借り上げ社宅の家賃ルールをわかりやすく解説|50%基準と計算方法
会社が従業員のために社宅や寮を用意することは、住宅費の負担を軽くできる、魅力的な福利厚生です。
採用活動や従業員の定着にも役立つため、借り上げ社宅の導入を検討している会社も多いのではないでしょうか。
ただし、従業員から受け取る社宅家賃が一定の金額より少ない場合には、会社が負担した家賃の一部が「給与」として扱われることがあります。
給与として扱われると、毎月の源泉所得税や年末調整に反映しなければなりません。
そこで重要になるのが、税務上の家賃である「賃貸料相当額」です。
この記事では、従業員に社宅や寮を貸す場合について、次の点を分かりやすく説明します。
・従業員からいくら家賃を受け取ればよいのか
・賃貸料相当額をどのように計算するのか
・借り上げ社宅では、どの資料が必要になるのか
・マンションでは、どのように計算するのか
・給与から社宅家賃を天引きするときの注意点
・所得税と社会保険の違い
・消費税の取扱い
まず結論|賃貸料相当額の50%以上を受け取ることが基本です
会社が従業員に社宅や寮を貸す場合、従業員から受け取る1か月分の家賃が、税務上計算した「賃貸料相当額」の50%以上であれば、原則として社宅による利益を給与として課税する必要はありません。
一方、従業員から受け取る家賃が賃貸料相当額の50%未満の場合には、原則として、賃貸料相当額と実際に受け取った家賃との差額が給与として課税されます。
また、従業員から家賃をまったく受け取らず、無料で貸している場合には、原則として賃貸料相当額の全額が給与課税の対象になります。
たとえば、賃貸料相当額が月額2万円である場合を考えてみましょう。
従業員から月額1万円以上を受け取っていれば、賃貸料相当額の50%以上です。
そのため、原則として給与課税は生じません。
一方、従業員から受け取る家賃が月額8,000円であれば、次の金額が給与として扱われます。
2万円-8,000円=1万2,000円
ここで注意したいのは、50%まで不足している2,000円だけが課税されるわけではない、ということです。
50%基準を下回ると、原則として「賃貸料相当額と実際に受け取った家賃との差額」が課税対象になります。
なぜ、安い社宅が給与として扱われるのでしょうか
給与というと、毎月振り込まれる給料や賞与を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、税務上の給与には、現金で支払われるものだけでなく、会社から物やサービスを無料または安い金額で提供してもらったことによる利益も含まれます。
このような利益を「経済的利益」または「現物給与」といいます。
たとえば、従業員が自分で住宅を借りれば月額10万円かかるところ、会社が用意した住宅に月額1万円で住めたとします。
従業員は、通常より少ない負担で住宅を利用できています。
そのため、税務上の基準よりも負担額が少ないときは、その利益の一部を給与と考える仕組みになっています。
ただし、社宅には福利厚生としての性格もあります。
そこで、従業員が税務上の賃貸料相当額の50%以上を負担している場合には、会社の負担が残っていても、原則として社宅による経済的利益はないものとして扱われます。
この記事の50%基準は「従業員」が対象です
この記事で説明する50%基準は、一般の従業員、つまり税務上の「使用人」に社宅や寮を貸す場合の取扱いです。
代表取締役や取締役などの役員に社宅を貸す場合には、別のルールが適用されます。
役員社宅では、従業員社宅のように「賃貸料相当額の50%以上を受け取ればよい」とは限りません。
住宅の広さや構造、自社所有か借り上げか、一般的な社宅といえない豪華な住宅かどうかなどによって、賃貸料相当額の計算方法が変わります。
中小企業では、社長やその家族が、会社名義で借りた住宅に住んでいることもあります。
その場合は、従業員向けの50%基準をそのまま使わず、最初に次の点を確認しましょう。
・入居者は一般の従業員か
・入居者は代表取締役や取締役などの役員か
・使用人兼務役員(部長や工場長のように、役員としての肩書きを持ちながら、実務は一般社員と同じように行っている人)に当たるか
・住宅は自社所有か、借り上げか
入居者の立場を間違えると、計算方法そのものが変わってしまいます。
従業員社宅の賃貸料相当額の計算方法
従業員に貸している住宅の賃貸料相当額は、次の3つの金額を合計して計算します。
賃貸料相当額の計算式
賃貸料相当額(月額) =①建物の固定資産税の課税標準額×0.2% +②12円×建物の総床面積÷3.3平方メートル +③敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
