財産が残らない状態をいいます。
単に帳簿上の数字を見るだけでは足りません。
実務上は、資産を時価で評価し直して、実際に会社にどれだけ財産が残るかを確認します。
たとえば、
・回収不能な売掛金
・実在しない資産
・価値の下がった不動産
・売れない在庫
などがある場合、帳簿上の金額と実際の価値が大きく違うことがあります。
そのため、清算時には実態に合わせた貸借対照表(会社の財産と負債の一覧表)を作ることが重要です。
19 残余財産がゼロでも対象になる
「残余財産がない」と聞くと、債務超過(財産よりも借金が多い状態)でなければならないと思うかもしれません。
しかし、残余財産がちょうどゼロの場合でも、期限切れ欠損金の利用対象になると考えられています。
つまり、株主に分配する財産がないのであれば、債務超過でなくても制度の対象になる可能性があります。
この点は、清算の実務では非常に重要です。
20 古い不良債権や架空資産の処理
古い会社では、帳簿上は資産として残っているものの、実際には価値がないものが残っていることがあります。
たとえば、
・何年も回収できていない売掛金
・実際には存在しない在庫
・過去の粉飾決算で作られた架空資産
・回収不能な貸付金
などです。通常の会社がこうしたものを突然損金処理(経費として計上すること)すると、税務上問題になることがあります。
「なぜ今年度の損失なのか」と指摘されるからです。
しかし、清算中の会社では、期限切れ欠損金の制度を使いながら整理できる場合があります。
ただし、処理のタイミングや説明資料が非常に重要です。
安易に損金処理をすると、税務調査で否認されたり、税理士の責任問題になったりする可能性があります。
21 100%子会社を清算する場合
親会社が100%保有している子会社を清算する場合には、さらに特殊な論点があります。
子会社に青色欠損金(青色申告をしている会社が持つ赤字の繰越額)が残っている場合、その欠損金を親会社が引き継げることがあります。
これは、100%グループ内では親会社と子会社を一体として考える面があるためです。
ただし、どんな場合でも引き継げるわけではありません。
特に重要なのは、完全支配関係があるかどうかです。
一部でも個人株主が混じっている場合や、完全支配関係がない場合には処理が変わります。
また、子会社株式の消滅損の扱い・現物分配・含み損資産の取扱いなども絡むため、親子会社間の清算はかなり専門的な判断が必要です。
22 債権放棄をした側の貸倒処理
清算される会社にお金を貸していた側では、その債権(貸したお金を返してもらう権利)をどう処理するかが問題になります。
たとえば、親会社が子会社に貸付金を持っている場合、子会社が清算されるとその貸付金は回収できないことがあります。
この場合、親会社側で貸倒損失(回収できなくなった損失)として処理できるかどうかを検討します。
ただし、単に「回収できなさそうだから損にします」というだけでは不十分です。税務上は、
・本当に回収不能なのか
・回収努力をしたのか
・債権放棄に合理的な理由があるのか
・寄附金とみなされないか
を確認する必要があります。
特に親子会社間では、税務署から「本当は寄附金ではないか」と見られる可能性があります。
そのため、債権放棄をする場合には、経緯や理由をきちんと文書で残しておくことが大切です。
23 親会社が子会社の整理費用を負担する場合
子会社を清算するには費用がかかります。
しかし、子会社にお金が残っていない場合、親会社がその費用を負担することがあります。
この場合、「親会社が子会社にお金をあげたのだから寄附金ではないか」という問題が出ます。
ただし、子会社を整理しなければ親会社にもっと大きな損失が発生するような場合には、税務上、寄附金ではなく損失として認められることがあります。
たとえば、
・子会社を放置すると信用問題になる
・取引先への影響が大きい
・親会社が保証債務を負っている
・早く整理しないと損失が拡大する
といった事情がある場合です。
このような場合も、なぜ親会社が負担する必要があったのかを説明できる資料を残しておく必要があります。
24 清算で特に注意すべき実務ポイント
ここまでの内容を、実務上の注意点として整理します。
清算はすぐには終わらない
会社は、解散を決議すれば終わりではありません。
