投資の『損するかも』とどう付き合う?長期・積立・分散をやさしく整理
「投資に興味はあるけれど、大きく損をするのが怖い」
株式投資について考え始めたとき、多くの人が最初に感じる不安ではないでしょうか。
ニュースでは、ときどき株価の急落が大きく取り上げられます。自分のお金が数日や数か月で減ってしまう場面を想像すると、「やっぱり預金のままのほうが安心なのでは」と感じるのも自然です。
実際、株式や投資信託には元本割れの可能性があります。
投資した100万円が、一時的に80万円や70万円になることもあり得ます。
ただ、ここで整理しておきたいことがあります。
それは、短い期間の値動きと、10年、20年といった長い期間の資産形成は、少し分けて考えたほうがよいということです。
長期投資だから安全になるわけではありません。
しかし、時間をかけ、積み立てながら、投資先を分散することで、短期的な値動きに振り回されにくい運用を目指すことはできます。
金融庁も、投資には元本割れのおそれがある一方、「長期・積立・分散」を組み合わせることが、リスクと付き合いながら資産形成を考える基本の一つだと説明しています。
今回は、投資の値下がりが怖いと感じている人に向けて、「長く続けること」と「分けて持つこと」にはどんな意味があるのかを整理してみます。
投資が怖く見えるのは、短期間では大きく動くから
株価は毎日動いています。
会社の業績だけでなく、景気、金利、世界情勢、投資家の心理など、さまざまな要因によって値段が変わります。
そのため、1年や2年という短い期間だけを見ると、大きく利益が出ることもあれば、大きな損失になることもあります。
ここが、預金との大きな違いです。
銀行預金であれば、通帳を開いた翌日に残高が20%減っている、といったことは通常ありません。
一方、株式を含む金融商品では、値段そのものが上下します。
投資でいう「リスク」は、単に「危険」という意味ではなく、結果がどの程度上下するかわからないことと考えると理解しやすくなります。
つまり、株式投資が怖いという感覚そのものは、決して不自然ではありません。
大切なのは、その怖さを無視することではなく、「何が怖いのか」を分けて考えることです。
たとえば、「来月使う予定のお金が減るのが怖い」のと、「20年後のために積み立てているお金が一時的に減るのが怖い」のとでは、同じ値下がりでも意味が違います。
投資期間が違えば、値動きとの付き合い方も変わってきます。
長期投資では「一度も下がらない」ことを目指すわけではない
長期投資というと、「長く持てば必ず儲かる」という意味に受け取ってしまうことがあります。
しかし、そうではありません。
長期投資をしていても、途中で大きく値下がりすることはあります。
10年、20年と投資を続けるのであれば、その間に景気後退や金融市場の混乱が起きる可能性もあります。
では、なぜ長い期間で考えるのでしょうか。
一つは、ある一時点の値動きだけで結果が決まりにくくなるからです。
短期間では、投資を始めた直後に大きな下落が起きると、その影響を強く受けます。
一方、長く積み立てていれば、価格が高い時期だけでなく、安い時期にも少しずつ購入することになります。
金融庁が紹介している過去のデータでも、国内外の株式や債券に積立・分散投資したケースでは、5年間より20年間保有したケースのほうが運用結果のばらつきが小さくなる例が示されています。
ただし、これは過去の実績であり、将来の利益を保証するものではありません。
長期投資のポイントは、「下落しなくなること」ではありません。
上がる時期も下がる時期も含め、長い時間の中で資産形成を考えることです。
「分散する」と、一つの失敗に左右されにくくなる
もう一つ大切なのが、分散です。
分散投資とは、1つの商品や1つの会社だけにお金を集中させず、いくつかの投資先に分ける考え方です。
たとえば、ある1社の株だけに100万円を投資していたとします。
その会社の業績が大きく悪化すると、自分の資産全体が強い影響を受けてしまいます。
一方、さまざまな企業や地域などに投資先を分けていれば、1つの会社の不調だけで資産全体が決まる状態を避けやすくなります。
投資信託の中には、多くの企業や地域にまとめて投資できる商品もあります。
もちろん、世界中の株価が同時に下落することもあります。そのため、分散すれば損をしないわけではありません。
それでも、「一つに全部を任せない」という考え方には意味があります。
毎月の家計でも、手元のお金をすべて一つの目的に使ってしまうより、生活費、緊急用の預金、将来のためのお金などに分けて管理したほうが安心しやすいでしょう。
投資でも、それに少し近い考え方が使われます。
金融庁も、値動きの異なる資産や地域などに投資先を分ける「分散投資」を、投資に伴うリスクを抑えるための基本的な考え方として紹介しています。
下落したときに続けられる金額で始めることも大切
長期投資について知ると、「では、できるだけたくさん投資したほうがいいのでは」と思うかもしれません。
しかし、長期投資で意外に大切なのは、投資額の大きさよりも途中で無理をしなくて済むことです。
たとえば300万円を投資したあと、240万円に下がったとします。
60万円の値下がりを見ても生活に影響がなく、そのまま持ち続けられる人もいるでしょう。