この合計額が、税務上の1か月分の家賃になります。
①建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
建物について、固定資産税の課税標準額に0.2%を掛けます。
ここで使うのは、次の金額ではありません。
・建物を購入した金額
・建物の帳簿価額
・減価償却後の残高
・不動産会社が査定した時価
・会社が家主に払っている家賃
・固定資産税として実際に納めた税額
原則として、固定資産課税台帳に登録されている固定資産税の課税標準額を使います。
②12円×建物の総床面積÷3.3平方メートル
建物の床面積について、3.3平方メートル当たり12円を加算します。
3.3平方メートルは、おおむね1坪です。
たとえば、建物の総床面積が66平方メートルであれば、次のように計算します。
12円×66平方メートル÷3.3平方メートル =12円×20 =240円
③敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
住宅が建っている土地について、固定資産税の課税標準額に0.22%を掛けます。
マンションの一室を貸す場合も、建物だけでなく、その住戸に対応する敷地部分を確認する必要があります。
具体例で計算してみましょう
次のような社宅を従業員に貸しているとします。
・建物の固定資産税の課税標準額:800万円
・建物の総床面積:66平方メートル
・敷地の固定資産税の課税標準額:400万円
これは、計算方法を説明するための仮の例です。
建物の課税標準額に基づく金額 800万円×0.2%=1万6,000円
床面積に基づく金額 12円×66平方メートル÷3.3平方メートル=240円
敷地の課税標準額に基づく金額 400万円×0.22%=8,800円
賃貸料相当額の合計 1万6,000円+240円+8,800円 =2万5,040円
この社宅の賃貸料相当額は、月額2万5,040円です。
給与課税されないための50%基準は、次のようになります。
2万5,040円×50%=1万2,520円
したがって、従業員から月額1万2,520円以上の家賃を受け取っていれば、原則として社宅による利益を給与として課税する必要はありません。
月額1万3,000円を受け取る場合
1万3,000円は、賃貸料相当額2万5,040円の50%以上です。
そのため、原則として給与課税は生じません。
月額1万円を受け取る場合
1万円は、賃貸料相当額2万5,040円の50%未満です。
この場合には、原則として次の差額が給与として課税されます。
2万5,040円-1万円=1万5,040円
無料で貸す場合
従業員から家賃を受け取っていないため、原則として賃貸料相当額2万5,040円の全額が給与課税の対象になります。
借り上げ社宅でも、実際の家賃だけでは判定できません
社宅には、大きく分けて次の2種類があります。
・会社が所有する住宅を貸す「社有社宅」
・会社が家主から借り、従業員に貸す「借り上げ社宅」
借り上げ社宅の場合、会社は家主に毎月家賃を支払います。
そのため、「会社が家主に払っている家賃の半分を従業員から受け取ればよい」と考えやすいのですが、一般の従業員に対する社宅では、原則としてその方法では判定しません。
借り上げ社宅であっても、建物と敷地の固定資産税の課税標準額、建物の総床面積を使って賃貸料相当額を計算します。
会社が家主に支払っている実際の家賃の金額とは、直接関係なく計算します。
たとえば、会社が家主に月額12万円を支払っている場合でも、税務上計算した賃貸料相当額が月額2万円であれば、従業員から受け取る家賃が1万円以上かどうかで50%基準を判定します。
会社が支払う12万円の半分である6万円を、必ず従業員から受け取る必要があるわけではありません。
借り上げ社宅は、契約前に資料を確認しましょう
借り上げ社宅では、会社は物件の所有者ではありません。
そのため、通常は会社の手元に固定資産税の課税明細書がありません。
国税庁も、借り上げ社宅については、貸主などから固定資産税の課税標準額等を確認する必要があるとしています。
物件を契約する前に、家主や管理会社へ次の情報を提供してもらえるか確認しておくと安心です。
・建物の固定資産税の課税標準額
・敷地の固定資産税の課税標準額
・建物の総床面積
・対象となる年度
・マンションの場合は対象住戸に対応する金額
・全体の金額しか分からない場合の按分方法
固定資産税の資料には、家主の個人情報や、他の住戸に関する情報が含まれていることがあります。