解散後に、財産の処分・債務の弁済・申告・分配・登記などが必要です。
特に公告期間や税務申告の期限があるため、最低でも数か月はかかると考えておく必要があります。
税理士と司法書士の連携が必要
清算には、税務と登記の両方が関係します。
税理士だけでも司法書士だけでも、全体を安全に進めるのは難しいです。
初期段階で両者が連携し、スケジュールを共有することが重要です。
解散日は慎重に決める
解散日によって、申告期間や税務処理が変わります。
できれば決算期末に合わせると手続きが簡単になることがあります。
ただし、欠損金の繰戻し還付などを考える場合は、別の観点から日付を検討する必要もあります。
債務免除はタイミングが重要
社長借入金などを放棄する場合、タイミングを間違えると税金が発生することがあります。
債務免除は、清算の最後の段階で慎重に行うべきです。
残余財産の分配前に税務確認をする
株主にお金を分配すると、みなし配当や源泉徴収が発生することがあります。
分配してから気づいても遅い場合があります。
必ず分配前に税務上の確認をしてください。
還付請求は提出方法まで確認する
欠損金の繰戻し還付を受ける場合、申告書だけでなく還付請求書が必要です。
電子申告の場合、提出形式を間違えると還付が認められない可能性があります。
提出したつもりでも、税務署側では提出扱いになっていないことがあります。
古い不良資産の処理は慎重に行う
帳簿上だけ残っている古い資産や不良債権は、清算時に整理することがあります。
ただし、処理の仕方を間違えると税務上否認される可能性があります。
清算時の実態貸借対照表を作り、根拠を残すことが重要です。
25 会社をたたもうと考えている経営者の方へ
「そろそろ会社を閉じることも考えなければ」と思い始めている方に、まず知っておいていただきたいことがあります。
会社をたたむ手続きは、「廃業届を出せば終わり」というものではありません。
会社には、預金・売掛金・借入金・未払金・税金など、さまざまなものが残っています。
これらをきちんと整理してから、会社は正式に終わりを迎えます。
この整理作業を「清算」といいます。
清算の流れを簡単にお伝えすると、まず株主総会などで会社の解散を決めます。
その後、清算人が会社の財産を現金化し、借金や未払金を支払い、残った財産があれば株主に分配します。
最後に「清算結了」の登記をして、会社は正式に消滅します。
ただし、清算には税務上の注意点が数多くあります。
たとえば、会社を解散すると事業年度が途中で区切られ、通常とは異なるタイミングで申告が必要になります。
また、残った財産を株主に分配する際には、みなし配当として源泉徴収が必要になる場合があります。
社長がこれまで会社に貸し付けてきたお金を放棄する場合も、そのタイミングを間違えると思わぬ税金が発生することがあります。
「会社を閉じよう」と決めたら、実際に動き出す前に、まず税理士と司法書士に相談し、全体のスケジュールを一緒に確認することをお勧めします。
特に、解散日をいつにするか・借入金をどう整理するか・株主に分配できる財産があるかどうかは、税負担に大きく影響します。
会社を閉じる決断は、経営者として本当に重いものだと思います。
だからこそ、最後の後片づけこそ丁寧に、順番を守って進めていただきたいと考えています。
おわりに
清算の実務は、通常の決算とはかなり異なります。
通常の決算は「会社がこれからも続くこと」を前提にしています。
一方、清算は「会社を終わらせること」を前提にしています。
そのため、同じ会計・税務であっても、考え方がまったく変わります。
特に中小企業では、社長借入金・古い売掛金・帳簿上だけ残っている資産・過去の欠損金などが複雑に絡み合います。
清算は、いわば会社の「最後の健康診断」と「遺品整理」を同時に行うようなものです。
最後だからこそ、雑に処理してはいけません。
最後だからこそ、きちんと順番を守る必要があります。
経営者にとって、会社を閉じる決断は重いものです。
だからこそ専門家側は、難しい言葉を並べるのではなく、「何を、いつまでに、どの順番で行うのか」を分かりやすく示すことが大切だと考えています。
この記事は作成時点の情報に基づいています。
実際の適用には個別の判断が必要です。
詳細は税務署にご確認ください。






