iDeCoは家族の節税に使える?主婦(夫)が始める前に知っておきたい所得控除の考え方
「iDeCoは掛金が所得控除になるから、節税になる」
iDeCoについて調べていると、このような説明を目にすることがあります。
たしかに、iDeCoには税制上のメリットがあります。ただし、夫婦で考える場合には少し注意が必要です。
たとえば、専業主婦(夫)や、扶養の範囲内で働いている人がiDeCoに加入するケースです。
「家計のお金は夫婦で一緒なのだから、妻のiDeCo掛金を夫の所得から控除できるのでは?」
そう思う人もいるかもしれません。
しかし、iDeCoの所得控除は、そのような仕組みにはなっていません。
今回は、夫婦でiDeCoを考えるときに知っておきたい、「誰の所得から控除できるのか」というポイントを整理します。
iDeCoの掛金は「所得控除」の対象になる
まず、iDeCoの税制上のメリットから確認してみましょう。
iDeCoで支払った掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。
名前は少し難しく感じますが、考え方はそれほど複雑ではありません。
所得控除とは、税金を計算するときに、一定の金額を所得から差し引ける仕組みです。
iDeCoの場合は、その年に支払った掛金がそのまま所得控除の対象になります。
たとえば、給与などによる所得があり、そこからiDeCoの掛金を差し引くことができれば、税金を計算するときの所得を小さくできます。
その結果、所得税や住民税の負担が軽くなる場合があります。
iDeCoで「節税できる」といわれる理由の一つが、この仕組みです。
ただし、ここで大切なのが、「誰の所得から差し引けるのか」という点です。
所得控除を使えるのは「加入者本人」だけ
夫婦のお金を一緒に管理している家庭では、「妻のiDeCoだけれど、家計の主な収入源は夫の給与」ということもあるでしょう。
それでも、妻がiDeCoの加入者であれば、その掛金を夫の所得から控除することはできません。
iDeCoの掛金による所得控除は、加入している本人の所得に対してだけ使う仕組みだからです。
つまり、
・妻のiDeCoは、妻本人の所得控除
・夫のiDeCoは、夫本人の所得控除
と考えるとわかりやすいでしょう。
夫婦だからといって、一方のiDeCoの所得控除を、所得の多いもう一方へ移すことはできません。
家計としては同じ財布からお金を出している感覚でも、税金の計算では夫婦それぞれを分けて考える必要があります。
家計の収入源が配偶者でも、控除を移すことはできない
専業主婦(夫)の家庭では、夫婦のどちらかの収入が家計の中心になっていることがあります。
たとえば、夫の給与を中心に生活し、その家計の中から妻のiDeCo掛金を準備しているケースです。
家計全体で考えると、「実質的には夫の収入から出ている」と感じるかもしれません。
しかし、それを理由に妻のiDeCo掛金を夫の所得から控除することはできません。
大切なのは、お金が家計のどこから出てきたかではなく、iDeCoの加入者が誰なのか、ということです。
この点は、掛金の支払い方にも表れています。
iDeCoの掛金は、加入者本人名義の預金口座から引き落とす形になっており、配偶者や家族名義の口座は使えません。
これは第3号被保険者(一般的には、厚生年金に加入している会社員や公務員などに扶養されている一定の条件を満たす配偶者のこと)に限った話ではなく、iDeCoに加入するすべての人に共通するルールです。
なお、専業主婦(夫)だからといって、必ず第3号被保険者になるわけではありません。
年齢や配偶者の加入している年金制度、収入などによって立場は変わります。
「専業主婦(夫)」という働き方と、「第3号被保険者」という年金制度上の区分は、分けて考えておくとよいでしょう。
課税所得がない場合、掛金の所得控除による節税効果はない
ここは、専業主婦(夫)や収入の少ない人がiDeCoを考えるときに、特に重要なポイントです。
所得控除は、税金を計算するときの所得を減らす仕組みです。
そのため、もともと税金がかかる「課税所得」がなければ、iDeCoの掛金を所得から差し引いても、所得税や住民税をさらに減らすことはできません。
ここでいう課税所得とは、単純な給与や収入の金額そのものではありません。
収入から必要な計算を行い、さらに基礎控除などの所得控除を差し引いたあとに、税金を計算する対象として残る金額です。
そのため、「少し収入がある=必ずiDeCoで節税できる」とは限りません。