資料そのものを受け取ることが難しい場合には、計算に必要な数字だけを記載した書面を作ってもらう方法もあります。
契約後に依頼すると、家主や管理会社から「その情報は提供できない」と言われることがあります。
できれば、社宅として借りることを決める前に、必要な情報を確認しておきましょう。
マンションは、建物全体の数字をそのまま使わないようにします
マンションの一室を社宅として貸す場合、固定資産税の課税標準額が建物全体や敷地全体について決められていることがあります。
この場合は、建物全体や土地全体の金額を、そのまま一室の賃貸料相当額の計算に使うことはできません。
建物や土地の状況に応じて、対象となる住戸分を合理的に分ける、いわゆる「按分」が必要です。
たとえば、次のような資料を確認します。
・対象住戸の専有面積
・建物全体の床面積
・共用部分に対する持分
・敷地権の割合
・固定資産税の課税明細書
・区分所有者に対応する評価証明書
マンションでは、専有部分だけでなく、廊下、階段、エントランスなどの共用部分に対応する持分が関係することがあります。
そのため、管理会社から受け取った床面積や課税標準額が、次のどちらなのかを確認しましょう。
・対象住戸分として計算済みの数字
・建物全体または土地全体の数字
全体の数字である場合には、床面積、敷地権割合など、合理的な基準で対象住戸分を計算します。
どの基準で按分することが適切かは、資料の内容や物件の登記状況によって異なります。
判断が難しい場合には、自治体へ確認しておくと安心です。
固定資産税の課税標準額とは
固定資産税の課税標準額とは、原則として、毎年1月1日時点の固定資産の価格として固定資産課税台帳に登録された価格を基にした金額です。
土地と家屋は、原則として3年ごとに評価の見直しが行われます。
名称が似ているため、次の金額と取り違えないようにしましょう。
・固定資産税の納税額
・固定資産税評価額
・固定資産税の課税標準額
・不動産の購入金額
・相続税の路線価
・帳簿に計上している建物の残高
自治体の固定資産税課税明細書には、「価格」「評価額」「課税標準額」など、似た名称の欄が並んでいることがあります。
どの欄を使うか分からない場合には、社宅の所在地を管轄する市区町村へ確認しましょう。
課税標準額が改訂された場合は、いつから計算し直すのでしょうか
固定資産税の課税標準額が改訂された場合には、原則として賃貸料相当額も計算し直します。
新しい課税標準額を使い始める時期は、原則として、改訂後の課税標準額に係る固定資産税の第1期の納期限が属する月の翌月分からです。
たとえば、固定資産税の第1期の納期限が6月中である場合には、原則として7月分から新しい課税標準額を使います。
ただし、従業員に貸している社宅については、改訂後の課税標準額が、現在の計算に使っている課税標準額と比べて20%以内の増減にとどまる場合には、以前の課税標準額を引き続き使っても差し支えないとされています。
とはいえ、長期間まったく確認しないままにすると、次の変更を見落とす可能性があります。
・入居者が変わった
・従業員が役員になった
・増築や改築をした
・床面積が変わった
・社宅家賃を変更した
・物件を更新または借り換えた
少なくとも、入居者や契約内容が変わったときには、賃貸料相当額を見直しましょう。
新築で課税標準額がまだ決まっていない場合
新築したばかりの住宅などでは、固定資産税の課税標準額がまだ決まっていないことがあります。
その場合は、状況が似ている住宅の固定資産税の課税標準額に比準する価額を基に、賃貸料相当額を計算します。
「購入金額に一定の割合を掛ける」「近所の家賃を参考にする」など、会社が自由に金額を決めてよいわけではありません。
似ている住宅の選び方や金額の求め方には個別の判断が必要になるため、税務署へ確認しながら進めることをおすすめします。
現金の住宅手当と借り上げ社宅は扱いが違います
従業員本人が住宅の賃貸借契約を結び、会社が毎月、住宅手当を現金で支給する場合、その住宅手当は原則として給与になります。
また、従業員本人が契約している住宅の家賃を会社が負担する場合も、原則として社宅の貸与とは認められず、会社が負担した金額が給与として課税されます。
たとえば、次の2つでは税務上の扱いが異なります。
住宅手当の場合
従業員本人が家主と契約し、会社が毎月3万円の住宅手当を支給します。
この3万円は、原則として給与課税の対象です。
借り上げ社宅の場合
会社が家主と契約し、会社が従業員へ住宅を貸します。
従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、原則として社宅による利益は給与課税されません。