一方で、その300万円が半年後の生活費や住宅購入のためのお金だった場合はどうでしょうか。
同じ20%の下落でも、受ける不安はかなり違います。
だからこそ、長期投資を考えるなら、「何に投資するか」だけではなく、そのお金を本当に長期間使わずにいられるかを考える必要があります。
日々の生活費や近いうちに必要になるお金まで投資に回してしまうと、値下がりしたときに売らざるを得なくなるかもしれません。
長く続けるためには、生活に必要なお金を確保したうえで、自分が無理なく続けられる範囲を考えることが大切です。
NISAは「長期で考えるための器」の一つ
長期的な資産形成を考えるときによく出てくるのがNISAです。
NISAとは、一定の条件のもとで、投資によって得た利益を非課税で受け取れる制度です。
2024年からのNISAでは、制度自体が恒久化され、非課税で保有できる期間も無期限となっています。
そのため、以前の制度より長期的な視点で資産形成を考えやすい仕組みになりました。
年間の投資枠や非課税で保有できる上限額など具体的な条件は、口座を開設する金融機関で最新の内容を確認しておくと安心です。
ただし、ここで注意したいのは、NISAを使えば投資のリスクがなくなるわけではないということです。
NISAは税金の面でメリットがある制度ですが、購入した株式や投資信託の価格そのものが保証されるわけではありません。
値下がりすれば、NISA口座の中でも資産は減ります。
つまり、NISAは「儲かる仕組み」というより、長期的な資産形成を考えるときに利用できる制度の一つ、と捉えたほうがわかりやすいでしょう。
制度があるから投資をしなければならないわけでもありません。
まず自分のお金の状況を整理し、そのうえで必要なら活用を考える。このくらいの距離感でも十分です。
暴落を予想するより「起きても続けられるか」を考える
投資を始めると気になりやすいのが、「次の暴落はいつ来るのだろう」ということです。
できれば高いときには買わず、安くなった瞬間に買いたいと思うのは自然です。
しかし、将来の値動きを正確に予測し続けるのは簡単ではありません。
そのため、長期・積立・分散という考え方では、「次に上がるか下がるか」を当てることよりも、さまざまな相場を経験することを前提に運用を考えます。
毎月一定額を積み立てるのであれば、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く買うことになります。
積立投資には、購入時期を一度に集中させないという特徴があります。
もちろん、それでも含み損になる時期はあります。
だからこそ重要なのは、「下がらない商品を探すこと」だけではありません。
「下がったとしても、生活を変えずに続けられる金額か」
「値下がりを見て慌てて売ってしまわない運用になっているか」
を考えておくことです。
投資を続けるためには、商品選びだけでなく、自分の性格や家計との相性も大切になります。
長期投資は「信じる」より「理解して続けられるか」で考える
投資について学び始めると、「長期なら大丈夫」 「分散していれば安心」という言葉を目にすることがあります。
しかし、投資を何かの信念だけで続ける必要はありません。
むしろ、
なぜ長期で考えるのか。
なぜ投資先を分けるのか。
なぜ生活費まで投資してはいけないのか。
こうした仕組みを一つずつ理解することのほうが大切です。
値下がりしたときも、「こんなはずではなかった」と感じるのではなく、「投資にはこういう時期もある」と理解できていれば、少し落ち着いて判断しやすくなります。
投資への不安を完全になくす必要はありません。
不安があるからこそ、自分に合わない金額を投資していないか、リスクを取りすぎていないかを考えることもできます。
大切なのは、怖さを我慢することではなく、自分が納得できる範囲で投資と付き合える状態をつくることです。
まとめ:投資は短期の値動きだけで考えない
株式や投資信託には元本割れの可能性があります。
長期投資をしても、そのリスクが消えるわけではありません。
一方で、短期間の値動きだけを見て「投資は危険」と考えてしまうと、長期・積立・分散という別の見方を見落としてしまいます。
長く時間をかけること。
購入する時期を分けること。
投資先を一つに集中させないこと。
そして、値下がりしても生活に困らない範囲のお金で続けること。
こうした考え方を組み合わせることで、投資の値動きと少し距離を取りながら資産形成を考えられるようになります。
だからといって、焦って投資を始める必要はありません。
「早く始めた人が必ず有利」と単純に考えるより、まず家計を確認し、自分が何のためにお金を準備したいのかを整理することが先です。
そのうえで、「預金だけで持つのか」 「一部を長期的な投資に回すのか」 「今はまだ投資しないのか」を自分で選べばよいのです。
投資で大切なのは、不安をなくしてから始めることではありません。
不安の正体を知り、自分が無理なく付き合える方法を考えること。
まずはそこからでも十分ではないでしょうか。
なお、NISAをはじめとする各制度の細かな条件や、ご自身に合った金融商品の選び方については、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなど専門家に個別に相談されることをおすすめします。