たとえば、妻にパート収入があったとしても、各種控除によって課税所得がなく、所得税や住民税がかかっていない場合があります。
その状態でiDeCoに加入しても、掛金による所得控除で税金をさらに減らす効果はありません。
そして、「妻には課税所得がないから、その分の控除を夫が使おう」ということもできません。
iDeCoの所得控除は、あくまで加入している本人のものだからです。
主婦(夫)だから節税できない、という意味ではない
一方で、「主婦(夫)がiDeCoをしても所得控除は意味がない」と一律に考える必要もありません。
主婦(夫)という言葉は、税金の制度上の正式な区分ではないからです。
たとえば、パートやフリーランスなどで働いていて、加入者本人に課税所得があり、所得税や住民税を負担している人もいます。
その場合は、本人が支払ったiDeCoの掛金を所得から控除することで、税負担が軽くなる可能性があります。
つまり、見るべきなのは、「主婦(夫)かどうか」ではなく、「加入者本人に課税所得があるかどうか」です。
同じように見える家庭でも、働き方や所得の状況によって、iDeCoの税制上のメリットは変わります。
「iDeCoなら必ず節税になる」と考えないことも大切
ここまで読むと、「課税所得がないなら、iDeCoをする意味はないのでは?」と思うかもしれません。
ただ、iDeCoを考えるときは、掛金の所得控除だけで判断しないことも大切です。
iDeCoは、老後に向けて自分で資産を準備していくための制度です。
税制上のメリットも、掛金を支払うときだけではありません。
一方で、原則として老後資金のための制度なので、普通預金のように必要なとき自由に引き出せるわけではありません。
また、選んだ運用商品によっては、資産が増えることもあれば減ることもあります。
投資には、結果が上下する可能性があります。
そのため、「節税になるらしいから始める」というより、次のような点を整理したうえで考えることが大切です。
・自分の場合は、どのメリットを受けられるのか
・老後まで使わないお金として積み立てても、家計に無理はないか
・値下がりする可能性があっても続けられそうか
夫婦では「家計」と「個人の税金」を分けて考える
夫婦でお金を管理していると、日常生活では「家のお金」として一つに考えることが多いでしょう。
食費や住宅費、光熱費なども、どちらの収入から払ったのかを細かく分けていない家庭は少なくありません。
しかし、税金やiDeCoの制度では、夫婦であってもそれぞれ一人の個人として扱われる場面があります。
iDeCoの所得控除も、その一つです。
たとえば、家計の主な収入源が夫であったとしても、妻本人のiDeCo掛金を夫の所得から控除することはできません。
夫婦でiDeCoを考える場合は、「家計として毎月いくら積み立てられるか」という視点と、「それぞれ本人がどの税制上のメリットを受けられるか」という視点を分けて考えてみると、制度を理解しやすくなります。
まとめ:iDeCoの所得控除は「加入者本人のもの」
iDeCoの掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。
ただし、夫婦であっても、所得控除を自由に分けたり、相手に移したりすることはできません。大切なのは、次の点です。
・iDeCoの掛金を所得控除できるのは、加入者本人だけ
・妻のiDeCo掛金を夫の所得から控除することはできない
・夫のiDeCo掛金を妻の所得から控除することもできない
・掛金は加入者本人名義の口座から支払う(第3号被保険者に限らず全員共通)
・専業主婦(夫)だからといって、必ず第3号被保険者になるわけではない
・加入者本人に課税所得がなければ、掛金の所得控除による税負担軽減効果はない
iDeCoというと、「節税」という言葉が目につきやすいかもしれません。
しかし、税制上のメリットは誰にとっても同じではなく、収入や働き方、課税所得の有無によって変わります。
夫婦で考える場合も、「家計全体では誰のお金か」だけではなく、「iDeCoに加入する本人の所得や税金はどうなっているか」まで確認してみることが大切です。
iDeCoをするかどうかを急いで決める必要はありません。
まずは自分の場合にどのようなメリットがあり、どんな注意点があるのかを、仕組みを一つずつ理解しながら考えていけば十分です。
なお、iDeCoの税制上の取り扱いは、加入区分や制度改正によって変わることがあります。
実際に加入を検討する際は、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)で最新の情報を確認することをおすすめします。