ただし、契約書の名義だけを会社にすればよいわけではありません。
家賃の支払い、社宅の管理、従業員からの家賃徴収なども、会社が住宅を借りて従業員に貸している実態に合わせておく必要があります。
給与課税が生じる場合の給与計算
従業員から受け取る社宅家賃が賃貸料相当額の50%未満であり、差額が給与課税の対象になる場合には、その差額を現物給与として給与計算に含めます。
現金を従業員へ渡していなくても、税務上は給与として扱われます。
そのため、毎月の源泉所得税や年末調整に反映させる必要があります。
たとえば、次のような場合です。
・現金で支払う給与:30万円
・社宅による課税対象額:1万5,040円
この場合には、給与計算上、30万円に現物給与1万5,040円を加えた金額を基に、源泉所得税などを計算します。
給与明細には、次のような名称で表示しておくと、従業員にも説明しやすくなります。
・社宅現物給与
・社宅経済的利益
・社宅課税額
一方、従業員から受け取る家賃は、「社宅使用料」などの名称で別に表示します。
社宅家賃を給与から天引きするには、原則として労使協定が必要です
社宅家賃を給与から天引きする場合には、税務だけでなく、労働基準法上の手続きにも注意が必要です。
賃金は、原則としてその全額を従業員へ支払わなければなりません。
所得税、住民税、社会保険料など、法律に基づいて差し引くもの以外を給与から控除する場合には、原則として「賃金控除に関する労使協定」が必要です。
社宅費や寮費も、この対象になります。
労使協定は、次の相手と書面で結びます。
・労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合
・そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者
協定書には、少なくとも次のような内容を記載します。
・給与から控除する具体的な項目
・社宅費や寮費を控除すること
・控除を行う給与の支払日
・協定の開始日
・協定の有効期間
この労使協定は、原則として労働基準監督署への届出は必要ありません。
ただし、締結後は従業員へ周知する必要があります。
また、労使協定があれば、どのような金額でも自由に給与から差し引けるわけではありません。
社宅家賃のように、内容や金額が明らかなものに限られます。
社宅規程や入居契約書にも、毎月の家賃と給与から控除することを記載しておきましょう。
社会保険は、所得税とは別に計算します
社宅の取扱いでは、所得税だけでなく、健康保険や厚生年金保険にも注意が必要です。
社会保険では、社宅の貸与による利益を「現物給与」として一定の金額に換算し、現金で支払う給与と合わせて標準報酬月額(社会保険料の金額を決めるときの基準になる、給与を一定の幅で区分けした金額)を計算します。
ただし、社会保険で使う住宅の現物給与価額は、所得税の賃貸料相当額とは別のものです。
所得税では、固定資産税の課税標準額などを使って計算します。
社会保険では、都道府県ごとに定められた住宅の現物給与価額を使います。
そのため、所得税で給与課税されないからといって、社会保険上も現物給与がゼロになるとは限りません。
従業員から家賃を受け取っている場合
社会保険では、都道府県ごとの基準を使って計算した住宅の現物給与価額から、従業員が実際に負担している家賃を差し引きます。
その残額が、社会保険上の現物給与価額になります。
たとえば、社会保険上の住宅の現物給与価額が月額5万円で、従業員から月額2万円を受け取っている場合には、原則として次のように計算します。
5万円-2万円=3万円
この3万円を現金給与に加えて、標準報酬月額を確認します。 所得税のように、「50%以上負担していれば差額をゼロとする」というルールではありません。 所得税と社会保険は、必ず分けて計算しましょう。
社会保険では、どの都道府県の価額を使うのでしょうか
社会保険の住宅の現物給与価額は、社宅がある都道府県ではなく、原則として、従業員の人事、労務、給与を管理している事業所がある地域の価額を使います。
たとえば、勤務先と給与管理を行う事業所が東京都にあり、社宅が神奈川県にある場合には、原則として東京都の価額を使います。
ただし、本社と支店を合わせて一つの適用事業所(社会保険にまとめて加入している事業所の単位)としており、本社で人事、労務、給与をまとめて管理している場合には、それぞれの勤務地がある都道府県の価額を使います。
また、派遣労働者については、派遣先ではなく、派遣元の事業所が所在する都道府県の価額を使います。
社会保険の適用事業所の状況によって判断が変わるため、本社と支店がある会社では特に注意しましょう。
