贈与税を申告していても安心しすぎは禁物 毎年200万円贈与の落とし穴
申告していても気をつけたい「7年加算」と「定期贈与」
親や祖父母から、子や孫へ毎年少しずつお金を渡したい。
そんな思いから、生前贈与を続けているご家庭は少なくありません。
その中でもよくあるのが、毎年200万円くらいの贈与を続けるケースです。
きちんと贈与税の申告もしていると、
「ちゃんと手続きしているのだから大丈夫」
と思いたくなるものです。
もちろん、申告をしていること自体は大切です。
ただ、そこで安心しきってしまうのは少し早いかもしれません。
毎年200万円の贈与を続けている場合、気をつけておきたい点が2つあります。
ひとつは相続のときの「持ち戻しルール」の見直し、もうひとつは「定期贈与」と見られるおそれです。
今回は、この2つをできるだけわかりやすく整理してみます。
申告していることは大事。でも、それだけで安心とは言えません
毎年110万円を超える贈与をした場合、原則として贈与税の申告が必要です。
年間200万円の贈与であれば、基本的にその対象になります。
申告をしていると、贈与の事実や金額がはっきりします。
お金の流れを隠していないという意味では、きちんとした対応といえます。
ただ一方で、申告を続けていることで、
「毎年、同じような贈与が続いている」
という流れも見えやすくなります。
たとえるなら、家計簿をきれいにつけていると、支出の内容が整理される反面、毎月同じ出費があることもすぐわかる、そんな感じです。
ですから、
「申告しているから絶対に安心」
と考えるのは少し危険です。
正確には、
「申告は必要な手続きとして大切。でも、それとは別に、贈与の内容や続け方も見られる」
という理解が近いでしょう。
見落としやすいのが、「3年」ではなくなりつつある点です
ここは特に大事なところです。
生前贈与をしていても、相続が起きたときには、その一部が相続財産に足し戻されて計算されることがあります。
これが、いわゆる「生前贈与加算(せいぜんぞうよかさん)」というルールです。
以前は、原則として亡くなる前3年以内の贈与が対象でした。
そのため、
「3年より前に贈与しておけば大丈夫」
と考えていた方も多かったと思います。
しかし、このルールは変わりました。
2024年1月1日以後の贈与から、加算の対象期間は段階的に広がっており、最終的には相続開始前7年以内の贈与が対象になります。
つまり、これからは「3年前までなら安心」とは言いにくい時代になった、ということです。
ただし、いきなり全員が一律で7年になるわけではありません。
亡くなった時期によって対象期間が変わる、段階的な仕組みです。
また、延長された4年分については、合計100万円までは加算しない扱いがあります。
とはいえ、基本的な考え方としては、これまでよりも相続税とのつながりを強く意識する必要が出てきた、と考えておくのがよいでしょう。
毎年200万円だと、「定期贈与では?」と見られることがあります
もうひとつ注意したいのが、「定期贈与(ていきぞうよ)」です。
たとえば、毎年同じ月に、同じ200万円を、同じ相手へ渡しているとします。
すると、あとから見たときに、
「これは毎年その都度決めた贈与なのか」
それとも
「最初から何年にも分けて渡す約束だったのか」
という点が問題になることがあります。
後者と見られるのが、定期贈与です。
少し身近なたとえで言うと、毎年その場その場でプレゼントを渡しているのか、最初から総額を決めて分割で渡しているのか、という違いです。
表面だけ見るとどちらも「毎年200万円もらっている」ように見えます。
でも、税務の考え方では、この違いがとても大きいのです。
最初から「10年間にわたって毎年200万円渡します」という約束になっていると、毎年独立した贈与ではなく、まとまった金額を分けて渡す約束と見られる可能性があります。
「きちんと申告しているのに心配なの?」と思うかもしれません
こんな疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
「申告までしているのに、まだ気をつける必要があるのですか?」
答えは、はい、あります。
ただし、必要以上に怖がる必要はありません。
大切なのは、申告をしているかどうかだけでなく、その贈与が毎年独立して行われていると説明できるかどうかです。
申告はあくまでスタート地点です。
そのうえで、贈与のしかたや記録の残し方まで整っていると、あとで説明しやすくなります。
では、どうしておくと安心なのでしょうか
ポイントは、「最初から長年分をまとめて決めていたわけではない」ということが伝わるようにしておくことです。
たとえば、次のような工夫が考えられます。
その年ごとに贈与を決める
「10年で合計いくら渡す」と最初に決めるのではなく、毎年その都度、贈与するかどうか・いくらにするかを決める形が自然です。
毎年まったく同じ条件にしすぎない
毎年同じ日、同じ金額だと、どうしても”あらかじめ決まっていた感じ”が強くなります。
日付や金額に少し違いがあるだけでも、見え方は変わります。
毎年、贈与契約書を作る
その年の贈与について、その都度書面を作っておくと、「今年の贈与は今年決めた」という説明がしやすくなります。
振込記録を残す
現金手渡しよりも、受け取る方の口座へ振り込んで記録を残しておくほうが安心です。
あとから見返したときにも、流れがわかりやすくなります。
これからは「贈与税だけ」では足りません
以前は、生前贈与というと、どうしても贈与税のことだけを考えがちでした。
でも、これからはそれだけでは足りません。
持ち戻しの期間が見直されたことで、相続税まで含めて考えることが、これまで以上に大切になっています。
毎年200万円の贈与は、決して小さな金額ではありません。
続け方によっては、将来の相続税の計算にも、贈与の見られ方にも影響します。
だからこそ、
「申告しているから大丈夫」
ではなく、
「相続まで見すえて、どう進めるか」
という視点が必要になってきます。
まとめ
毎年200万円の贈与をしている場合、気をつけたいのは次の2点です。
ひとつは、2024年から生前贈与加算のルールが見直され、相続開始前3年から最長7年へと対象期間が広がっていることです。
もうひとつは、毎年同じような贈与を続けていると、定期贈与と見られる可能性があることです。
そして、贈与税の申告については、申告しているから一方的に安心とも言えず、申告しているから不利とも言い切れません。
大切なのは、必要な申告をきちんと行ったうえで、その贈与が毎年その都度の独立した贈与だったと説明できる形を整えておくことです。
ご家族のためにせっかく続ける贈与ですから、あとで思わぬ誤解が生じないよう、”渡し方”と”記録の残し方”まで含めて考えておくことが安心につながります。