2026年10月1日から社会保険の住宅の計算方法が変わります
社会保険における住宅の現物給与価額は、2026年10月1日から計算方法が変わります。
2026年9月30日までは、原則として「居住用の部屋の畳数」を基に計算します。
2026年10月1日からは、「住宅の総面積1平方メートル当たり」の価額を使って計算します。
2026年10月1日以降の総面積には、次のような部分も含めます。
・玄関
・台所
・トイレ
・浴室
・洗面室
・廊下
・居間
・寝室
ただし、別棟の物置や車庫、共同で使用している部分の面積は除きます。
この改正は、社会保険上の「固定的賃金の変動」(給与の中でも、金額や支給条件があらかじめ決まっている部分が変わること)に当たります。
変更後の報酬額や標準報酬月額の等級差など、所定の条件を満たす場合には、「月額変更届」(給与が大きく変わったときに、年金事務所などへ提出する社会保険の届出)が必要になることがあります。
社宅を貸している会社は、2026年10月までに次の資料を確認しておきましょう。
・住宅の総面積が分かる間取り図
・賃貸借契約書
・登記事項証明書
・管理会社から受け取った面積資料
・従業員から受け取る社宅家賃
・使用する都道府県の現物給与価額
・社宅家賃の消費税は、原則として非課税です
住宅として使用する社宅や従業員寮の家賃は、原則として消費税が非課税です。
借り上げ社宅について、住宅として従業員へ転貸することが契約などから明らかな場合には、次のいずれも原則として非課税になります。
・会社が家主へ支払う住宅家賃
・会社が従業員から受け取る社宅使用料
ただし、住宅家賃として非課税になるためには、契約内容や実際の使用状況から、住宅として貸していることが明らかである必要があります。
また、次の貸付けは、住宅の貸付けであっても非課税の対象から除かれます。
・貸付期間が1か月未満のもの
・ホテル、旅館、貸別荘など、旅館業に係る施設の貸付け
・いわゆる民泊としての貸付け
さらに、社宅に関係する費用がすべて非課税になるわけではありません。
たとえば、従業員の専用部分の電気、ガス、水道代を家賃とは別に受け取る場合、その料金は非課税の住宅家賃には含まれません。
駐車場代、家具や設備の使用料なども、契約の内容や住宅との一体性によって、消費税の取扱いが変わることがあります。
会計処理をするときは、次の費用をまとめずに分けて確認しましょう。
・住宅家賃
・共益費
・駐車場代
・水道光熱費
・家具や家電の使用料
・修繕費
・清掃費
・社宅制度で準備しておきたい書類
社宅制度を運用するときは、計算結果だけでなく、その根拠を説明できるようにしておくことが大切です。
少なくとも、次の資料を整理しておきましょう。
社宅規程
社宅を利用できる人、社宅家賃の決め方、入居期間、退去条件などを定めます。
家主との賃貸借契約書
借り上げ社宅の場合には、会社が借主になっているかを確認します。
また、住宅として従業員へ転貸することが契約上または実態上明らかになるようにしておきます。
会社と従業員との社宅使用契約書
次の内容を決めておきます。
・毎月の社宅家賃
・支払方法
・給与天引きの有無
・水道光熱費の負担
・駐車場代の負担
・修繕費の負担
・退職時の退去期限
・同居できる家族の範囲
賃貸料相当額の計算書 計算書には、次の内容を記録します。
・建物の固定資産税の課税標準額
・敷地の固定資産税の課税標準額
・建物の総床面積
・使用した年度
・賃貸料相当額
・50%相当額
・従業員から受け取る家賃
・計算日
・按分方法
固定資産税に関する資料
固定資産税課税明細書、評価証明書、家主や管理会社から受け取った書面などを保存します。
家賃を実際に受け取った記録
給与明細、賃金台帳、銀行の入金記録などを保存します。
社宅規程に家賃の金額が書かれていても、実際に徴収していなければ、従業員が負担したことにはなりません。
賃金控除に関する労使協定
給与から社宅費を天引きする場合には、原則として労使協定を結び、従業員へ周知します。
よくある間違い
会社が家主に払う家賃の半分を受け取ればよい
一般の従業員に対する社宅では、原則として、会社が支払う家賃ではなく、固定資産税の課税標準額などから計算した賃貸料相当額を基準にします。
50%までの不足額だけを給与にすればよい
50%基準を下回った場合は、50%までの不足額だけではありません。
原則として、賃貸料相当額と実際に受け取った家賃との差額が給与課税の対象になります。
従業員名義の契約でも社宅として扱える
従業員本人が直接契約した住宅の家賃を会社が負担する場合は、原則として住宅手当などの給与として課税されます。
役員にも50%基準を使える
役員社宅には別の計算方法があります。
従業員社宅のルールをそのまま使わないようにしましょう。
マンションの建物全体の課税標準額を使ってしまう
一室だけを社宅として貸す場合は、対象住戸に対応する金額を合理的に按分する必要があります。
社宅費を会社の判断だけで給与から天引きする
給与から社宅費を控除する場合には、原則として賃金控除に関する労使協定が必要です。
所得税で非課税なら社会保険もゼロになる
所得税と社会保険では計算方法が違います。
社会保険は、都道府県ごとの住宅の現物給与価額から、従業員の負担額を差し引いて計算します。
社宅に関する料金はすべて消費税が非課税になる
住宅家賃は原則として非課税ですが、水道光熱費、駐車場代、家具の使用料などは、内容によって取扱いが変わります。
社宅制度を導入するときの手順
社宅制度を新しく始める場合には、次の順番で進めると整理しやすくなります。
ステップ1|入居者が従業員か役員かを確認する
入居者の立場によって計算方法が変わります。
ステップ2|会社が契約者になる
借り上げ社宅の場合には、原則として会社が家主と賃貸借契約を結びます。
ステップ3|必要な資料を集める
固定資産税の課税標準額、床面積、マンションの按分資料などを集めます。
ステップ4|賃貸料相当額を計算する
建物、床面積、敷地の3項目を合計します。
ステップ5|従業員の家賃負担額を決める
給与課税を避けたい場合には、原則として賃貸料相当額の50%以上にします。
計算上ぎりぎりの金額にすると、課税標準額の変更や端数処理によって基準を下回ることがあります。
実務上は、多少余裕を持った金額にすると管理しやすくなります。
ステップ6|社宅規程と使用契約書を作る
家賃だけでなく、駐車場、水道光熱費、退去条件なども決めます。
ステップ7|給与天引きの労使協定を結ぶ
給与から社宅費を控除する場合には、原則として書面による労使協定を結び、従業員へ周知します。
ステップ8|所得税と社会保険を別々に確認する
税務上の賃貸料相当額と、社会保険上の住宅の現物給与価額をそれぞれ計算します。
ステップ9|実際に家賃を徴収する
毎月、給与明細や入金記録を確認します。
ステップ10|定期的に見直す
入居者、契約、課税標準額、床面積、家賃、社会保険の基準に変更がないか確認します。
まとめ|税務、労務、社会保険を分けて確認しましょう
従業員に社宅や寮を貸す場合、従業員から受け取る家賃が少なすぎると、その差額が給与として課税されることがあります。
重要なポイントは、次のとおりです。
・従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取れば、原則として給与課税されません
・50%未満の場合は、原則として賃貸料相当額と実際の家賃との差額が給与になります
・賃貸料相当額は、固定資産税の課税標準額と床面積を使って計算します
・借り上げ社宅でも、会社が家主に支払う実際の家賃だけでは判定しません
・マンションでは、対象住戸分を合理的に按分する必要があります
・課税標準額を改訂した場合は、原則として固定資産税の第1期納期限が属する月の翌月分から反映します
・給与から社宅費を天引きする場合は、原則として労使協定が必要です
・所得税と社会保険では、現物給与の計算方法が異なります
・社会保険の住宅の計算方法は、2026年10月1日から変更されます
・住宅家賃は原則として消費税が非課税ですが、住宅用途や貸付期間などの条件があります
すでに社宅を貸している会社では、まず次の点を確認してみましょう。
・入居者は従業員ですか、役員ですか
・賃貸料相当額の計算書はありますか
・固定資産税の課税標準額を確認できる資料はありますか
・従業員から50%以上の家賃を実際に受け取っていますか
・給与天引きをするための労使協定はありますか
・社会保険の現物給与を別に計算していますか
・2026年10月から使う住宅の総面積を確認できていますか
計算や書類に不足があっても、今から必要な資料を集め、今後の処理を整えていくことが大切です。
社宅制度は、正しく運用すれば、従業員にも会社にもメリットのある福利厚生になります。
契約書、固定資産税の資料、床面積が分かる書類、給与明細、社宅規程などを整理し、後から計算の根拠を説明できる状態にしておきましょう。
※この記事は2026年7月25日時点の国税庁、厚生労働省および日本年金機構の公表情報に基づいて作成しています。
実際の取扱いは、入居者の役職、住宅の契約内容、建物の状況、費用の負担方法、社会保険の適用事業所の状況などによって異なることがあります。
個別の判断については、税務署、年金事務所、労働基準監督署にご確認ください。






